『PSYCHO-PASS サイコパス』ってすご
く楽しい!~『舞台 PSYCHO-PASS サ
イコパス Virtue and Vice 3』鈴木拡
樹&和田雅成インタビュー

アニメ作品『PSYCHO-PASS サイコパス』をオリジナル脚本で舞台化した『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』、そのシリーズ最終章となる第三弾が動き出した。本作の主人公・公安局刑事課三係の監視官である九泉晴人を演じるのは、第一弾でも同役を演じた鈴木拡樹。そして監視官・海堂自我を演じるのは、シリーズ初参加となる和田雅成だ。オリジナリティ溢れる世界観の中、舞台上に見事にバーチャルな近未来を立ち上げる演出と、俳優の肉体を存分に生かす血の通ったアナログな表現を融合させた本作の魅力について、大いに語ってもらった。
ーー2019年の初演から5年、鈴木さん演じる九泉晴人が再び『PSYCHO-PASS サイコパス』の世界に戻ってきました。
鈴木:はい。そもそも初演が終わった時、「九泉の過去なり未来なり、また何か物語の続きを描けたらいいよね」っていう話が自然とみんなから出て……やっぱり、ひとつの作品がちゃんとそういう明るい前向きな気持ちで終われるのって、いいカンパニーだったなという証なんですよね。すごくいい関係が築けて、もちろん作品もいい出来でしたし、終わり方としても「続けることもできるよ」っていう希望を残したラストだった。その後2020年の2作目は嘉納火炉役の和田琢磨くんが物語を繋いでくれて、なんなら僕、第2弾やってる時も「出たいな」って思ってましたからね(笑)。そして今回の3作目。シリーズがちゃんと続くだけでもやっぱり嬉しいんですけど、自分もまたこうして出演できるのは本当にすごく嬉しいです。
ーー和田さんは今作が初参加。九泉の同僚である監視官・海堂自我を演じます。
和田:はい、今回は和田“雅成”のほうです(笑)。『PSYCHO-PASS サイコパス』は拡樹くん、琢磨くん、まっきー(荒牧慶彦)と、僕にとって近しい人たちがたくさん出ている作品なんですけど、過去作の上演中、役者さんもお客様もすごく温度が高くて、作品が活気づいている様子が外から見ていてもすごく感じられたんです。当時僕は劇場に行くことはできなかったんですけど、舞台映像を観させていただく中、「いやもうそれは盛り上がるでしょうよ」って思いましたね。まずかっこいいじゃないですか! ストーリーもすごく面白いし、僕、あの初演の終わり方がすごく好きで。
ーー互いにドミネーターを突きつけ睨み合う九泉と嘉納。
和田:そう、こう、構え合って——だからその続きとなる本作はまずオープニングであのヒリヒリ感がフラッシュバックする感じ、お客様が「あ、ここからまた始まるのか」って思えるようなシーンから始まるんだろうなって、今、勝手に思ってたりはしますね。
鈴木:うんうん。
鈴木拡樹
ーー本作の情報解禁、一番初めに一人の人物のシルエットだけが出ました。そこでもうファンのみなさんが「これは鈴木拡樹に違いない。待っててよかった!」とか、「いやでも物語的には新しいキャラクターかもしれないけど……」と、想像を膨らませながら盛り上がっていたのも印象的でした。
鈴木:「誰だ誰だ!?」みたいな。フフッ(笑)。『PSYCHO-PASS サイコパス』のファンの方はさまざまな考察だったり展開への予想を立てたりっていうことが好きだとは思うので、あのビジュアル1枚で真っ先にそういう部分も刺激できて、なんか、いい告知だなぁって僕も思いました。
和田:確かに。
ーーそんな注目の新作に向け、まずはちょっと過去2作を振り返ってみたいのですが……この作品の世界観やルールなど、お二人それぞれが『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズに感じている魅力や特徴というと?
