「KRUMPはHIPHOPじゃない。」バトル
中にTight EyezがBBOY Juniorを蹴り
世界中で大騒動に。現場にいたTwigg
zの見解とは

おそらくダンサー、ダンスファンの方がSNSで目にしているであろうが、現在、ダンスシーンで一大事件ともいえる事態が巻き起こっている。
それは、今年、10周年を迎えたクランプの世界大会「Europian BUCK Session! 10th anniversary」通称「EBS」にて行われたエキシビジョンバトルでの出来事。
KRUMPという一つの文化の創始者であり、世界に多大な影響を与え続けるTight Eyezとフランスを代表するクルーWANTED POSSEのメンバーであり、「Red Bull BC One」第1回目から出場しているベテランBBOY Juniorの対決だ。
BBOY Juniorは義足のBBOYとしても有名であり、ハンデを背負いながらもものすごい踊りをみせ人々に勇気と希望を与えてきた。
どちらも間違いなくダンス界におけるレジェンド的存在であり、世界中の多くのダンサーが彼らにリスペクトを捧げていることは言うまでもない。
世界中を騒がせた出来事とは
組み合わせとしては最高に面白く期待の高まる対戦カード。
しかし、動画をみるとスタートから違和感を感じる。
異様な雰囲気で進む中、途中座り込むTight Eyez。そしてそこにBBOY Juniorがバトルを終わらせようと握手を求めるとそれを突き飛ばしてしまうのである。
そこからさらにBBOY Juniorと接近すると、それを避けながら倒立に入ったBBOY Juniorを蹴って転ばせてしまうのだ。
問題のシーンをまとめた動画
蹴った動画は瞬く間に拡散
蹴ったといっても攻撃性がないのは見てわかるとは思うが、この瞬間の映像が瞬く間に世界中に広まり今回の騒動まで発展してしまったのである。
義足であるBBOY Juniorを一方的に蹴ってしまっている動画は、まさに大炎上。
ここで改めて説明しておくと、KRUMPもブレイキンもHIPHOPカルチャーとされてしまうことがあるのだが、それは誤りで、ブレイキンはHIPHOPカルチャーであり、基本的にバトル中に触れることはご法度とされていて、KRUMPはヒップホップではなく、独自のカルチャー。触れることは表現の一つとされている。
しかし、今回はその両カルチャー同士の異文化バトルなので、意見が違うのは当然のことなのである。
世界中のBBOYやヒップホップカルチャーに属する人たちからはバッシングの嵐、一方KRUMPサイドは接触することは表現の一つと擁護する声も。
この自体について見解を述べた、DJ HIROKINGのブログでは翻訳したコメントが抜粋されていた。
「バトル中のボディタッチはタブーだって、今更説明しなきゃいけないようなことか?」
「そもそも、このかみ合わないバトルを企画したやつが間違ってる。」
「Krumpにおいては、バトル中のボディタッチはアリなんだぞ。普通のKrumpはもっと激しい。こんなん俺がいままで見た中で一番ソフトなバトルだ。笑」
「Tight Eyezは自分の評判わざわざ下げに行ってるようにしか見えないぞ。」
「対してJuniorは一貫して怒らずクールなふるまいで、すごいな。」
「そもそもKrumpはHipHopではない。(←これを言ってるKrumperがめちゃめちゃ多かった)」
「ボディタッチがありだとしても、逆立ちしてる人間にケリいれるのはどうなの?大怪我しかねない。しかもJuniorは片足が義足なんだぞ。」
「キックしたって言っても、ちゃんと見ればわかる通り、軽く足を当てに行ってるBUCK表現であって、本気で蹴ってるわけじゃない。」
「蹴りだけじゃない。Tight Eyezの態度全てがDisrespectfulだ。」
「Krumpイベントにゲストとして踊りに来てるんだから、Krumpのマナーでバトルやって問題ないはず。Juniorもそのつもりで来てるんじゃないの?」
引用 : http://www.hiroking.com/2017/10/04/tighteyez-vs-bboyjunior/
まさに賛否両論状態だが、フル動画のラストではBBOY Juniorがマイクで「ノープロブレム!リスペクト!」とコメントしているところを見る限り二人の間では解決しているだろうか。
そしてさらにTight Eyezも今回の件を受けて映像をアップ
今回の件に関しては、現場の雰囲気や実際状況など把握せず、記事化は危ないと判断。
