くるり、Bialystocks、サニーデイ、
折坂悠太(重奏)ら出演、神戸の新フ
ェス『KOBE SONO SONO’23』で音楽の
花を咲かせた全20組をレポート

『KOBE SONO SONO’ 23』2023.4.8(SAT)兵庫・道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク 大沢
4月8日(土)、道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク 大沢にて、新しいフェス『KOBE SONO SONO’ 23』が行われた。昨年10月には大阪城音楽堂にてプレイベント『SONO SONO in the moonlight』も行われ、秋の夜長の野音で極上の音楽に酔いしれた。そして2023年春。「おいしい・楽しいがあふれた空間で、心地よい音楽とともに」をテーマに掲げ、北神戸の豊かな自然、美しい洋風建物や庭園を背景にさまざまなカルチャーを詰め込んだ新たな園苑(SONO SONO)が誕生した。当日はFLOWER STAGE、FRUITS STAGE、MONKEY STAGEの3ステージに全20組のアーティストが出演。チューリップやポピーが咲き誇る最高のロケーションで、音楽を浴びながら、大人も子どもも自由に遊べる穏やかなフェスとなった。SPICEではそんな1日の様子をレポート。Spotifyにて、この日のセットリストがプレイリストとして公開されているので、当日に想いを馳せながらライブ写真と共に振り返ろう。

会場の神戸フルーツ・フラワーパーク 大沢は、大阪市内からだと車で約40分、JR三田駅からシャトルバスで約20分の豊かな緑の中にある「花と果実のテーマパーク」。園内一面に広がる70,000株の花々、異国感漂う洋風建築と庭園に囲まれた、新しさと懐かしさを兼ね備えた憩いの空間として親しまれている。フルーツ狩りやBBQ、夏はプールを楽しむことができ、敷地内には遊園地、地産地消の食材やアイテムが買えるファームマーケット、神戸ワイン専門店、ホテルがある。まさに1日中遊べる、広大なガーデンリゾートだ。
朝10時前。神戸フルーツ・フラワーパーク 大沢前には、大勢の人々が行列をなしていた。花壇に咲いた色とりどりのチューリップが目にも鮮やかだ。少し寒さを感じるものの天気は良好。最高のフェス日和となった。
オープンと同時に、続々と来場者が園内に吸い込まれてゆく。入場ゲートをくぐった先に見えてくるのは飲食店のテント。出店しているのは、地元神戸や兵庫県内で人気のお店ばかり。どのお店もこの日のために特別に準備をしてくれたそうだ。カレー、ピザ、たこ焼き、まぜそば、リゾット、焼き菓子などなど、様々なジャンルのフードがずらり。オシャレで、見ているだけでもワクワクする。
MONKEY STAGEの近くを通りかかると、何やら人だかりが。覗いてみると、日本伝統芸能猿まわし 二助企画による「猿まわし」が行われていた。お猿さんとトレーナーの息ぴったりの芸にギャラリーも大喜び。その近くには古本屋やビンテージ古着屋、雑貨屋の出店やシルクスクリーンのワークショップも行われており、賑わいを見せていた。FLOWER STAGE周辺にはキッチンカーも登場。バインミーや釜焼きのピザ、神戸牛の串焼き、フルーツサンドなど、こちらも地元の食材が盛りだくさん。ドリンクコーナーにはお酒とソフトドリンクが用意されていた。
そしてアーティスト物販テント横のBShopのブースでは、『KOBE SONO SONO』と人気アパレルブランド・DANTONのコラボTシャツを販売。メインビジュアルのイラストとロゴがあしらわれたオシャレなデザインで、早々に売り切れていた。
オランダの国立美術館を模した、お城のような外観の「神戸ホテル フルーツ・フラワー」の前に作られたのがFLOWER STAGE。その向かいにあるイベント広場にFRUITS STAGEが作られた。FLOWER STAGEは建築集団・々(ノマ)が、FRUITS STAGEは電子工作グループ・ヅカデン(宝塚電子倶楽部)がステージの設営と装飾を手がけている。フルーツ・フラワーパークの風景とイベントのコンセプトにピッタリなステージで、フードなどの出店も含めて、初開催のフェスを成功させようとみんなで力を合わせて手作りしているところからも、お祭り的な一体感が生まれていたように思う。
ちなみに2つのステージは隣接していて、移動がかなり楽だ。ライブは交互に行われるため、ほとんど全てのアーティストを音被りもなしで見ることができる。前置きが長くなったが、ここからは各アーティストのライブをダイジェストでレポート!
