【シシド・カフカ】何が起こるか分か
らないセッションは、インプットとア
ウトプットの繰り返し

現場で柔軟性を持っていられたのは 女
優の経験があったからこそ

「くだらない世の中 feat.常磐道ズ」は歌謡ロックみたいな悪っぽいカッコ良さとキャッチーさを兼ね備えたナンバーですね。この曲でセッションしているのは、TOKYO NO.1 SOUL SETの渡辺俊美さんとBRAHMANのTOSHI-LOWさんによる常磐道ズというユニットだそうで(笑)。

きっと、この曲が今までのシシド・カフカのイメージに近いんじゃないかな。疾走感があって、俊美さんのやわらかい物腰からは想像できない、斬るような視点の言葉が紡ぎ出されているのが面白いですね。私のプロフィールを見て、山口百恵さんが好きだというところに興味を持ってくださっていたので、そういうテイストも入っていると思います。実はこの歌詞はスマホの歌なんですって。電車に乗っていると、みんな俯いてスマホをいじっているじゃないですか。それを子供が見上げて笑っているという歌だそうです。

言われてみれば!? でも、分からないですよ(苦笑)。

私も言われるまで分からなかったです(笑)。まぁ、それを切り口に歌詞が広がっているんですけど…。スマホを持つと入ってくる情報量が多くなるじゃないですか。その中で本当に大切な情報を見落とすのは嫌だなって。そういう意味では、この歌詞は共感しました。

そして、YO-KINGさんとの「あの夏、君が見てたモノ feat.YO-KING」は、昔懐かしい60年代のテイストですね。

GSサウンドです。YO-KINGさんは真心ブラザーズをフェスで観たことがあるんですけど、バンドに女声コーラスが何人も入っていて、すごく楽しいステージという印象でした。なので今回、YO-KINGさんからどういう感じがいいか訊かれた時に、“楽しい感じがいいです”とリクエストしたら、この曲が上がってきました。包容力がある印象ですね。ミュージシャンそれぞれの特性を理解した上で、それを上手にまとめ上げている感じ。しかも、楽しく。YO-KINGさんの大きな器の中で、どっぷり楽しませていただきました。要所要所に、“朴訥”や“イノセント”とかのキーワードを置いていってくれるので、それを頼りに想像力を広げてレコーディングしていった感じです。指示も細かくはなく、“ここは海辺の感じで”とか、そういう情景で指示を与えてくれるのは面白かったですね。

ディレクションというか、指示もアーティストそれぞれの個性が出ていたんでしょうね。

ほんとそうです。フレーズのことを細かく言ってくださる方もいれば、どうぞやってくださいと自由にやらせてくれる方もいて。俊美さんの曲は、気が済むまでどうぞという感じだったので、自分で納得がいくまで何度も歌わせていただきました。あまりに何度も歌ったので少しご迷惑をかけてしまったかもですけど…。和義さんは指示は多くなかったけど、“ここのスネアを抜いてみましょうか”とか、ひとつひとつが的確でした。歌もリズムをちょっとだけ後ろにずらすと、はまりがいいという指示があって。でも、あまりに微妙で最初はパッと分からなくて、持ち帰って練習したんです。

あと、ボーナストラックには、「Don’t be love(Piano Ver.)-arranged by 大橋トリオ」の大橋トリオさんのピアノバージョンが収録されているのですが、ドラムを叩かずにピアノと歌だけというのは初めてですね。

そうなんです。しかも、ジャズピアノに合わせるという。ドラマ側からの提案で録ったバージョンで、大橋さんはニューヨークでレコーディングしていらしたので、実はまだお会いしてないんです。でも、息の吸い方ひとつで変わってしまうほど繊細なテンポ感や曲調だったので、神経を張り巡らせて歌いました。あと、1曲目の「theme-performed by シシド・カフカ」はアコギとドラムとベースに、ちょっと打ち込みも入っていて。これは完全にうちのチームでレコーディングした、出囃子みたいな(笑)。“楽しいショーが始まりますよ!”っていう。ライヴのオープニングの景気付けとか、途中でインパクトを足すのにぴったりなので、すでにライヴでお馴染みになっています。

そんな全7曲はカフカさんの新しい扉を開けてくれた喜びがあったと同時に、セッションしたアーティストのやり方やスタイルに、その都度対応しないといけないということで、それはそれできっと結構大変でしたよね。

もう、何が起こるか分からなくて。録り方もそれぞれで違うし。時間があまりなく準備もままならない中で、現場に入って一緒に音を作っていく…インプットとアウトプットをこんな短期間にものすごい速度で繰り返したのは、本当に初めてのことでした。でも、そうしてこういう作品を完成させることができたのは、みなさんの協力もあってのことですけど、自分の自信にもつながりましたね。

ここ半年ほどは女優業だったので、その鬱憤も晴らせたのでは?(笑)

そうですね、そのわりにはハードワークでしたけど(笑)。でも、女優の時は台詞を覚えて相手のタイミングや、こう来たらこうしてとか何度もシミュレーションをして、万全の準備をして撮影現場に入ったら、まったく違っていたということが多々あって。みんな予想と違う動きをするし、監督もそこはコーヒーじゃなくて紅茶だよとか、違うことを言うんですね。台本通りということがほとんどないので、主軸となる部分だけを持って、あとは現場で対応できる柔軟性を持っていないといけなかったんですね。今回のレコーディングでも、現場で必要なものをその場で食べて、すぐアウトプットすることができたのは、まさに女優の経験があったからこそだと思います。

選択肢を用意していって、現場で必要なものをチョイスする能力が養われた、と。ちなみに今後も女優を?

それは分かりません。怖い女の役をやって、次はゾンビですから…これ以上に面白い役でないとやる意味がないと思うので。パンチの効いた役柄であれば考えますけど(笑)。
『K⁵(Kの累乗)』2015年06月17日発売avex
    • 【CD+DVD】
    • AVCD-93151/B 3024円
    • ※初回限定:紙ジャケット仕様
    • 【CD】
    • AVCD-93152 1944円
    • ※初回限定・紙ジャケット仕様
シシド・カフカ プロフィール

シシド・カフカ:メキシコ出身。ドラムヴォーカルのスタイルで2012年「愛する覚悟」でCDデビュー。13年9月に1stアルバム「カフカナイズ」発売。フジテレビ『新・堂本兄弟』『ファーストクラス』への出演や、『PRETZ』『SONY WALKMAN®』『Levis®』などのテレビCMでも話題に。15年6月にはセッションミニアルバム『K⁵(Kの累乗)』をリリース。各フェスへの出演の他、女優、モデルなど、多方面で活躍中!シシド・カフカ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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