溝端淳平がミステリアスで妖艶な天草
四郎を演じる! 舞台『魔界転生』に
挑む思いとは?

山田風太郎の忍法帖シリーズの最高傑作小説を原作とした舞台『魔界転生』が2018年10月から博多座ほかで上演される。マキノノゾミが脚本、堤幸彦が演出を手掛け、上川隆也、溝端淳平、松平健ら豪華キャストが揃っている。今回、天草四郎役を演じる溝端淳平に思いを聞いた。
天草四郎由来の地を巡る旅「役者としてとても贅沢」
溝端淳平 ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
−−天草四郎没後380年の命日に、天草由来の地を巡ったそうですね。
(詳しくは「舞台『魔界転生』 天草四郎没後380年の命日に、天草由来の地を訪れた溝端淳平、堤幸彦、マキノノゾミからコメントが到着」)
はい。堤さんとマキノさんと一緒に、島原と天草に行ってきました。
何万人という人が虐殺されたという大きな悲劇が起こった場所ですから、少し気を引き締めていたのですが、いざ島原の原城跡地に行くと、本当に風や波の音が気持ち良くて、天気もよくて。こんな言い方は少し変かもしれませんが、居心地のいい場所でした。勝手な想像でもっと悲惨なイメージだったんですけど、とても素敵な場所でした。
今回、天草四郎役をやらせてもらいますが、現地の風の音や波の音、空気や匂いを感じられたのはとても大きいことだと思います。ちょうど天草四郎の命日に、こうして現地を訪れることができたのは役者としてとても贅沢なことです。
−−その旅で堤さんやマキノさんとはどういうお話をされたんですか?
お二人とも「想像している雰囲気じゃないね」と話されていました。移動のバスの中では「どういう演出なんですか?」とか「殺陣は多いですか?」とか色々そういう話を聞きまして、「飛ぶかも」と言われています(笑)。あと、特殊な装置を使うので、「役者は大変だけど、見ている方は楽しいから頑張って」とも。
まだ台本が完成していない段階なのですが、天草四郎の生まれた地や亡くなった地を訪れて、彼のことを知れば知るほど、どんどん想像が膨らみました。すごくカリスマ性があるけれど、史実としてはっきりしたことが天草四郎にはあまり残っていないので、「実は女だった」などという想像も尽きない。そんな話もずっとしていましたね。皆で話し合うのはすごく素敵な時間でした。
溝端淳平 ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
−−話し合いの中でだんだんと溝端さんの中で天草四郎像が出来上がってきたのではないですか?
どの役でもそうですけど、台本に書かれていないことを埋めなきゃいけないのが僕らの仕事。どんな台本であろうが、成立させて、説得力をもたせて、そういう風に生きている人間に見せるというのは、どんな台本が来ても、どんな役が来ても変わらない。なので、今回、そういう場所にいって、お話を聞けて、感じられたことはとても大きなことだなと思いました。
普通、役者は台本が出来上がってから始まるわけじゃないですか。でもその台本ができる段階の前で、演出家と脚本家の方が何か感じている場に、自分も居られるというのは贅沢なことですよ。具体的に演技に活かせる知識ということだけでなく、やはり行って何か感じたという、自分なりの感触が自分の中にもあれば役作りはしやすいものなんだろうなと思います。
天草四郎はミステリアスなことも多く、カリスマ性があって浮世離れしている。でも生身の人間がやるんだから、どういう生い立ちで、どういう思いで一揆を起こして、といった彼の人となりを表現したい。僕はそこを埋めなくてはいけないと思っています。
−−ちょうど命日に手を合わせたのは、溝端さんにとっても深い意味があったわけですね。
はい。実在した人物ですし、実際起きた悲劇を物語の序盤ですけどやるわけですから。そこで亡くなった人たちに手を合わせて、こういうお芝居や役を演じる上では大事なことなのではないかと思いました。
史実と浮世離れしたエンタメが融合しているのが面白い
溝端淳平 ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
−−原作や過去の映像作品についての印象を教えてください。
映像は何年か前に窪塚洋介さんの映画版(2003年)を拝見しまして、最近、千葉真一さんの舞台版(1981年)を拝見しました。ぶっ飛んだ話ですが、今の人達には出せないぐらいのむき出しのエネルギー、生身のアナログなパワーがビシビシ伝わって来る作品だと思いました。だから色褪せないんでしょうね。今、同じことをやっても絶対できないだろうなと思いますね。
−−『魔界転生』はどの辺が面白いと感じますか?
