【木村カエラ】“いくぞ!”という今
の気持ちがそのまま入っている
揺れ動くことなく真っ直ぐに やりたい
ことを描いて表現したい
今回のアルバムのタイトルは“MIETA”。タイトルの由来についてカエラはこう説明する。
「アルバムのタイトルもポジティブな言葉がいいなって思って。打ち合わせとかしてる時も、よく“見えた!”って使うじゃないですか。想像の世界でこれはいいっていう時に使う言葉だし、10周年を迎えたことで、これまで見えなかったものが見えた時のスッキリ感を表したかった」
“知りたい”“理解したい”と近づかなければ、見えてはこない。“見よう”としなければ、“見えた!”という感動はないだろう。彼女は自分の信じるものから目を背けず、自分の腑に落ちるまでしっかり見つめる。それは歌詞の端々から感じ取ることができる。
まずタイトル曲の「MIETA」には《あー 今までの自分はひたすら逃げてた》と歌う一節があり、人と向き合うことの大切さを教えてくれる。
木村カエラ
「(「MIETA」の)歌詞は、人との出会いによって自分自身の何かが変わるっていう内容になってる。ひとりだと何も分からない、人がいるからこそ分かることがいっぱいあって。ひとりで何かをやろうとしても絶対にできないし、人がいなければ痛みもなければ喜びもない気がしてて。人がいるから悲しいし、嬉しいし。人がいて初めて自分が変わっていけるっていうことに目を向けるだけでまったく違うなって思って」
9曲目のバラード「Wake up」の中で描かれる“見えた”は、失ってから分かるほろ苦い“見えた”のかたちを描いている。彼女はこの曲に関して次のように述べている。
木村カエラ
「恋愛だけではなく、一緒に過ごしてた時は分からなかったことだけど、離れてようやく分かることがたくさんあって、今の自分というものをしっかりと感じつつも、自分の中からから沸き上がってきた感情を思い出したことで、前には気付けなかったことに気付いて、これからもっと強く生きていかなきゃって思えた時の歌」
見過ごしていた過去を後悔するのではなく、“もっと強く生きていかなきゃ”と、前向きな捉え方が彼女らしい。《晴れ間ののぞく空はあなたのいる場所へと 連れて行ってくれそうな水色》と言葉を紡ぐように歌う彼女のヴォーカルを聴いていると、深い愛情で満たされていくのを感じる。
ラストを飾る「eye」は、静かなラブソング。言葉数は決して多くない。しかし、この曲で描いている“見えた”は、彼女の感性が遺憾なく発揮されていた。
木村カエラ
「いわゆるふたつの目と心の目で見るものの違いと、目を見た瞬間に、その人の心が見えるっていうことを書いている。ふたつの目だけで世の中を見ていると、憎しみとか、恨みとか、いろんなものが見えてきて、心の目が閉ざされる気がする。そうじゃなく、“うわ、この人の目、すごくきれいだな”って思った時のまま、その人の中に入っていきたいっていう思い。恋をした時って、相手のきれいな瞳に吸い込まれて、自分の中で何も音が聴こえなくなって、寂しさや悲しさが埋まる瞬間があるでしょ」
…と、恋に落ちた瞬間の喜びをとらえ、《綺麗な瞳 心奪われた 美しい 脈うつ鼓動は 僕のむなしさをうめた》という言葉の中で表現している。この短いワードに人を愛する劇的な時間が全て詰まっていて、最後の最後まで聴き手の心を揺さぶり続ける作品となった。
そして、本アルバムが完成し、10周年を迎えて木村カエラ自身が“見えた”ことは、ロックとポップを突き詰める自分のスタイルを追求し、表現することだという。
木村カエラ
「最強だっていうモードに入れてる時って、何かを気にして中途半端なものを作るっていうことをしないし、誰に何を思われようと関係ない!って思ったのね。“もう、ついてきて!”みたいなモードに入れたから、揺れ動くことなく真っ直ぐに、自分の頭の中で自分のやりたいことを描いて、ちゃんと表現しないと駄目だなって思ったっていうのが、もうひとつの“見えた”かな」
この一枚を通してひとつ突き抜けたという木村カエラは、2015年3月から5年振りとなるライヴハウスツアーを行なう。
木村カエラ
「自分が大好きなライヴハウスで、お客さんと触れるくらいの距離でライヴができる。オラオラ感が増すから、きっと自分の勢いがもっと増すはず。そうなった時に、もっと楽しくなるだろうなって思ってて。行けないところに行けるのも嬉しいし、私のライヴを観たことがない人にライヴを観せることができるのも楽しみ」
と期待を語る。…そんな彼女が放つポジティブなパワーをぜひ生で体感してほしい。
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