神戸のストリート発・Neibiss、tofu
beatsとの出会いとルーツを辿るーー
母親が拾ったウォークマンの衝撃から
、新EP「Space Cowboy」誕生までの軌
跡まで

神戸出身・在住のhyunis1000とratiffによる2人組、Neibiss。共に2000年生まれである彼らは神戸のストリートで出会い、2018年にNeibissを結成。これまでに『HELLO NEIBISS』、『Sample Preface』という2枚のアルバムをリリースしており、今年2022年にはtofubeatsのアルバム『REFLECTION』に参加するなど、注目度が高まっているアーティストだ。そんな彼らが、10月12日(水)に新作EP「Space Cowboy」をリリースした。今回のインタビューではtofubeatsやパソコン音楽クラブなど多彩なトラックメイカーが参加するこのEPについてはもちろん、二人の音楽遍歴、神戸のストリート、tofubeatsとの出会いについてなどあらゆる角度からNeibissを掘り下げる。
hyunis1000
ーーhyunis1000(ヒョンイズセン)さんが初めにヒップホップを意識したのが、拾ったウォークマンに入っていたキングギドラの「未確認飛行物体」だったんですよね?
hyunis1000​:そうですね。当時小学3年生くらいで、友達がi-Podを持っていたので僕も欲しいと、母親に頼んでみたけれど買ってくれなくて。だけどその後、なぜか母親がウォークマンを拾ってきてくれたんですよ(笑)。
ーーそんなことがあるんですね(笑)。
hyunis1000​:どこでどうやって拾ってきたかは謎なんですけど、「落ちてたから拾ってあげたよ」と言われて渡されました(笑)。そのウォークマンには色んな曲が入っていたのですが、その中にキングギドラの「未確認飛行物体」が入っていて衝撃を受けました。当時はヒップホップと認識していたわけではないんですが、とにかくその曲が衝撃で……。今となってみれば、それがヒップホップの出会いですね。
ーーアルバム『Sample Preface』に入っている楽曲「カメレオン」には、「昔ウォークマンで聴いてたブーンバップ」というリリックがありますが、それはこの時の体験からですか?
ratiff(ラティフ):それは僕が書いたものなので、また別ですね。でもその時のhyunis1000​の体験も汲み取って書きました。
hyunis1000​:そうだったんだ。
ratiff:僕もウォークマンを昔使っていたので。自分で買ったやつですけどね(笑)
ratiff
ーーratiffさんは幼少期にRIP SLYMEの音楽でヒップホップに触れていたんですよね?
ratiff:そうですね。母がヒップホップなど、いろいろな海外の音楽を聴いていて。RIP SLYMEのファンでもあったので、小さい頃からリビングで流れているような家庭でした。それで僕も自然と好きになって、その流れでRIP SLYMEのラジオを聴くようになり、そこでファーサイドとかネイティブ・タンなどが流れていて好きになっていきました。それが小学校の中学年〜高学年くらいですね。
ーーRIP SLYMEからヒップホップに入り、RIP SLYMEのルーツを聴くようになったということですね。
ratiff:そうですね。
ーーそこからはラップじゃなくてDJを始めるんですよね?
ratiff:ラップをしたくて、リリックを書いたんですけど思ったようなものができなくて。その後、中学生の時にDJのスクラッチに憧れたりレコードを買うようになり、高校生でターンテーブルを買ってDJを始めました。
ーーhyunis1000さんは中学生の時はどんな感じだったんですか?
hyunis1000​:僕は中学生くらいから、インターネットで色んな音楽を聴き漁るようになりました。小学生の時に母が拾ってきたウォークマンはもう壊れちゃっていて(笑)。でも祖父にi-Pod touchを買ってもらったので、色んな曲を聴いていました。家にインターネットが繋がっていなかったんでフリーWi-Fiを探して、エミネムやKOHH、XXXテンタシオン、5lackなど色んなラッパーに出会いました。
ーーXXXテンタシオンには強く影響を受けてるんですよね?
