MusicElement「台湾と日本」〜日台ユニットが目指す未来【インタビュー】

MusicElement「台湾と日本」〜日台ユニットが目指す未来【インタビュー】

MusicElement「台湾と日本」〜日台ユ
ニットが目指す未来【インタビュー】

ライブではKinYaのパワフルなパフォーマンスとUTAのぬくもりある歌声のハーモニーが印象的で、仕事や人生に迷う人たちの心を日々支えている。彼らの集大成と言えるフルアルバム「Evergreen」と、台湾で撮影された新曲「L.I.S~Life Is Short」のPVを中心に、彼らの目指す未来についてインタビューした。
クラウドファンディングでファンと作り上げたPV「L.I.S~Life Is Short」
――はじめに、「L.I.S」という楽曲のPVは台湾でロケを行ったそうですが、台湾でPVを作ろうと考えた経緯を教えていただけますか。
UTA「楽曲制作担当のKinYaは日本生まれなのですが、両親ともに台湾人で、台湾にルーツがあるんですね。でも、そのことがMusicElementで音楽活動していく中でそれほど重要性があるとは思っていませんでした。でも、プロデューサーであるma2k(まつ)さんに『KinYaくんは台湾人であることをもっと前面に出してもいいと思う。みんなが持っていない個性はアーティストにとって価値があることだから』と言われたんです。確かに、KinYaはトライリンガルだから作る歌詞には英語も多いですし…日本だけでなくアジアという視点で発信していく方が今後、独自のことができるんじゃないか?と考えるようになりました。」
KinYa「ただ、台湾で何も活動せずに『日本と台湾の架け橋に』と言っても、もちろん説得力はなくて…そこで、少しずつ台湾との繋がりのきっかけを増やしていこうと考え、フルアルバムのジャケット撮影を台湾で行いました。そして、次に新曲のPVを作成しようと考えたんですね」
――PVを作る資金を、今回はクラウドファンディングという形で「ファンの皆さんと共に作っていく」という方法をとりました。
UTA「そうです。PVを海外で作るには資金が必要です。これもma2kさんの助言だったのですが、クラウドファンディングという方法があるよ、と。非常に迷いました。というのは、お金をファンの皆さんからいただくということは、大きな責任が伴います。果たして、その方法で資金が集まるのか?そして期待に沿えるものが作れるのか?…でも、僕たちの音楽活動は 『いつまでも続けられることではない』ということも知ってもらいたくて…みんなの力がないと実際、続けることはできません。現にやめていくアーティストも数多い…」
KinYa「きっと、ファンの皆さんは『辞めないだろう』と思っているでしょう?でもそんなことはない。僕たちの歌やライブは永遠に見られるものではないんです。だから、続けるために『次の一歩』を踏み出さなくてはいけなくて。まさに『L.I.S~Life Is Short』…人生は短い、という新曲によるPVがMusicElementの『次の一歩』だったわけです」
――実際にクラウドファンディングによって100万円以上の資金が集まりました。みなさんがMusicElementの音楽を愛しているんだな、と感じました。
UTA「支援してくれた人たちのコメントを読んでいると、本当に感動しました。でも同時に、みんなの想いが乗っかった大切なお金なんだ…と。これは裏切れない。どんなに台湾での撮影スケジュールがタイトでも、猛暑でしんどくても『みんながくれたお金なんだから!』とお互い言い聞かせて、踏ん張って撮影していました。まあほんとに、猛暑で過酷だったんですが(笑)撮影場所も、観光地なので人が多かったり苦労が多かったです。観光スポットの『象山』では、その岩に登るのに何分も並んだり…」
KinYa「サンダルで山登りはしちゃいけないよね(笑)でもみなさんにも撮影地をぜひ訪ねてもらいたいですね」
――フルアルバムのジャケット写真もそうですが、PVも台湾の景色がとても綺麗で、旅行に行ってみたいという気持ちになります。
KinYa「そういってもらえると嬉しいですね。PVには台湾の観光名所で素晴らしい場所がたくさん出てきます。台湾を知ってもらうきっかけになったら嬉しいです。微力だけれど、台湾と日本を繋ぐ架け橋になっていきたいんです」
全編、台湾でロケが行われ、魅力的な台湾の景色をバックに歌われる「L.I.S~Life Is Short」…この歌には彼らの音楽活動に対する想いも表現されている。iTunes Store他にて配信中。
――MusicElementの楽曲は代表曲の「Brand-New Life」を始め、ファンの皆さんの「背中を押す」、支えになる応援曲が多かったと思います。新曲の「L.I.S~Life Is Short」は少し路線が違いますよね。
KinYa「この『L.I.S』は意識して、今までとは違う楽曲を作ろうと思いました。もちろん僕らの曲を『背中を押してくれる』『泣ける』曲だと言ってもらえるのは嬉しいのですが、今までの僕たちを卒業していかなくちゃいけなくて。毎回、求められたものを使命感に駆られて書き続ける、歌い続ける段階は一度終わって、新しいジャンルに挑戦していく必要があるんですね。次のステップに行き、もっと多くの人に僕たちの音楽を聴いてもらいたい。だから、この『L.I.S』はMusicElementのターニングポイントにしたかった」
