L→R 松尾昭彦(Vo&Ba)、海太(Dr)、オカダコウキ(Gu)

L→R 松尾昭彦(Vo&Ba)、海太(Dr)、オカダコウキ(Gu)

【GENERAL HEAD MOUNTAIN】グシャっ
て刺すことができたなら
クワって入り込んでいけば何か広がる
かもしれない

“次回作が大変なことになってしまう”と、うれしい悩みが飛ぶほどの出来映えに仕上がったメジャーデビューアルバム。GENERAL HEAD MOUNTAINの中枢を担う松尾昭彦(Vo&Ba)が己をさらけ出すことで辿り着いた本作について、話を訊いた!
取材:ジャガー

待望のメジャーデビューアルバムとなるわけですが、前作シングル「羽」からの流れを受けてビジョンを膨らませたのですか?

それが話はもっと前まで遡るんです。2009年秋のメジャーデビューが決定した時に、残された時間で次の何かを見つけないとデビューしたところでアルバムに届かないからどうしようかと。インディーズで出した1stフルアルバム『月かなしブルー』は、若さとか叫びだけで成立しちゃったから、それ以上の表現を探さなくちゃいけなかった。で、とりあえず聴く人の心に刺さらないことには何も始まらないので、刺すことを追求して『木漏れ日にツキル』(09年6月発売のミニアルバム)が完成したんですね。それで『本編にこそ、木漏れ日はツキル』っていう全国ツアーに出ました。

そのツアーで得たものが本作に活かされたと?

いや、ツアーが終わって何があったかって問われると何もなかったんですよ。グシャって刺した感触だけしかなくて。そこからまたどうしようかと考えて、刺すことができたならクワって入り込んでいけば何か広がるかもしれないという答えになり、次に何を入れるのかを探して辿り着いたのが、人肌ぐらいの体温が気持ちいいねってことで。それをどう書くかまできて、ようやく“自分ですか!?”ってことに気付いて、『羽』を書くことになるんですけど。だから、『羽』にはまだ刺してる感覚が残ってるんですよね。で、『傘』という曲で完全に感覚を掴んで、歌詞とは関係ないけど“素晴らしい答えだ”って一文で終わったんです。そこから今回のアルバムへとドワーッと流れていきました。

本作の第一印象、意外性もあったのですが新鮮さが嫌じゃなかったですね。やはり段階を踏んでここまで来てるから基本の骨組みがしっかりしてますし、そのための筋力を増強してきたんだなって。

新しいことをするために細心の注意は払いましたよ。僕が一番ジェネ(GENERAL HEAD MOUNTAIN)のこと好きだから、仮に微妙なズレがあったとしたら一番に僕が気付きます。

1曲目「花にカルテット」は、本作への期待を高ぶらせるものでした。

こいつにはふたつの役割があって。最初はゆっくりと幕開けを告げる。次は、最後の『深まる日々に、微笑みを。』まで聴いて戻ってきた時に花が満開に咲いた状態で2周目へとつなげてくれるという。僕が作ったわけではないですけど、これまでにもバラードのアレンジやピアノを弾いてくれている方に“暗いマーチを作ってくれ”とお願いをして、イメージ以上のものができてきました。

そこから「青」への流れがいいですね。

アルバムの最後に作った曲なんですけど、曲がある程度出揃ったところで出発の歌がないなと思って。旅立ちというか、前に進もうとういうテーマのもと書きました。アルバム全体のバランスを見ながらも一番に考えたことは開けてること。青くて恥ずかしいことも書いてみるかって。

せっかく自分を出すわけですからね。

どうしても隠そうとしてしまうんですけど、極力自分を書きました。丸いものをより綺麗に見えるように丸くした部分はあるから9割の自分ですね。でも、9割脱いでたら捕まるじゃないですか。そういう意味では、ほぼ全裸です。

日常で9割脱ぐのは困ります(笑)。今までも温かみは感じましたが、周りで温められていたのが、今回は手を取って直接温めてもらっているような。温もりを感じる距離が縮まっているように思いました。

自分で作っていることだから、それは僕には分からないですけど。ありがとうございます。

当初から大きく化けた楽曲というのはありました?

『感情線』『逆鱗』『感染』…結構ありますね。

「感情線」には驚かされましたね。流行のフレーズを使っているんだなっていうのは分かるんですど、まるっきり別モノになっていて。

僕なりにぶっ壊してみました。“こっちの方がカッコ良いだろ? これだったら反応するよ”って。とりあえず、アコギで曲を作って、歌詞を乗せて、そこから楽曲の持つ心拍数を考えるんです。この曲はドキドキしているのか、そのドキドキは走り終わった後のものなのかって具合に。だから、ジェネの曲は聴いててドキドキするんですよね、自分で作ったくせにウワーッとなる。作る苦労はいっぱいしますけど、苦痛ではないし、ストレスも感じません。作るのが好きなんだなって改めて思いましたね。今回は『逆鱗』で肉体的に追い込んだりしましたけど。

と、いうのは?

