SIRUP “シーンに囚われない」存在へ
” 「SIRUP EP2」が導くSIRUPの新た
なフェーズとは

昨年の1stシングル「Synapse」とその後発表した「SIRUP EP」で、歌とラップを流動的に行き来するグルーヴィーなアプローチが話題を集めたSIRUP。今年5月に配信を開始した「LOOP」はさらなるリスナーを虜にし、今や彼のライブにはR&Bやヒップホップといったジャンルを超え、その心地いい歌声を浴びようと多くの音楽ファンが足を運ぶ。8月にリリースした待望のセカンドEP「SIRUP EP2」はiTunes R&B/Soulチャートで首位に輝き、再浮上した前作"SIRUP EP"とともに1位、2位をSIRUPが独占。その後、韓国でのライブを成功させ、年内には中国での公演も決定するなど、活躍の場は国内のみならず海外へも広がり始めている。リリースを追うごとにさまざまなクリエイターたちとの出会いを重ねる彼だが、最新作「SIRUP EP2」に収められた楽曲たちは、どのように生まれたのだろうか。SIRUP本人に話を聞くことができた。
SIRUP
ーーSIRUPとして2作目のEP「SIRUP EP2」がリリースされましたが、昨年の「SIRUP EP」以降、環境に変化はありましたか?
これまでライブでは歌い続けていたのですが、音源としては5月に配信した「LOOP」がリスナーをたくさん引き寄せてくれた気がします。あの曲をキッカケにそれ以前の楽曲を聴いてくれた人がたくさんいて、イントロが流れたら「あ!この曲知ってる!」と反応してくれる人が増えました。みんなで歌ってくれたりもして、嬉しいですね。
ーー 「SIRUPEP2」にはその「LOOP」はもちろん、SIRUPの歌詞は日本語と英語で韻を踏んだりとても柔軟性が高いですが、メロディーはいわゆる「何語でもない仮歌」でつけるんですか?
ありがとうございます。そうですね。「Maybe」では、歌詞カードに載っていないんですけど、《わかったからもう 無理しないで》の合間に仮歌の段階で入れていた「ブンブン」という合いの手を、そのまま生かしています。歌詞を組み立てるときは綺麗な韻を意識して当てはめていくんですけど、英語は日本語の倍くらい強く意味を持たせたり、全体のアクセントにしたいところに使ったりしています。
ーー "Maybe"は曲調こそ明るくライトなんですが、《大して知らないのに知ったかぶり 土台のない土俵で踊りたがる》という歌い出しから、歌詞の鋭さにドキッとします。
この曲は僕と同世代やもっと若い世代に向けて歌ったんですが、僕が自分自身に対して思っていたことも含んでいます。SNSが発達して、自分のいる小さい世界で正しいものがすべてにおいて正しいんだと思ってしまいがちですよね。音楽業界でも「こういうものが売れる、これは売れない」ってすぐ誰かが定義するし、日本には「社会的にこれが正しい」とされているものが多くある。僕も気を抜けば流されそうになることもあるけど、「SIRUP」というものが少しずつ認められているという実感を得ることで、少しずつ自信がついてきてるのかなと思います。
SIRUP
ーー どの楽曲でも、SIRUPの歌詞には「対象となる人物」がいるんだろうなと思いながら聴くのですが、「Maybe」に続く「Rain」の歌詞についてはどうでしょう。
「Rain」もそうですけど、恋愛を描く曲には特定の人物がいます。恋愛って普遍的で誰もがするものだし、僕が特定の人に向けて書いても、聴いてくれる人にも当てはまるんじゃないかなと思っていて。意識して分かりやすく書くこともあるけど、基本的には想像ではなく自分の経験をスタートにしますね。
ーー 恋愛を題材にした楽曲でも、SIRUPは「すべてが上手くいっている2人」よりも「少しもどかしく切ない2人」を歌っているイメージが強くて、そのメランコリックな描写がすごく魅力的だなと思います。ご本人の経験もこんな繊細な恋が多かったのかもしれませんね。
そうかもしれないですね。そういうのが好きなんです。……なんか、お酒がほしくなってきた(笑)。
SIRUP
ーー ははは(笑)。この「Rain」や1曲目の「Do Well」、そして先ほどお話にあった「LOOP」はミュージックビデオが公開されましたが、映像にはご本人からどのようにアイデアを出しているのですか?
