『NHKバレエの饗宴2019』に初登場の
吉山シャール ルイ・アンドレに聞く
~「ロメオとジュリエット」でロメオ
初挑戦

日本を代表するバレエ団やバレエダンサーがカンパニーの枠を超えて一堂に会し、クラシックからコンテンポラリーまで、バレエの多彩な魅力を披露する、年に一度の祭典『NHKバレエの饗宴』が、今年2019年は4月6日(土)に東京・NHKホールにて上演される。
今回注目なのが、『NHKバレエの饗宴』に初登場となる吉山シャール ルイ・アンドレだ。2007年にローザンヌ国際バレエコンクールの決選に進出しコンテンポラリー賞を受賞し、またユースアメリカグランプリ(以下、YAGP)でもコンテンポラリー賞を受賞、現在はアメリカのヒューストン・バレエ団プリンシパルとして活躍中だ。今回、同バレエ団でやはりプリンシパルを務める名花カリーナ・ゴンザレスと共に『ロメオとジュリエット』から「バルコニーのパ・ド・ドゥ」を披露する(振付:スタントン・ウェルチ、音楽:プロコフィエフ)。このヒューストン・バレエの人気カップルが魅せるステージに熱い期待が集まる中、吉山へのインタビュー取材が実現した。
カレーナ・ゴンザレス&吉山シャール ルイ・アンドレ『Other dances』より(c)Amitava Sarcar
ーー2007年ローザンヌ国際バレエコンクールとYAGPでコンテンポラリー賞を受賞されました。日本のバレエ教室の環境では一般的にクラシックのウエイトが高いと聞きますが、吉山さんは早くからコンテンポラリーに興味を持たれていたのでしょうか。
正直、イングリッシュナショナルバレエスクールに入学する前も、入学した後もコンテンポラリーはあまり好きではありませんでした。そして、成績もクラシックに比べると低かったです。ですが、BalletBoyzの「Naked」という作品を見て興味を持ち始めました。その後、BalletBoyzのダンサーがスクールに教えに来てくれたことも、きっかけのひとつです。その時からコンテンポラリーが好きになったのかもしれません。多くの作品を見たり、踊っていて楽しいと感じるようになりました。
ーーイングリッシュナショナルバレエスクールに入学されたのは、どのような意図があったのでしょうか。
イングリッシュナショナルバレエスクールのスプリングプログラムを偶然に母が見つけ、応募したところ受かったため、参加することになりました。そこでバレエマスターのアントニー ・ドーソン(元ロイヤルバレエ団プリンシパル)に出会い、入学を決めました。
ーー2007年にヒューストン・バレエIIに入り、その翌年7月ヒューストン・バレエ団に入団されました。以後ずっと同バレエ団で活躍され2016年にはプリンシパルに昇格されています。ヒューストンを選んだ理由を教えてください。
2007年の春に行われたYAGPニューヨーク決戦に出場し、ヒューストンバレエIIへのコントラクトをいただいたことから決めました。アメリカの中でも大きなバレエ団の一つで、レパートリーが豊富なことが選んだ理由です。
ーーヒューストンバレエ団の特徴をもう少し詳しく教えてください。また、吉山さん自身はこのバレエ団のどういうところが気に入っていますか。
ヒューストンバレエ団は、芸術監督兼振付家のスタントン・ウェルチの作品だけでなく、現在、世界で活躍しているもしくは活躍していた著名な振付家の作品を、年間を通して上演しています。そのため、マクミランやバランシン等の古典作品から、若手振付家のジャスティン・ペックやアレクサンダー・エクマン等の作品に至るまで、多くの作品を踊る機会に恵まれています。コンテンポラリーとクラシックのバランスも良く、公演が交互にスケジュールされており、観客を飽きさせない工夫も施されています​。
そして、ダンサー達はとても仲が良く、楽しく踊ることができる環境が整っています。2011年に建てられたバレエ団&アカデミーのビルにはスタジオが9つあり、側面は天井から床まで窓ガラスになっているため、外の景色が見える、とても明るいスタジオで練習をしています。僕は全米1、2位を争う素晴らしいスタジオだと思います。また1階には175席のシアターも完備されており、座談会(Dance Talk)や主にアカデミーの生徒用の小規模な公演が行われています。バレエ団を財政面で支えてくれている支援者・企業のおかげだと感謝しています​。
「ドン・キホーテ」より (c) Amitava Sarcar
ーー『バレエの饗宴』で踊るウェルチ版「ロメオとジュリエット」の特徴を教えてください。また、どのようなところに魅力を感じますか。
今回の公演では、スタントン・ウェルチが2015年に振付したバージョンを踊ります。彼が作る作品は物語を知らなくても、ダンサーの動きや表情を見れば容易に理解できる特徴があります。「ロメオとジュリエット」も同様に、愛し合っている二人がかけがえのない楽しいひと時を過ごしている様子が良く分かると思います。初演の時はロメオを踊る機会は無く、マキューシオを踊ったのですが、今回『バレエの饗宴』で初のロメオに挑戦させていただきます。
スタントン・ウェルチはダンサーの素晴らしい面を伸ばしてくれる芸術監督で、作品によって役に合ったダンサーを選び、特徴を生かしながら振付をしていく才能を持っていると感じています。彼が手掛けた作品は数多くありますが、中でもマリー・アントワネットを題材にした作品「Marie」はとても素晴らしい作品で今年の6月に上演しますので、ぜひともヒューストンまで観に来ていただきたいと思います。
ーー「バレエの饗宴」でパートナーとして踊るカリーナ・ゴンザレスについてお聞かせください。
ひと言で言うと、何を踊らせても完璧にこなす身体能力と役作りの上手さ、双方を兼ね備えたダンサーです。僕も何度か彼女と踊りましたが、パートナーとして尊敬しています。
ーー今後、ダンサーとして目指していきたいこと、抱負をお聞かせください。目標とするダンサー、踊ってみたい作品があれば、その理由も併せて教えてください。
今年の8月で30歳になり、20代の頃とは違った踊り方や役作りがバレエ団から求められることと思います。素晴らしい映画を観たり本を読んだりすることにより、表現力豊かなダンサーになることを目指して行きたいと思っています。目標とするダンサーは2015年にヒューストンバレエ団を退団したサイモン・ボールで、彼はバレエダンサーとしてのキャリアと家庭を両立していた点が素晴らしいと感じました。踊ってみたい作品はアクラム・カーンのジゼルです。特にヒラリオンの役が興味深いですね。
【吉山シャール ルイ・アンドレ プロフィール】5歳からヒラキバレエスクールにおいて、開良和および芝江泰惠子に師事。2005年イングリッシュナショナルバレエスクールに入学。2007年ローザンヌ国際バレエコンクールの決選に進出、コンテンポラリー賞を受賞。同年YAGPにも出場し、コンテンポラリー賞を受賞。2007年ヒューストン・バレエIIに入団、翌年7月ヒューストン・バレエ団に入団した。その後、2013年にソリスト、2015年にはファーストソリスト、そして2016年にはプリンシパルに昇格した。主な出演作品として、ケネス・マクミラン振付の『マイヤーリング』や『マノン』、ジョージ・バランシン振付の『テーマとバリエーション』や『シンフォニー・イン・C』などがある。
取材:西原朋未

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