【柴田 淳 インタビュー】
“失恋と言えば柴田 淳”という
柴田 淳ブランドを
確立するための20年だった
純粋にチャートを楽しむのも
面白いんじゃないかと
今作の収録曲はファン投票で選ばれたとのことで、曲順は投票結果の1位から順にですか?
そうです。ファン投票をすると偏りが出てしまいそうですが、うまい具合に票がばらけたことと、純粋にチャートを楽しんでもらうのも面白いんじゃないかと思ったので、そのままの曲順にしました。
タイアップがあったということもあると思いますけど、わりとシングル曲が多いですね。
でも、2位の「今夜、君の声が聞きたい」は3rdアルバム『ひとり』(2004年2月発表)の収録曲なんです。まさかこれが入るとは思いませんでした。当時、私は『ひとり』を失敗作だと思っていたんですけど、蓋を開けてみたら今もライヴで歌っている曲って『ひとり』に入っているものが結構あって、“その時の感覚は当てにならないんだなぁ”と思いましたね。10位の「あなたの手」も9thアルバム『あなたと見た夢 君のいない朝』(2013年3月発表)の曲で、こういうアルバムの曲を推してくださる方がいてくれるのは、本当にありがたいことだと思います。
比較的初期の曲が上位に多いのは、初期からのファンがたくさんいる証拠ですね。
そういうことですね。初期に出したものはそれだけ長くつき合っているわけで、最近のものとは曲に対する愛情の深さや思い出の数も変わってくるから、それもあって初期の曲が多くなるんだと思います。ただ、初期はデビュー前に作った曲も多いんですね。デビュー前は締め切りもないから、とことんこだわって作っていたので、デビュー後に締め切りに追われながら作ったものとは一曲にかけている時間が全然違うんです。そういうこともあって、曲として強いものが多かったんじゃないかと思います。
3位に入ったデビュー曲「ぼくの味方」ももともとはインディーズでリリースしていた曲ですしね。
そうですね。「ぼくの味方」と4位の「それでも来た道」はデビューのかなり前に作っていた曲です。あと、「HIROMI」とか…「月光浴」や「それでも来た道」はオーディションに送るデモテープにいつも入っていました。それが20周年のベストに収録されるというのは感慨深いですね。「未成年」も同じ頃に作っていたかな?
ご自身としてはこういうランキングになって“なるほどな”という感じですか?
良くも悪くも“柴田 淳っぽい”なって(笑)。きっと上位の10曲の感じが柴田 淳のイメージなんでしょうね。この20年を振り返った時に外せないと思うものが共通しているんだと思います。
ファンの方は20年分の楽曲を振り返って選んだと思いますが、きっとすごく大変だったでしょうね。
“出しすぎ!”と思うくらい出していますからね(笑)。シングルの存在意義を失わせたくないと思ってカップリング曲をアルバムに収録しない時期があったんですけど、そんなアルバム未収録のカップリング集も出したので、それも含めるとオリジナルアルバムは14枚出していることになるんです。気づけば憧れていたアーティストよりも多く出しているっていう。
限定盤のみのDISC3は柴田さんが選曲されたとのことで。
自分が好きとか嫌いとかではなく、“これは入ってもいいでしょう!”という感じの曲を選びました。曲ごとに思い出があるし。だから、“えっ、入っていないの!?”という曲を選びました。「あなたとの日々」「雨」「缶ビール」「幻」「未成年」とか、“みんなあんなに好きだと言ってくれていたのに入っていないじゃん!”という曲が結構あったので(笑)。
DISC3はそれを高音質にして収録しているので、生楽器の音がより映えている印象でした。
最近のアルバムは打ち込みが多くて、それはそれで良さがあるんですけど、やっぱり私は生音がいいと思いました。柴田 淳はこういう感じだなと改めて思います。実際に選ばれた曲はほとんど生演奏ですし。いろんなジャンルが好きでやってみても、最終的にはここに戻ってくるんだろうなという感じがします。
改めて柴田 淳の原点に返ることができた?
そうですね。それにみなさんが抱いている柴田 淳のキャラがよく分かりました。“こういうイメージを持っているんだ! 柴田 淳と聞いて思い浮かべるのはこの曲たちなんだ”と。
それこそ“これが柴田 淳ブランドだ!”と言える作品になったということですね。
すごくピュアな感じがしますね。幼い時に書いた曲が多いので。“幼い”と言っても20代ですけど(笑)。ファンのおじ様たちから見ると、きっとデビュー当時から私は変わっていないように見えるのかもしれませんね。…と言っても、もう40代ですけど(笑)。
美化されていて?(笑)
フィルターがかかっちゃっているんでしょうね。何をやっても可愛いって言うから、あのおじ様たちは。どこまで信じていいんだか(笑)。
今回の写真も可愛いと言ってくれるんじゃないですか?
(笑)。でも、新しい風を入れたいと思って、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイク、ビジュアルにかかわる人員を一新したんですよ。カメラマンが代わると変わるもんだなぁって。
限定盤には、さらに自叙伝もつくと。
原稿用紙125枚分、生まれてから現在までを書きました! 柴田 淳がどうしてこうなったのかが、きっと分かると思います。国語の成績は5段階で3だったんですけど、文章を書くのが好きなんだなって気づきましたね。その昔、ブログの文章量が論文並みになってしまっていたのは、そういうことだったのかなって(笑)。自叙伝とジャケットは自分にとってすごくチャレンジした部分なので、今回はベスト盤だから新曲を作ったわけではないのですが、そこはオリジナルアルバムを出す時のような気持ちです。ただ、自叙伝は内容がちょっと重いので引かれないか心配ですね(笑)。
取材:榑林史章