そこで、現場でバトルも見ており、日本KRUMPシーンの立役者であるTwiggzに直接連絡しその見解を伺った。
タオルを使って動くTight Eyezに、そのタオルを取ろうとするBboy Junior。
かがんだ彼の後ろからTight Eyezがジャンプして引っ張るような体勢になり、そのままフロアに入ったり逆立ちする形となったBboy Junioに蹴りの仕草を見せたかったTight Eyez。
しかし、その蹴りがそのまま入ってしまった...と言う訳ですが。。。
もちろん、本当に思いっ切り蹴り飛ばした訳ではなく、蹴る仕草がそのままタイミングよくJRとの動きとリンクしてしまいそのまま蹴りが入りました。・・・ただこれは蹴りを入れると言うよりもソフトに跳ね除けるようにですが、でも接触はしてしまっています。
この瞬間、近くで見ていた人たちは、その一連の掛け合いのような互いの行為にエキサイティングしている人と、一瞬空気が止まった人に別れていました。
僕は遠目から全体を見ていたが、一瞬凍り付いたのは間違いありませんでした。
「あー入っちゃった・・・」
これは、KRUMPのバトルの中ではある行為でして、タッチやプッシュ、小さな突っぱり合い、シャツを引っ張る行為などは、互いの掛け合いであり、表現の一種として受け入れられる部分がありますが、この他ジャンル同士のバトルに関してやっていいことなのか?って言うのが、みんなの頭をよぎったと思います。
そのままバトルは続き、外野からのヤジもあって、一旦二人の話し合いで握手して終了となり、最終的にBboy Juniorがマイクで一言トークしてくれました。
「これは違うスタイル同士のバトルであって、KRUMPはタッチOKでBREAKIN'はタブー。
まさかプッシュされるとは思ってもなかったけど、これはKRUMPイベント。
ちゃんと理解している。だから問題ないよ。
蹴られて倒れたのだってリアクションであって、これは同じジャンルじゃないのはお互いに分かっている。
リスペクトしてる。」
と、紳士的な対応をしてくれました。
これが会場を一旦落ち着かせたのは本当に感心させられました。
彼の懐の大きさと経験値や今の立場からくるものだと思います。
終わった後の控え室でも揉めることもなく、終始和やかだったのが印象的でした。
偉大な軌跡を作って来ているBboy Juniorはミュージカリティーもキャラクターも素晴らしく、さすが、経験値の高い戦い方でした。
全てのラウンドが彼らしいアプローチで、KRUMPERとは違うバトルの組み立て方やタイミング。
ここぞっていう時の大技の完成度や盛り上げ方はエンターテイナーでした。
今回の蹴りが入った後の対応も、もしかして相手が彼でなかったら...と思うと、また違った問題に発展しかねなかったかもしれません。
もちろんTight Eyezも同じような立場ではあるかもしれませんが、性格も違えば今回の望んだモチベーションも違ったと思います。
その後、Tight Eyezが今回の件を受けて映像をアップしていましたが、「Bboy Juniorに申し訳なかったと思っているし、その後も二人の間では和解している。」と伝えています。
しかし、この蹴った映像だけが切り取られて先行し、SNS上でシェアされてTight Eyezが非難される事態になっています。
お互いのジャンルのルールやアグレッシブな部分の違いが浮き彫りとなり、KRUMPのKRUMPにしかないルールが他ジャンル相手に悪い方向に出てしまい、リスペクトがないように映ってしまったのはとてもショックでした。
Tight Eyezはリスペクトも持っていますし、それを彼が常日頃教えて来たことでもあり、根本的にKRUMPの土俵に来たからKRUMPで返してしまったけれど、今回のような世界が注目する中で、この映像だけではその姿勢が見て取れなかったのが非常に残念です。
ただ、これはTight Eyezだけが悪いんじゃなくて、これを企画したEBS側に問題もあったと思っています。
このような大きなエキシビジョンカード、そして異なるスタイルなだけに、慎重にルールや趣旨をしっかりと決め、起こり得る問題を予測して行うべきだったかもしれないし、これは“STYLE vs STYLE”では起こり得ることでしたね・・・
Bboy Juniorはこのバトルを楽しもうとしていたし、Tight Eyezは自分の創り上げたスタイルのイベントでレジェンド対決となれば、気を抜いて楽しむなんていうスタイルではなかったと思います。
