SUPER BEAVER、初のドキュメンタリー
映像が示唆するファンやスタッフとと
もに歩く現在地

いきなり緊迫したライブ本番の舞台袖からスタートするリアリティ。SUPER BEAVER初のドキュメンタリー映像作品をメンバーは「いつもの自分たち」と言う。2022年3月から7月、全国20ヶ所21公演に及んだ全国ホールツアー『SUPER BEAVER「東京」Release Tour 2022〜東京ラクダストーリー〜』の密着ドキュメンタリーは今、このバンドの音楽が世代を超えて共振しているタイミングで、その理由を知ることができるサブストーリーだ。10月から年末まで続くアリーナ公演に対するスタンスも自ずと見えてきた。
渋谷龍太(Vo)
――SUPER BEAVERは比較的ツアー映像のリリースが多いと思うんですけど、今回ツアーのドキュメンタリーを残しておこうと思われたのはなぜなんですか?
渋谷龍太(Vo):まずスタッフチームから、そういうのを作ってみたいという話を提案いただいたんですね。ドキュメンタリーを残そうというのは自分達からはなかなか出ないと思うので、そういう考えは全然なかったので。だけど「裏側を伝えた方が聴いてくださる方にいろいろ伝わるんじゃない? もっと伝わることが増えるんじゃないか」ということを言っていただいたので、「じゃ!」という感じですね。
――実際ご覧になって、ライブ映像とまた違う発見はありましたか?
上杉研太(Ba):ライブの映像はもちろん今までも出してきましたが、あれはもうオンステージしている姿というか。たまにちょっとオフショットが入っていたりもありましたけど、今回はもう自分たちのスタンスというか、オンステージしてないとこまで全部入っていて。どういった空気感や雰囲気でメンバーでありチームであるのか、ツアーに臨んでいるのかというところまでフォーカスが当たっていると思います。でも個人的にはそうやってバンドが進んでいくのは日常的なことなので、「これがいつものSUPER BEAVERだよなあ」というような目線で見ました。そういう視点をどこまで外に発信するかというのは、バンドとしてこういう一面も見てほしいと思ってくれたチームがいたり、1年間の密着番組を作っていただいたチームのひとりが「ぜひまたやりたい」とナビゲーションの映像をつくってくれてグルーヴが生まれたり、そういった方々のおかげでできていると思います。だからこそ、現時点での自分たちが映った作品になっているのかなと思います。
――しょっぱなからツアーファイナル本編後の割と緊迫した場面から始まるじゃないですか。そして後半、アンコールも終わった楽屋にずっとカメラが回ってたので、すごいことだな、と。ずっとカメラが回っているのはディレクターとの1年間密着の経験があるから違和感がなかったんでしょうか。
上杉:まあそうですね、この作品をやる前から一緒にやっていたので。もちろん膨大なデータの中から抜粋した一割がこの作品に入っているかどうかぐらい常に回していて。「今ちょっとやめてください」という言葉が出てしまうぐらい回していましたから(笑)。まあそうあるべきだと思うんですけどね、そうじゃないとドキュメンタリーと言ってるのに変な感じになるというか。
上杉研太(Ba)
――なるほど。映像の中でも話していますけど、改めてこのドキュメントを見て、ホールツアーとはどういうものだったと思いますか?
藤原“34才”広明(Dr):4人でバンドでやっているんですけど、当たり前のことで4人だけじゃできないことなんですよね。ツアーになるとだいたい固定のスタッフと一緒に回るんですけど、機材も全部持ち回らないといけないところもあったり、それこそ舞台を0から作んないといけないとか、やっていくと本当にたくさんの方に支えてもらって、お力をお借りしてライブをやってるっていうことがツアーをホールでやると分かりやすく見えてくるんです。で、このドキュメント映像を見ていると、スタッフの方々がいろんなことされているのが見えてくるし、喋ってるのはメンバーがほとんどでも、裏方というかたくさんのスタッフの方々も含めて、一緒にこうやって1本1本のライブができてるんだよというのを、ライブに来てくれた方が見れる作品だったらいいかなと思います。そういうところを僕らは大事にやっていきたいというか、大事にしているバンドだと自分たちで思うんで、ホールのライブだとより全員の力でうまく行った時は本当に嬉しかったりするし、4人だけでやってないというのが伝わりやすいのがホールツアーなんじゃないですかね。
渋谷:より地域性が出やすい、特色が出やすいかなというのもありますね。ホールといえど大小あり、いろんな形があるんですけど、ライブハウスほど癖はないと思っていて。なので、パッケージングはどこも似てはいるんですけど、その中で中身がすごく見えやすいから、その街の景色に似た空気になるというか。年齢層の幅もそうですし、自分の体感もそうですけど、その土地の空気感がすごく出やすいのがホールかなと思います。よりその場所に来てやってるなという実感をライブで感じやすいところかなと思いますね。
――作品の中で、SUPER BEAVERのライブに行くことが家族が集合する機会だという方もいましたし、それはホールならではのかなと。
渋谷:そうですね。ライブハウスにはなかなか家族を呼べないこともありますからね。幼過ぎても、お歳召した方でも、なかなかああいう空気が得意じゃなかったり、経験がなかったら行きづらいこともあるかなと思うんですけど、ホールだとそういった敷居がそんなに高くないので。席もありますしね。そういう機会に自分たちの音楽が使ってもらえている空気もホールでは感じますね。
――渋谷さんが各ホールの館長に挨拶しに行くシーンが印象的です。
渋谷:毎回挨拶していますね。ライブハウスほどその場所の人と出る人間の関係が密ではない場所でもあると思っていて。それはあまりいいことじゃないなと個人的に思ってるから、しっかりとその日にお世話になるので挨拶しに行ってるんですけど、結構びっくりされます。
柳沢亮太(Gt)
――話が変わるのですが、『東京』というアルバムのリリースツアーだったこともすごく大きいと思うんです。そこで、ライブでやっていくうちに楽曲がどのように届いていったかだったり、ライブで化けたなと実感した曲はありますか?
