【T.M.Revolution】既存のT.M.R.に依
存する気はない!

4月にリリースした6年振りのアルバム『CLOUD NINE』を携えて全国ツアーを敢行中のT.M.Revolutionが、映画『戦国BASARA劇場版』オープニングテーマ「FLAGS」を収録したシングルをリリース。デビュー15周年を迎え、新たなステージに立ったT.M.R.の今後を示唆する重要な一枚だ。
取材:榑林史章

新たなビジョンを創造するT.M.R.新章の
始まり

新曲「FLAGS」、カッコ良いですね。5月22日の府中・森芸術劇場で聴かせていただきました。

ありがとうございます。あの日が初披露だったんです。

なぜ、あの日に初披露しようと?

リリースのちょうど1カ月前だったから。それ以上に何か大きな理由があったわけではないですけど、何か?(笑)

観客の反応はどのように感じましたか?

新曲をライヴで初披露するのは、これまでも何度かありましたが、たいてい“新曲です!”って言うとウワ~って盛り上がって、曲に入るとみんな聴き入ってしまうんです。気持ちは高ぶっているのに、アップテンポでも全体像としてはしんみりした感じになることが多くて。でも、今回は“あれ? この曲もうみんな知っていたんだっけ?”と思うくらい盛り上がってくれて。だから、ちょっと不思議な感じでもありましたね。

ド頭からサビで、あの派手なビートでガツンと来たら、盛り上がらずにはいられないです。“キターー!”ってなりますよ。

そうですか。いや、そうだとしたら嬉しいですね。

「FLAGS」は『戦国BASARA劇場版』オープニングテーマであり、今回の『戦国BASARA』は関ヶ原の合戦が舞台ですね。

天下分け目ですからね。その天下分け目というのは、時代の中で新たな物語のスタートであったと思うんです。今回『戦国BASARA』というシリーズとしても、ゲームから派生したものが独自に大きな節目を迎えるわけで。それをT.M.Revolution(以下、T.M.R.)に置き換えて考えると、15周年という意味合いの部分では、次の20周年に向けての大きなカウントダウンが始まるわけだし。オリジナルアルバムのリリースがなかった6年間をパッケージしたアルバム『CLOUD NINE』を出したことは、次のアクションに向けてのひとつの節目というか。だから、ある意味では禊(みそ)ぎ的なものが終わって、新たな気持ちでスタートを切ると…新章の始まりのような気持ちでいます。

心機一転ですか?

今まで培ってきたキャラクターやイメージも含めて、T.M.R.とはこういう音をやるものだというものは一旦置いといて、そこから新たなものを創造していくことに臆さないというか、もっと貪欲にやっていくことも必要なのではないかと思っているわけです。だから、既存のT.M.R.像に依存する気はないし、新たなイメージとかビジョンをファンのみんなと一緒に創造していけたらと思っています。今ツアーを回っていて、そういう気持ちがどんどん強くなっていますね。そういう意味で言うと、今回のシングルは新たな宣誓とか、宣言みたいな気持ちもすごく込められていると思いますね。

ビデオクリップもすごくカッコ良くて。西川さんの黒の軍団VS白の軍団が、闘うみたいな。

最終的に敵をも取り込んで広がっていくみたいな。T.M.R.の今の精神性が、映像として分かりやすいと思います。

ダンスシーンでは、すごく踊っていますよね。大勢でビシッと揃ったダンスを観せるのは、ジャネット・ジャクソンの「Rhythm Nation」のような雰囲気もありました(笑)。

音が全然違うし、そんなたいそうなものじゃないですよ(笑)。でも、それをやっているのが面白いと思うんです。印象的な振り付けと楽曲、存在感がマッチしていると思うし。まさに、新たなT.M.R.像を象徴しているシーンだと思います。

『戦国BASARA劇場版』だから和とか侍かと思ったら、すごくSFチックな作りで。

タイアップ作品というものを多いに利用して、自分のやりたいことや自分の主張を伝えていくのが、僕のやり方です。いわゆる主題歌とか、いわゆるアニメソングではなく、ひとつの楽曲として受け取ってもらえるものとして制作するという部分は、常々大事にしてきていますからね。

T.M.R.としては、『戦国BASARA』のタイアップは今回で4度目ですが、同じシリーズで主題歌を作るのは大変ではないですか?

プレッシャーはあります。やらせていただく度に関係が深くなるので、その分思い入れも強くなっていきますけど。やはり毎回がクライマックスみたいな気持ちで常に出し切っていますから、“次はどうしよう?”というところは毎回悩みますよね。でも、逆にこちらから提示した楽曲に影響を受けて絵が変わったり、それを受けて僕側の次に打つ手が変わったりとかもあって。長くやればやるほど、そういうやりとりというか、ラリーができるようになるので、その点での面白さはありますね。

今回、先方から曲に対して何か注文はありましたか?

オープニングの『FLAGS』に関してはこれまで通り、むしろ思うように作っていただければとおっしゃっていただいて。ただ、エンディングに関しては…サブタイトルが“The Last Party”ですから。“Last”と銘打つなら大団円にするとか、いろいろな考え方がある中で、でも、まだまだ終わらないんだぞ、みたいなニュアンスもあるわけで。今後に期待してもらえるような締め括り方という部分で、そこに対する先方のこだわりはすごく強かったです。だから、エンディングの『The party must go on』に関しては、当初作っていたデモから2~3度テンポ感を改訂したし、構成やオケのバランス、歌詞に対して、結構強いリクエストがありました。

ツアーは一緒にライヴを作るくらいの気
持ちで

そのカップリング曲「The party must go on」は、トランスとかハウスとかの雰囲気でパラパラを踊っちゃいそうですね(笑)。

ある意味で、こういうことなんですよ。こういう90年代的なオケもやれてしまうというのが、今のT.M.R.。時代とかジャンルとかの枠組みは関係ないというか。

そういったものを凌駕して、さらにカッコ良く聴かせられる!

