上坂すみれインタビュー同志に告ぐ1
0年分の愛!15thシングル「ディア・
パンタレイ」に込めた想いにせまる

2024年1月より好評放送中のTVアニメ『SHAMAN KING FLOWERS』のEDテーマを担当する、上坂すみれの15thシングル「ディア・パンタレイ」が2024年2月7日(水)に発売となる。王道のバトル系アニメのタイアップは初と語る彼女が今作に込めた想い、そして今年でアーティストデビュー10周年イヤーを迎えたという事で、これまでの足跡を振り返ってもらいつつ、今後の活動でチャレンジしたいことなども訊いてきた。
■上坂すみれ初の骨太なアニソン
――今作「ディア・パンタレイ」はTVアニメ『SHAMAN KING FLOWERS』のEDテーマを担当されています。また今年はアーティスト活動10周年イヤーでもありますが、実は上坂さんってこのような、いわゆる王道のバトル系アニメのタイアップって初めてなんじゃないですか?
そうです、初めてなんです。正直10年前だったら多分こういう曲は自信がなくて、自分の力では扱いきれなかったと思うので、この10年で声優としてのキャラソン歌唱とか含めて色々な曲を歌ってきて、ようやく骨太なアニソンも自信を持って歌うことができたんだなと、改めて思いました。
――“骨太なアニソン”という表現が出てきましたが、改めてこちらの楽曲について、上坂さんの方から概要をご説明頂けますでしょうか。
まずは最初にアルミ・ニウムバーチ役のオーディションを受けさせていただいて、それから、役と一緒に主題歌も担当することになりました。“あの”『SHAMAN KING』の続編に携われることは、私も世代ということもあり、とても嬉しかったです。そして楽曲に関わってくださったクリエイター陣の方も同世代の方が多くて、非常に解像度の高い作品の世界観に寄り添った楽曲に仕上がっているんじゃないかなと思いますね。
――かくいう僕も原作を毎週楽しみに読んでた世代なので、その辺りはヒシヒシと感じました。
“受け継がれていくこと”っていうのが、今作は重要なテーマになっているのですが、その点をすごく尊重して頂いて、色濃く描かれている曲かなって思いますね。今作の主人公は麻倉花くんと言って、『SHAMAN KING』の主人公・葉とアンナの息子なんですけれども、テーマとしてはすごく普遍的というか、花は最初、孤独を感じているんですけど、実際はひとりじゃなくて、周りの人がとても花を大事にしていることが分かってくるし、仲間たちが集っていくお話なので、曲の随所に葉やアンナの描写もあって、分かりやすく言葉で語られるわけではないんですけど、お互いが想いあって共鳴していく、継承していくという感じのテーマの曲になっているのではないかなと思います。
――オーディションで役が決まってから、楽曲の制作も動き始めたという事ですが、具体的にどの程度の段階から作り始めたのでしょうか?
アニメのアフレコが始まる前から楽曲の制作は始まったのですが、私からのお願いとしては、そんなに多くはないんですけれども、やっぱり『SHAMAN KING』の歌といえば、頭にバシッとサビが来て、それこそ王道なアニソンの展開というか、これはもう本当に刷り込まれてるようなものかもしれないんですけど……。
上坂すみれ 15thSINGLE「ディア・パンタレイ」期間限定アニメ盤 (c)武井宏之・講談社/SHAMAN KING FLOWERS Project.
――めちゃめちゃ分かります。それこそレーベルの大先輩ですが、「よみがえれ~」的なことですよね?(笑)
はい(笑)。“SHAMAN KINGといえば”というイメージがあったので、そういう曲構成であってほしいところや、エンディングですけれども、次世代の『SHAMAN KING』の曲なので、上を向いてる感じの楽曲がいいな、という思いはあって、バラードというよりは次に向かっていく感じの曲調でお願いしたい気持ちがありました。そういった要望はあったんですけど、細かな部分っていうのはお任せで、すごくたくさんの楽曲を公募で頂いた中の1曲が、歌詞も、楽曲のタイトルも、全部ピッタリの曲だったので、これだと思い、選ばせていただきました。
――曲名も歌詞も、全部仮歌のそのままなんですね!
かなり解像度が高くて、とてもピッタリだと思いました。
――『SHAMAN KING FLOWERS』もそうですが、今作に限らず、近年では当時他にも王道と言われていた少年漫画作品の続編として息子世代が活躍する内容も多いじゃないですか。上坂さん的には今作はどんな部分に“『FLOWERS』らしさ”を感じていますか?