The Songbards
The Songbards 撮影=渡邉一生
朝早くから多くの観客が詰めかけていた、FRUITS STAGE。今か今かと開演が待たれる中、地元神戸のThe Songbardsが登場。イベントの幕を開ける、1曲目は「春の香りに包まれて」。神戸に生まれた、新しい春フェスで初めて鳴らされた音が、神戸で生まれたThe Songbardsが初期の頃から歌い続けている、春の曲。会場の雰囲気、そして開催を待ち望んでいた観客の気持ちとこれ以上ないほどにぴったりで、早くもこの日が最高の1日になることを確信させてくれるような幕開けに。
The Songbards
MCでは、上野皓平( Vo.Gt)が柴田淳史(Ba)が生粋の神戸っ子であることに触れ、フルーツフラワーパークでの思い出を振り返る。そして改めて、柴田が5月で脱退することについても触れ「窓に射す光のように」「ダフネ」「Inner Lights」と歌い音を紡いでいく展開には感極まるものがあった。神戸の地で原点に立ち返りつつ、未来へと音を届けていくような、ぬくもりあるサウンドでその場いる全ての心を、明るく照らす最高のスタートを切った。
Chilli Beans. 撮影=ヨシモリユウナ
FLOWER STAGEにはFM802 DJの土井コマキが登場し、「準備はよろしいでしょうか?!こちらのステージのトップバッター、飾っていただくのはChilli Beans.です!」とChilli Beans.を呼び込む。Moto(Vo)とMaika(Ba.Vo)のツインボーカルが印象的な「School」から爽やかにライブスタート。
ゆらゆらと体を揺らすオーディエンスにLily(Gt.Vo)も笑顔を見せる。「マイボーイ」「シェキララ」、Vaundyとのコラボ曲「rose feat. Vaundy」など人気曲を披露して会場を盛り上げ、ライブハウスで見せる熱狂とはまた違うチルなステージで、気持ち良い風を吹かせたChilli Beans.だった。
Mega Shinnosuke 撮影=オイケカオリ
バンドのサウンドに煽られて、Mega Shinnosukeが勢いよく登場。「Thinking Boyz!!!」から「運命的」へと繋げると、早くも会場は一体感に包まれエバーグリーンな景色が広がる。「このフェス最高すぎるな!日差しが良い。ホテルも近いし、よく寝れました!来年も呼んでね」と早速、『SONO SONO』を気に入った様子。
「恥じらいなんて捨ててくれ! こんな自然の中に来たんだから、踊ろうぜ! 何か最高のものを持って帰ってください」と「Sweet Dream feat.Jinmenusagi」「O.W.A」と畳み掛ける。ビートに合わせてクラップ&ハンズアップで会場が揺れる、フリーダムな盛り上がりに。最後は刹那的に「明日もこの世は回るから」をかき鳴らし、センセーショナルにステージを駆け抜けて魅せた。
never young beach 撮影=渡邉一生
出だしから開放的でハッピーなお祭りムードを創り出したのはnever young beach。「らりらりらん」「哀しいことばかり」を経て「皆この曲知ってる!?知らないでしょ、だって新曲だから〜!」と安部勇磨(Vo.Gt)が叫び「Oh Yeah」を披露。巽啓伍(Ba)と鈴木健人(Dr)、そしてサポートメンバーの岡田拓郎(Gt)、下中洋介(Gt)、香田悠真(Key.Pf)と共に6人でがゴキゲンなグルーヴを奏でる。贅沢なことに約半分が新曲というセットリスト。しかし初見の曲でも陽気に楽しめるのがネバヤンの魅力だ。
後半は安部が「知ってる曲ばかりやります。皆どれくらい声出せるのか楽しみだったんで。やれるのかい!?」とテンション高く叫び「どうでもいいけど」「あまり行かない喫茶店で」とアンセムを連投し、ラストは「明るい末来」で締め括った。大人も子どもも関係なく踊らせる巻き込み力はさすがの一言だった。
ミツメ
ミツメ 撮影=ヨシモリユウナ
