緑仙

緑仙

【緑仙 インタビュー】
VTuberの界隈が
形成されていく中で、
自分はちゃんと音楽を届けたい

バーチャルライバーグループ『にじさんじ』に所属し、ユニット・Rain Drops(無期限活動休止中)でも音楽活動を続ける緑仙。メジャー1stミニアルバム『パラグラム』は2023年ベガルタ仙台応援ソング「WE ARE YOU」、ドラマ『灰色の乙女』ED主題歌「ヒロイン」を含む全6曲を収録。ちょっと捻くれた視点の歌詞も中性的な歌声も、緑仙の多元的な魅力を物語っている。

鍵アカとか日常アカとかたくさんの顔を
持ち合わせるのって普通のこと

VTuber活動5年目にしてソロメジャーデビューですね。

世の中的には5年目って新しいほうだと思うんですけど、VTuberという括りの中では古参というか、本当に初期メンバーなんですよ。5年前はまだVTuberっていうものが世の中に受け入れられていなくて、“どうやったら認知されるのかな?”っていう感じで、“こういうのがあるんだよ”っていうところから活動していたので。最近は“VTuberです”と言うと“あっ、VTuberさんね”ってすぐ伝わるのがちょっと不思議で。それくらいの認知度になったんだと思いつつ、一方で初期の頃の“名刺を渡す”時期ではなくなってきているので、知ってもらうというのとは別の“やっていくんだぞ!”というアピールをしていかなきゃいけない中で、正直言って不安も8割くらいあって。不安が大きすぎて、初期の頃と比べて楽しめていない状況です(苦笑)。

プレッシャーみたいな?

そうですね。自分と同じ時期にデビューしたVTuberたち…引退してしまってだいぶ減って、今は9人ぐらいは残っているのかな? 初期の頃はそういう人たちと協力して何かをしたりだとか、配信するにしても誰かと一緒に何かをすることが楽しくて。歌に関しても今回のソロデビューの前にRain Dropsっていう6人ユニットでメジャーデビューさせていただいたので、“あなたひとりの力で頑張ってください”と言われることが今までなかったんですよ。そういう意味で不安な気持ちもあるんですが、逆にひとりだからこそできることもたくさんあると思っていて。自分が他のVTuberさんと違うと感じるのは、他のみなさんはVTuberが好きでVTuberになったという方が多いんですね。でも、自分がVTuberになった目的は、“友達を作りたいから”ってよく言っているんですけど、それと同じくらいこのVTuberっていう文化がすごく好きで、インターネットの新しいかたちだと思っているんですよ。初期のまだ固まっていない段階から自分で活動を始めたので、不安定だったVTuberの業界がどんどん形成されていく中で、自分はちゃんと音楽を届けたいというか。VTuberだからと今まで甘やかされてきた部分もあると思っているんですが、そういうのを抜きに“緑仙って音楽に対して、ちゃんと向き合っているよね”と思われるように、真面目に音楽に向き合いたいと思っているんです。他のライバーさんたちはエンタメに特化しているというか、すごく楽しい人たちが多くて、もちろん大好きなんですけど、自分はそんな愉快な人間ではないので。だからこそ、逆に真面目な部分が生かせると思っていて、そういう音楽への向き合い方みたいなものを見せられたらいいなと思っています。

では、今回のアルバム『パラグラム』のコンセプトは?

インターネットの世界って、アカウントを変えるだけですごく見え方が変わるじゃないですか。それって日常生活でも同じで、学校にいる時はすごく明るいけど塾に行くと暗いみたいな。鍵アカとか日常アカとかたくさんの顔を持ち合わせるのって普通のことだと思っているんですね。“アーティスト緑仙”としてみんなを引っ張っていく存在ではいたいんですけれど、緑仙っていうのはひとつではなくて、“こういう世界線の道もあったかもしれないよね”とか“こういう見え方もするよね”みたいな、緑仙のいろいろな面が見えるものにしたいっていうところで、そんな曲をいっぱい詰め合わせたアルバムになっています。

収録曲もいろいろ多彩な曲をやろうという感じで選曲したんですか?

