6月16日@KREVAが福岡サンパレス

6月16日@KREVAが福岡サンパレス

大喝采の中、KREVAの全国ツアーが福
岡で終幕

6月16日、KREVAが福岡サンパレスにて全国ツアー「KREVA CONCERT 2013『SPACE TOUR』」の最終公演を行った。
今年2月にリリースした6thアルバム『SPACE』を引っさげて、3月29日の埼玉公演からスタートしたツアーは、 3ヶ月弱かけて最後の地、福岡にたどり着いた。

ヒップホップの方法論でEDMを昇華したサウンドデザインの独自性、ラップのスキルと精度、メッセージの説得力、そしてポピュラーミュー ジックとしての求心力。どの切り口から捉えても、KREVAならではのクリエイティヴィティが貫かれていた最高傑作『SPACE』。リスナー の心と身体をしなやかに躍動させ、また豊潤に満たしながら、新たな感触に包まれた音楽体験へ導くこのアルバムの魅力をツアーで淀みなく体現す べく結成されたのが、スペシャル“半生バンド”である。もはやKREVAにとって“鉄壁の右腕”となったMPC&DJの熊井吾郎に加え、ベー スにしてバンドマスターの岡雄三、キーボードの菱山正太、ドラムの白根佳尚とともに半生(音)スタイルのサウンドを紡ぐことで、リスナーにダ イナミックかつセンシティブな『SPACE』の世界観を立体的に体感してもらおうという狙いである。そして、その狙いは、ライヴのスタート同 時に具現化された。

ステージに張られた紗幕に映し出される宇宙空間。アルバム同様、オープニングへのブリッジとなるインタールード「space4space 1」が会場に流れると、オーディエンスが歓喜の声を上げる。今度は扇情的なシンセフレーズが高らかに鳴り響く。1曲目「SAPCE」のそれ だ。紗幕に浮かび上がるKREVAのシルエット。いうまでもなく、歓声がひと際大きくなる。白根が叩く人力ブレイクビーツを浴びながら、アル バム『SPACE』全体の骨子となるリリックを威風堂々としたフロウで刻んでいくKREVA。そのままM2「Feel It in The Air」のイントロに入ると同時に紗幕が落ち、まずKREVAが登場。次にサビのタイミングでパン!という破裂音とともにKREVAの背後に かけられていた白幕が落ち、“半生バンド”のメンバーがその全貌を現す。以降、序盤は“攻め”のセットで畳み掛けた。KREVAの最高にスキ ルフルかつアグレッシヴなラップとせめぎあう“半生バンド”のサウンドは、どこかロック的な迫力さえたたえてオーディエンスに向かっていっ た。

要所要所に比較的長いMCが挟み込まれるのも今回のツアーの特徴だ。前作『GO』の全国ツアーでは、あえて本編中にMCを一切しないスト イックなスタイルで臨んだKREVAだったが、このツアーは硬軟絶妙なMCがとても重要な役割を果たしていた。MCで最大のポイントになって いたのは、“自由なマインドとモーションでライヴを楽しんでほしい”というKREVAの願い。何も、会場全体が同じタイミングで手を挙げ、上 下に振ることがヒップホップのライヴの楽しみ方ではない。音に身を委ね、自分が踊りたいように踊ってほしい。時に感動のあまり立ち尽くしたっ ていい。リズムの取り方や全身の動きにこそ、音楽を受け取るその人の個性が浮き彫りになる――。「大丈夫。全部、俺が受け止めるから」と KREVAは言った。オーディエンス一人ひとりの“音楽を楽しむ豊かなスペース”を提供する。それもKREVAにとってこのツアーの大切な テーマだった。

近年、椅子席の会場では恒例となっているオーディエンスに着席してもらう中盤のセクション。オートチューンをフィーチャーした「I Wanna Know You」を皮切りにメロウな楽曲を重ねていく。なかでも『SPACE』を代表する楽曲であり、KREVA自身「いままで俺が作ってきたなかで最高の曲」と 言ってはばからない、メロディアスに跳躍するワルツ「ma chérie」が何しろ素晴らしかった。“半生バンド”の豊かな奥行きと説得力抜群の躍動感に満ちたグルーヴが、着席を経てクールダウンしたオーディエン スの熱量をじっくり高めていく。そのとき、ラップし歌い舞い踊るKREVAも含めて、誰もが自由なあり方で音楽と共鳴していた。それは、紛れ もなくKREVAがこのツアーでもっとも希求していた光景である。そこからライヴの様相は右肩上がりにエモーショナルになっていった。

「明後日、6月18日は俺の誕生日で。俺の誕生日=デビュー記念日でもあって、その日からソロ活動10年目に突入します。俺がソロを始動した ころは、一気に日本の音楽シーンのトップに入り込むと思っていたんですけど。スピッツ、ミスチル、俺、みたいな気持ちでやってきたけど (笑)、10年やってみてわかるのはそんなに簡単じゃない。でも、だからこそ、ひとつのことに打ち込むといくらでも学ぶことがあるし、音楽っ て深いなと思う。そして、こうやってみんなの顔を見て、そしてさっきみたいに音を楽しんでいる姿を見たら、まだまだいけるって気になります」

終盤に差し掛かったあたりでSONOMIを迎え、「ひとりじゃないのよ」や彼女の新曲「遠くまで feat.KREVA」なども披露。そして、「KILA KILA」~「space4space 4」~「Na Na Na」という本編ラストの流れで、『SPACE』を巡るKREVAとオーディエンスの熱気はピークに達した。アンコールでは「バイトルドットコム」のCM ソングとして書き下ろした「BESHI」もプレイ。ソリッドな迫力に満ちた楽曲の求心力をもって、“『SPACE』以降”のモードを示した。 オーラスを飾ったのは「Have a nice day!」。問答無用の多幸感が会場に広がり、「KREVA CONCERT 2013『SPACE TOUR』」は大団円を迎えた。

そして、ここからKREVAはソロ活動“10年目”を迎える。「派手に動く」と予告する来年の“10周年”へ向けたその動向を、つぶさに追 いかけるべし、である。

文/三宅正一(ONBU)

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