BABYMETAL幕張メッセ凱旋公演 世界を
駆けた成長の跡と25,000人のシンガロ
ング

 BABYMETALの世界での、そして日本での勢いが止まらない。



 昨年初のワールドツアーを敢行し、欧米での人気を沸騰させたBABYMETAL。2015年の年明けは、さいたまスーパーアリーナ(以下SSA)で「メタルレジスタンス第三章」をスタートさせ、5月からは「WORLD TOUR 2015」を開始。メキシコ、スイス、イタリア、オーストリアと初上陸の4カ国を含む、8カ国10公演に及ぶワンマンライヴ・フェス出演を成功させた。

 その後イギリスの地に渡った3人は、彼の地の2大ヘヴィメタル雑誌と言える『ケラング』と『メタルハマー』の年間アワードに出席し、見事に賞を受賞。欧米だけでなくここ日本でも大きな話題となった。その間隙を突いてイギリスを代表するメタルフェス「ダウンロードフェスティバル」ではドラゴンフォースのステージにサプライズで飛び入り参加。彼らとともに『ギミチョコ!!』を演じた。

 これらの快挙は、BABYMETALが既に、単なる“可愛らしいお客さん”ではなく、日本を代表するヘヴィメタル・グループとして欧米のメディア、そしてメタルヘッズに正統に受け入れられた証に他ならない。ただのアイドルという扱いでなく、新時代を代表するメタル・アイコンとしての歩みを始めたと言えるのだ。

 日本での勢いも負けてはいない。約5ヶ月ぶりのアリーナクラスの会場でのワンマン凱旋公演。過去最大級・25,000人を収容する国際展示場での公演は、日本全国24カ所の映画館でライヴビューイングも行われることに。事実、グッズを求める物販の列は早朝から長蛇の列を作り、列の長さは過去最長となった。東京地方は梅雨まっただ中であるが、幸い雨も降らず、かといって灼熱の太陽が降り注ぐでもない曇り空。長時間の行列にとっては比較的過ごしやすかったのではないだろうか。

 とはいえ昼頃から湿度は徐々に上昇し、開場時間と前後して雨が降り出した。そのせいもあるのか、会場の中はやや蒸し暑い状態。客入りが終了したら、かなりの熱気になりそうだ。それにしても、幕張メッセ国際展示場はやはり広い。フロア最後方からだと、メンバーは豆粒ほどにしか見えないだろう。とうとうこのレベルの会場まで来たのか、と感慨深い。

 一番前方真ん中に、バンドが演奏するステージ、その左右には巨大なスクリーンが掲げられている。ステージはその前方の三角形の出島につながっており、出島には赤と黒に光る妖しい巨大なピラミッドがそびえ立つ。恐らくここから3人が出てくるのだろう。

 続々と会場入りするファンは、少し前と比べると、随分と若いファンが増えたような気がする。若い女性も少しではあるが増加傾向にあるようだ。オールスタンディングということが影響しているのだろうか。客入れBGMはこの日もメタルナンバー中心。アンスラックス、ドラゴンフォース、オジー・オズボーンなどのメタルナンバーが流れ、その爆音に戸惑うファンもいれば、早くもサークルを作って盛り上がるメタラーもいる。年齢層が変わってもファン層のカオスぶりは相変わらずだ。次ページは、約半年ぶりのBABYMETAL日本公演が開幕! 『BABYMETAL DEATH』の重いリフを神バンドが刻み始めると、25,000人のフロアは一気にヒートアップ。花火の爆音とともに巨大ピラミッドは姿を消し、3人が姿を現す。彼女たちの立つ三角形の出島はそれほど広くはなく、1月のSSAのステージと比べると3人の可動範囲は小さい。それでも3人の存在感の大きさは過去最大と感じる。「メタルレジスタンス第三章」の過酷な修行を通し、さらなる成長を遂げたのだ。

 『ギミチョコ!!』でライヴの激しさはさらに1段ギアを上げる。神バンドの演奏もキレにキレている。ライヴに特化した会場ではないので、音の良さ、聞こえやすさは場所によって影響されたであろうが、その演奏の熱さは肌で感じることが出来る。ブレイク部分で「幕張! みんな会いたかったよ! 来てくれてありがとう!」と叫ぶ3人に渾身の歓声で応えるフロア。「チェケラチョコレート」の大きなシンガロングが広大な会場全体にこだまする。これだけ多くの観衆を前にしても決して気圧されることのない3人の貫禄たるやどうだ!

