INTERVIEW | にしなにしなは歌う、
バグった世の中と人々に──新曲“b
ugs”から浮かび上がる最新モード に
しなは歌う、バグった世の中と人々に
──新曲“bugs”から浮かび上がる最
新モード

にしなとして最初の楽曲をリリースしてから3年あまり。その間に2作のアルバム『odds and ends』『1999』をリリースし、ワンマンツアーも度々行い、タイアップも増え、フェスやイベントで名前を見る機会もどんどん多くなってきて……つまりアーティストとして順調に成長を続けてきた彼女だが、ここ1年くらいの変化というか進化というか、表現者としてどんどんタフになっていく様子は傍目で見ていてもとても目覚ましいものがある。
彼女が話題にのぼるきっかけとなった“ヘビースモーク”しかり“真白”しかり、初期のにしなはとてもプライベートな密室感と閉塞的な気分を感じさせるアーティストだった。だが一昨年リリースした2ndアルバム『1999』ではその殻を突き破り、音楽的にも、そして言葉の面でもより普遍的で大きな歌を歌うようになった。そして2023年。楽曲“クランベリージャムをかけて”とその曲名を冠したツアーでは、オーディエンスの歓声が戻る中で「一緒に、自由に楽しむ」ことを全力で体現し、続いてリリースされたアニメのエンディング主題歌“シュガースポット”ではそのオーディエンスの向こう側、画面を通してにしなと出会う人々にもメッセージをまっすぐに届けようという意思が貫かれていた。つまり、にしなの音楽はオーディエンスと触れ合い、より大きな世界と向き合うことで、どんどん自由でオープンなものになっていったのである。
そして今回リリースされた“bugs”である。旧知の仲であるESME MORIと作り上げたサウンドは、これまでのにしなにはなかったダンスチューン。その上で彼女は《おいで/近づいて呪いたいよ/鼓動上げて/踊り乱れる》とリスナーを狂乱のダンスパーティへと誘う。歌詞のトーンとしてはむしろシリアスなのだが、サウンドの力も借りてそれを思いっきりアッパーに振り切ってしまうところに、この曲のおもしろさはある。世の中いろいろあるし何が正解かなんてわからないけど、でもだからこそ踊ろう、ひとつになろう。この“bugs”は、バグった世の中と人々に、そう笑いながら歌いかけている。
Interview & Text by Tomohiro Ogawa(https://twitter.com/ogawwww)
Photo by Sara Masuda(https://www.instagram.com/sara_photo_912/)
“シュガースポット”の逆サイドへ
――“bugs”、かなりおもしろい曲ができたなあと。おもしろいっていうのは、音楽性も全体のノリみたいなものもかなり新鮮だなと。“シュガースポット”のときも結構突き抜けたなって感じがしましたけど、さらに驚かされました。
にしな:やっぱり、いつも反対側に行きたくなるんですよね。“シュガースポット”が結構ハッピーな感じだとしたら、ちょっと逆サイドの、自分の中のバッドな──それだけじゃないけど、不平不満を言うみたいな曲を出すっていうのは自分らしくて、順番的にもいいなって思ってます。
――ESME MORIさんがトラックを作っていますけど、そのトラックからインスピレーションを受けて歌詞を書いていったっていう感じ?
にしな:トラックをもらって、何も考えずにそれに合わせて歌っていって。それでAメロができて、そこに合わせてサビを作ったり、Bメロを作ったりっていう感じでした。それでESMEさんと2人でスタジオに入って、「こんなふうに歌いたいんですよね」みたいな。ESMEさんは結構プライベートで一緒に遊んでもらったりとかしていて、そういう時間も経てのレコーディングだったんで、より近い存在として、相談しながら作れましたね。
――ESMEさんとは“centi”も一緒にやってますけど、彼と曲を作るというのはどうですか?
