L→R 金澤ダイスケ(Key)、山内総一郎(Vo&Gu)、加藤慎一(Ba)

L→R 金澤ダイスケ(Key)、山内総一郎(Vo&Gu)、加藤慎一(Ba)

【フジファブリック インタビュー】
僕らも支えてもらった分、
支えたいし、
みんなと一緒に進みたい

コラボレーションは
ずっとやりたいと思っていたんです

でも、それはそれぞれが作った曲について言えるんじゃないですか?

金澤
そうですね。「楽園」のデモで僕があんまり弾けないのに弾いたギターをそのまま山内くんに弾いてもらいましたからね。
山内
カッティングね。ダイちゃんにとってカッティングってChicのナイル・ロジャースじゃなくて、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのアベフトシさんなんだっていう。やっぱりエッジの効いた人なんだって思いました。

また、今作は話題に出た「赤い果実 feat. JUJU」「たりないすくない feat. 幾田りら」をはじめ、コラボレーションも聴きどころですね。

山内
コラボレーション自体は「カンヌの休日 feat. 山田孝之」(2017年2月発表のシングル)で山田孝之さんと、「Tie up(フジファブリズム)」(2019年11発表のシングル)でバカリズムさんとやったりしてますけど、ずっとやりたいと思っていたんです。ただ、誰とやるかってなった時、取ってつけたようになるのが嫌だったので、サウンド的にも、その人との関係性的にも、『I Love You』の中でフジファブリックのサウンドにハマる人に参加してほしいと思ってJUJUさん、幾田さん、秦 基博くんにオファーさせてもらいました。まぁ、秦くんは普通に友達ですけど…普通にって言い方はおかしいか(笑)。

では、歌う人のことを考えて曲を作ったのですか?

山内
そうです。OKをもらう前に勝手に作って、それを聴いてもらったんです。例えば、JUJUさんは『俺のRequest』というJUJUさんのカバーアルバムで僕らの「手紙」(2018年6月発表の配信シングル)をカバーしていただいたんですけど、最初に聴いた時に“うわっ、こんなにいい曲だったのか!?”と涙が出るくらい素晴らしくて。その後、JUJUさんのカバーライヴ『ジュジュ苑スペシャル 「俺のRequest」』というオンラインライヴに呼んでもらったんですけど、そこで「手紙」と大澤誉志幸さんの「そして僕は途方に暮れる」を一緒に演奏させてもらって、自分の出番が終わってからも会場でライヴを観ていたんです。本当にいいライヴだったんで、家に帰ってから“イントロはこういうコード進行にして〜”とJUJUさんのイメージで「赤い果実」を作り、その日のうちにレコード会社のスタッフに送って、“これでデュエットしてもらえないですか?”とお願いしてほしいと伝えました(笑)。

そしたらOKしてもらえたわけですね。

山内
この曲、コード進行がちょっと変わっているんです。キーになるコードがC#マイナーなんですけど、イントロはC#メジャー7から始まる。だから、ちょっと転調感のある華やかなコード進行になるんですけど、それは完全にJUJUさんのイメージなんです。その感じを音でも表現できないかなと思って。

「たりないすくない feat. 幾田りら」は加藤さんの作詞作曲ですが、これはどのように作ったのでしょうか?

加藤
コラボするとなり、候補の人を自分たちで勝手に“この人がいい”“あの人がいい”と言っていた中で“幾田さんってすごくいい声だね”って話になり、“たぶんダメだと思うけど、とりあえず声だけかけてみよう”となったんです。そしたら、まさかのOKをいただけて。
山内
快諾いただけたんですよ。
加藤
“嬉しい”と思いました。それで、“どれを歌っていただけますか?”と 4曲ぐらい候補を投げたら、「たりないすくない」を選んでくれて、そこから制作が進んでいったんですけど。

選んだ理由について幾田さんは何かおっしゃっていましたか?

加藤
歌詞を見た時、普段あまりこういうことは歌わないと思ったそうなので、チャレンジの気持ちもあって歌ってくれたのかな? 終わったあとも“楽しかったです”と言っていただけたので一緒にできて良かったです。
山内
YOASOBIはもちろんですけど、ソロとしても活動されている方なので、ひとりでも物語を声で表現できるんですよね。だから、YOASOBIは今後さらにすごいことになりそうだなと今回一緒にやって思いました。

そして、秦 基博さんが「あなたの知らない僕がいる」に参加しています。

山内
秦くんは友人でもあるし、尊敬するミュージシャンでもあるし、ヴォ―カリストでもあって。気兼ねなくいろいろなことを話せる仲なので、誰かに入ってもらうなら秦くんは外せなくてオファーさせてもらいました。この曲には特別な想いがあって、ワイドに壮大に鳴り響いてほしいというイメージがあったんです。そういう曲を一緒に歌いこなせるのは、同性では秦くんしかいないと思うんですよ。 

歌詞は個人的な経験を歌っているように思えるのですが。

山内
そうですね。自分が“こうだ!”と決めて進んできた道であっても、人生って何が正解なのか分からないじゃないですか。本当に真剣に頑張っていてもできないことがあるし、全てがうまくいくわけでもない。その中で過去の温かい思い出だったり、いろいろな記憶が後押ししてくれることもある。ざっくり言うと、そういう歌なんです。だから、自分の中では単なるラブソングではないという気持ちで書きました。最初に書いたものはもうちょっと表層的でしたね。それも良かったんですけど、書き直したらこの曲の先の物語を想像できるものになったので…今は特にステイホームでひとりになることが多いから、そういう曲になって良かったと思いますね。