歴史上の剣豪や歴史上のスターたちをスターの方が演じている。ワクワク感や贅沢感がある作品なのかなと思います。全部が全部、架空のフィクションでエンターテインメントというだけではなく、実際に大虐殺があって、歴史的にものすごく深い傷を負ったその後を描いている作品でもあるので、史実と浮世離れしたエンターテインメントというものが合わさっているのが面白いと思います。
−−柳生十兵衛役は上川隆也さんです。数々の現場で共演されていますが、どのような印象をお持ちですか?
大先輩ですし、色々教わりたいですが、舞台上では先輩後輩も芸歴も関係ないと僕は思うので、そこは精一杯、上川さんに胸を借りるつもりでぶつかりたいと思います。
上川さんは本当に紳士で、視野が広く、みんなに優しい方。感情のブレをあまり見せない方なんです。お芝居にストイックだけど、穏やかで、怒っているところを見たことがないです。完璧なイメージですね。そういう意味で言うと、上川さんが座長というだけでとても心地いい、平和なカンパニーになるだろうなと思います。お芝居はもちろんですが、それ以外でも模範にできるところは模範にさせていただきたいです。​
−−柳生但馬守宗矩役の松平健さんについてはいかがですか?
先日、ある作品で初めてお会いしました。本当にどっしり構えてらっしゃる方で、すごくオーラがありました。とてつもないオーラをお持ちだし、いらっしゃると現場の空気は変わります。だけど、変わり方がピリピリした感じじゃないんです。冗談を言って和ませるわけでもないけれど、もちろん怒るわけでもない。黙ってその場にいらっしゃるだけで、温かい空気になる感じがしました。口数が多いわけではないですけど、低姿勢な方でした。根っからのスターという感じでしたね。
僕は和歌山県出身で吉宗公が大好きで。『暴れん坊将軍』を見て育ったので、お会いした時もすごく緊張しました。
溝端淳平 ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
斬新で新しい堤幸彦演出に期待!
−−演出の堤幸彦さんについてはどのような印象をお持ちですか?
僕は堤さんのドラマを見て育った世代なので、青春時代や今の自分そのものを形成してくれたものの一つに、堤さんの作品がとても深く関わっていると思います。
新しいことにどんどんチャレンジして、斬新なことをやろうとする堤さんはとても素敵ですし、こちらもどんなものが来ようが精一杯やらなくてはいけないなと思います。
今回、実は堤さんからお声がけいただいたんです。それがまず、すごく嬉しかったんです。嬉しかったですし、堤さんの演出が楽しみですね。どう言う風に作っていくんだろう、どう言う風に自分たちは板の上にいるんだろうというのは想像がつかないので、そこが一番楽しみでもあり、少し不安もありという感じですかね……(笑)。
−−でもそんな堤さんのお眼鏡にかなったわけです。
堤さんは舞台経験が豊富で、色っぽい人がいいと仰っていたんですけど、僕は色気が自分ではないと思うし、周りからも言われるので、色気をもっと出せればなと思います。ミステリアスな部分や妖艶な部分は自分には足りていないところだと思うので、そこをお芝居でカバーできればなと思います。
−−今回は博多座から開幕です。なかなかないスタートですよね。
そうですね。僕は初めてかもしれないです。島原の乱があった九州で、1か月間公演をするなんて。九州の方が思う『魔界転生』はまた少し違うのかなと思ったりもするので、楽しみです。
−−最後に意気込みや見どころを一言お願いします!
史実とフィクションがうまく混ざり合ったエンターテインメント性の高い作品だと思います。これだけ映画でも舞台にもなっている作品をまた堤さんが斬新で新しい演出をしてくださると思うので、そこはすごく見所だと思います。
自分が今まで演じてきた役の中でもなかなか現実味がない、人間離れした役なので、そういう役をやらせていただけるのはとても楽しみですし、普段の世界とはまた違うものを見に来てくださるお客さんにも味わってもらいたいです。『魔界転生』の世界観にたっぷりと浸っていただいて、楽しんでいただける舞台にできればなと思います。
溝端淳平 ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
取材・文・撮影=五月女菜穂

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