にしな:元々結構R&Bっぽいノリ感とかも好きだし、ESMEさんのトラックってそういう部分を感じるし、サウンド感が好きなんですよね。だからすごく作りやすいっていうか、ナチュラルに楽しく、一緒に曲を作れるっていうイメージですね。ESMEさんに対しても、ESMEさんの音に対しても。
「LOVE」っていう意味での呪い
――歌詞のテーマはどんなふうに考えていったんですか?
にしな:それこそ社会全体を見てても思うんですけど、みんなが一致団結する瞬間って、もしかしたらハッピーじゃないことのほうが多いのかなって思うんです。たとえばコロナもそうですし、この曲で言ったらSNSのこととか、何か問題があったとして、それは一人ひとりのことではあるけど全体に対する問題でもあるし、っていう。別にそれを批判したいわけじゃなくて、「一緒の問題を抱えている仲間だよね」みたいな感じの一致団結っていうか、それで踊れるよねって。そういう感じが自分らしいなあって思います。
――歌詞に《近づいて呪いたいよ》っていうパワーワードが出てくるんですけど、この言葉ってにしなさんの中では自然に出てきたもの?
にしな:すごく自然に出てきてました。逆に書いてから、《近づいて呪いたいよ》ってわけわからない感じだけど、なんとなくのニュアンスじゃダメなのかな? 逆に変えた方がいいのかな? って、ナチュラルに出すぎたからこそちょっと悩んだりした感じで。でもまあ、このままいこうかなって。
――「呪い」って言葉は普段使わないじゃないですか。その言葉にどんな意味を込めたんですか?
にしな:いや、でも愛憎だなとは思うんですけど。この曲を通じて言ってることなのかもしれないですけど、「みんな寂しがりで可愛いね」って。でも本当は隣に誰かがいてくれたり、ここにすごく満ち足りていたりしたらいいのかもしれないから、満ち足りちゃうくらいそばで呪ってあげたいっていうか。そういう感覚ですね。
――今「愛憎」って言ったじゃないですか。辞書を引けば「呪い」っていう言葉にはたぶん「憎」の方の意味しかないと思うんです。でもそこに愛が含まれているのがおもしろい。というか、《近づいて呪いたい》というのは《愛したい》っていうのと同じ意味だなと思ったんですよね。
にしな:まさしくそうだなってすごく思います。なんか、サビを歌っててイメージする中で、みんなが一緒に踊ってくれたとして、そこには「LOVE」っていう意味での呪いしかないなっていうか。確かに「愛してる」っていう意味で《呪いたいよ》って使ってる。でも、ナチュラルにもっとさらっと「愛してる」って言いたい気持ちもあるんですけどね(笑)。
――そもそも「踊れる曲がいいな」って思ったのには理由があったりするんですか?
にしな:うーん、あるのかな? なんか、フェスとか出させてもらうたびに「やっぱり踊れるって強いな」って思ったりしたのもあるし、曲を知らなくてもノリ感でみんなが楽しめるっていうのはいいことだなって思ってたのもあって、そういう方向性になっていったのかなと思います。
バグっている方が人間らしい
――“bugs”っていうタイトルは?
にしな:タイトルは結構ずっと悩んで、レコーディングしてからも悩んで、なんかネット系の言葉をつけたいな、みたいな。その中で「バグ」っていいよなって。「bugs」ってかわいいし、「虫」っていう意味もあるし、めっちゃいいじゃんみたいな感じで付けました。
――「バグ」がかわいいっていうのはどういう感じなんですか?
