【おいしくるメロンパン
インタビュー】
このアルバムの曲って
最後が明るい言葉になっている
前作『cubism』(2022年5月発表のミニアルバム)でそれまで内省的だった矢印を一気に外に向けたおいしくるメロンパン。7作目のミニアルバム『answer』には前作のモードを引き継ぎながらも、そのモードを完全に自分たちのものにしたというような自然体の強さがある。過去曲の続編と言うべき楽曲も含んだ今作について語ってもらった。
外向きのほうが
自分たちもやっていて楽しい
前作の『cubism』はおいしくるメロンパン史上もっとも外向きな作品でしたが、そこから今作まではどのように進んできましたか?
ナカシマ
その前の『theory』(2021年1月発表のミニアルバム)から『cubism』のところで大きな変化があったと思うんですけど、当時は恐る恐る踏み出した感じだったんです。でも、いい反応が返ってきたし、自分たちなりに手応えもあったので、“この方向で間違っていないな”と思えたから、今回は力強く外向きに踏み出せたという印象ですね。
間違っていないと思えたのは、例えばライヴでの反応とかが大きかった?
ナカシマ
そうですね。『cubism』のリリー スツアーを夏と秋にやったんですけど、そこでの反応が一番大きかったですね。やっている自分たちも楽しいと思ったし、もっといけるんじゃないかって思えたので。
原
うん。だから、今作もその大きな同じ道路にはいるみたいな感覚ですね。
今振り返ってみて、『cubism』の時に外向きにいこうと思ったのはどうしてだったんだと思いますか?
ナカシマ
『theory』を作っていた時は“こうしなきゃ”みたいな意識が強かったんです。“おいしくるメロンパンってこうだよな”という理想みたいなものを少し突き詰めすぎて、自分で作った制約でがんじがらめになっていたというか。でも、音楽ってそういうもんじゃないと思って、一回そういう自分が縛られているものを忘れて作ってみようと思ってできたのが、『cubism』の「トロイメライ」という曲だったんです。そこからちょっとずつ開けていった…だから、反動みたいな感じだったんですよね。
その反動が今も続いている感じなんですか?
ナカシマ
そうですね。“外向きに”っていうのはすごく意識していますし。そっちのほうが自分たちもやっていて楽しいって思えるんですよね。内向きにやるのも好きなんですけど、今はこっちでちょっとやってみようかなっていう感じです。
でも、今作には『cubism』のようにひたすら“外向きに”というだけではないベクトルも含まれているような気がします。
ナカシマ
そうですね。やっぱりどうして“捻りたい”みたいな気持ちは最初からあって、そこは全然変わっていないと思うんです。キャッチーなほうに寄ってはいるんですけど、どうしてもそういうのは出てくるっていうか。特に「garuda」なんかは、結局こういうのが好きなんで作っちゃっているっていう。でも、アプローチの仕方がキャッチーのほうから難解なところに向かっているっていうのが、そこは昔とは違っている。それはいい変化なんじゃないかと思います。
峯岸
今の話を聞いていて、“キャッチーなところから難解なところにいく”っていうのはなるほどと思いましたね。でも、「garuda」は果たして難解なのかな? 雰囲気は内向的なおいしくるメロンパンの感じがありますけど、初めてデモを聴いた時は“この始まり方なのにサビがめっちゃ明るいじゃん”って思ったんですよ。“希望に満ちあふれているぞ、このメロディーは”って。今までナカシマの曲からそういうことを感じたことはなかったので、結構衝撃でしたね。なので、“そういうことか!?”って。
“そういうことか!?”っていうのは?
ナカシマ
“やりたい”っていうか、“好きだから”っていうだけだよね、変なことが。
“変なこと”っていうのも言葉として間違っている感じがしますけど(笑)。
峯岸
3枚目の『hameln』(2018年7月発表のミニアルバム)を作る時、“何か面白いことをやりたい”っていうのが先行していなかった?
ナカシマ
他でやっていることと被っちゃダメだみたいな意識は確かにあった。それは“面白いことをやろう”というよりも、自分が理想とするものをやっていったらそうなったっていうイメージだけど。
峯岸
だから、めっちゃピンポイントの話になっちゃうけど、「garuda」があの始まりだったらあのサビはなかったと思うんです。作り方を変えたのかは僕は知らないですけど、モードが変わっていないと、ああいうアレンジは出てこないだろうなって。
ナカシマくんの中で作り方や発想の仕方を変えたというのはあるんですか?
ナカシマ
具体的にこれがこう変わったみたいなところはないですね。でも、意識が変わっているんだろうなって。何に重きを置くかみたいなところがちょっとずつ変わっている気がしますね。
そうやってモードが変わることで、制作のプロセスにも変化は生まれてきていますか?
原
でも、曲の完成までの工程は減ってきているかもしれない。昔は“もっと独特なことをしようよ”みたいな感じのほうが強かったけど、少しずつ“ここはシンプルでも十分面白いよね”みたいなことが増えてきて。悩む工程が少なくなってきた感じはあります。今も悩まないわけじゃないですけど、“どうしよう? 苦しい…”みたいなことは減りましたね。
峯岸
ナカシマが上げてくるデモからあまり大幅に変わらないんですよね、最近は。フルで作ってきてくれるし、そこから細かい各々のフレーズとかを変えたり、ちょっと足りないと思ったところを足したりとか、入れ替えたりすることも少しはありますけど、ほぼナカシマが作ってきてくれたものそのままなので。そんな作り方になってきている感じがあります。
ナカシマくんにとっては、そうやってある種スムーズに制作が進むというのはどうですか?
その感じも『cubism』の時とは違いますよね。“こっちに行くんだよ”という約束事の上でそこに向かうのではなくて、もっとラフにそっちを向いているという気持ち良さがあるというか。だから、バンドとしてのグルーブが強靭になったと思うんです。
ナカシマ
確かに。無駄な力が抜けた感じはあるかもしれない。
その結果、すごくフレッシュに聴こえるものになりましたよね。
ナカシマ
はい。だから、作っていても気持ち良かったですね。スラスラと出てくる感じがありましたし。