2017年の「二面性」。She, in the haz
eが紡ぐ時代の音

初めてミーティアがShe, in the haze(シー・イン・ザ・ヘイズ)を取り上げたのが今年の4月。あれからまだ半年程度しか経っておりませんが、このバンドの加速度的な成長ぶりたるや底が知れません。

コチラ、筆者によるShe, in the hazeのバンドレビュー。
この時点で彼らの世界観は完成されていましたが、今の彼らは音楽家として、さらには表現者として、飛躍的な進化を遂げております。まずは、以前よりテーマのひとつとしている「二面性」の観点からShe, in the hazeの音楽に迫ってみましょう。11月8日リリースの最新EP『Last Forever』から表題曲を。
She, in the haze – 『Last forever』

“Last Forever”というタイトルが、彼らの世界観を端的に表現しているように思います。「永遠に続く」と名を冠しておきながら、その内容は極めて悲劇的。言葉選びやMVの映像も徹底的に美しいけれど、その美には暗い影が潜んでいます。絶妙な二律背反。先日ネット上でとあるリスナーがShe, in the hazeとamazarashiを比較していたのですが、この「二面性」に共通項を見い出したのかもしれませんね。amazarashiの代表曲の一つ『性善説』もまた、善と悪が相反する世界を歌った曲ですから。
amazarashi – 『性善説』

この「二面性」、広義では限りなく同時代的なキーワードだと思うのです。みなさんの周りではどうですか?SNSで普段使っているアカウントとは別にもうひとつアカウント(いわゆる「裏垢」)を持っている人はいませんか?もっと視野を広げれば、本職とは別にもうひとつ職を持つという意味の「パラレルキャリア」なんて言葉も流行っていますね。

その理由と目的は様々でしょうけれど、根っこの部分は案外近いところにあるような気がします。あらゆる場面で猜疑心を持たなければならない今、僕たちは二面性を持たざるを得なくなりました。何気なく言ったひとことが炎上するかもしれないし、明日会社が無くなるかもしれないし、どこかからミサイルが飛んでくるかもしれない。そんな世の中ですから、二面性をテーマとして掲げるアーティストが現れたことは半ば必然だったとすら思います。
She, in the haze – 『Doubt』

前作『Paranoid』以降のダンス・ミュー
ジックへの接近。

デビュー当時から、シューゲイザーとエレクトロが交錯するようなプロダクションであったShe, in the haze。前作の『Paranoid』以降、明らかにダンス・ミュージックの比率が上がっています。(ちなみに先ほどの『Doubt』は『Paranoid』に収録)

実際に聴き比べるとよくわかります。コチラ、ファースト・ミニアルバム『Mama said』より。
She, in the haze – 『Stars』

ダンス・ミュージックの要素があることにはありますが、上の二曲ほどではないですね。『Paranoid』で確固たるものを見つけたのか、それ以降の彼らは一定の割合でエレクトロの要素を入れてくるようになります。

で、もう一度最新作『Last Forever』に戻ります。記事の冒頭で表題曲をアップしましたが、今回はEP。あと二曲入っているのです。『Broken』、『Give me more』というタイトルが冠されたナンバーですが、ぜひともここで断言しておきたい。トリプルA面と言って差し支えない内容です。特に『Give me more』。挑発的な歌詞にドラッギーなシンセの音。そして妖艶な4つ打ち。退廃的で内省のある彼らですが、なぜ開かれたイメージのある「ダンス・ミュージック」へ傾倒したのでしょう?
She, in the haze  – 『Give me more』

メタルにルーツのあるダンス・ミュージックと言えばPendulumなんかが想起されますが、彼らとは明らかに異なります。She, in the hazeはPendulumほどのマッチョイズムは持ち合わせておりません。「EDM」という呼称が広く流通し始めた2010年代初頭、ダンス・ミュージックは逃避の音楽でした。今でこそ享楽的でパーティーライクなイメージがありますけども、その裏には深い闇があったのです。悲惨な生活を一時的に忘れられる場所。それがダンス・ミュージックでした。そういう意識があったかは定かではありませんが、She, in the hazeはそこへシンパシーを感じ、あえてこのタイミングでダンス・ミュージックへ接近したのではと思います。

「EDM」という呼称の形骸化に、自分たちの破滅的な世界観を重ねるアイロニー。先ほど述べた二面性と併せて、彼らは音楽でも2017年の現在を先導しているように見えます。享楽が幻想化した今、あえてそこに立ち止まる。


■She, in the haze 2nd EP『Last forever』
1. Last forever
2. Broken
3. Give me more
¥1,000(税込)
ご注文はコチラから
Tower Record
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<アーティスト公式サイト>
http://www.sheinthehaze.com/

She, in the hazeが爆速で進化を続けている件はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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