柳沢亮太(Gt):そもそも音源を制作した時点であくまでこちらから発信する限りでは一旦、最終形態ではあると思っています。その上で、今回はアルバムツアーなので、主にアルバム楽曲を中心にセットリストを組んではいるんですけど、これまでリリースした既存曲ももちろん入っているので、アルバム曲のみならず既存曲も今回のツアーならではの届き方がしたなと思うことがたくさんありました。そういう意味では、どの曲も化けたというか、どんどんどんどんその曲の意味を大きくしていったような気がしますね。ライブをする一番の醍醐味でもありますが、やっぱり生で受け取り合う、送り合うことで会場によって全然変わってくるので。例えば、自分の目に飛び込んできたその人の表情だけかもしれないんですけど、ある開場では同じ曲でもすごく笑顔で聴いてる人がいれば、目に涙を浮かべながら聴いてくださってる方もいたり。聴いてくださる方のその日の感情によって、きっと受け取り方も変わると思うので……。そういう意味でもライブで演奏してステージから気持ちを飛ばして、フロアからもまた気持ちを飛ばしてくれることを繰り返していくうちに、曲がより立体感だったり現実味を帯びて、どの曲もより生っぽくなっていくのを感じました。
――コロナ禍を経て、メンバーもスタッフもツアーの考え方が変わったという話もされてましたけど、考え方が変わった主な部分というのはなんだと思いますか?
上杉:変わらざるを得ない状況だったのは、バンドだけではないですからね。活動が止まってしまったり、いつも通りでいれなくなる時に何ができるのかを考えたり、そこでできなくてやめてしまった人や潰れてしまった会社だったりいろいろあると思うんです。普通に投げられたボールが投げられなくなった時に、どうするのかをめちゃめちゃ考えた。けれど、全然できなかったのがコロナ禍に入った最初の年で。それでもやれることを一個一個探して、自分たちで配信コンテンツをやったりライブも配信でやったりしました。そこから徐々にできることが増えていくうちに、やれたことに対する感謝とか、やれてよかったと思えること、今まで当たり前だと思ってたことが当たり前じゃないんだということへの感慨深さだったり、より「音楽やっててよかったな」と思える瞬間がツアーをしていて感じました。今まで大事にしてなかったわけではないけれども、また大事にできるというか。同時にメンバーやチームにも感謝したりとか。そういった気づきは強く感じた部分ではあったのかなと思います。
――ステージに出て行く直前のスタッフの雰囲気が頼もしくて。
柳沢:頼もしさはすごくありました。できるだけ多く会話を重ねて同じ熱量で向き合って一緒にやってこれたチームなので、たくさんのことを共有してきてたからこその雰囲気というのは、そういう舞台袖の様子からも感じていただける部分はあるのかもしれませんね。本当に、ずっと一緒にツアーを回ってきたチームなので。
藤原”34才”広明(Dr)
――第三者の目を通して見るドキュメンタリーだからこそわかったこともありましたか?
上杉:個人的には結構イメージ通りでした。 自分が思っている通りの、いつも見てる景色が映ってたので、「あ、こんなとこあるんだ?」という新しい発見よりかは「ありのままだな」というような感覚でしかないというか(笑)。
――でもそれが一番いいですよね。
上杉:うん。もちろん編集の仕方でこんだけいろんな物語が起きて、まあ常に撮ってくれてる中で、「ここにフォーカスを当てて取り入れたんだな」みたいなところはあるんですけど、でもそれが一番大事だと思うんですよ。自分たちがこう見せたいというところより、ずっとついてた人が「ここがいい」とか「素敵だ」と思ったから、ここを映像に残したいという観点でまとめてくださっているわけなので。そういった意味では、「あ、ここ使ったんだな」みたいな、「ああ、なるほどな」というような気づきはありましたけど。
――上杉さんにとっては具体的にはどういったところが?
