三谷幸喜「僕の『こういうものをやり
たかった』というものができたかな」
~柿澤勇人、宮澤エマ、迫田孝也によ
る舞台『オデッサ』が開幕
登場人物は三人。 言語は二つ。 真実は一つ。密室で繰り広げられる男と女と通訳の会話バトル。
1999年、一人の日本人旅行客がある殺人事件の容疑で勾留される。
彼は一切英語を話すことが出来なかった。
捜査にあたった警察官は日系人だったが日本語が話せなかった。
語学留学中の日本人青年が通訳として派遣されて来る。 取り調べが始まった。
登場人物は三人。 言語は二つ。 真実は一つ。
男と女と通訳の会話バトル。
最初に台本をいただいたときは、よくこんな設定を思いつくなあと、鬼の三谷幸喜だな……と思いました。
鹿児島弁や英語を使った芝居をやったことが無かったので、まずはネイティブの鹿児島弁を浴びて少しでもそれに近づけるようにと鹿児島に行きました。稽古場でも迫田さんとエマさんに一言一句セリフを全部CDに吹き込んでもらい、それを移動の車や稽古場で聞き続ける日々でした。
英語を喋りながら舞台に立つというのが初めてで、日本語と英語を喋っている私は同一人物ですが2つの役を演じているかのような気持ちになりました。
それぞれの言語で私の喋り方や動作がすごく違うというのを改めて実感して、そこをどう統一させていくのかというのがすごく難しかったです。
今まで翻訳劇をやるときに、日本語をより英語のニュアンスに近づけるという作業をしたことはありましたが、今回はその逆で、英語台詞を観客の皆さんが読む日本語字幕のニュアンスに近づけました。柿澤君も膨大な英語を喋るので少しでも短く、分かりやすく、言いやすくなるようにしました。私の演劇人生での初めてが多く詰まった作品です。
三谷さんが僕に「貴方はネイティブな鹿児島弁で努力も何もしていない」とおっしゃって(笑)。毎日稽古場に行くと、三谷さんとキャスト皆で丸くなって座って台本に対する意見を交わす“エマタイム”と呼ばれる時間があったのですが、そこでいかに「僕も一員だよ」という空気を出すのが大変でした(笑)。
鹿児島弁は慣れ親しんだ言葉なので、何か他のことで頑張れないかなと思い柿澤さんの鹿児島弁を出来るだけネイティブに近づけられるように指導させていただきました。英語に関しては温かい目で見守らせていただいています。
『オデッサ』はそんな普段舞台を観ていない方にも楽しんでいただける、僕の「こういうものをやりたかった」というものができたかな、と手応えがあります。
面白い映画と面白い舞台なら、舞台のほうがより面白いという想いが強いのですが、つまらない映画とつまらない舞台なら舞台のほうがもっとつまらないので、真剣に、命を懸けてやらないといけないなと思っています。
また、舞台はお客さんの反応や笑い声があって初めて成立するんだなと改めて感じています。特に今回は字幕も大変で、台詞と合わせて字幕を出すタイミングを調整したり、みんなで必死になって作っています。今日から3月までお客さんの前でやることでどんどん進化して完成していくと思います。それが舞台の醍醐味だと思いますし、お客さんがいなければできないことだと思っています。
僕らにとっても、観てくださる皆さんにとっても、見たことのない新感覚の舞台になっているかと思いますし、本当に豊かな観劇体験になると僕は確信しております。
ツアー公演を含めて全49ステージ一生懸命頑張りたいと思います。劇場でお待ちしております!
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