鈴木:僕も初演の稽古中、何度もアニメを見返してたんですけど、作品全体を通してやはり1回ではちょっと情報が咀嚼しきれなくて、むしろそこからもっといろんなことを知りたい知りたいっていう欲がどんどん出てきたし、そういう欲求をしっかりと満たしてくれるような内容の作品だよなぁと思います。アニメ本編を見直す中で発見したいろいろなことは稽古にもどんどん盛り込んだりもしてましたしね。だからこの舞台シリーズ、結構アニメともちゃんとリンクできてるのかなっていうくらい強度のある作品には仕上がってるんじゃないでしょうか。アニメ本編で疑問に感じた部分とかの答えになりそうなキーが、このオリジナルの舞台版の中にも含まれてたりとか。舞台はそういう補完用にも十分使ってもらえる内容になっていると思います。
ーー伏線の張り方や回収の気持ちよさも含め、ドラマとしての密度が濃いですよね。演出という部分ではある種完璧なアトラクションのような見え方・見せ方の舞台でありながら根底はちゃんと人力で、アナログで汗かいてっていう比重も大きい、人間的な熱さに満ちていた。そのバランスが絶妙でした。
鈴木:そうなんですよ。アナログな動き……やってることはアナログなんですけど、仕上がった見た目的には非常にデジタルな部分も多かったじゃないですか。
ーーリアルタイムでカメラに映るZoom会議的な見せ方も多用されていたり。
鈴木:そのへんもホント、先駆けですよね。僕らがGoProカメラを仕込んでお芝居して……あれがまた、立ち位置とかがなかなかシビアなんですけど。
和田:そこですよねぇ。観ている分には面白いんですけど、本当に役者泣かせだと思います。
和田雅成
鈴木:うん。内心「あ、肩被ってる。ここもう一歩寄りか」みたいな(笑)。
和田:でもそこはやはり本広(克行)さんの演出だな〜っていうところですね。
鈴木:そうだね。舞台と映像、両方の強さを生かせるアイデアがすごい。
和田:だから観ていてシンプルに面白かったです。アクションも派手ですし、セットの使い方とか映像の使い方も……あれ、もう5年前ぐらいでしょう? その頃からすでに未来の演劇と現代の演劇を織り交ぜたステージを観ているような感覚にさせてくれたのってすごいですよね。あとストーリーも「次のシーンは何が起きるんだろう」って常にワクワクでした。さっき言ったあの終わり方で、お客様が最後に「あの後どうなったんだろう。死んじゃったのかな」「いや実は2人とも生きてるんじゃない?」といろんな感想を持って帰っていけて……今回はおそらく答え合わせが待っている。シリーズとして今回やる意味、1の最後であのシーンをやった意味が、改めて深くなっていくんだなって感じますね。
ーー本作で描かれるのは初演の続き、九泉晴人のその後の物語です。
鈴木:演じる身としてはやはり切り替えが大変なのかなぁと。九泉が恵まれてるのって本当に周りの人間関係ぐらいで、他は苦悩してますからね、常に(笑)。人との巡り合わせはいいみたいですけど、自身が背負っている運命みたいなものは、ちょっとここでまたシビアに描かれていくことになるでしょうね。
和田:僕はちょうど今日台本を読み始めて途中まで読んだところなんですけど、「分からん。僕分からん」って思っています。え、もしかしたら裏切り者なの? とか(笑)、まだ海堂の行き先を模索している最中。ただここまででわかっている範囲では、彼はすごく真面目で、「シビュラシステム」を信じて行動している。そこはすごく共感ができるというか……割と自分もそういうタイプなのでね。もちろんいろんな視点からものを見なきゃいけないとは思いますけど、「これが正しい」と思って、それが本当に間違ってないと思うのであれば、僕はそれでいいと思うから。
ーー数年前に和田さんにお話をうかがった際、「人が人として生きるのなら正しいことをすればいいだけなのに、なんでみんなはそうしないんだ?」とおっしゃっていました。おそらくよくないことをしてしまう誰かに対して怒っていたのかもしれないんですが……
和田:うわー、怖いこと言ってる。尖ったこと言っていますねぇ。