――歌詞にもそれが表現されていますよね。
KinYa「そうですね。『曲げたがらないロイヤリティ 探し続けてるアイデンティティ 自己評価だけはやたら低め Stop thinking何を変えたい?実行してくだけ 目標=書き込んだままで終わりがち』っていう2番の歌詞あたりが…少し嫌味っぽい部分でもあるんですが、自分のいる狭い世界で、私ってなんだろう?と疑問を持ち、自己評価が低い人が多くて。自分もしかりなんだけど。もっと違う目線で物事を見てほしくて。今いる場所で悩んだりするだけじゃ、人生つまらなくて、変化はないんじゃないかな…と」
UTA「僕たちがみんなの協力を得てだけど、台湾に行ってPVを撮ったこと自体が一つの行動だから…それ自体が提示なのかな、と。PVの中でも、僕が最初は白いシャツを着ていて少し憂鬱そうなんだけど、台湾という新しい場所に触れて脱皮していく。そんなメッセージ性もPVに込めました」
フルアルバム「Evergreen」は集大成であり「いつでも戻れる場所」
――2016年12月に発売した、フルアルバム「Evergreen」は、今までのMusicElementの活動の集大成と言えるアルバムだと思います。私は実はとてもこのアルバムが好きで、毎日欠かさず聴いています。移動中や、旅行中に聴くんですが、不思議といろんな場面で馴染むんです。
KinYa「ありがとうございます、嬉しいです。このアルバムは、ワンマンライブや4ヶ月連続配信をやっていた時期に作っていて…非常に精力的だった時期でもありますが…それと同時にやはり年齢を重ねて、周りが結婚したり子どもが出来たりする変化があって。『いつまでも活動できるわけじゃない』という気持ちも当然込み上げてきて…。ここで、自分たちの集大成を作っておこうと考えて取り組みました」
――どの曲も良くて、道を歩きながら聴いていると、気持ちが変化してとても心地いいアルバムだと思っています。時々ノリがいい曲があって、気分が上がりますし。
UTA「実は、このアルバム、最初の『Brand-New Life』の『朝』から始まって、1日の時間の流れに沿って曲が並んでいるんです。その時々に、スパイス的な曲が散りばめられてますけど。夕方くらいに『オレンジ』、夜になったら『Starlight』…という感じで。ちょうど、朝聴き始めたら、夜、車で帰る頃に『Starlight』が流れてくるみたいな(笑)」
――あ!本当ですね。曲順もしっかり考えられて練られてる。
UTA「そうなんですよ。この先、もっと大きな舞台に立てたら…きっとこのアルバムがもっと多くの人に聴き直してもらえて、日の目を見る日が来るんじゃないか?って思っているんですよね…」
MusicElementの代表曲である「Brand-New Life」。新生活を始める人たち、今頑張っている全ての人に送る曲。アルバム「Evergreen」の1曲目に収録されている
――リード曲である「Evergreen」もとても素敵な曲ですよね。
KinYa「実は、最初、ma2kさんから全くOKが出なくて。アルバムのリード曲なのにキャッチーじゃない、という評価でした」
――えっ、そうなんですか?…「17歳の頃のように」というアルバムのテーマに合った、懐かしさも感じられる良い曲だと思いますが…。
UTA「アルバムのリード曲なんだから、どうしても僕らは『もっとパンチのある曲』を期待するんですけど…KinYaが『これがリード曲なんだ!』っていうんだからそうなんですよね(笑)」
KinYa「『Evergreen』はいつでも戻れる場所…という意味でもあります。自分の励みになるのって、昔の楽しかった記憶だったりしますよね?いつでも17歳でいられる『居場所』は記憶の中にきっとある…変な意味で思い出にすがるわけじゃないけど、楽しい記憶があるから今こうして音楽活動が出来てるっていう感覚で、この曲を作りました。みなさんの生きる中で、このアルバムを聴いたら何かいい思い出を思い出させてくれる、そんな曲たちを集めたアルバムであって欲しい」
UTA「だからアルバムのジャケットも、フルカラーじゃなくて思い出たちを象徴する木々だけが、グリーンになっているんです。いつでも戻れる場所。僕たちの集大成。それが『Evergreen』なんです」

アルバム「Evergreen」は全国発売中。13曲に、ボーナストラックの中国語バージョンの「Sunshine」である「陽光」が入っている聞き応えのある1枚
「モノクローム」はアルバムの中の「縁の下の力持ち」
――MusicElementの曲は背中を押す応援歌的な歌も多いですが、アルバムの中の『モノクローム』は少し違っていて、新たな面を開拓している気がしますね。
UTA「この曲、僕はとっても好きで。ある意味、KinYaの心の『闇』の部分を消化不良起こさない程度に、上手に曲として成立させた、名曲だと思っています(笑)」
――KinYaさんの『闇』ですか?
