岡本健一&川平慈英にインタビュー 
約20年ぶりに二人の天才に挑むファン
タジック・コメディー『ピカソとアイ
ンシュタイン~星降る夜の奇跡~』

ピカソとアインシュタイン、という20世紀を代表するとてつもない想像力と創造力を持つ天才二人が、もし20代の血気盛んな頃に本当に出会っていたら? これまたとんでもない発想から生まれた舞台『ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~』が、2019年4月25日(木)より、東京と大阪にて上演される。
本作の日本初演は1997年。さらに2000年には再演され、いずれもランダル・アーニーの演出によりピカソ役を岡本健一、アインシュタイン役を川平慈英が務めて人気を博した。初演から19年。この二人が3度目のタッグを組み、平成から次の時代への節目にとびっきりの舞台を披露しようとしている。岡本と川平に話を伺った。
稽古場から本番まで「楽しい」が満ち溢れていた
ーー約20年ぶりの共演となりますね。今の心境はいかがでしょうか?
岡本:さすがに20年も前の話ですから、当時の事はほとんど覚えてないんです(笑)。でもあっという間だった気がしますね。慈英と会うのも久しぶりだし。
川平:そうだね! 最後に会ったのは『ロッキー・ホラー・ショウ』を観に行った時かな? 健一と共演したのはこの作品が最初で最後なんだよね。だからもう“コンビ復活!”という感覚です(笑)。
ーーお二人はこの作品にどのような想いを抱いているのでしょうか?
川平:この作品は僕の中でも大・大・大好きな作品なんです。僕が勝手に思っているんですが“大師匠”スティーヴ・マーティンの作品ですから! 演出家のランダル・アーニーさんとも相性ぴったりででハマっちゃってね。演劇とは何だ? 役者とは何だ?と僕がもがいていたあの頃、この作品に本当にハマってしまってかなり心酔していたんです。この世界に生きていると素晴らしい再会があるものですね。再々演が素直に嬉しいです。
岡本:この舞台、単純に楽しかった記憶があります。とはいえお客さんの前でやるまでは「これ、本当に面白いのかなあ?」と正直思っていたんですよ。スティーヴ・マーティンはアメリカン・コメディー畑の人なので、それが日本のお客さんにも通じるのかなって。だから自分の中ではお客さんは無理に笑わなくていいよ、と思いながらとにかく必死でやっていました。でも幕が上がったらお客さんが笑っていて! それだけ楽しい話なんだ! とやりながら思ったくらいです。
川平:ランディ(ランダル・アーニー)の「マジック」もありましたね。僕らが稽古をしていると「GOOD!」と言った後で「じゃ、こういう演じ方はどう?」と別の演じ方に誘うんです。僕、こういう人に弱いんですよ!
ーーよくある「ダメ出し」とは違いますね。
川平:怖い演出家さんだと、僕は委縮しちゃうタイプ。ランディは稽古2週目くらいで皆台詞などが身体に入ってきた頃、「じゃあ滑走路に入って、ゆっくりゆっくり離陸しようか」そして3週間目になると「じゃあもっと大空に飛び立とうか。Let's Flight!!」って。何だこのおじさん! 一生ついて行くぜ! って思いました(笑)。
岡本:(笑)
川平:とにかく、この人のためにいい芝居がしたいと思いましたよ。
岡本:彼の現場は本当に楽しい時間しかないんですよ。何でだろうと思うくらい。
川平:どんな俳優・スタッフに対しても公平に扱うし、稽古場に来た時も「Thank You for coming!」って言うんですよ、ランディは。「稽古に来てくれてありがとう」なんて今まで言われたことなかった(笑)。
約20年ぶりの「ピカソ」と「アインシュタイン」にどう向かい合うか
ーーお二人が演じたピカソとアインシュタインという人物ですが、役を作るにあたり、初演時にはどのようにアプローチされたんですか?
岡本:僕が演じるのはピカソで。彼の画風が「ばら色の時代」に入り「アヴィニョンの娘たち」を描く少し前の話。当時僕はNYのMOMAに行き「アヴィニョンの娘たち」を1時間くらいずっと観ながら「これを描いた人を自分が演じるのか……」と思い耽った記憶があります。何でこう描いたんだろう、何故こういう表現をしたんだろう……といろいろな事を考えて、しばらくその場をフワフワと滞留していました。