にしな:なんか、1個ネジ外れちゃったみたいな。完璧じゃないっていうか、ひとつ欠陥があってどこかおかしいけど、それで成り立ってる、みたいな感じ。それって悪くないというか、むしろいいなって思いますね。人も、本当にきれいな丸というのも好きですけど、きれいな丸の人間なんていないだろう、みたいな。バグっている方が人間らしいだろうみたいな感覚はやっぱりずっとありますね。
――おっしゃる通り、きれいな丸の人間っていないじゃないですか。やっぱりどこかデコボコしてたり、ヘコんでたり、ヒビが入ってたりするものなんだけど、なんとかきれいな丸に見せようとして、きれいな丸に近づいていこうとする。それが社会だと思うんですけど、にしなはそこで「いやいや、ヘコんでてもヒビ割れててもいいじゃん」っていう。その取り繕わない感じがどんどん加速している感じがするんですよ。
にしな:たしかに。音楽をやる中で自分が伝えたいこととかは考えないで生きてるんです。でも、質問されて改めて考えたときに、やっぱり自分らしくいて、その姿で立っていることで、自分を見てくれる人に「あいつがあんな感じなら、こっちもこんなんでいいか」って思ってもらえることなのかなって。
それは音楽をやっていく中でもそうですし、人間としてもそうですけど、自分を好いてくれる人とか、支えてくれる人とかと出会えて、より自分が自分を好きになれてるからなのかも。好きになれてるというか、「これでいいんだ」と思わせてくれる。だからこそ、みんなにもそう思ってもらえたらいいなっていうのはあるかもしれないです。プラス、いろいろ悩んだりした結果、結局何を選んでも変わらなくない? みたいな(笑)。
――どういうこと?
にしな:何ていうんですかね。「こうあることが正解」ってことはやっぱりなくて。思ったことと違う方向に転ぶこともやっぱりあるんだなって思うし、そういうときに、もちろん目的に辿り着くこともすごく重要だけど、私にとっては過程がいちばん大切で。その過程で自分が自分らしくいられて、本当に好きな自分だったり、好きなもの、好きな人、そういうものを大切にしながらやっていけたら、その先どこに辿り着いてもいいなって思えるっていうか。やっぱり初めの頃は目的というか、「こうなりたい」「ここに行きたい」で苦しんでた部分が、なんか少しずつ目の先が変わってるっていうか。
――これから始まるワンマンツアー『Feeling』もそういう気分と繋がったものになるんですかね?
にしな:そうですね。なんかいろんなことで、それこそ目的のために「これが正解かな」「あれはどうだろう」って悩んだりするんですけど、結局私、いつも悩みに悩んで最後は第一直感に戻ったり、なんとなく感じるものを選び取ったりするんです。ここに来て、「それでいいじゃん」ってすごく思えるっていうか、自分のフィーリングがすごく大切だし、完成形じゃないことが好きだなって思うから。
完成形ももちろん好きなんですけど、なんかそういう「なんとなく」みたいなフィーリングみたいなものを持って、今回はそれをテーマにしていこうかなって思って、『Feeling』っていうタイトルをつけました。フィーリングのままにできたらいいなって思いつつ、あとは前回が結構ワチャってしたんで、今回は逆に振りたい気持ちもあります。もっと余白の大きな感じにしたいっていうか。どうなるのか、楽しみですね。
【リリース情報】
■ 配信リンク(https://nishina.lnk.to/bugs)
【イベント情報】

にしな ワンマンツアー2024『Feeling』

2024年2月12日(月・祝) at 北海道・札幌 Zepp Sapporo
2024年2月19日(月) at 大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2024年2月23日(金・祝) at 福岡・Zepp Fukuoka
2024年3月4日(月) at 東京・恵比寿 LIQUIDROOM
2024年3月15日(金) at 愛知 Zepp Nagoya
2024年3月24日(日) at 広島 CLUB QUATTRO
2024年3月30日(土) at 大阪 NHKホール大阪
2024年4月6日(土) at 宮城・仙台 Rensa