hyunis1000​:そうですね。聴いた時に初期衝動というか、ビリビリきて。それに人生を変えられた感じがあるので、自分もラッパーとしてこういう初期衝動みたいなものを聴いている人に与えたい、と思いました。
ーーなるほど。
Neibiss
hyunis1000​:その後、16歳くらいから1人でクラブに遊びに行くようになりました。ラップを始めたのもそれぐらいの年ですね。
ratiff:僕も16歳の時にクラブでDJを始めました。知り合いがジャズのDJをしていて、その繋がりで色んなヒップホップのDJとも繋がりができて。その流れで大阪のクラブでレギュラーでDJをすることになりました。月イチで1年くらいオープンDJをやらせてもらいました。今一緒に遊んでいるラッパー達ともそこで多く出会いましたね。学校には同級生でヒップホップが好きな人はあまりいなかったんですけど、1人だけラップバトルに出たことある、廊下でずっとフリースタイルしているやつがいて(笑)。
ーー廊下でずっとフリースタイルですか?
ratiff:そうなんですよ、それでそいつとユニット組もうぜっていう話になったんです(笑)。僕がGarageBand(楽曲制作用のアプリ)でトラックを作って、そいつがラップをして2〜3曲作りました。それから知り合いの繋がりで神戸の西元町駅近くにあるイベントスペースでライブをすることになったんです。お客さんも3〜4人くらいしかいない、ライブというよりは仲間内の交流場という感じだったんですけど。そこにhyunis1000も1人でライブをしに来ていて、そこで初めて出会いました。それからよく会うようになりましたね。
hyunis1000​:僕はその時、XXXテンタシオンと同じヒップホップコレクティヴ、メンバーズ・オンリーの一員でもあったスキー・マスク・ザ・ゴッドのフロウを日本語にしたオリジナル曲を作ってパフォーマンスしたりしていましたね。
ーーratiffさんは最初にhyunis1000さんを見た時はどうでしたか?
ratiff:怖かったですね。大きいし目つきも鋭くて。僕は90年代のヒップホップを好んで聴いていたんですけど、hyunis1000がやっているのはトラップでしたし。最初は全然喋れなかったですね。
hyunis1000​:僕も絶対に仲良くなれないだろうなと思ってました。
ratiff:でもそのイベントが毎週あったんですね。そこにはweek dudusとかMerry Deloとか、僕らのコレクティヴ(Nerd Space Program)の一員として今DJをやっている子とか色んな人がいたんです。僕も同級生でヒップホップの話をできる友達が多くなかったので、そこに行くのが楽しくなってきて。学校終わりに遊びに行ってました。そこで徐々に仲良くなっていって、2人で遊ぶ様になっていきました。
Neibiss
ーーそこから結成にはどう繋がっていくんですか?
hyunis1000​:僕がアカペラをratiffに送ってratiffがリミックスをしてくれたり、イベントでDJしている横で僕がサイドMCとして参加したりしていました。ガッツリなにか一緒にやろうという感じではなく、軽いノリでなにか一緒にやろうよという風に。その後、1曲作ろうという話になり、僕の家で一緒に作ったのが、Neibissの原型ですね。
ratiff:それがいつの間にかユニットとして成立し始めた、みたいな感じですね。
ーー神戸という街からの影響が大きいですね。
hyunis1000​:そうですね。神戸のストリートがなかったら出会ってないですね。
ーーヒップホップ以外でも色んな音楽に影響を受けてるんですよね。例えば、2人ともビートルズが好きなんですよね?
ratiff:そうですね。親がビートルズが好きで、ドキュメンタリーを見せてもらったりして好きになりました。「Strawberry Fields Forever」を2人で聴いて盛り上がったりしていました。hyunis1000​の親も好きだったみたいですね。あとはマック・デマルコみたいなオルタナティブなロックも2人でハマって聴いていました。緩めのギターサウンドにラップを載せたら面白いんじゃないかと思って作ったりしていましたね。
hyunis1000​:最近だとスティーヴ・レイシーのニューアルバム『Gemini Rights』もよく聴いてますね。
ratiff:他にも坂本慎太郎さんとか、キリンジとかフィッシュマンズとか。hyunis1000​は坂本慎太郎さんの曲がすごく好きですね。自分達のスタイルとして、気合を入れすぎない脱力した感じがずっとテーマにあって、ビートルズのサイケデリックなサウンドや、インディーロックのDIY感みたいな所からインスピレーションを受けることは多いですね。
ーーではリリースになったEP『Space Cowboy』について聴かせてください。今回はトラックメイカーが多数参加していますね。
ratiff:そうですね。今まで作った作品は僕がビートを作ってhyunis1000に投げるというやり方だったんですけど、今までと同じ作り方じゃない方がいいかなと思ってこういう形にしました。「Beautiful Dream」と「no sync」はtofubeatsさん、「PARK」はパソコン音楽クラブ、「New Cloud」はE.O.Uにそれぞれトラックを作ってもらいました。「Space Cowboy」だけ僕がトラックを作っています。
ーーtofubeatsさんとはどうやって出会ったんですか?