川平:僕は僕で稀代の大天才をどうやって表現したらいいのか、ランディに相談したら「そんな事、何にも考えなくていいんだよ! 一人の人物が人生を悪戦苦闘しながら邁進、謳歌している人間を描いてくれればいい。照明やメイク、衣裳などが入る事で自ずとそれがアインシュタインになるって。僕は貴方自身の演技が見たいんだよって言われましたね。
岡本:あの頃、本当にアインシュタインみたいでしたよ。
川平:本当!? 嬉しいねえ(笑)。
ーーそんなフレッシュなお二人が初めてピカソとアインシュタインを演じてから約20年の時が経ち、役で演じた年齢よりずっと大人になりましたよね。
川平・岡本:そうなんだよ!
ーーとなると、改めて20代の二人を演じるにあたり、どこか客観的、俯瞰的に役を捉える事もできそうに思うのですが、その点はいかがでしょうか?
岡本:自分は他の作品でもそうですが、再演となった時に毎回ゼロから新たに発見しながらやっているんです。「初演の時はこの事に全然気づかなかった!」という事がたくさんあるので。それが再演の面白さでもあるなと思うんです。そして、20年歳を重ねた事についてですが、周りの諸先輩たちを見ると特にそう思いますが、男って歳を取れば取るほど子どもになっていくんです(笑)。やりたい事を純粋にやり続けているので、僕らもより子どもになっている気がしますね(笑)。
川平:ホント! 今、ときどき自分はいま中2なのではと思うくらい(笑)。くだらない事ばかり考えている子どもに退行しているかもね。今はまだ稽古前ですが、この台本を読んだらじわじわと呼び戻すものがあると思いますね。約20年の間に「ここはもっと力を抜いてもいいんだ」というような気づきもあると思う。そりゃあ経験も重ねてきたので、フィジカルやマインドのコントロールはある程度出来ていると思うんだけど、それを過信すると落とし穴にはまると思うので、やはり基本的には子どもに戻り、大好きなおもちゃを与えられた気分で楽しみたいと思います。
ーー今回はROSEチームとBLUEチームに分かれ、お二人はROSEチームでピカソ役とアインシュタイン役で出演。一方BLUEチームでは「シュメンディマン」役を川平さんが、「未来からの訪問者」役を岡本さんが務めるんですね!
川平:そうなんです。今回の見どころはそこなんです! ……僕、未来からの問者役をやりたかった(笑)! でも僕が訪問者役をやるのは簡単にイメージできてしまってきっと面白味に欠けると思うんですよ。シュメンディマンというのは、自分は天才だと思っている発明家、これ結構台詞あるよね?
岡本:あるね。でも一瞬出てくるだけだから(笑)。
川平:うわー濃密だね。ハズせないよねこれは!
ーーそして岡本さんは「未来からの訪問者」役に。
岡本:訪問者役、美味しいですよね(笑)。
川平:ギャラ泥棒みたいな役でしょ(笑)? 腰をクイクイやるんだよねきっと。で、僕らがその役をやる時はピカソ役を三浦翔平くん、アインシュタイン役を村井良大くんという若い二人が演じる、これも楽しみですよね。僕は初めてご一緒するんだけど健一はどう?
岡本:三浦くんとはこの前『メタルマクベス disc2』を観に来た時に会ったんだけど、この作品がまだ決まってなかった時だったから話ができなくてね。僕らとは年齢も全然違いますからきっと違う雰囲気の作品となりそうですね。
ーー最後になりますが、今、この作品の魅力をどのようにと感じていますか?
岡本:スティーヴ・マーティンが元は大学で哲学を専攻していて、人の心を変えるのは政治や戦争などではなく「笑い」だと言っているんです。「笑い」の中に政治や社会へのメッセージを込める方がより伝わると。実際この作品にも社会、国、時代に対するメッセージがものすごく詰まっているんですよ。
川平:笑いながらシニカルな事を言い、そして大きな相手に前向きに立ち向かっていく、という感じだね。

前回上演されたのが20世紀から21世紀になろうとする時期、そして今回はくしくも平成から新元号に変わろうとする時期に上演される『ピカソとアインシュタイン』。未来を変えようと息巻く二人の天才たちの熱い想いが、現代の人間にどのように伝わるのか、期待は膨らむばかりだ。
取材・文=こむらさき

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