僕は映画などの映像作品が大好きなので、「こういうものを撮りたい」というのを監督としっかり話して決めています。観た人に「想像していたものからは外れているけど、曲に合っている」と思ってもらえるように作れたら良いなと思っています。僕ひとりしか登場しない「Do Well」は前作の「Synapse」のミュージックビデオと同じ監督に撮ってもらったので、コミュニケーションがとれていてイメージの共有も早かったです。「Rain」のミュージックビデオは、何かから逃げようと走る女性をカメラが追いかけるカットが軸なんですが、人は雨から逃れようとするじゃないですか。その「逃げる」「逃れられない」というテーマが、実はすごく意味を持っています。
ーー ミュージックビデオを観ることによって、楽曲のより深い部分に触れられそうですね。EPの最後に収録されている「One Day」は、現行のヒップホップテイストを取り入れたトラックの上で伸びやかなR&Bを歌い上げるという、今までにない組み合わせが実現した楽曲だなと感じました。
SIRUPとしてここまでしっかり歌い上げる曲はこれまでなかったのですが、この曲はもともと同じ事務所のイケガミキヨシさんがベースを作ってくださっていたんです。そこに異常な今っぽさをプラスしたかったのと、がっつり歌うけどめちゃくちゃ踊れる曲を作りたかったので、CIRRRCLEというヒップホップクルーのトラックメイカーのA.G.Oくんにアレンジをお願いしました。A.G.Oくんと僕は音楽の趣味がすごく通ずる部分が多くて、普段から頻繁に遊ぶ仲なので、一旦、すべてをお任せして出来上がったものを微調整をしただけなんです。A.G.Oくんは「One Day」にもあるような、細かいのに広いグルーヴを出したり、緩急をつけるのが抜群にうまいですし、音色のセンスが完璧ですね。ばっちりイメージ通りのものに仕上げてくれました。
ーー A.G.O.さんが所属するCIRRRCLEがSpotifyで公開しているプレイリスト「OMAKASE SATURDAY by CIRRRCLE」をよくチェックされるそうですね。最近出会って気になったものや、よく聴いている楽曲はありますか?
Mura Masa & NAO 「Complicated」はめちゃくちゃアンセムですよね。ついつい聴いてしまいます。あと、パソコンで自分が昔聴いていた音楽をひさしぶりに掘っていたら、5年前くらいにSoundCloudで無料配信されていたFull Crate feat. David Simmons 「Without My Heart」が出てきて。当時よく見ていたSoulBounceというサイトで毎週フリーダウンロードできる楽曲が紹介されていて、そこで出会った曲なんですけど、今聴いてもめちゃくちゃ良かったんですよ。それで「Full Crateは今何してるのかな」と思って調べたら最近リリースしている曲も相変わらずかっこよくて、CIRRRCLEのプレイリストにもしっかり入ってました。
ーー さすがですね。海外の音楽をくまなくインプットしつつ、日々のライブイベントでは国内のさまざまなアーティストと共演されていますが、SIRUPがミュージシャンとして今後目指す立ち位置は明確にありますか?
欲を言うならば、特定のシーンに囚われずにいたいですね。「SIRUPEP」を出したあと、「こんな意外な方面から反応が来るんだ」と思うことが増えました。できれば日本でやりながら海外にも広げたいですし、自分の音楽がハマる場所ならどこへでもどんどん出て行きたいです。だからこういう立ち位置に行きたいというのは特にないんですが、強いて言えば「どこにも属さないけどどこにでも属せる」存在でありたい。それは人として八方美人なのではなくて、僕の音楽がそうさせる、というところまでいけたら最高ですね。でもあくまで、それは自然に身を任せたいです。
SIRUP
ーー 「SIRUPEP2」をリリースし、この作品を提げ東京と大阪ではワンマンライブ (※チケットソールドアウト)が決定しています。今後の活動で特に楽しみなことはありますか?
「SIRUPEP2」を出してからまた制作のスイッチが入って、曲を作り始めたんですよ。新たな誰かと一緒に楽曲を生み出していけるのが楽しみです。その楽しみはずっと永遠に、死ぬまで続きますよね。あとは、僕こわい話が好きなんですけど、昨日録画した伝説の霊能力者・宜保愛子特集を観るのがめちゃくちゃ楽しみです!(笑)
ーー ほんと、そういうの好きですね!(笑) 私もSIRUPのこれからを、楽しみにしています!
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取材・文=河嶋奈津実 写真=森好弘

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