カッコ良いと思ってくれれば嬉しいですね。僕としては、観たり、聴いたりしてくれた人がこれは面白い!と思ってくれるだけで本望ですから。

“party”という部分がテーマとしてあったがゆえに、こういうサウンド作りになったのですか?

さっきも話した通り、『戦国BASARA劇場版』のサブタイトルが“The Last Party”ですから。今回のエンディングは、踊れるものとかダンスというキーワードが先方から提示されていたんです。それに『戦国BASARA』アニメ第一期のオープニングをabingdon boys schoolでやらせてもらった時の『JAP』という曲が、非常にダンサブルで支持してくれた方も多くて、そのイメージが強く残っていたようですね。それで今回改めて、T.M.R.におけるダンスとは何か?を考えたんです。90年代と言えばクラブではなく大箱のディスコが全盛の時代で、そんな時代に生まれたのがT.M.R.というプロジェクトだから。そこは切っても切り離せないものがある。で、どうせやるなら中途半端なものを作るよりは、やり切ってしまおうっていう判断でしたね。

90年代ディスコサウンドに現代的な解釈を加え、T.M.R.のフィルターを通すと、こういうサウンドになるわけですね。

こういう音を堂々とやれるのが、今のT.M.R.の面白さの一面だと思うんです。まさか、この時代に90年代のディスコサウンドを掘り起こすとは想像しないじゃないですか。そういう部分で、今後T.M.R.がどんな音やアプローチをしていくのかということに対して、まったく臆病さはない、ということが伝わったら良いなと思いますね。何をやっても僕が歌っていればOKでしょというところにT.M.R.は来ていると思うので。

この曲は、ツアーではやらないのですか?

まだやらないですけど。今後はやっていくと思いますね。

みんなで合いの手の“フォー”を叫ぶんでしょうね。

きっと、うるさいよね(笑)

新しい流れができそうですけど。

できるのかな? まぁ、でも、ライヴではまた全然違ったものになると思うんで。

そのツアーですが、ライティングとかセットがものすごくシンプルで驚きました。ここまでやるか!というくらい。

日本を取り巻く今の情勢の中でツアーを敢行するという部分で、ともするとエンターテインメントというもののあり方そのものが問い正される状況でもあると思うんです。そこで自分はどういうものを持ってやり続けていくのかということが、伝わらないといけないと思ったのがひとつ。今回、神戸からスタートしたのも、復興したという言葉を安易に使ってほしくないという神戸の方もいらっしゃいますが、実際に16年経ってあの状況からここまで生活を取り戻せた力強さを神戸からもらって、それを全国に届けていこうという大きな意志で始めたツアーでもありますから。それが観てもらった人に伝われば良いなと。

なるほど。

当初の演出を貫くやり方もありましたが、『STAND UP! JAPAN』というチャリティー・プロジェクトを主催している人間として、最大限の配慮をした上でツアーを行なうべきだなと。そうやってできたのが、ご覧になっていただいたかたちなんです。

でも、あれはあれでめちゃめちゃカッコ良かったです。ライティングや演出が最小限に抑えられていたことで、純粋に音に集中することができました。。

そう言っていただけたら嬉しいです。でも、ぶっちゃけあそこまでシンプルなステージは、デビュー前もデビュー後もやったことなかったから、最初は少し不安もあったんです。

バンド感がより伝わってきました。その点で、音とか選曲も少し考えたのかなと。

プレイしている楽曲自体は、僕が当初考えていたプランとそう違いはないです。とは言っても、アルバムを携えたツアーなので、その楽曲を盛り込んでいくだけでほぼ隙間ない状態ですし。だって全18曲入りというかたちで構成していたアルバムですから。ただ、アレンジとか演出込みでスケール感を出していた楽曲に関しては、よりコンパクトなかたちで、演奏で聴かせていくというものになりましたね。

本当だったら巨大ビジョンを使ったり、爆発したりとかの演出もあったんでしょうけど。

今回そういうものは、一切期待しないでください(笑)

そこで大きいのは、今までの派手なライヴを観て来たお客さんが、どういう反応を示してくれているかということですね。

“どんなすごいものを観せてくれるの?”というよりは、一緒にライヴを作るくらいの気持ちで足を運んでいただけると嬉しいです。今ツアーを行なっていて、何年か振りに訪れる会場や初めてうかがう場所も多くて。しかも、オリジナルアルバムを引っ提げてのツアーという面もあって、僕自身すごく新鮮なものに感じています。お客さんにしても、初めて観に来たという人もいれば、T.M.R.はずっと好きだったけどライヴには初めて来たという人もいますし。そういう部分でも、新鮮な気持ちで観に来ていただけたらと思いますね。
「FLAGS」2011年06月22日発売Epic Records Japan
    • 【初回生産限定盤(DVD付)】
    • ESCL-3701〜2 1575円
    • 【通常盤】
    • ESCL-3703 1020円
T.M.Revolution プロフィール

ティーエムレボリューション:1970年滋賀県生まれ。西川貴教によるソロプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁 -monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲や完成度の高いステージ、圧倒的なライヴパフォーマンスで人気を集め、数々のヒット曲を連発する。近年では、故郷・滋賀県から初代滋賀ふるさと観光大使に任命され、滋賀県初となる大型野外ロックフェス『イナズマロック フェス』を主催するなど活動の幅を広げている。T.M.Revolution オフィシャルHP
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