(左から)鈴木拡樹、和田雅成
(左から)鈴木拡樹、和田雅成
ーー「だからちゃんとルール守ろうよ」という趣旨だったかと。
鈴木:それはさ、やっぱり監視官の素質持ってるよ(笑)。
和田:そうかも。多分ちょっとその頃、なんか心がざわざわしてたのかもなぁ(笑)。
鈴木:海堂って立場を超えて対等な人間作りをしようとしているっていうところがすごく魅力的。あと九泉目線からすると、「なんかこいつ俺に近いな」ってところもある。
和田:僕は「九泉はメンタル削られそうだなぁ」と思いながら観ていました。初演の終盤のグワァ〜っと慟哭し続けるシーンなんて、あれはやっぱり鈴木拡樹じゃないとできないなって、僕、拡樹くんにも直接言ったんですけど。
ーーあれは本当にシェイクスピア劇のようでした。
鈴木:(頷く)。
和田:拡樹くんって美しいものはもちろん、ああいう泥臭い表現がとても似合う役者さんだと思うので。僕と拡樹くんって今まで何度も同じ舞台には立っているんですけど近しい役がそんなになかったから、今回はお互いの役柄もそうですけど、拡樹くんと僕自身の心がしっかりと向き合って、バーってぶつかればいいなっていう思いもあるんです。この作品に関しては新参者ですが、最終章ということもあり、ちゃんと今まで観てくださったシリーズのファンの方たちにこの熱さをお届けしたいし、僕が出ることによって初めて観てくれる方もいらっしゃるでしょうから、そこはしっかり逃さずに、置いていかずに。みなさんにより深く愛していただけるようにっていうことは大切にやっていきたいことだなと思っています。
ーー“最終章”と言う言葉の重みも引き受けて。
鈴木:そうですね。第1弾でのあの時の想いであったり……それは作品だけじゃなくて、どういう作品を届けそのためにはカンパニーとしてどうみんながまとまっていくべきかなどを考え歩んでいたこととか、そういうところもひっくるめて“原点回帰”で取り組んでいきたいです。ちょうど僕自身も今、もう一度ちゃんと目的意識を持って活動していきたいと考えていまして——自分はどういう目的でこの役者業を始めたのかな、どうしていきたいのかなっていう想い、それ自体は忘れてはいないんですけど、ただずっとやっているとなんかそこに薄いフィルターが重なっていくと言いますか……。分かってるはずなのに確信が持てないなっていう部分があったのも事実で。なので今年は自分自身も原点回帰。「自分は一番初めに何を感じてどういうもので支えられてたんだっけ」っていうのをしっかりクリアにしていこうって思っています。そこでこの最終章を迎えるのも、またひとついいめぐり合いだなって感じています。
鈴木拡樹
ーーこうしてお二人が並んでいるとすごく安心感があるんですが、でも共演作となると実は『刀剣乱舞』シリーズだけなんですよね?
和田:そうなんですよ!
鈴木:このふたりで取材っていうのも初めて。
和田:ね。初めてだね。
鈴木:それに僕はすごい衝撃を受けてて。もっとやってると思ってたんですよ。なんだったら作品も結構一緒にやってるつもりでいたんです。ただ単にこっちが注目して出演作を追いかけてただけだった(笑)。
和田:いやいやいや、それを言うならこちら側が、ですよ。『刀剣乱舞』を通じて苦楽はたくさん共にしてるんですけどね。だから……それこそ僕も原点回帰じゃないですけど、僕は舞台『刀剣乱舞』初演と再演で椎名鯛造という役者とも一緒だったんですが、当時、拡樹くんと鯛造くんと僕の3人でご飯に行かせてもらった時に作品やお芝居に対する拡樹くんの考え方をいろいろ聞かせてもらって、その時からずっと「この人と一回がっつりぶつかってみたい」なっていう思いがずっとあって。それが今回の共演なんだよなぁって。
鈴木:(ニコニコ)。
和田:拡樹くんの性格だから現場も変にピリッとはしないですけど、でも締めるところは締めるし、言葉じゃなく姿勢で正しい空気をちゃんと示してくれる方なので、自分も改めて畏ったりはせず、甘えられるところは甘えるし、いい塩梅でお互いわかり合っているところを感じとりながら、僕はもう今ある自分、嘘をつかずに出せるものを全部ぶつけます。もちろん作品のルールとしてわからないことはきちんと聞いて、教えていただいて、そこでさらに自分も新しい風を吹かせられるように。