あまりにも偉大な親を持っている子供世代ならではの苦しみ、みたいな花の描写は、前作からの読者的にはすごく応援しがいのあるキャラクターだなって思いますね。花にとっても、私の演じるアルミとか、色んなキャラクターにとっても、一瞬先の未来も本当に予測できない中で、実力はあるけれども、それをうまく生かす方法がわからない環境の中で、ほんとにちょっとずつ進んでいく。『FLOWERS』はそういうお話なので、ゆっくりと自分のペースで、みたいな部分っていうのは、お父さんの葉もかなりマイペースではあるんですが、それともまた違った“マイペース”を描いているのが、今どきのような印象を受けています。

■“魂”と書いて“おもい”
――単純に楽曲の中で、お気に入りのフレーズや、歌詞とか、ここが好き!みたいな部分ってありますか?
“魂”と書いて“おもい”ってルビが振ってあったり、“未来”と書いて“しるべ”だったり、すごく新鮮というか、アニソンっぽいですよね(笑)。普通に歌う分には“おもい”なんですけど、こうやって歌詞でちゃんと見ると、“魂”と刻まれているわけで、やっぱりちょっと気持ちがグッと入るというか、厨二心をくすぐられて、好きですね。
――僕の個人的なイメージだけでいうと、上坂さんの楽曲っていうのは、結構、上坂さんのやりたい事というか、上坂さんの色が強いっていうイメージがあって。今回みたいにタイアップの際は、そういう個性の部分と、作品の世界観みたいなのってどのように調和というか、すり合わせていくのか?それとも作品の一部に徹していくのか?上坂さんのタイアップに対するアプローチを伺いたいです。
タイアップ曲では自分らしさを楽曲に込めて歌おうという気持ちよりも、常にやっぱり作品を楽しんで欲しい、という気持ちが念頭にありますね。色んな人に歌ってほしいですし、語り部的な感じで「この作品はこういう世界観です」というのが伝わると嬉しいですね。その分、というわけではないですが、カップリングとかでは自分のやりたい事がそのまま出ていると思います(笑)。
上坂すみれ 15thSINGLE「ディア・パンタレイ」通常盤
■三国志✕ユーロビートは相性がいい!
――ではその流れで、カップリングの方もお話を伺いたいなとは思います。2曲目に収録されている「KOUTOU TIGER」なんですけど、この曲は上坂さんご自身で作詞されたという事と、“江東の虎”という事は、三国志に登場する呉の孫堅がモチーフなのかな?と推察するのですが……?
はい(笑)。「ディア・パンタレイ」が完成して、この曲がとても王道な分、2曲目は自由な感じの曲にしたくて、私はすごくユーロビートが好きなんですけど、ユーロビートの中でも特に90年代系の、ちょっとハイエナジーっぽいような、スーパーユーロビートをイメージさせる楽曲をまずいただいて、そこから歌詞を考え始めました。私、三国志も大好きで家で三国志を読む時にいつもユーロビートをかけながら読むんですよ。
――ユーロビート聴きながら三国志ですか!?
はい。ジャンルがあまりにも違うので、そんなに干渉しないというか、逆に中華料理屋で流れていそうなBGMをかけると、逆に集中できないんです。
――う~ん、やった事ないですけど、なんとなく分かりそう……(笑)。
ぜひやってみてください!(笑)。全く被らないジャンルのユーロビートは、意外と中国三千年の歴史とマッチするんです!この組み合わせが合うことをみんなにも知らせたい!ということで、なんか三国志の中でも呉の皆さんは荒っぽい伝説が多いというか。本当に大雑把なイメージですけど、蜀はファミリーでアットホームな感じ、魏はエリートな感じで、呉はヤンチャなイメージなんですよ。
――確かに、知的というよりはパワー系かも(笑)。
そうです!パワー系な人が多いから、きっとユーロビートに合うのではないかと思って。孫家の3人のファミリーがユーロビートで踊っていたらすごい合いそうだなと思って、作りましたね。
――歌詞だけ見てても、めちゃめちゃ筆が乗ってるな感が伝わってくるんですけど(笑)。曲聞きながら歌詞を考えてた時の心境的には、いかがでした?
そうですね。この曲は、1日ぐらいで書けたので、あんまり細かい仕掛けとかはないんですけれど、なるべく耳で聞いた時に、ユーロビートっぽい響きになってるといいなと思い、音の感じを大事にしました。
――じゃあ、もう勢いというか?
