木村カエラの『Ring a Ding Dong』に
表れる「ボク」と「ママ」の関係

タイトルは「鐘をゴンゴン鳴らす」意味。携帯が鳴る音を表現しているんですね。リズミカルに歌う「ring a ding dong」のフレーズが印象的です。曲のメロディが覚えやすく、インパクトがあるので、人気アニメ『銀魂』でもパロディが作られました。YouTubeの公式MVにも『銀魂』からきたというコメントが並びます。それほど影響力があった曲。



印象的なサビフレーズ後の最初の歌いだしは、「なんで」「あめ」「はれ」「さして」「あがれ」の音の連なりが登場。同時に「はれだよ」「おきにいりの」「ボクの」「あげるよ」でもリズムを作っています。サビ以外も非常にリズミカルな曲。木村カエラのリズム感があるからこそ成り立っている曲です。歌詞の内容は、「ボク」が「君」に対して傘を差しだすというもの。「涙もあがれ」という歌詞から分かるとおり、「雨」は「涙」の象徴です。

1番は「分け合う」歌詞。自分の心が晴れ晴れしている状態なら、泣いている人に手を差し伸べる。喜びも悲しみも分け合う。そういう内容です。この曲が人の心をとらえるのは、こうした悲しみにも言及しているからでしょう。そして「みんな 分け合うよ」の歌詞の後は、同じメロディで「ドレミファミレド」と歌います。あくまでもさらっと流して「音」の響きの楽しさを前面に押し出す構成。だからこの曲は、押しつけがましさがないんですね。



2番の歌詞は「ありがと」が印象的です。「君がいつもくれる言葉」として「ありがと」が登場。ここからから「ボクもちゃんと言えるよ」をはさんで「いつもありがと」と再びこの「ありがと」が繰り返されます。この2段階構成と、さらに直後に「幸せとまれ」と歌っていることで「ありがと」の感情が増幅されるんですね。2番はこの後に「かわりは いないよ」としてしめます。「ありがと」という当たり前の言葉でも発する人に代わりはいないのです。2番は、「ボク」が「ママ」に対して語りかける歌詞。この代わりがいない「ボク」と「ママ」は誰を指すのでしょうか。



ここで眠りに入り、夢を見る展開に突入します。夢の中でファンファーレが鳴り響き、小鳥や花が歌いだす内容。さらに「ボク」も歌いだします。その勢いのまま目覚めて、「おはよう」と挨拶。「ボク」の目覚めを描いているこのフレーズ。そして「目覚め」は、誕生のメタファーでもあります。

くしくも木村カエラは、この曲の発表後、2010年10月に第一子である男の子を出産しました。この曲の歌詞の「ママ」と「ボク」が、まさにカエラ自身と息子のようになっているんですね。木村カエラの歌声とリズム感で成り立っているこの曲。

『Ring a Ding Dong』は、誕生してきたわが子を祝福する歌にもなっているのです。



TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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