2024年4月13日(土) at 新潟 LOTS
2024年4月20日(土) at 香川・高松 オリーブホール
2024年4月28日(日) at 東京・NHKホール
料金:ADV. ¥4800
・チケット
一般発売(e+)(https://eplus.jp/nishina2024/) :2月1日(木)12:00〜
■ にしな オフィシャルサイト(https://nishina247.jp/)
にしなとして最初の楽曲をリリースしてから3年あまり。その間に2作のアルバム『odds and ends』『1999』をリリースし、ワンマンツアーも度々行い、タイアップも増え、フェスやイベントで名前を見る機会もどんどん多くなってきて……つまりアーティストとして順調に成長を続けてきた彼女だが、ここ1年くらいの変化というか進化というか、表現者としてどんどんタフになっていく様子は傍目で見ていてもとても目覚ましいものがある。
彼女が話題にのぼるきっかけとなった“ヘビースモーク”しかり“真白”しかり、初期のにしなはとてもプライベートな密室感と閉塞的な気分を感じさせるアーティストだった。だが一昨年リリースした2ndアルバム『1999』ではその殻を突き破り、音楽的にも、そして言葉の面でもより普遍的で大きな歌を歌うようになった。そして2023年。楽曲“クランベリージャムをかけて”とその曲名を冠したツアーでは、オーディエンスの歓声が戻る中で「一緒に、自由に楽しむ」ことを全力で体現し、続いてリリースされたアニメのエンディング主題歌“シュガースポット”ではそのオーディエンスの向こう側、画面を通してにしなと出会う人々にもメッセージをまっすぐに届けようという意思が貫かれていた。つまり、にしなの音楽はオーディエンスと触れ合い、より大きな世界と向き合うことで、どんどん自由でオープンなものになっていったのである。
そして今回リリースされた“bugs”である。旧知の仲であるESME MORIと作り上げたサウンドは、これまでのにしなにはなかったダンスチューン。その上で彼女は《おいで/近づいて呪いたいよ/鼓動上げて/踊り乱れる》とリスナーを狂乱のダンスパーティへと誘う。歌詞のトーンとしてはむしろシリアスなのだが、サウンドの力も借りてそれを思いっきりアッパーに振り切ってしまうところに、この曲のおもしろさはある。世の中いろいろあるし何が正解かなんてわからないけど、でもだからこそ踊ろう、ひとつになろう。この“bugs”は、バグった世の中と人々に、そう笑いながら歌いかけている。
Interview & Text by Tomohiro Ogawa(https://twitter.com/ogawwww)
Photo by Sara Masuda(https://www.instagram.com/sara_photo_912/)
“シュガースポット”の逆サイドへ
――“bugs”、かなりおもしろい曲ができたなあと。おもしろいっていうのは、音楽性も全体のノリみたいなものもかなり新鮮だなと。“シュガースポット”のときも結構突き抜けたなって感じがしましたけど、さらに驚かされました。
にしな:やっぱり、いつも反対側に行きたくなるんですよね。“シュガースポット”が結構ハッピーな感じだとしたら、ちょっと逆サイドの、自分の中のバッドな──それだけじゃないけど、不平不満を言うみたいな曲を出すっていうのは自分らしくて、順番的にもいいなって思ってます。
――ESME MORIさんがトラックを作っていますけど、そのトラックからインスピレーションを受けて歌詞を書いていったっていう感じ?
にしな:トラックをもらって、何も考えずにそれに合わせて歌っていって。それでAメロができて、そこに合わせてサビを作ったり、Bメロを作ったりっていう感じでした。それでESMEさんと2人でスタジオに入って、「こんなふうに歌いたいんですよね」みたいな。ESMEさんは結構プライベートで一緒に遊んでもらったりとかしていて、そういう時間も経てのレコーディングだったんで、より近い存在として、相談しながら作れましたね。
――ESMEさんとは“centi”も一緒にやってますけど、彼と曲を作るというのはどうですか?