あまり練らないで書いた方が歌いやすいかな?みたいな(笑)。その“トラ”っていうのも、なんかちょっとユーロっぽさありますもんね。昔はトランスのことを“トラ”って略す文化もあったし、なんかちょっと近いですよね。多分、魏をテーマに書いたらもっと難航したと思うし、テーマがよかったですね。
――人生において、三国志を読みながらユーロビートを聞いたことがないので、ちょっと試してみたいですね。
本当に全く干渉しないので。これがやっぱり作業用BGMとしては……あと、激しいから、眠くもならないので非常に適していますよ。
――今お聞きしてて、トランスとかじゃなくて、ハイエナジー系っていうのは、とても腑に落ちます。トランスだとBPMが速すぎたりするんですけど、ハイエナジーってメロも良かったりとかして、聞こうと思えば聞けるし。
そうですね。ちょっとエモい感じの、なんか日本人好みのメロディーラインが多いのもいいですね。確かに聞こうと思えば聞けるし、別に聞き流すこともできるという不思議な塩梅ですよね。トランスだとちょっと曲のパワーがちょっと強くなるんですけど、ちょっとゆるい感じが好きですね。
上坂すみれ
■「今のすみれちゃんなら歌い上げられるよ」
――それでは続いて、3曲目の「愛々々宣言」のお話も伺いたいなと思うんですけど、この曲は、作詞が畑亜貴さん、作編曲が伊藤賢治さんのタッグという事で、1stシングルのカップリングに収録されていた「我旗の元へと集いたまえ」ぶりの組み合わせですが、個人的にはあの曲って「革ブロってこういうポリシーの人の集まりです」みたいな曲なのかなっていう風に受け取ってるんですけど、その10年目版みたいな印象を受けまして。まあ、その辺も含め、改めてどういう曲なのかなというのをお聞かせ願います。
はい、本当にその通りですね。10年前の「我が旗の元へ集いたまえ」という、革ブロ(革命的ブロードウェイ主義者同盟)という概念をなんとなく決めてくれた曲というか、同じ趣味のもとに一致団結し、雰囲気を楽しむ団体みたいな方向性を決めてくれて、この10年間の中でもたくさんの思い出がある曲なんですけど、この曲をたくさん歌って、同志が増えて、楽曲も増えて、無事に10年駆け抜けて、まだゴールではないけど、「おめでとう」みたいな。お二人からの慈しみを感じる楽曲というか。個人的には「まだまだ戦いですよ」みたいな曲をいただけるのかなと思ってたんですけど、いい意味で予想に反してすごくストレートな愛がたくさん描かれていて「今のすみれちゃんなら歌い上げられるよ」みたいな、そういうメッセージも感じるし、このお二人からの10周年のプレゼントを頂いた、みたいな気持ちになりましたね。
――そうですね。お二人からの愛もだし、上坂さんから同志の皆さんに向けての、愛でもありって感じですよね。
そうですね。本当にこの10年の間にはライブができない時期とか、そもそもイベントとか、外に出ることもできない時期もありました。声出しライブが復活したのも最近ですし、直近の2~3年ってみんなにとっても、私にとっても、空白に近い期間があったにも関わらず、またこの10周年イヤーのタイミングで、みんなが集まってきてくれて、この10年で「みんなで作るライブは本当に楽しいな」っていうのを、心から実感するようになりました。
それを気づかせてくれたのは、紛れもなく、同志の皆さんが、辛抱強くというか、現場に来てくれたおかげで。現場に来れなくても応援してくれて、曲をずっと聴いてくれて、何らかの感情を持ってくれて、ふとした時に、私のことを思い出してくれる。なんかそういう形のない絆みたいなものでみんなと結びつくことができた実感はあるので、多分10年前だったら、この曲を歌ってもあんまりピンとこなかったかもしれないんですけど、今だから愛と平和が我らの世界であるっていうのを、すごく心から歌える。そんな私の心をしっかりと読み取ってくださって、曲にしてくださって、本当に感謝の思いでいっぱいです。
――それこそ“宣言”だからじゃないですけど、歌い方的にも力強くというか、演説のような歌い方に聞こえたんですけど、レコーディングの際には歌い方で意識された部分とかありますか?