続いて、大阪城音楽堂で開催されたプレイベントにも出演していた、ミツメが登場。「睡魔」に始まり「なめらかな日々」、「チョコレート」と続く。心地よい春の風が吹き抜け木々が揺れる、最高のシチュエーションで浴びる、昼下がりのミツメ。溶けちゃいそうなほど気持ちがいい、溢れる多幸感にうっとりする。
「あこがれ」「トニック・ラブ」とシームレスに繋がれ演奏がジリジリと熱を帯び、「エスパー」、そして「煙突」でステージを終えると、心地よさに混ざった興奮と歓喜がスパークしたように拍手喝采が起こる。しばらく余韻に浸って動けない人、想い想いの感想を語る人たちで溢れていた。その光景が、なんとも『SONO SONO』らしく、ミツメとの時間の密度を物語っていたように思う。
安藤裕子 撮影=渡邉一生
椅子に座り、ピアノの伴奏で荒井由実のカバー「翳りゆく部屋」をしっとりと響かせた安藤裕子。「All the little things」「UtU」では椅子に座ったまま上半身を大きく揺らし、魂を込めた歌声で観客を圧倒する。MCでは「風がすごくて(笑)。髪の毛セットした意味がないねえ」と寒そうに手を擦り合わせつつ、「この間、久しぶりに生まれ育った家に行きまして、小さい頃通った道のりを思い出して作った曲があるので、大人になった人は昔のことを、子どもは今の気持ちを聞いていただけたらと」と郷愁たっぷりの未発表曲「Family ties」を初披露。美しい歌声が青空に溶けてゆく。彼女の凛とした佇まいと母性は見る者を虜にする存在感を放っていた。
ドミコ 撮影=オイケカオリ
リハから異様な熱気と緊張感を帯びていた、ドミコのステージ。「びりびりしびれる」から、リリースされたばかりの新曲「なんて日々だっけ」も披露。さかしたひかる(Vo.Gt)と長谷川啓太(Dr.Cho)が二人で打ち鳴らされる音に、酔いしれるオーディエンス。
さかしたの歌が野外にたゆたいに伸びていった「あしたぐらいは」、サイケなインスト「ばける」から「化けよ」でフロアを覚醒させるかのように激しくプレイするシーンで圧倒。イントロで歓声が起こった「ペーパーロールスター」ではシャウト。バキバキの演奏で魅せる、ライブならではのアレンジ。血のたぎるステージングで、震えるような興奮と余韻を残していった。
サニーデイ・サービス 撮影=渡邉一生
FLOWER STAGEの折り返しはサニーデイ・サービス。田中貴(Ba)による「恋におちたら」のイントロが鳴り響くと歓声が上がる。曽我部恵一(Vo.Gt)の歌声が風に乗って遠くまで伸びる。春の野外にぴったりの「桜 super love」や大工原幹雄(Dr)のビートが力強く響いた「セツナ」をはじめ、新旧織り交ぜた楽曲をグルーヴィに披露した後、曽我部が<そっちはどうだい うまくやってるかい>と「青春狂走曲」のサビの歌詞を朗読すると、察した観客から大歓声が湧き上がる。語りかけるような曽我部の熱量高い歌声は世代を超えて胸に響く。ラストは最高の一体感で会場を丸ごと包み込んだ。
唯一の屋内ステージである、常設劇場「神戸モンキーズ劇場」を利用したMONKEY STAGEでもさまざまなライブが。ダンス・演劇・舞台・アパレルブランドと幅広い活動を行うクリエイター集団の四畳半帝国は、華麗なダンスパフォーマンスを披露。シンガーソングライターのやまもとはるとは、朴訥とした中に力強さを感じさせる歌声と良質なメロディーの弾き語りで会場を魅了した。FRUITS STAGEでThe Songbardsの出番を終えた上野皓平(Vo.Gt)はソロの弾き語りで登場。神戸育ちの彼は「神戸モンキーズが本当に楽しみ」と微笑み、ゆったりと歌声を響かせる。The Songbardsの楽曲もバンドセットとは違う魅力で爽やかに歌い上げた。
四畳半帝国
やまもとはると 撮影=オイケカオリ
上野皓平 撮影=ヨシモリユウナ
(後編へつづく)
会場を周遊していると、日中は太陽の光が差すとあたたかで、ぽかぽかと日向ぼっこをしながらのんびりしている人が多く見受けられた。『KOBE SONO SONO』の良さは、おひとりさまからファミリーまで、どんな人でも伸び伸びできるところだ。音楽は園内のどこにいても聴こえてくるので、疲れたらベンチに座って休むこともできるし、がっつりライブを楽しみたい時はステージの近くに行くこともできる。