 続いて『ド・キ・ド・キ☆モーニング』、『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』の2曲を並べたセットリストも新鮮だ。「セイ!」と英語でファンを煽るSU-METALの姿が凜々しい。

 BABYMETALの最初期の2曲。キャッチーでポップな雰囲気が溢れ、当初は「こんなのメタルじゃねぇ!」と感じたメタラーも多かった。それが今では、屈強なメタラーでさえ楽しそうにフリコピまでするのだから。彼女たちの歩んできたメタルレジスタンスの道のりの長さと険しさが実感できる。

 昨年12月に初披露された新曲の『あわだまフィーバー』。演奏された回数はまだ少ないが、ネットにあふれる動画や音源を皆よくチェックしている。既に何の違和感もなく、前の2曲と同様アイドル寄りのナンバーとして受け入れられている。場内が暗転し3人がステージを去ると、神々の狂乱のソロ合戦のスタートだ。前日に16歳の誕生日を迎えたYUIMETALのために、ハッピーバースデーのフレーズを途中で挟んでくるところが心憎い。「ハイ! ハイ!」のかけ声とともにステージに戻った3人。曲はもちろん『Catch me if you can』。フロアのあちこちにサークルが出現。汗を飛ばしながらグルグル駆け回るオーディエンスたち。

 ハッピーバースデーバージョンにアレンジされたBLACK BABYMETALの動画に続いては『おねだり大作戦』だ。16を迎えたYUIMETAL、そしてまもなく16になるMOAMETALの2人のおねだりは、いくつになってもキュートすぎる(笑)。そしてガラリと雰囲気を変え厳かなピアノから始まる『紅月 -アカツキ-』。SU-METALの歌唱の凄みを最もストレートに感じることの出来る楽曲。感動的な歌詞と、これぞヘヴィメタルといえる様式美あふれるメロディラインの織りなす世界観が心の琴線に触れてくる。

 バンド4人のテクニックと、結束力の強さを思い知らされる神バンドソロに続いては『悪夢の輪舞曲』。現代のメタル然としたテクニカルな変拍子のサウンドにSU-METALの歌が作り出すダークな世界観、そして一転、YUIMETALとMOAMETALの無邪気で素直な歌唱が屈強な男子をとろけさせる『4の歌』。この雰囲気の高低差……3人の持つ魅力を全部出したカオスなごった煮感。凜々しい、熱い、キュートだ、ほっこりする……そんな色々な感情がごちゃ混ぜになる、まさにこれがBABYMETALのライヴなのだ。


次ページは、ノンストップライブはいよいよラストスパートへ海外での修行を経てパワーアップした3人に、会場もヒートアップ

 17時13分、Mr.ビッグの『Addicted To That Rush』の途中で場内は暗転。大歓声の中、スクリーンに動画が映し出される。ワールドツアーというハードルを超えた今だからこそできる、MCもアンコールもないノンストップの宴が始まる!ファン待望の全国ツアーを発表!メタルレジスタンスはまだまだ続く……

 スクリーンに映し出された動画が新たなる調べを示唆すると、場内は大歓声に包まれる。お披露目された新曲は、ハードディストーションスカとでも言うべきギターリフに「気になっちゃったどうしよ?」「あれも違うこれも違う」とどこか懐かしい昭和歌謡的な歌メロが乗る構成。『Road of Resistance』とも『あわだまフィーバー』とも違ったタイプの楽曲だ。