この曲はイトケンさんが、レコーディング時にディレクションをしてくださいました。はじめはシンプルにかっこいい感じの歌い方で臨んだんですけど「オペラっぽい感じで」というディレクションがあって、私はオペラをしっかりと鑑賞したことがないので、ざっくりのイメージにはなってしまったんですが、そのディレクションがすごいわかりやすくて、“宣言”なので、道の途中で新しく旗を立てて、また新たな道に進んでいくっていう情景が浮かんでくる曲だなって思いますね。
――そうですよね。個人的には以前、出演されていたTVアニメ『かげきしょうじょ!!』のエンディング曲のような、聞こえ方がすごくあったんですよ。なのでその“オペラっぽく”というディレクションが、勝手に今、すごい自分の中で繋がりました(笑)。
確かに、歌い方は結果的には近いかも。
上坂すみれ 15thSINGLE「ディア・パンタレイ」初回限定盤
■「私に歌を歌わせている場合ではない!」
――やっぱり10年というのは1つの大きな節目じゃないですか。先ほども少し伺いましたが、アーティストとしてのご自身を振り返って、どんな変化があった10年だったのかな?っていうのを、もう少しお聞きしたいです。
アーティストデビューが決まった時は、本当にそもそも人前に立つという経験がなくて、しかも歌に関しては、全く未知の世界というか、まだ声優活動もやって間もない、何者でもない新人だったので、なんで私がデビューしたのか、長らく謎でしたね。当時はとにかく声優をやりたいっていうモチベーションがめちゃくちゃ高くて、今でこそ歌も声優の表現のひとつなんだなっていうのが分かっているし、声優活動を続けていく中で次第に「あ、じゃあ、歌も頑張んなきゃな」という気付きを得たんですけど、10年前はまだ自信が持てなかったというか「私に歌を歌わせてる場合ではない!」って思っていたので、デビューしてる状況が本当に不思議だったんです。
ただ、私が革ブロを作り、同志の皆さんを募り、そしたら「応援しています」っていう無条件の愛を皆さんからたくさんいただいて。本当にそれが嬉しくて、最初のうちは皆さんに会えるのを楽しみに、続けていたんですけど、でも気がついたら、次のライブはこんなテーマがいいとか、セトリも自分で考えられるようになったし、気が付いたらここまできていました。
なので、具体的にこれという転機があったわけじゃないんですけど、活動を重ねるごとにアーティストが楽しくなっていった10年だったなって思います。
――上坂さんはライブのMCを見ていても、ファンの皆さんと心の距離が近いなという認識があります。
そうですね。みんなの表情を知りたいっていうのは、すごく私の根っこにある感情なので、場を見渡すみたいな、10年間やってきたことではあるのかもしれないですね。「ファン」という呼び方にちょっと距離を感じてしまうから「同志」って言葉にしたのもあるので、私自身が、みんなに近くにいてほしいなっていう気持ちは、一貫してあります。
初見の方とか「もっと孤高の存在かと思ってました」みたいな印象をよく抱くみたいなんですけど、全然そうじゃないですよっていうのはこれからも伝えていきたいし、みんなが思ってることをなるべく言い当てていきたいですね。単純に同じ目線でみんなと同じものを見て、同じところで盛り上がりたい。私も一生オタクでいたいので、むしろみんなに混ぜてほしいって気持ちなんですよ。それだけはこれからも変わらないなって思いますね。
――それでは最後に、今年はこんな年にするぞ!みたいな、意気込みであったりとか、まだ言えないかもしれませんが、実際に「こういうのをやるぞ!」みたいな事をお伺いしたいです。
もちろん、これからお知らせできることもたくさんあると思うし、絶賛それの準備をしていることもあります。この10周年イヤーが終わると、なんとなくレーベルをクビになるんじゃないかって思っていたのですが、現状、なってないっぽいので、クビにならなかったからには、好きなことを、いまよりも自由にやっていきたいというか。活動の基本は、やっぱり声優なのでいろんな声優の現場に立っていたいというのは、まずあるんですけれども……。
――是非思いの丈を(笑)。
デビュー当初はよく屋外でフリーライブとかやっていたんですけど、とても思い出深くて。色々な所でイベントをさせていただきました。オートレース場でリリースイベントしたり、新橋のSL広場でフリーライブしたり。せっかく声出しも解禁されて、のびのびと参加できるので、そういう誰でも気軽に参加できるイベントが復活するといいなって思いますね。
――ぜひやってほしいです!ほんの~りと淡く期待しています(笑)。
インタビュー・文:前田勇介

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