なぜ先生はモーニング娘。の応援を続
けたのか:杉作J太郎「美しさ勉強講座
」連載29

軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太郎先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」

29時限目・なぜ先生はモーニング娘。の
応援を続けたのか

 モーニング娘。の応援をやめるわけにいかない理由として、

「仲間も、ともだちもいるので」

 と、答えたら社長は、

「そうだったの!」

 軽く驚いた。

 そして言った。

「じゃあしょうがないですね」

 えっ?

 俺は肩透かしをくった感じだった。

 こんなに簡単におさまる話だったのだろうか。なにか話がおかしくなっているのではないだうか。もしかして、と思っていたら社長が話し始めた。

「じゃあコンサートの終わった後に、あのあたりがよかったよとか教えてあげたりするんですね」

 社長は勘違いしたのだ。俺の言葉がたりなかったのだ。仲間やともだちがいるからやめられない、という、その「仲間」「ともだち」をモーニング娘。のメンバーと誤解したのだ。つまり、「後藤真希」や「加護亜依」が俺と友人関係にあると思ったのだ。だから応援をやめるわけにはいかないのだ。そう理解したようであった。

 ま、ここで俺も、

「そうなんですよ。わかってくれたらいいです」

 と言うほど馬鹿ではない。そんな嘘はすぐにばれる。年長者の勘違いを訂正するのも勇気がいるが俺はその勇気を振り絞った。

「違いますよ。ともだちというのは男です。応援している側です。観客に仲間やともだちがたくさんいるんです。だから急にはやめられないんです」

 俺は言った。

 最後までちゃんと喋る前に、かぶり気味に社長は言った。

「……やめるわけにはいきませんか」

 懇願するような声にも聞こえた。

 

 そんなことがあった。

 その頃の話である。

 長野でコンサートがあり、俺はその「仲間」の誰かと電車で長野まで行き、長野でさらに多くの「仲間」と合流した。

 せっかくの休みに。

 年端も行かない子供みたいな女の子たちのコンサートを見に来ている男たち。そんなにその女の子たちが好きなのかと言う答としてズバリではないかもしれないが言っておかねばならないことがある。

 コンサート会場は広くて大きい。もし見えたとしても百メートル向こうである。野球場の外野席から打者を見る感じである。もっと遠いかもしれない。この遠い距離に遮断物がある。人間の後頭部、さらには胴体である。

 満員の観客席には最初から最後までピョンピョン跳びはねながらぐるぐる回転している奴がいるのだ。たくさんいるのだ。この跳びはねる高さがかなりある。ジャンプ一番、三塁線に飛んだライナーを三塁手がスーパーキャッチすることがあるが、あのジャンプに負けてない。そんな奴が前方に数名いたらステージはもう一切見えない。大型ビジョンが用意されていたりもするが、同じ理由でそれもまったく見えない。つまり、わざわざコンサートに出かけても、肉眼で拝んで帰るのは男たちの顔と後頭部と胴体と会場の天井なのである。

 それがいやだったら行かなければいいのだ。DVDでも買って、家でゆっくり見れば女の子たちの顔も見られる、表情もわかる、声も聴ける。それでいい。事実、アイドルファンの中にはそんな人もたくさんいるはずだ。

 後藤真希、加護亜依を応援したいと思った気持ち。それは本当のことである。だらだらと、自分さえよければと思って生きるわけにいかない、硬派の心がその気持ちを支えた。このあたり、わからない連中には何万時間説明してもわかってはもらえない。

 コンサート会場で知り合った男たち。

 結局、そいつらと話して、そいつらの顔を見て。そして帰る。それでよかった。というか、それがもう最高に面白かったのだ。これもわからない連中には何万時間説明してもわかってはもらえないだろうが、ま、いい。

 そいつらの中のひとりは仕事で取り返しのつかないミスを犯し、なにもかも失った。離婚して一人暮らしするうちにモーニング娘。にハマった。ある日、火事になり、なにもかも燃えたがモーニング娘。のグッズ類が燃え残った。涙が出たと言う。俺もそんな「そいつら」のひとりだった。

 のちにそこで知り合った男たちと映画を作った。「任侠秘録人間狩り」「怪奇幽霊スナック殴り込み」。

 男の墓場プロダクションの誕生である。ま、それは後の話。

 話は長野のコンサートだ。

 そのときの話をしていたのだ。

 長くなった。以下、次回だね。

(つづく)

<隔週金曜連載>

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【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう  
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める男の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。

おすすめ本:Jさん&豪さんの世相を斬る!(残侠風雲編)@ロフトプラスワン(ロフトブックス)
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