 グリーンのレーザーが漆黒の空間を飛び交う『いいね!』。ブレイクでは「セイホー! 幕張!」とフロアを煽る3人。観客の熱さも衰えることを知らぬまま、ステージはクライマックスへ。ソレッソレッとお祭り騒ぎの『メギツネ』。どこか演歌的な情感を込めたSU-METALの歌唱と、可愛らしくも妖しげな光を放つYUIMETALとMOAMETALのダンスが、これこそが和メタルという世界に観衆を誘う。

 スクリーンに『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の動画が流れると、フロアに大きな空間が現れる。モーゼの十戒のように。SU-METALのスクリームに合わせ、空間に向かって走り出す観客たち。地響きとともに巨大なWOD(ウォール・オブ・デス)が炸裂する。エネルギーを使い果たしたフロアは、SU-METALの「かかってこいやー!」の煽りに渾身のダメジャンプを繰り出し、熱いステージに応える。3人にバンドの4人、25,000人の観衆、そして照明やパイロのすべてが一体となった感動的な空間がそこにはあった。精も根も使い果たしたフロア。しかしアンコールはなくノンストップの狂宴は続く。

 『ヘドバンギャー!!』をみじんたりとも疲れを見せずに演じる3人。なんというスタミナだろう。今年のワールドツアーで得た成果は、こんなにも途方のないものだったのか。HPの残量がゼロになりつつあるのを感じながら、3人の凄まじい成長を実感せざるをえない。スクリーンに戦国WODの動画が流れ、フロアの各ブロックには再び大きな空間が作られる。叙情的なギターのイントロが気分を高める。再び空間に向かって走り、もみくちゃになる観客たち。『Road of Resistance』……メタルレジスタンスを叫ぶ3人の熱いパフォーマンスに、これからも続く彼女たちの闘いに思いを馳せる。「ウォーオーオー!」とシンガロングする25,000人の大観衆。巨大な火花の轟音が観衆をどよめかせ、初めて耳にするギターとSU-METALの歌声のアンサンブルの中、ステージ上の巨大なトライアングルに向かって去って行く3人。

 スクリーンの動画は「メタルレジスタンス第三章」の最終章へのカウントダウンを告げている。そして9月からの日本ツアー全10公演が告知され、大きな拍手が起きる。ラストは12月12・13日の横浜アリーナ2デイズ。とうとう横浜アリーナまで来たかと、ちょっと感傷的な気分になる。過酷なワールドツアーで鍛えられ、ノンストップ90分の熱く激しいライヴをクリアした今、日本ツアーにも横浜アリーナにも何の懸念材料も見当たらない。ファンはただ、彼女たちのステージに負けない体力をつけ、資金を貯めるだけだ(笑)。

 会場の外、19時前の空はまだ十分な明るさを残している。雨が上がったばかりの幕張の空気がじめじめと肌にまとわりつく。心地よい疲労感の中、地方から遠征してきたファンたちの、地元での公演を喜ぶ声が聞こえてくる。8月にドイツ・イギリスでのワールドツアー後半戦でさらに成長した3人が、この秋日本中を震撼させることは間違いない。待ってろ、北海道! 待ってろ、九州!



セットリスト
01 BABYMETAL DEATH
02 ギミチョコ!!
03 ド・キ・ド・キ☆モーニング
04 ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
05 あわだまフィーバー
06 Catch me if you can
07 おねだり大作戦
08 紅月 -アカツキ-
09 神バンドソロ
10 悪夢の輪舞曲
11 4の歌
12 新曲…タイトル未定
13 いいね!
14 メギツネ
15 イジメ、ダメ、ゼッタイ
16 ヘドバンギャー!!
17 Road of Resistance



BABYMETAL WORLD TOUR 2015 in JAPAN
09/16.17 Zepp Namba(大阪)
09/21 Zepp Sapporo(北海道)
10/2 Zepp Fukuoka(福岡)
10/7.8 Zepp Nagoya(愛知)
10/15.16 Zepp DiverCity(東京)
12/12.13 YOKOHAMA ARENA(神奈川)竹崎清彦 アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。

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