本気で怒るってあまりなくて。でも、そういう曲がアルバムに欲しくて“意図的に爆発するにはどうすればいいんだろう?”と。怒りには罪悪感もあるので、怒るのが無理なら罪悪感は何だと考えた結果が二日酔いでした。理由も分からない、何とも言えないあの罪悪感のために二日酔いで書きました。何なんですかね、あの罪悪感は。

適量だったはずだし、あんなに楽しかったのに(笑)。

そうなんです。及び、記憶が飛んでいるっていう。そこでドカーンと意図的に爆発することができたんで、まだいけるって。ギターに関しては、多めにパターンを変えて見せてくれたり、ドラムは上手くなってるし。彼はリズムが独特なので、あの叩き方だから僕の変な符割の速さでも歌が乗るんでしょうね。ふたりが良さを引き出してくれました。今後につながる作品ですね、これは。

アルバムタイトルにもなっている『深まる日々に、微笑みを。』には、自分を中心にいろんなメッセージが素直に描かれているなと。

もともと世に出すつもりはなかったので、こっぱずかしい曲です。アコギで曲作りをしているので、それだけで成立しちゃう曲もあって。そういう曲は後に自分ひとりだけで楽しもうと取ってたりしてるんですけど…その中の筆頭がこいつで。素晴らしい曲だったんで、人に聴かせずにニヤニヤだったんですけど、アルバムの大きなテーマを探している最中に“隠し球を持って何が全裸だ!”ということに気付いてしまい、仕方がなくリリースです。でも、これを出すことが今回のアルバムの肝だなと思います。

この後に行なわれるライヴも、きっと大きく変わるのでしょうね。

変わるでしょうね、そういうアルバムを作ったから。今回は本当にナイスバッティングだと思います。ちゃんと狙った方向に飛んでますし。今までも狙ってはいたし、飛んでもいたんですけど、ちょっとこっちだったかなっていう微調整が必要な部分もあって。だいたい予想通りっていう感じだったのが、ギリギリまでどうなるか分からないまま振ったらちゃんと前に飛んだという。だから、次回作が絶対大変ですよ。ここまで自分を書いたんですからね。
GENERAL HEAD MOUNTAIN プロフィール

00年に、松尾昭彦(vo&ba)を中心に宮崎で結成されたGENERAL HEAD MOUNTAIN。03年5月に、現在のメンバーであるオカダコウキ(g)と海太(dr)が加入し、本格的なライヴ活動をスタート。独特の雰囲気と3ピースとは思えない迫力のあるライヴに定評があり、全国のライヴハウスからブッキング依頼が絶えない。激しく突き刺さるパンクでエモーショナルな楽曲とシンプルでストレートな歌詞が印象的なバラード、この両方を併せ持った世界観が人気の彼らは、宮崎を拠点に年間100本近いライヴを行っている。「独特な世界観」と言われているが、本人達は自覚がない上に、誉められているのか貶されているのか分からないまま、現在に至る。

05年4月に1stミニ・アルバム『追憶の唄々』をリリース後、全国53ヶ所にも渡るライヴ・ツアーを敢行。定期的にライヴ・ツアーを行うなか、2ndミニ・アルバム『鎌高在叙情の唄々』(06年5月)、1stフル・アルバム『月かなしブルー』(08年6月)、3rdミニ・アルバム『木漏れ日にツキル』(09年6月)を発表。『月かなしブルー』では椎名林檎「罪と罰」の大胆カヴァーで話題を呼び各方面で高い評価を得た。『木漏れ日にツキル』を引っさげて行われた全国ツアー『本編にこそ、木漏れ日はツキル』では、全国各地でソールドアウトが続出。オーディエンスの心にも深い爪痕と興奮をもたらした。

09年11月には、満を持して<コロムビアミュージック>よりシングル「羽」でメジャー・デビューを飾る。本作がテレビ東京系『やりすぎコージー』エンディング・テーマに起用され、着実に知名度を上げていった。そんな中、10年1月にメジャー1stアルバム『深まる日々に、微笑みを』を発表。身体を揺さぶり、心を抉り、その傷口を優しく癒してくれる全11篇は、一つの映画を観賞しているかの様な気分にさせてくれる、叙情感溢れる名曲達がずらりと顔を揃えた。

同年11月には、早くもメジャー2ndアルバム『バタフライエフェクト』をリリース。全体のテーマを設定せずに制作するという“当たり前”に初めてチャレンジした本作には、彼らの新たな方向性が垣間見える秀逸曲が収録された。11年1月12日、翌々日から開催される全国ツアー『音楽家とバタフライ』を以って、突然の解散を発表。公式サイトには、「完成、解散、青い空。」と非常に短いコメントがメンバーより寄せられており、この解散を「完成」と表現。GHMらしい言葉で約11年の活動に終止符を打つ。GENERAL HEAD MOUNTAINオフィシャルサイト
公式サイト(レーベル)

OKMusic編集部

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