そうですね。“失恋の曲も欲しいよね”とか曲のテーマに関しては、具体的な内容やストーリーみたいな部分まで自分も口出しさせていただきました。

「天誅」はポルカドットスティングレイの雫さんが作詞・作曲・編曲を、「ジガトラ」はcadodeのkoshiさんが作詞、ebaさんが作編曲を担当していますね。

「天誅」は“主人公はこういう女性で、よくある恋愛なんだけど側から見たら痛々しくて、漫画で言ったらこうで、ドラマだったらこうで〜”と細かいストーリーの部分まで汲んで作っていただきました。「ジガトラ」も自分なりのインターネット論じゃないですが、僕が普段感じていることを共有させてもらって制作に入りました。“緑仙からすると当たり前に普段発信していることだけど、それをcadodeでやるとバチバチにかます曲になって面白そうだね”みたいな感じで、お互いのいいところじゃないですが、どういうふうに見せるかっていう部分もしっかり話し合いをして進めていきましたね。

コラボした2アーティストから影響を受けたりしました?

「ジガトラ」は自分が録ったあとにkoshiさんがヴォーカルを録るかたちで歌入れしたんですけど、僕は結構スルッと録れちゃうというか、パッと録ってすぐに納得しちゃうタイプなんですね。自分の歌に関しての第三者視点があまり得意ではなくて、“今の良くなったね”って言われて“本当?”みたいな感じだったりするんですけど、koshiさんは一回録ってからもう一回ほぼほぼ録り直したりするんですよ。自分で納得いかなすぎて、“まだいける!”みたいな感じで。そういう他のアーティストさんのレコーディングの様子を見ることもなかなかないで、すごく新鮮だったし、面白かったっていうのが印象に残っています。実際に2回目のほうがめちゃめちゃうまくなっていたし。僕も一緒になって“今のテイク良かったよ!”とか言いながら進めて、合宿みたいな感じでしたね(笑)。「天誅」に関しては、自分が収録している横でずっと雫さんが“いけるよ”とか“うまい!”とか言ってくださって。でも、雫さんが納得いかない時は“もう一回いける?”って。“納得させないとレコーディングが終わらないのかな?”って思いながら(笑)。2曲とも今までにない環境の中で録ったので、それも含めて良い経験になりました。普段の、自分ひとりで録る時よりも全然超えてると思います。何より楽しかったですね、録っていて。

録り終わっての手応えはどうですか?

同じRecスペースで一緒に録ったりだとか、一緒に何かを進めるっていうことをソロでやるとは思っていなかったんですよね。「天誅」は雫さんとコミュニケーションをとりながら、曲ができるまでもそうですし、出来上がってからも“こういうふうに歌ったらいいよね”みたいなところでも、すごく共作感があるというか。自分は曲を作っている人間じゃないのに制作陣側に入れていただいているのがすごく嬉しくて! 今回のコラボが発表されてからも、雫さんが“収録、むずすぎ”とか“緑仙さん、歌うますぎ、ワロタ”みたいなつぶやきだったり、リアルタイムで頑張ってくださってるのがX(旧Twitter)で見れたりして。自分がデビューする前から、いちリスナーとしてポルカドットスティングレイさんが大好きだったので、こういうかたちで一緒に何かを作って、さらにSNSで発信してくださっているのが未だに不思議な感じです。「ジガトラ」はメロディーが僕的には“あぁ、cadodeだー”ってなるんですけど、歌詞はやっぱり僕のテイストが入っちゃっているので、人嫌いな感じとかが逆にkoshiさんのカッコ良いヴォーカルと相まって、めちゃくちゃお洒落な雰囲気にまとまっていて。koshiさんもXで“やっと発表できたぜ! かますぜ!”みたいな、普段のポストではあり得ないテンションで告知をされてたり。雫さん然り、koshiさん然り、めちゃくちゃテンション上がっているのが、なんとなく文面から感じ取れて嬉しかったし、みんなにも早く聴いてほしいですね。
緑仙
ミニアルバム『パラグラム』【初回限定盤A】(CD+Blu-ray)
ミニアルバム『パラグラム』【初回限定盤B】(2CD)
ミニアルバム『パラグラム』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着