チケット提示で遊園地「神戸おとぎの国」のアトラクションが1回無料になる券も配布されており、家族連れも安心して子どもたちを遊ばせることができた。もちろんマナーやルールを各自しっかりと守っているからこそだが、大らかで実に良いフェスだなと感じた。
神戸モンキーズ 撮影=オイケカオリ
イベントもいよいよ後半へ。MONKEY STAGEには、普段この劇場をホームに活動する神戸モンキーズが登場。望美トレーナーと「ハヤテ」のコンビ「三和音」が、楽器演奏やジャンプ芸を披露して拍手喝采を受けていた。そして神戸出身のシンガーソングライター・みらんはリラックスした様子で弾き語りを披露。声も楽器として大切にしたいと、口笛やスキャットも存分に織り交ぜて会場を魅了した。MONKEY STAGEのトリはKaco。一声放つだけで空気を変えるパワフルでブルージーな歌声に思わず息を飲む。どこまでも伸びやかで突き刺さるような美しさに浄化されるようだった。
みらん 撮影=ヨシモリユウナ
Kaco 撮影=ヨシモリユウナ
浦上想起・バンド・ソサエティ
浦上想起・バンド・ソサエティ 撮影=ヨシモリユウナ
続くFRUITS STAGEは、浦上想起・バンド・ソサエティ。多重録音 音楽家・浦上想起がキーボード&ボーカルで、平陸(Dr)、しょけん(Gt)、松丸契(Sax)と共に登場。この日が、野外フェスでのライブは初となる。1曲目「新映画天国」から緻密かつ遊び心あふれる、美しいバンドサウンドに身を委ねて踊る観客たち。「芸術と治療」ではより軽快に奏で、ヴォコーダーで声を変え挨拶するなど、全身で音を楽しむようなステージングに心が踊る。「遠ざかる犬」からはよりじっくりと聴かせる展開に。「未熟な夜想」「金星の呼気」と聴き耽けっているうちに、未発表の新曲を披露しあっという間にラストを迎えた。音源とはまた違った熱量とフィジカルをともなった貴重なライブ体験に。その感動を表すように、ステージをあとにするメンバーには惜しみない拍手が送られた。
藤原さくら 撮影=渡邉一生
サポートに皆川真人(Key)、Curly Giraffe(Ba)、白井健一(Dr)を迎えた編成は初めてという藤原さくらは、1曲目から「Waver」で丸くスモーキーな歌声を心地良く響かせる。ブルージーな面も可愛らしい面も見せて表情豊かに楽曲を紡ぎながら、MCでは「本当に素敵なフェス。呼んでいただけて本当に嬉しいです」と感謝を述べつつ「寒い。寒すぎる」と本音を吐露。
安藤裕子に「風でヘアセットもメイクも全部なくなると思った方がいいと言われた」というエピソードを明かして会場を和ませ「また来年も出れるといいな〜」とアピール。ラストは大滝詠一のカバー「君は天然色」を、優しく温度感のあるアレンジで素敵に演奏してライブを終えた。
トクマルシューゴ 撮影=オイケカオリ
夕暮れ時のFRUITS STAGEには、ドラムにベース、トランペットにアコーディオンと、それから見たことがない楽器がたくさん並んでいる。どんなライブが繰り広げられるのかと、ざわざわしているところにバンドメンバーと登場したトクマルシューゴ。「Katachi」から重なり合う音がとても楽しげで、だけど野外の広いステージもなんのそのと飲み込んでいくようなスケール感は凄みがある。
ふと足元に目をやると、トクマルは日も暮れ始めた北神戸の山間はそこそこ肌寒いのに、しっかりと裸足だったトクマルシューゴ。神戸の地を踏みしめ風土を感じながら、音を作り、歌に変えているのだろうかと思うほど、この場所、この瞬間にぴったりな祝祭感あふれるステージ。「PARACHUTE」では子どもたちも合唱、「最近、西陽が苦手で……」というまったりMCからアニメ「ちいかわ」のテーマを鳴らす、トクマルの人柄と音楽がつくる心温まるシーンの連続に会場は笑顔でいっぱいに。
折坂悠太(重奏)
折坂悠太(重奏) 撮影=ヨシモリユウナ
夕暮れの折坂悠太(重奏)なんて最高すぎる、と思ってステージ前に集まった人にとっても折坂悠太(重奏)にとっても、この日は特別な日となった。山内弘太(Gt)、yatchi(Key)、宮田あずみ(Cb)、ハラナツコ(Sax)、senoo ricky(Dr)、宮坂遼太郎(Per)、そして折坂。この7人による重奏が、この日を以って一旦区切りをつけてお休みに入ることがMCで明かされたのだ。