鈴木:いいね。本広さんの現場の空気的に、なんか互いにそれぞれが出せるものを出し合って楽しんでる感じだしね。非常にクリエイティブな人ですし、現場を見渡しながらそこで思い付いたことも「こういう感じにして」って言ってくださって、それをまたみんなが形にしていこう、みたいな。
和田:それはすごく楽しいですね。いいな、稽古、楽しみだな。
和田雅成
ーー東京公演の劇場も新しいところで……。
和田:THEATER MILANO-Zaね。
鈴木:これ、すごく作品にも合ってますよね! 僕はまだ行ったことないんですけど、劇場ロビーとかにアーティストさんのいろんな作品が飾ってあるらしくて。で、今回の物語も実は“アーティスト”っていうのが大きなキーになるところもある。だからそういう部分でもまず劇場に来たところから世界観に入る導入として、そういう雰囲気にもすごく助けられますし——
和田:あ〜、めっちゃいいかもしれないですね。
鈴木:なんか、いい舞台を観ても一歩出たらいきなり現実になっちゃう時、あるじゃないですか。だから休憩とかも集中を切らすことなく世界観を繋ぎながら観てもらえる空間は最高の条件かなって。観劇後の帰路でもすごく思い出にふけってもらいやすいのかなと思いますし。
和田:帰り道。新宿の、歌舞伎町の、あの雰囲気ね。うん、似合ってるかもしれない。
ーー観劇気分がじわじわと盛り上がってきますね。今から本番が楽しみです。
和田:僕も楽しみです。僕は……海堂としては、本当にいい意味でみなさんの期待を裏切って、そしていい意味で寄り添えるようにぶつかっていくだけだなっていう気持ちです。これから『PSYCHO-PASS サイコパス』の空気感をしっかりと感じ、浸り、やれることを精いっぱい頑張ります。——
鈴木:まずはシリーズを応援してくださった方に、このファイナルが決まったっていうお礼の気持ちをお届けしたい。ずっと観てくださった方が感じる面白さもありますし、もちろんこれ1作を単発で観ても面白いのでね。ここから入った方は1作目、2作目と遡って楽しむのもいいですし、なんなら順不同で観てもいろいろ判って面白いんじゃないかと思いますし……。
和田:うんうん。そういう楽しみ方も全然ありですよ。
鈴木:もっと言えばアニメを好きだった方がこの舞台のシリーズを観て「なるほど」と補完できることも……実際そういうことを話しながら作っていった部分もありますし、視聴者の方の補完、考察にも繋がる内容がいろいろあるんじゃないでしょうか。まだ手にしていなかった何かしらの答えに近いきっかけが、この3作目にもあるかもしれません。もうね、本当にいろいろ楽しんでみてください。『PSYCHO-PASS サイコパス』、すごい楽しい世界観なんで!
(左から)鈴木拡樹、和田雅成

ヘアメイク=堀江裕美   スタイリスト=中村美保

■鈴木拡樹
〈コート〉 DIET BUTCHER/Karaln ¥73,000- 〈シャツ〉 GalaabenD/Karaln ¥33,000- 〈パンツ〉nude:mn/Karaln ¥48,000- 〈靴〉 STEALTH STELL'A/JOYEUX ¥38,000- 問:JOYEUX 03 4361 4464
■和田雅成
〈ジャケット〉 incarnation/Karaln ¥88,000- 〈シャツ〉 GalaabenD/Karaln ¥33,000- 〈パンツ〉 DIET BUTCHER/Karaln ¥32,000- 〈靴〉 スタイリスト私物
※価格は全て税抜
※靴(STEALTH STELL'A/JOYEUX)以外  問:Karaln 03-6231-9091
取材・文=横澤由香    撮影=山崎ユミ

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