お父さんのことを歌った「手」も背中を押してくれる曲ですね。

山内
全男性を代表できるかどうか分からないですけど、男ってやっぱり、おとんとかおかんとかに素直な気持ちを伝えるってちょっと恥ずかしいところがあるじゃないですか。自分の両親も段々歳がいってきて。でも、それがいいんじゃない?と思える自分もいる。そういう家族に対する愛情も『I Love You』では伝えていきたい…ただ、歌詞の中で“ありがとう”と言うんじゃなくて、しっかりと“ありがとう”が見える曲にしたいと思いながら作りました。

歌詞の中に《棚から奪ったレコード》という一節がありますが、実際にお父さんの棚からレコードを奪ったのですか?(笑)

山内
奪いました(笑)。歌の中では明らかにしていないですけど、実はユーミンの『ひこうき雲』なんです。未だに聴いているんですよ。当時のユーミンって華やかなショウビズのイメージがあったんですけど、「ひこうき雲」を聴いてそれが変わったっていう。

歌詞の中に気象現象として、《ひこうき雲》という言葉が出てきますが。

山内
レコードの『ひこうき雲』とかけているんです。聴いた人には絶対分からない(笑)。でも、自分はもちろんですけど、自分の家族には分かる…いや、どうかな? 親父はたぶん憶えてないかもしれないけど(笑)。でも、やっぱり小さい頃、自分の興味が湧くようなものに触れさせてくれてたのも結局は親だと思うんですよ。いろいろなものに触れさせてもらってたという意味で、《ひこうき雲》は遠い目標であり、実際のレコードでもありという。あくまでも自分の中でだけですけどね。

アルバムの最後を締め括る「光あれ」は小林武史さんとバンドの共同アレンジですね。

山内
最初の緊急事態宣言中に配信でリリースさせてもらったんですけど、小林さんって僕らの世代に限らず、すごく影響力がある方だし、シグネイチャーと言えるサウンドがあるじゃないですか。やっぱり僕らも影響を受けていますから、そういったところで何を一緒に作れるかというところからスタートして、僕は小林さんがフュージョンをやっていた時期のサウンドもすごく好きだから、16ビートのファンキーなサウンドを一緒に作れたらいいなと思ってました。小林さんとやるならこれまでとは違うものにしたいと思って取り組んだ曲でもありますね。90年代的っぽいところもありつつ、自分的にはちょっと80年代とか70年代後半とか、その当時の…日本で言ったらバブル直前の頃だったと思うんですけど、竹内まりやさんや松原みきさんとかが海外でリバイバルしているじゃないですか。最初はその時期のサウンドにもっと寄せていたんですけど、小林さんと作っていく中でキックが4つ打ちになったことも含めてよりポップになっていきましたね。

歌詞はコロナ禍に相応しいものになっていますね。

山内
実はコロナ禍の前に書き始めていたんです。

そうだったんですか!

山内
そう。歌詞を書きながら“どうなっていくんだろう”と話してました。アーバンな曲だったから、もうちょっとシャープな言葉が合うと考えたんですけど、大阪城ホール公演を成功させてもらって『I FAB U』ツアーを回り始める直前だったのかな? この曲がライヴに来てくれたみんな人の先を…ひとりひとりが行きたい方向ってあると思うんですけど、マグライトぐらいの光でもいいから、足元だけでも照らせるような曲になったらいいと思って、こういう歌詞になりました。だから、緊急事態宣言が出て違う響き方をしちゃうかなとも思ったんです。でも、自分たちにとってこの曲のメッセージは全然ずれたものじゃなかったから、まずは伝えたいと想いをSNSに歌詞をアップするという普段やらないようなこともやってみたんですよ。

取材:山口智男

アルバム『I Love You』2021年3月10日発売 Sony Music Associated Records
    • 【初回盤】(CD+Blu-ray)
    • AICL-4023~4
    • ¥4,000(税抜)
    • 【通常盤】(CD)
    • AICL-4025
    • ¥3,000(税抜)
フジファブリック プロフィール

フジファブリック:2000年、志村正彦を中心に結成。09年に志村が急逝し、11年夏より山内総一郎(Vo&Gu)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(Ba)のメンバー3人体制にて新たに始動。奇想天外な曲から心を打つ曲まで幅広い音楽性が魅力の個性派ロックバンド。「銀河」、「茜色の夕日」、「若者のすべて」などの代表曲を送り出し、『モテキ』TVドラマ版主題歌、映画版オープニングテーマとして連続起用された。数多くのアニメ主題歌も担当。18年には映画『ここは退屈迎えに来て』主題歌、そして劇伴を担当。19年にデビュー15周年を迎えアルバム2作を発表。同年10月に大阪城ホール単独公演を大成功させた。21年3月に11thアルバム『I Love You』を発表。23年には4本のツアーを開催した。24年4月にデビュー20周年を迎えるが、目前となる2月に12thアルバム『PORTRAIT』をリリースする。フジファブリック オフィシャルHP

「たりないすくない feat.幾田りら」
MV

「赤い果実 feat.JUJU」MV

「楽園」MV

OKMusic編集部

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