ratiff:Otohatobaという神戸のハコがあるんですけど、そこで開催されたイベントにNeibissで出演していた時、tofubeatsさんがお客さんとして来ていて紹介してもらいました。それから僕のDJ MIXとビート、Neibissで作っていたオリジナル曲の2曲をメールで送ったんですけど、その全部に丁寧に感想を返してくれました。その後にまたOtohatobaで会って、マスタリングを頼める人がいないから楽曲をリリースしていないことなどを話したら「やるよ」と言ってくれて。そういう経緯で、Neibissでリリースした1発目の曲は、tofubeatsさんがマスタリングをしてくれることになりました。
ーー凄いですね。
ratiff:インタビューで僕らの名前を出してくれたり、tofubeatsさんのアルバム『Reflection』に収録されている「don't like u(feat.Neibiss)」で一緒にやらせてもらえたりもして。
Neibiss
ーーそれが今回のEPの楽曲にも繋がっていると。トラックを聴いてどうでしたか?
ratiff:最高にかっこいいですね。2人でスタジオを借りてデモを聴いた時にむちゃくちゃ盛り上がりました。
ーー「PARK」はパソコン音楽クラブがトラックを作っていますね。
ratiff:紹介してもらったんですけど、パソコン音楽クラブのサウンドにのせて、ラップしている楽曲ってあまりないので面白いなと思っています。パソコン音楽クラブは2人ともヒップホップも含め、色んな音楽に精通しているんです。今回のトラックは僕らにとっても挑戦でした。
ーー「New Cloud」はE.O.Uさんがトラックを作っています。
hyunis1000​:E.O.Uさんは僕が京都のクラブ・West Harlemで仲間に紹介してもらって交流が始まりました。それで曲を作ろうという話になり、僕のソロ名義での活動で一緒にやってみることに。今回はその流れで、Neibissでも一緒に曲を作らせていただきました。
ーー「Space Cowboy」はタイトルトラックにもなっていますね。
ratiff:実は、この曲がEPの中で最初にできた曲なんです。セカンド・アルバムをリリースした後、hyunis1000とはあまり会えてなくて、そろそろ曲を作ろうという話になってできた曲です。ドラムの音色だけ僕が選んで、hyunis1000​がドラムの配置を選ぶ、というようにビートを2人で作ったんですね。初めてそういう作り方をしたので、僕らにとっても重要な曲になりました。そしてビートを聴いていたらカウボーイっぽい雰囲気を感じてきたんです。映画などで出てくるカウボーイだったり、彼らが集まる酒場をイメージして作りました。一番最初には馬の走っていく音を入れています。タイトルはアニメの『カウボーイビバップ』で使われている「SEE YOU SPACE COWBOY」という言葉とか、ジャミロクワイの「Space Cowboy」からも連想しました。僕らのコレクティヴも『NERD SPACE PROGRAM』ですし。
ーー先日出演された、RHYMESTER 宇多丸さんのラジオ『アフター6ジャンクション』で、Neibissについて宇多丸さんが「抜け感があって、このラインのアーティストは意外に今少ないからいいかもしれない」と言っていましたよね。この「Space Cowboy」からは特にその要素を感じました。今後についてはどのように活動していきたいですか?
ratiff:フェスにたくさん出たいですね。この前の『KOBE MELLOW CRUISE 2022』ではtofubeatsさんのステージに出演させてもらえて楽しかったです。フェスだとヒップホップ好きな人だけでなく、幅広い人に聴いてもらえる感じがしていいですね。さっき話したように僕らもマック・デマルコとか坂本慎太郎さんとか、ヒップホップ以外の音楽からも影響を受けているので。
ーーヒップホップフェスだけでなく、フジロックの様なフェスでも観てみたいです。
hyunis1000:『フジロック』は出たいですね!
ratiff:いつかメインステージに出られたら最高です。
Neibiss
取材・文=竹内琢也 撮影=高村直希

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