Best Tracks Of 2017 / Yuya Tamura
キュレーター、Yuya Tamuraによる2
017年の年間ベスト・トラック!

今年は社会人1年目だったのですが、それ以上にキャンプにハマってしまったことの方がインパクトが大きい1年でした。キャンプ最高ですよ。寒さが落ち着いたらすぐにでも行きたいくらいです。来年もよろしくお願いします!


5. Smidley /Dead Retrievers
Smidleyのデビュー・アルバムとなったセルフ・タイトルから。Foxingのフロントマン、Conar Murphyのソロ・プロジェクトとして結成された彼らによる1曲は、ちょうどいい塩梅のいなたいインディ・ロックすぎて非の打ち所がない出来です。Conar MurphyがFoxingで表現しているアンビエントなエモ・サウンドとはまた違った、陽気でストレス・フリーなロック・サウンドからは、彼の多彩なバックボーンを感じさせます。また、今年はリリース元の〈Triple Crown Records〉の勢いがよかったですね。Spincoasterでも A Will Away(https://spincoaster.com/a-will-away-here-again) や Sorority Noise(https://spincoaster.com/sorority-noise-no-halo) の楽曲を紹介しているので、是非チェックしてUSのインディ・レーベルが持つ空気感だったり、横の繋がりを感じてもらえたらと思います。


4. People Like You / Thumbnail
People Like Youの2ndアルバム『Verse』から。LITEやtricotといった日本のマス・ロックからの影響を公言する彼らですが、男女混合ボーカルのハーモニーと繊細なアルペジオ・フレーズ、そして変拍子を随所に散りばめた複雑な曲構成ながらも、ハート・ウォーミングさを感じてしまうこの佇まいは唯一無二です。「Thumbnail」のようなマス・ロック色強めなエモ・トラックが主体となった同作ですが、ホーン隊とピアノによる味付けが際立つ点なんかはセンスがいいな〜とつくづく思います。レーベル・メイトでもあるtoeやmouse on the keysと近しい部分もありますし、日本のポスト・ロック・ファンにも余裕でアプローチ可能です。〈Topshelf Records〉を中心とした現行エモ界隈で今後がとても楽しみな存在です。


3. The Menzingers / After The Party
■ 関連記事:The Menzingers / Lookers(https://spincoaster.com/the-menzingers-lookers)

The Menzingersの通算5枚目のフル・アルバム『After The Party』からのタイトル・トラック。男臭く、骨太なロック、それでもどこか哀愁漂うメロディー・ラインでリスナーの胸を締め付けるUS・ペンシルベニア発のパンク・サウンドは、今年1年を締めくくるのに相応し過ぎる1曲と言えます。

今年3月にリリースされた同作は、意外と他メディアのベスト企画で見かけなくてビックリしているのですが、パンク・ロックの持つ奥深さを再確認出来る傑作で、今年リリースのパンク・アルバムはこれ1枚聴いておけば問題ないと言えちゃうくらいです。「今年はあまりストレートなロックを聴いていないな」なんて思っている人にこそ体感して欲しい1枚ですし、ロック・バンドの持つ強いパッションがバシバシ伝わって来ますよ。加えて、まさか過ぎる初来日公演もシンガロング全開系で最高でした。僕も観にいった初日のフルセット動画は こちら(https://www.youtube.com/watch?v=BZKpMAX_diY) から。


2. Alvvays / Lollipop (Ode To Jim)
■ 関連記事:Alvvays / In Undertow(https://spincoaster.com/alvvays-in-undertow)

Alvvaysの2rdアルバム『Antisocialites』から。今年のインディ・ロック・シーンではバンド、SSW問わず女性ボーカル系がとても勢いがあったなと感じたのですが、その中でも特にお気に入りだったのがこの「Lollipop (Ode To Jim)」。ガレージ・ロックを想起させるリズミカルなドラミングと、一聴しただけで気分が晴れやかになるようなサーフ調のギター、そしてMolly嬢の甘酸っぱいボーカルが織りなすポップ・サウンドは逸品中の逸品。どうしてもMolly嬢の可憐さが目立つポップ・トラックですが、随所に散りばめられた、シューゲイズを彷彿とさせるファジーなギターも捨てがたく、この絶妙な甘辛加減をぜひ味わって欲しいと思います。

エモ・フリークとしては、話題を集めた前作に引き続き〈Polyvinyl〉からリリースしているという点も見逃せないのですが、本作は近年の同レーベルを象徴するリリースのひとつになったのではないでしょうか。来日公演、期待したいですね。


1. Turnover / Sunshine Type
■ 関連記事:Turnover / Super Natural(https://spincoaster.com/turnover-super-natural)

昨年の初来日公演に続いて、2年連続で来日を果たした彼らが放った3rdアルバム『Good Nature』は、全体を通してドリーム・ポップ色が濃く出た傑作。この「Sunshine Type」で特徴的な、深いリヴァーブを効かせたアルペジオ・ギターと、脱力感のあるボーカルのハーモニーは、今年の夏の昼下がりにピッタリ過ぎてひたすらリピートしていました。今年のチル・ミュージックはTurnoverの『Good Nature』以外右に出る作品はないでしょう。
元々は90sエモやハードコアからの影響を受けたポップ・パンク・サウンドを鳴らしていた彼らだからこそ成し得る、絶妙な哀愁感を兼ね備えたインディ・ロックは、明らかに他のバンドとは一線を画しています。欲を言えば、本作のリリース後にライブを観たかった……といったところでしょうか。個人的にそれくらい完全優勝なアルバムです。同曲を一聴して「既存のローファイなインディ・ロックとは何か違うな」というちょっとした違和感を持ったリスナーは正解です。90sエモやハードコアの流れの中で生み出されたこのサウンドを体感するにはまだまだ遅くないですよ。


Comment
今年はSpotifyのおかげでメインストリームに近いアーティストから、ローカルなバンドまで幅広く聴くことが出来たなと思います。特にレコメンド機能の精度がまあ高くて、今回ベスト・トラックに挙げたSmidleyなんかは完全にノーマークでしたし、女性アーティストの勢いを感じられたのもSpotifyのおかげでした。今までずっとフィジカル主義だった自分にとってはSpotifyの登場はかなり革命的な出来事でして、僕がSpincoasterで伝えたい「シーンを作り出すアーティストたちやレーベルの横の繋がりが持つ素晴らしさ」っていう超アナログな事象も、Spotifyのようなテクノロジーの恩恵を受ければもっと容易になるはずだと感じました。US・シカゴ発の音楽ディスカバリー・プラットフォーム、 〈Audio Tree〉(https://audiotree.tv/) とかはまさにその象徴だと思いますが、音楽の好みのパーソナライズ化が進む中で、僕自身も日本の音楽シーンがもっとおもしろい方に傾くためのお手伝いが出来ればいいなーと思います。


番外編 マイ・ベスト
【ベスト・旅】

今年の3月にアメリカの西海岸へ行って来ました。約2週間滞在して、ずっと憧れに憧れていたアメリカの西海岸の持つカルチャーを体感出来てとても感慨深かったです。全てが最高の思い出なのですが、個人的ハイライトはハリウッドのAmoeba Musicで思う存分ディグれたことと、ガソリンの入れ方が分からずガス欠になりかけたことですかね。あとやっぱり日本の食文化は素晴らしいと思いました。カリカリのベーコンとか、何にでもチリソースかけちゃうあのマインドもすごい好きなんですけどね。でも、やっぱり日本食が一番です。

■Yuya Tamura 過去記事:https://spincoaster.com/author/yuya-tamura

【Spotify プレイリスト】

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