2019年の結成から約3年。「苦節を共にしてまいりました。今日精一杯やって楽しく終わりにしたいと思います」との突然の言葉に観客も戸惑いを見せたものの、「さびしさ」でじっくり始まり、バンド感が炸裂した「心」、壮大に空気を動かした「鯱」、弾き語りからの高まりが美しすぎた「トーチ」、そしてラストの「芍薬」までの全5曲を享受する素晴らしさは、筆舌に尽くし難い想い。悔いが残らぬよう全身全霊で演奏するメンバーの姿が胸に迫る。荘厳で美しい生き様を咲かせて、折坂悠太(重奏)は最後のステージを終えた。どうか、またいつかどこかで会えますように。思わずそう願わずにはいられなかった。
Bialystocks
Bialystocks 撮影=ヨシモリユウナ
FRUITS STAGEのトリを飾るのは、プレイベントではオープニングアクトとして出演していたBialystocks。すっかり日がくれて、ヅカデンが手がけた電飾がより鮮やかにステージを彩る。この日も甫木元空(Vo.Gt)と菊池剛 (Key)、そしてサポートに西田修大(Gt)、Yuki Atori(Ba)、小山田和正(Dr)を迎えたバンド編成で登場。菊池の鍵盤から、「差し色」でライブをスタート。
続く「Upon You」「灯台」と情景が浮かぶ歌とメロディーに身を任せ、楽曲世界にダイブ。熱のこもった甫木元のボーカルが、暗闇に一筋の光を差すように突き抜けていく。自己紹介の挨拶や感謝の言葉、ひとことひとことからいつになく気合いが込められているようにも感じた。その気迫を体現するように力強くダイナミックで、そして繊細で美しい、心震わせるステージ。曲が終わるごとに湧き上がるさまざまな歓声や拍手の大きさは、ひとりひとりの心の底から溢れ出た感動を興奮を表していたように思う。
大トリをつとめたのはくるり。完全に陽が落ち、もはや真冬並みの寒さとなっていたが、ステージ前は最後まで残った観客でぎゅうぎゅうだった。ステージの照明が落ちると歓声が上がり、夜空に天然の星空が浮かび上がる。まさに星空の下のライブだ。サポートの野崎泰弘(Key)、松本大樹(Gt)、あらきゆうこ(Dr)に続いて岸田繁(Vo.Gt)と佐藤征史(Ba.Vo)が登場すると大きな拍手が贈られる。「琥珀色の街、上海蟹の朝」から「ばらの花」「愛の太場」「Superstar」と連発するアンセムに会場は大歓喜。
MCでは佐藤が「寒いね。皆さん大丈夫ですか?」と気遣うが、ステージもかなり寒いはず。その寒さを払拭するように「Liberty & Gravity」で<ヨイショッ! ガッテンダ!>と皆で叫び体を揺らす。さらに「everybody feels the same」でダンス! そして岸田が「私は京都市北区出身なんですけど、ここは神戸市北区。神戸市北区もなかなかのものですね」と賞賛し、「道の駅ということで、カーに乗ってる人たちが集う場所があるじゃないですか」との前振りから「ハイウェイ」へ。最後は超名曲「東京」を大きく響かせて約40分のライブを締め括った。音楽は心をあたためてくれる。改めてそんなことを体感した圧巻のステージだった。
くるり 撮影=渡邉一生
こうして初回の『KOBE SONO SONO’ 23』は大団円で終了した。全体的に居心地抜群、穏やかで、最高の春フェスだったと思う。すでにこのフェスを気に入った観客やアーティストから「来年も開催してほしい」との声が多く上がっていた。素晴らしかった『KOBE SONO SONO ’ 23』に想いを馳せつつ、来年の開催を楽しみに待っていよう。
取材・文=久保田瑛里(FLOWER STAGE、MONKEY STAGE、その他)、大西健斗(FRUITS STAGE)
写真=KOBE SONO SONO 提供(撮影:渡邉一生、ヨシモリユウナ、オイケカオリ)

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