にしな:元々結構R&Bっぽいノリ感とかも好きだし、ESMEさんのトラックってそういう部分を感じるし、サウンド感が好きなんですよね。だからすごく作りやすいっていうか、ナチュラルに楽しく、一緒に曲を作れるっていうイメージですね。ESMEさんに対しても、ESMEさんの音に対しても。
「LOVE」っていう意味での呪い
――歌詞のテーマはどんなふうに考えていったんですか?
にしな:それこそ社会全体を見てても思うんですけど、みんなが一致団結する瞬間って、もしかしたらハッピーじゃないことのほうが多いのかなって思うんです。たとえばコロナもそうですし、この曲で言ったらSNSのこととか、何か問題があったとして、それは一人ひとりのことではあるけど全体に対する問題でもあるし、っていう。別にそれを批判したいわけじゃなくて、「一緒の問題を抱えている仲間だよね」みたいな感じの一致団結っていうか、それで踊れるよねって。そういう感じが自分らしいなあって思います。
――歌詞に《近づいて呪いたいよ》っていうパワーワードが出てくるんですけど、この言葉ってにしなさんの中では自然に出てきたもの?
にしな:すごく自然に出てきてました。逆に書いてから、《近づいて呪いたいよ》ってわけわからない感じだけど、なんとなくのニュアンスじゃダメなのかな? 逆に変えた方がいいのかな? って、ナチュラルに出すぎたからこそちょっと悩んだりした感じで。でもまあ、このままいこうかなって。
――「呪い」って言葉は普段使わないじゃないですか。その言葉にどんな意味を込めたんですか?
にしな:いや、でも愛憎だなとは思うんですけど。この曲を通じて言ってることなのかもしれないですけど、「みんな寂しがりで可愛いね」って。でも本当は隣に誰かがいてくれたり、ここにすごく満ち足りていたりしたらいいのかもしれないから、満ち足りちゃうくらいそばで呪ってあげたいっていうか。そういう感覚ですね。
――今「愛憎」って言ったじゃないですか。辞書を引けば「呪い」っていう言葉にはたぶん「憎」の方の意味しかないと思うんです。でもそこに愛が含まれているのがおもしろい。というか、《近づいて呪いたい》というのは《愛したい》っていうのと同じ意味だなと思ったんですよね。
にしな:まさしくそうだなってすごく思います。なんか、サビを歌っててイメージする中で、みんなが一緒に踊ってくれたとして、そこには「LOVE」っていう意味での呪いしかないなっていうか。確かに「愛してる」っていう意味で《呪いたいよ》って使ってる。でも、ナチュラルにもっとさらっと「愛してる」って言いたい気持ちもあるんですけどね(笑)。
――そもそも「踊れる曲がいいな」って思ったのには理由があったりするんですか?
にしな:うーん、あるのかな? なんか、フェスとか出させてもらうたびに「やっぱり踊れるって強いな」って思ったりしたのもあるし、曲を知らなくてもノリ感でみんなが楽しめるっていうのはいいことだなって思ってたのもあって、そういう方向性になっていったのかなと思います。
バグっている方が人間らしい
――“bugs”っていうタイトルは?
にしな:タイトルは結構ずっと悩んで、レコーディングしてからも悩んで、なんかネット系の言葉をつけたいな、みたいな。その中で「バグ」っていいよなって。「bugs」ってかわいいし、「虫」っていう意味もあるし、めっちゃいいじゃんみたいな感じで付けました。
――「バグ」がかわいいっていうのはどういう感じなんですか?