KinYa「本来、僕はすごくネガティヴだから(笑)そんなの出来ないよ、とかすぐに言い出しちゃう。この先、本当にやりたい活動が出来るか?って考えるとやれるかわからないし、人生明日終わるかもしれない。だからこそ、小さなことを幸せに感じたり、今を大切に生きていたいと思っていて…『モノクローム』はMusicElementが求められている背中を押す歌ではないかもしれないけど…意外と言いたいことは深いんです」
UTA「アルバムの中の『縁の下の力持ち』的な曲だと思います」
――「モノクローム」は最近、ライブでも聴きましたが、ファンの皆さんも改めて伝わって来るものがある、と捉えているようです。未来に不安を抱えつつも、今の幸せ、今いる場所を見つめている歌なんですね。
KinYa「歌で伝えたいことが伝わることが一番ですね。『モノクローム』はわかりやすい曲じゃないし、最初どう消化すればいいかわからないかもしれません…でも、ファン層を広げるためにも、様々な曲を作っていきたい。この先、色々な曲を受け入れてもらえるようになるといいな、と思っています」
ハングリー精神ゼロで始めた音楽活動…ファンが出来て伝えたいことが出来た
――お二人が音楽活動を始めたきっかけなど教えていただけますか?
UTA「もともと同級生で、カラオケ仲間でした。僕の大学の卒業イベントで、何か歌うってことになって…じゃあ歌えるKinYaともう1人を誘ってイベントに出たんですよね」
KinYa「そう、なんとなく歌い始めた(笑)で、1人は早々に抜けちゃいました。僕ら2人に真剣さがないから呆れちゃって…」
――もともとは、何が何でも売れよう!という気持ちはなかったのでしょうか?
KinYa「東京出身の僕ら2人は、地方から出て来てる人たちと違って、ハングリーさがちっともなくて。カバーを歌ったりしてなんとなく音楽活動を続けてて…オリジナルさえ、カバーを歌わないで済むかな、っていう程度に作ってた。他のやりたいこともあったし…今思うと、全く真剣味がなかった」
――今のように、勢力的に楽曲を作って活動し始めたきっかけは?
UTA「やっぱり2013年ごろに、プロデューサーのma2kさんに出会ったことですかね。最初、『Days』って曲を一緒に作ったんですが、とにかくやりづらくて(苦笑)何を伝えたいの?なんでこういう曲を作りたいの!?って問い詰めてくる」
KinYa「僕は感覚人間だから…最初、分析されることがめんどくさかったんです…メロディもボイスレコーダーにふんふん、って吹き込んで作ってるし(笑)ma2kさんが弾くギターに合わせて、と言われても出来なかったくらい」
――ma2kさんのおかげで曲作りに真剣味が加わった、ということでしょうか。プロデューサーさんの客観的な視点は大事ですよね。…作曲はボイスレコーダーで吹き込むだけなのですか?
