亀田誠治と布袋寅泰が“J-POPギター”の魅力を解説 『亀田音楽専門学校 SEASON 2』スタート
(参考:山口百恵の曲はなぜ“ツンデレ”? 亀田誠治×槇原敬之が名曲「プレイバック」を分析)
この番組は亀田が校長、中村慶子アナウンサーが助手を務め、毎回様々なアーティストがゲスト講師として出演する音楽教養番組。第1回のテーマは「J-POP ギター学〜主役編〜」で、ゲストには布袋寅泰が出演した。
・『イントロ』で活躍するギター
冒頭、亀田は「J-POPの主役はギターだ」として「主役の一番の活躍しどころは『イントロ』」と語り、小田和正「ラブストーリーは突然に」やMr.Children「innocent world」、AKB48「ヘビーローテーション」を例に挙げた。布袋はこれらの楽曲で流れるギターについて「イントロ当てクイズみたいに、流れた瞬間に『あ、このアーティストだ』って興奮や笑顔が目に浮かぶよう」と、イントロのギターが楽曲に記名性を与えることを指摘した。
その後、亀田はBOOWYの「MARIONETTE」を例に挙げ「イントロから歌いだしたくなる。実はこれ、サビのメロディーがイントロのモチーフなんですよ」と説明。布袋はこれに対し「この曲はこのフレーズから作った。アパートで何か面白いフレーズ、テクニックじゃなくてトリッキーなものはないかと探していた」と制作当時を振り返った。亀田はサビと同じフレーズでイントロが鳴っていることについて「ギターがこのイントロを取る事によって、これがバンドサウンドなんだという決意表明と思える。ショートケーキで言うところのイチゴ。人によっては最後まで取っておいちゃうような(笑)」と分かりやすい注釈を加え、生徒たちを納得させた。
・エレキギターとピアノ、最大の違いは「伸び」
続いて、エレキギターとピアノという、それぞれ楽曲のメロディを支える2つの楽器の違いについて説明。亀田は「MARIONETTE」はピアノで弾くとバロック調の悲しい音楽に聴こえるということを例に挙げたあと、布袋の「バンビーナ」を紹介し「メロディーを取らずして、コードストロークだけでイントロの印象ーー曲の全責任を担っている。これは鍵盤だと奏法的に無理があって、ギターのアップダウンが効くことで速いフレーズ、スピード感が生まれる」と解説した。
また、J-POP楽曲におけるエレキギターとピアノの大きな差として、My Little Lover「Hello, Again 〜昔からある場所〜」、YUI「CHE.R.RY」を例に挙げ、「音の伸び」が違うと説明。機械的に音量を保つことができるエレキギターに対し、ピアノの音は自然減衰(だんだん音が小さくなる)するため、ここに大きな違いが生まれると解説。亀田は「アコースティックギターがあって、ストリングスがあってというJ-POP的なサウンドの中でも、エレキギターの力は他の楽器に負けずにフレーズを主張することができる」と語った。
・間奏のギターソロは“大サビへ導くジャンプ台”
後半では、“間奏”もまたギターの見せ場であるというお題に。
亀田は、J-POPの基本構造として「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→大サビがある」と解説し、「イントロではギターが主役を取るが、Aメロ〜サビでは主役を歌に譲る。でも間奏ではギターが主役にならざるを得ない」と、その役割分担について語った。また、「間奏のギターは起承転結でいうところの転になってもいいし、承になってもいい。ボーカルが作ってきた世界を受けてもいいし、変えちゃってもいい」と、間奏のギターが“大サビへ導くジャンプ台”になり、ギタリストが指揮者として楽曲を終盤へ導いて行くことを説明した。
布袋はこれに対し「これが基本構造なら、予定調和にならないように変化をもたらして、今までの曲とは全然違う方向に転換する。次のサビなり戻った場所が自然に聴こえるチャレンジングな場所」と、独自の解釈でギターソロ論を語る。亀田は「苦言を呈す訳ではないですが、何となくギターソロが入っている曲をたまに聴くけど、使い方としてもったいない。主役の良さを引き出して、楽曲全体を際立たせて行こうという気概で作って欲しい」と、近年のバンドマンに向けたアドバイスをした。
ライブのコーナーでは、布袋の代表曲であり、映画『キル・ビル』のテーマとして世界中に知れ渡っている「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」を、亀田を含めたバンドセッションで披露。布袋によると同曲は「津軽三味線のようなフレーズや、弾かない間もギターを感じることができる和的なリズム」で、その“日本らしさ”を意識した演奏となった。
番組の最後には、布袋が近年のギターフレーズの傾向について「主役になろうとするギターフレーズが減ってきている。いきなり『俺だぜ!』っていうフレーズは、J-POPが総合芸術になっているなかでギターが見え辛くなっている。『ギタリスト諸君、もうちょっと頑張ってよ』と思うし、時代は主役を待っているんじゃないかな」と、若手ギタリストに奮起を促した。亀田は「時に口ずさめるメロディはボーカルのような表現力をもっている。だからこそ、メロディやサビを大事にしているJ-POPの中で、大事に使い続けられていく楽器なんじゃないかと感じた授業でした」と締め、番組は終了した。
そのほか、亀田が音楽にまつわる場所を探訪する「亀さんぽ」というコーナーもあった今回の放送。次回10月9日の放送では「J-POP ギター学〜名脇役編〜」を講義する予定だ。(向原康太)