にしな:なんか、1個ネジ外れちゃったみたいな。完璧じゃないっていうか、ひとつ欠陥があってどこかおかしいけど、それで成り立ってる、みたいな感じ。それって悪くないというか、むしろいいなって思いますね。人も、本当にきれいな丸というのも好きですけど、きれいな丸の人間なんていないだろう、みたいな。バグっている方が人間らしいだろうみたいな感覚はやっぱりずっとありますね。
――おっしゃる通り、きれいな丸の人間っていないじゃないですか。やっぱりどこかデコボコしてたり、ヘコんでたり、ヒビが入ってたりするものなんだけど、なんとかきれいな丸に見せようとして、きれいな丸に近づいていこうとする。それが社会だと思うんですけど、にしなはそこで「いやいや、ヘコんでてもヒビ割れててもいいじゃん」っていう。その取り繕わない感じがどんどん加速している感じがするんですよ。
にしな:たしかに。音楽をやる中で自分が伝えたいこととかは考えないで生きてるんです。でも、質問されて改めて考えたときに、やっぱり自分らしくいて、その姿で立っていることで、自分を見てくれる人に「あいつがあんな感じなら、こっちもこんなんでいいか」って思ってもらえることなのかなって。
それは音楽をやっていく中でもそうですし、人間としてもそうですけど、自分を好いてくれる人とか、支えてくれる人とかと出会えて、より自分が自分を好きになれてるからなのかも。好きになれてるというか、「これでいいんだ」と思わせてくれる。だからこそ、みんなにもそう思ってもらえたらいいなっていうのはあるかもしれないです。プラス、いろいろ悩んだりした結果、結局何を選んでも変わらなくない? みたいな(笑)。
――どういうこと?
にしな:何ていうんですかね。「こうあることが正解」ってことはやっぱりなくて。思ったことと違う方向に転ぶこともやっぱりあるんだなって思うし、そういうときに、もちろん目的に辿り着くこともすごく重要だけど、私にとっては過程がいちばん大切で。その過程で自分が自分らしくいられて、本当に好きな自分だったり、好きなもの、好きな人、そういうものを大切にしながらやっていけたら、その先どこに辿り着いてもいいなって思えるっていうか。やっぱり初めの頃は目的というか、「こうなりたい」「ここに行きたい」で苦しんでた部分が、なんか少しずつ目の先が変わってるっていうか。
――これから始まるワンマンツアー『Feeling』もそういう気分と繋がったものになるんですかね?
にしな:そうですね。なんかいろんなことで、それこそ目的のために「これが正解かな」「あれはどうだろう」って悩んだりするんですけど、結局私、いつも悩みに悩んで最後は第一直感に戻ったり、なんとなく感じるものを選び取ったりするんです。ここに来て、「それでいいじゃん」ってすごく思えるっていうか、自分のフィーリングがすごく大切だし、完成形じゃないことが好きだなって思うから。
完成形ももちろん好きなんですけど、なんかそういう「なんとなく」みたいなフィーリングみたいなものを持って、今回はそれをテーマにしていこうかなって思って、『Feeling』っていうタイトルをつけました。フィーリングのままにできたらいいなって思いつつ、あとは前回が結構ワチャってしたんで、今回は逆に振りたい気持ちもあります。もっと余白の大きな感じにしたいっていうか。どうなるのか、楽しみですね。
【リリース情報】
■ 配信リンク(https://nishina.lnk.to/bugs)
【イベント情報】

にしな ワンマンツアー2024『Feeling』

2024年2月12日(月・祝) at 北海道・札幌 Zepp Sapporo
2024年2月19日(月) at 大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2024年2月23日(金・祝) at 福岡・Zepp Fukuoka
2024年3月4日(月) at 東京・恵比寿 LIQUIDROOM
2024年3月15日(金) at 愛知 Zepp Nagoya
2024年3月24日(日) at 広島 CLUB QUATTRO
2024年3月30日(土) at 大阪 NHKホール大阪
2024年4月6日(土) at 宮城・仙台 Rensa
2024年4月13日(土) at 新潟 LOTS
2024年4月20日(土) at 香川・高松 オリーブホール
2024年4月28日(日) at 東京・NHKホール
料金:ADV. ¥4800
・チケット
一般発売(e+)(https://eplus.jp/nishina2024/) :2月1日(木)12:00〜
■ にしな オフィシャルサイト(https://nishina247.jp/)

Spincoaster

『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着