KinYa「そう。最初から最後までボイスレコーダーでふんふんって(笑)で、『オレンジ』辺りでma2kさんと息が合ってきて…これ、いいじゃん!って一緒に作り上げることで気持ちが盛り上がってきて。たぶん、ma2kさんもだんだん僕らと何か作るのが楽しくなってきたんじゃないかな?今は、阿吽の呼吸だし、ma2kさんは今の流行もうまく取り入れてくれて…自分たちの表現したいことも理解してくれる」
UTA「そして、もともとは『ME』という名前で活動してたんですけど、2014年に『MusicElement』という今の名前に改名したんです。名前覚えてもらわなきゃ!と思って、その時は月に10~15本もライブに出演してた」
――月に10~15本!?かなりのライブ数ですね。
KinYa「今では考えられないでしょ?(笑)だけど、それで僕たちにファンが出来たんですよ。聞いてくれる人がいる、って嬉しかった。僕らのファンのことを『Elements』って呼んでいますが、Elementsのために何か伝えたいって気持ちがやっと芽生えてきたんです」
UTA「だから、だいぶ遅咲きなんですよね。でも、だからこそ今の自分たちでしか伝えられない熟成したものを歌っていきたいと思う」
KinYa「僕は両親が台湾人だから、やっぱり日本の学校では生きづらさを感じたりしていました。自分のアイデンティティに迷うことも多かった。その中で、音楽活動をして、やっと自分を認められてアイデンティティを見つけることができたと思っています。さっきも言ったように、本当はネガティブ。だからUTAのポジティブさに助けられている部分は大きい。不思議とバランスが取れてる」
UTA「僕は、悩んでも変わらないことは悩まないっていう性格。それに、KinYaが歌った方が良い結果が出るなら、パートも少なくて構わないんです」
――最近の楽曲では、UTAさんの歌唱の良さを生かす工夫をしている、とお聞きしましたが…。
KinYa「そうなんです、UTAが歌う部分は日本語メインにしたり、UTAの良さを生かすように計算するようになりました」
UTA「昔は単に、パート分けしていただけで。英語の部分はやっぱりKinYaが歌う方が良さが発揮されますしね」
KinYa「昔は違ったよね、ここ歌いたい!ってUTAが先に主張してたもん(笑)」
UTA「そう(笑)いや、自信過剰だったんだよね…でも今はいろんなものを見て、いい意味で自分の実力を知っている。どんな役回りでもいい、MusicElementとしてベストな結果が出れば、僕はどんな役回りでもいいんですよ」
KinYa「ボイスレコーダーで吹き込む方法は自由度が高いんだけど、その分、とんでもない音の高さになっちゃったり(笑)だからma2kさんに後でキーを調整してもらう。常に思いついたらiPhoneのボイスレコーダーに『ツインピークス』の主人公みたいに独り言のように吹き込んでますよ(笑)」
――歌詞作りについても教えて欲しいんですが…。歌詞も主にKinYaさんが制作されているんですよね?
KinYa「『このことを伝えたいな』って思った一文を大切にして、そこから歌詞を膨らませていくことはありますね。例えば『Sunshine』なんですけど。『You make my life so true』っていう一文がキーになっていて…『君は自分の人生に真実味を与えてくれる』っていう意味合いなんですけど。苦しいことも、楽しいことも、大切な人がいたら全てをリアルにしてくれて…生きている意味を感じられるって思って」
――とてもいい歌詞だと思います。「Sunshine」もファンの皆さんにとても人気が高い作品ですよね。
KinYa「実は、以前には提供曲も歌ってみたことがあるけど、まるで違うなって。やっぱり自分たちが思っていることを伝えるからこそ、歌がリアルになりますよね」

4ヶ月連続シングルリリース配信の第3弾「Sunshine」はElementsに人気が高い一曲。中国語バージョンもあり。
今の自分たちだからこそ歌える歌を…もっと多くの人に歌を届けたい
――では、最後に今後の活動目標など教えてください。
UTA「やはり歌い続けていく方法を選択していきたいですね。もっと大きな会場で歌ったりメディアに出たり…多くの人に歌を知ってもらう必要があります。でも、この年齢だからこそ堅実さも身につけたと思うし、不安要素を潰すこともできると思う。その上で、台湾進出なども挑戦していきたいですね」
KinYa「この年齢だからこそ歌える、等身大の歌を作っていきたいです。ロックだろうがジャズだろうが、ジャンル自体は問わなくて。自分たちが伝えたいことが伝われば…Elements、そしてもっと多くの人に伝えるために、今は新曲を作ったり、今後の作戦会議をしているところです。1プロとして日本で基盤をしっかり作ってから、台湾と日本の架け橋として活動できたら…」
Elementsの日々の生活に寄り添い、心を支える歌声は変化を求めて新たな分野に挑戦しても、変わらない温かさがそこにある。二人のEvergreenな歌を聴きに、ライブ会場に足を運んでみてほしい。ライブ情報はツイッター・公式LINEにてチェック!

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