【製作発表詳細レポート】これは事件
?劇団四季の新作は超体感型ミュージ
カル『バック・トゥ・ザ・フューチャ
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2024年1月24日(水)、劇団四季の海外新作ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の製作発表会がおこなわれ、劇団四季 代表取締役社長・吉田智誉樹氏、筆頭プロデューサー、コリン・イングラム氏、演出のジョン・ランド氏が登壇。1985年公開のあの大ヒット映画がミュージカルとして上演されるまでの道のりや、四季の新たな戦略が各人より語られた。

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(撮影:上村由紀子)

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(撮影:上村由紀子)
会場に入って最初に驚かされたのが映画でもタイムマシンとして大活躍したデロリアンの展示。といってもこの日公開されたのはミュージカル版で使用されるものとは異なり、日本の公道も走行可能な映画版仕様の車体で、なんと個人の所有だそう。

劇団四季『バック・トゥ・ザ・フューチャー』製作発表会見(撮影:荒井健)
会見ではまず吉田社長より、なぜ四季が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の上演権を獲得したのかその理由が語られた。2022年に初めてロンドン・ウエストエンドで本作を観劇したさい、1950年代にタイムスリップしたような圧倒的な没入感と、コメディタッチでありながら、四季の理念である「人生は素晴らしい、生きるに値する」とのメッセージを受け取り感銘を受けたとのこと。また、これまで演劇やミュージカルにあまり興味を持っていなかった大人の男性にもリーチでき、新規の潜在的観客を獲得できる作品だと確信したそうだ。

続いて筆頭プロデューサーのイングラム氏より、大ヒット映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(以下『BTTF』)がミュージカル版として上演されるまでのストーリーが映像とスライドショーによって明らかにされた。初めての企画から8年の時を経て本作が上演された旅路を時系列で紹介したい。

【Photo by Sean Ebsworth Barnes 海外公演より】
・2012年

作詞・作曲家のグレン・バラードより『BTTF』のミュージカル化についてイングラム氏に言及があり、映画版の監督、ロバート・ゼメキス、脚本家のボブ・ゲイル、作詞・作曲家のアラン・シルヴェストらとカリフォルニアで会合。後日、彼らから「コリン、やろうぜ!」とのメールが届く。
・2013年
脚本と楽曲の概要が挙がり、ユニバーサル社との交渉開始。
・2014年
当初、演出家としてアサインされていたジェイミー・ロイドと俳優陣によるワークショップが始まる。この時は映画版の公開30周年に合わせ、2015年の開幕を予定し、ドローンを使用した実験もおこなわれたが、ジェイミー・ロイドが企画を離れる。
・2015年~2016年
作家陣による作業の継続。
・2017年
ロサンゼルスにてユニバーサル社ほか関係者への作家陣によるプレゼン。
・2018年
ロサンゼルスでの本読みがスタートし、新たな演出家候補としてジョン・ランド氏の名前が挙がる。その後、ロンドンでもワークショップを開催。
・2019年
映画版のナンバーに加え新曲も追加され、ロンドンでのワークショップが重ねられる。ロバート・ゼメキス監督、劇場オーナーが『BTTF』のファンクラブに出席し、彼らのアツい想いを聞く機会もあった。舞台装置やイリュージョン、映像関係、舞台で使用するデロリアンの実証実験、盆の検証などがおこなわれ、製作発表ののちにキャストのオーディションがスタート。

【Photo by Johan Persson 海外公演より】

・2020年
ロンドンにて稽古開始。2月にマンチェスター・オペラハウスにて1回目の公演の幕を開け、3月にはウエストエンドのアデルフィ劇場でとのオファーを受ける。が、同じく3月、コロナにより英国内すべての劇場が閉鎖。
・2021年
8月にアデルフィ劇場にて1回目の公演実施。9月には正式なオープニングを迎える。
・2022年
『BTTF』がオリヴィエ賞最優秀新作ミュージカル賞などを獲得。日本公演における劇団四季との協議が開始される。
・2023年
6月30日、ウィンター・ガーデン劇場にてブロードウェイ公演がスタート。
この後、2024年には北米版のツアーが始まり、さらに2025年4月にJR東日本四季劇場[秋]での日本版開幕を予定。英語圏以外での上演は日本が初とのこと。
イングラム氏の話で印象深かったのは、ロンドンでの作品ワークショップ参加俳優の多くがそのままウエストエンドでの公演にも出演したというエピソード。これは英国演劇界、特に商業的な側面もあるミュージカルでは珍しいこと。また、当初よりドク役として稽古に参加していたロジャー・バートがコロナ罹患によりアデルフィ劇場での初日を残念ながら休演。アンダースタディのキャストが見事に代役を務めたとの賞賛もイングラム氏より語られた。

【Photo by Johan Persson 海外公演より】
演出のランド氏は2幕の冒頭にも注目してほしいとコメント。シェイクスピアの『キスミー・ケイト』に着想を得たシーンだそう。ランド氏からは『BTTF』への溢れる愛情が強く伝わったが、どうやら彼はテーマパークの『BTTF』アトラクションおたく(?)で、クリエイティブスタッフの誰よりもテーマパークのマシンに精通しているらしい。そんな彼がマンパワーとイリュージョン、デジタルの掛け算でデロリアンのタイムトラベルをどう魅せるのか期待が高まる。

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』には映画版のクリエイターも多数参加しており、基となっているのは映画版PART1のストーリー。また、大ヒットしたヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのナンバーに加え、ミュージカル版の新曲も多数追加されているため、年代を問わず幅広い世代が楽しめる舞台になりそうだ。
日本版のキャッチコピー「未来を決めるのは、いつだって自分だ。」を胸にデロリアンでドクやマーティーと旅ができる日を楽しみに待ちたい。

劇団四季『バック・トゥ・ザ・フューチャー』製作発表会見(撮影:荒井健)
劇団四季ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は2025年4月よりJR東日本四季劇場[秋]にてロングラン上演を予定。
取材・文=上村由紀子(演劇ライター)

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