上杉:ヤナギ(柳沢)とヒロ(藤原)が二人でインタビューをしてるシーンがあって、実は僕と渋谷も同じだけやってるんですけど、そこはほぼ使われていないとか(笑)。逆に使わないで俺たちが謎にブランコ乗ってるとこだけ使うんだみたいな、二人ずつやったから両方使わなきゃいけないんだみたいな観点じゃなくて、「あ、だったらここ入れよう」みたいな、撮ってはいるけど違うものを入れようみたいな、そういうところですかね。自分たちの工夫で撮ってるものをいい意味でフラットに、限られた尺に編集する感覚でやっていただいたんだなと思いました。
――ブランコ、貴重ですよ。
一同:(笑)。
柳沢:そうですよね、あんま見ない光景だった。
――お二人の性格の違いも見えました。
藤原:俺らが自然に過ごしてるだけだけど、たぶんそれが新しいというか。それ自体が面白く感じてもらえると思ってもらえたので、僕らからすれば日常のシーンを入れてくれたんだと思うんですけどね。だから僕らにとっては新鮮でもなんでもなく(笑)、「本当にいつもこうなんだよな」ということを見てもらって、「あ、そうなんだ」と思ってもらえるような映像になっていると思いますね。
――それから、改めて一つ一つのことをちゃんと言葉にする人たちなんだなと。「すごい、その日のうちに喋るんだ、問題解決に向かうんだ?」みたいな発見がありました。
上杉:それだけで価値があるかもしれないですね(笑)。
――結構な期間、しかも毎日違うコンディションの中で過ごして行くこととはなんなのか?という見方もできますよね。
柳沢:3月から7月なんで、まあ春から初夏?
上杉:今日現在に至るまで全部地続きに感じているので、あんまり3月から7月という期間が経ったという気もしてないですけど(笑)。
SUPER BEAVER
――先のことがあるから動けるのかなという気もしたりして。次の約束があるから頑張れる部分もあると思うので。
柳沢:でも、大前提で言えば、やっぱりライブがやりたくてバンドを組んでるようなもんですから。これまでも変わらずずっとツアーを組んで各地に足を運ばせてもらって、その中で曲が生まれてきて、その曲をまた直接届けたいと思ってまたライブの予定を決めていくわけで。それは自分たちでライブハウスに電話してブッキングしてた頃と基本的なスタンスは変わらない。それで言うとホールだからどうとか、ライブハウスがどうとかアリーナだからどうとかってことじゃなくて、単純にお互いがワクワクできる予定を立てたい。当たり前にホールやライブハウス、アリーナが埋まるわけじゃないですし、そこはこれまでと変わらず自分たちが挑みたいものと、ともに成せたときに絶対楽しいなと思うところに向かいたいっていう気持ちはずっと変わっていないと思うので。そういった中でのホールツアーがあり、そこと重なりながら次も自分たちの中で見据える、それはずっと変わらないなと思いますね。
――注意深くもなるし、大胆にもなる感じがあるのかなと思いました。そして10月からはアリーナツアーです。
柳沢:来月なんで、もうすぐですね。
上杉:もう言ってる間に(笑)。
――キャパシティが拡大するだけじゃなく、アリーナツアーの意味や今開催することをどう考えていますか?
渋谷:ツアーは活動の一環だと思っているので、楽しめる場所がいくつあってもいいだろうという気持ちでやってるんで。なのでライブハウスもやりたいし、ホールもやりたいし、アリーナでやりたいし、そこでしか見せられないものがたくさんあると思うので。それは自分たちが楽しみたいのももちろん大前提ですけど、見てくださる人がいろんな場所で楽しんでくれることを考えながらずっと活動しているうちの一つですね。ここに全てのフォーカスを当ててやってきたとかそういうことではなくて、長いスパンでお互い楽しみましょう、ということの一つだと思っています。
――SUPER BEAVERという音楽自体がどんどん広がっている状況に、アリーナツアーはすごくフィットすると思うんですよね。自分の中で聴いて温めている曲を実際にライブでまた見るという、そういう人がすごく増えているのかなと思います。
上杉:アリーナという規模で開催させてもらえることに限らず、ホールもライブハウスもそうですけど、やっぱりどこも当たり前にできるわけではないですからね。来てくださる方には、アリーナ公演が年末に残っているというワクワク感を生活の楽しみの一つになってくれたらうれしいなと思います。もちろんこのタイミングで初めてライブに来てくださる方もいるでしょうし、今からビーバーを知ってくださる方もいるかもしれない。だからこそ、「ライブに行きたい」と思ったその時に「どこも行けねえや」となるよりは、「行ってみたい」と思える状況は常に用意しておきたいなと。僕らはずっとそれを続けてきましたけど、そのうちどれか1本が今年最初で最後の1本になる方ももちろんいらっしゃると思うからこそ、アリーナだからというのではなく、大事な日、すごい楽しかったなと思ってもらえるような日になったらいいなと思います。
SUPER BEAVER
取材・文=石角友香 撮影=森好弘

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