日本国憲法イメージ

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9条とかどうでもいいけど大半の日本
人は憲法が何かを知らない【前編】

やれ憲法を護らないければならないとか、やれ憲法は時代に沿ったものに変えないといけないとか、憲法論をひけらかす輩がおります。しかし、残念ながら日本人の大半は憲法が何かを知りません。どうせ法律の一番偉いバージョンくらいにしか思っていないでしょう。そんな輩が憲法を語るとか笑止千万。まず、最低限憲法というものが何なのかを勉強してください。(※本原稿は2013年6月発売の実話BUNKAタブー2013年8月号に掲載されたものを一部修正。前編記事です。)
国民の大半は憲法が何か知らない 安倍内閣の支持率が高止まりです。7月の参院選も自民党が大勝。調子に乗った安倍晋三が、憲法の改正を強硬とかしちゃうに違いありません。
 と言っても、どうせ敗戦後の日本を占領していたGHQに押し付けられた胡散臭い憲法なんて、自由自在に書き換えるがよろしいかと思いますが、しかし問題はそこではありません。
 小学校や中学校で勉強したことを受験以外に使わないバカと、そもそもまともに勉強していないバカしかいない日本国民の大半は、近代民主主義国家における憲法とは、どんなものだったのかを完全に忘れているか、もしくは知りません。
 とはいえ国民が、そんな一億総白痴状態ではよろしくありません。そこで改めて、憲法とは何かを考えてみましょう。「国の最高法規で、あらゆる法律の親分的なもの」。このあたりが一般人(愚民)が普通に言いそうな答えです。当然、これだけでは不十分ですし、こんなものは憲法というものの本質を知らなくて、漠然と答えているだけです。
 それでは憲法と一般の法律の最大の違いはどこでしょうか?
まず一般の法律ですが、これは社会の秩序や安全を守ったりするために、国民の自由を少し制限するものです。民法とか刑法とか道路交通法などの国民生活のルールを定めたものと考えたらわかりやすいです。
 それに対して憲法はまったく逆で、こちらは国民が国を縛る道具です。放っておけばすぐに暴走する国家権力を監視する機能を担っています。つまり憲法を守らなければならないのは国や権力者サイドであって、国民ではありません。国民を国家から守るために憲法は存在しているのです。
 大前提の話ですが、そもそも近代国家は強大な力を持っています。軍隊と警察という2つの暴力装置を自由に操り、裁判権も保持し、国民個人の生殺与奪など自由自在です。そして前提として、政治家はもちろんのこと、官僚も検察も裁判官も警察もすべてが、鮮魚よりも早く短期間で腐敗します。権力者など、大抵はロクなもんじゃありません。それは歴史が証明していますし、そもそも日本の権力者たちを見れば明らかです。
 特に警察官など小物には顕著に表れます。もともと大したレベルの人間でもないくせに、国家権力の一部を手に入れた瞬間から自分はよほど偉くなったかのように錯覚し、威張り散らします。その大半は小学校の時にクラスの半分以下、勉強できない方に入っていたはずなのに困ったものです。しかし彼らの人格に問題があるのではありません。権力は人間をダメにする、そういうものです。だから特にバカには与えてはならないのです。というわけで、確実に腐敗し暴走する権力を憲法という鎖で繋いでおかなければ、すぐに国民の人権を侵害し始めるのです。

国を縛る憲法を国が変える怖さ ちなみに芸能人のプライバシーなどを暴き立てるような下世話なゴシップ雑誌を作っておきながら、当事者の芸能人に名誉毀損で訴えられたら、表現の自由を侵害されたと騒ぐのは大きな間違いです。なぜなら憲法21条で保障された「表現の自由」は国が守る規定であって、名誉を毀損された芸能人が、文句を言い表現を侵害する分には何の問題もありません。したがって表現の自由を主張できるのは、少なくとも国家権力によって、規制を受けたときだけです。つまり猥褻図画を販売して、国家の犬である警察に取り締まられた場合などは、正々堂々と表現の自由を主張できます。それが認められるかどうかは別の話ですが。
 ちょっと話が脇道に逸れてしまったので元に戻しましょう。前に書いたとおり、憲法とは国民が守るルールを定めた法律ではなく、国民の人権を国が侵害するのを防ぐために国が守るべきルールを定めた法律です。そして、もちろんあらゆる他の法律よりも憲法に書かれていることが優先されます。アメリカに押しつけられたクソみたいな憲法であろうと蔑ろにしてはなりません。ソクラテスではありませんが、「悪法も法なり」なのです。いくら内容に問題があり、不満があろうとも、一度施行された法律は改正されない限り遵守するのが民主主義国家というものです。なので国会で憲法改正を俎上に上げ、議論した上で改正しようという安倍内閣の手続きは決して間違っていません。ただし権力者を縛るための憲法を権力者サイドが改正しようとしているという事実を見逃してはなりません。
 かつて第一次大戦後のドイツでは、国民の支持を背景に、ヒトラーが合法的な手続きで、全権委任法を成立させ、ナチスが三権のうち、立法権と行政権を一手に担うことで、なし崩し的に当時世界で最も進歩的な憲法と言われたワイマール憲法を抹殺しました。一般的には、ホロコーストでユダヤ人を大量虐殺した独裁者としての側面ばかりがクローズアップされがちなヒトラーですが、経済行政に関しては間違いなく天才でした。第一次大戦で大敗し、完膚なきまでに叩きつぶされ、その上に世界恐慌が襲ってきて、ハイパーインフレが起こり、失業者が街に溢れかえる状態のドイツ経済をわずか数年で立て直したのは、どう考えてもヒトラーの功績です。そして、その実績を背景に国民の圧倒的な支持を集め、彼は独裁者になったのです。
 そして安倍晋三です。昨年、彼が首相になるまで、無為無策の民主党政権によって、日本経済はボロボロでした。円高は進み、株価は低迷し、まさににっちもさっちもいかない泥沼に陥っていたのです。その状態からアベノミクスを提唱、株価は上がり、円安も解消し、実体経済はどうであれ、瞬間的に日本経済は立ち直りました。当然、国民は熱狂し、支持率は上昇します。そして、その支持率をバックに安倍首相は、権力者にとって都合の良い法律改正に突き進みます。しかも日本国民の無知を良いことに、改正しようとしているのが、自らの権力を縛る目的の憲法というのが恐ろしいところです。

【後編記事「9条とかどうでもいいけど大半の日本人は憲法が何かを知らない【後編】」はこちら】
文/亀井S初出/実話BUNKAタブー2013年8月号(※一部修正済み)

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