Tight eyezも言う通り、
“KRUMP is not HIPHOP”
“KRUMP is KRUMP”
なんですね。
KRUMPの可能性を広げるために、僕もTight Eyezもオールスタイルバトル、HIPHOPバトルなど、他ジャンルのバトルにもトライしています。
僕もTight Eyezもそのルールにのっとって戦っているつもりです。
だけど、今回はお互いのジャンルのレジェンド同士のエキシビションバトルであって、そこにリスペクトはあるけれど、どちらかのルールに沿ったり寄ったりしてバトルするつもりもなく、レペゼンBREAKIN'、レペゼンKRUMPだったんだと思います。
もちろん、その結果、KRUMPでは当たり前のことが、ただただ悪いイメージに映ってしまって、他ジャンルの方々にとっては理解し難く受け入れられない状況となったことも事実です。
確かに、絡みの流れからどちらのROUNDとも言えない流れで、相手もMOVEし始めた中に蹴りが入って、邪魔したような見え方になってしまいました。
それに関して自体は単純に良くなかったかと思います。
だからと言って、KRUMPERみんながバトルする時に、相手に蹴るような行為をする訳では決してありませんし、それはパフォーマンスやキャラクター、そういうコンセプトのMOVEの一種で、本当に蹴り飛ばしてやろうと思って故意に蹴りにいくなんて事はしません。
「HIP HOPにはルールがある。文化を尊重すべき。」
と言うたくさんの書き込みも見ましたが、じゃあKRUMPの文化を理解している人がどのくらいいるでしょうか?
これをそのKRUMPの一面ということも知ってほしいきっかけになったかと思います。
リスペクトがないからではなく、お互いを高め合う一つのジェスチャーの動きからくるものなんです。
今回のことは非常に残念で複雑な形で動いていますが、良くも悪くも「KRUMPとは・・・」と改めて世界に発信する結果となりました。
そして、“STYLE vs STYLE”の違いや難しさも改めて浮き彫りになった今回でした。
これを機にKRUMPは厳しく見られる部分も出てくると思いますが、決して傷つけるためではなく、自分を高めるものですし、自己表現のエナジーを最大限に見せるスタイルだと思っています。
Tight Eyezも改めて言っていますが、銃や喧嘩を使わずに色々な想いを解決する手段の一つでもあるのがKRUMPで、感情をリアルに表現するものです。
Tight Eyezのしたことは他ジャンルにとってはタブーで、一概に許されるものでもないと思います。
Tight Eyezも、世界のKRUMPERに向けて「今回のことでKRUMP自体がマイナスなことになったらごめん。」と彼は言っています。
「ただ、だからって世界から来るHateのメールやレスポンスには謝らない。
俺はBboy Juniorには謝罪した。」
っていう、まぁごもっともな見解ではあります。。。
ただ、今回のバトルの中でこの行為をやって良かったのか、悪かったのか・・・
それを外野が判断するのではなく、彼らの発言や動向で見えてくるのかなとも思います。
僕はTight Eyezではないし、元々がHIPHOPで育っただけに、彼を理解するには簡単ではなかったです。
僕だったら土俵が違うのであれば、こういう表現はしないと思うし、使い分けます。
ですが、自分が見てきた世界のKRUMPはもっと危ないものもありましたし、危険な行為ギリギリなものもたくさん見てきました。
“自分たちはKRUMPのコミュニティだけでやってる”と言う人は僕の意見は通じないと思いますか、僕らはHIP HOPにも生かされている部分、寄り添っている部分あると思っています。
僕らももっと自分たちの事以外も学ばないといけないし、リスペクトを持って接し挑んでいかなければいけません。
そうやって繋がり、またリスペクトしてくれてる人がたくさんいるのも知っています。
今、RIZEの動画が改めて取り上げられ、本質である部分がクローズアップされていますが、この根本的な「KRUMP」という文化やスタイルがちゃんと他ジャンルの方々に伝わっていたのか?理解されていたのか?
そこも問題点であったかもしれません。
つまり、伝わっていないし、理解も薄い現状が分かります。
起きてしまったことに対してあーだこーだ言ったり、謝罪しろ!などと外野が騒ぎ立てていても、最終的には当人達の問題であり、今後、このような事が起きないようにKRUMPサイドも“KRUMP is not HIPHOP”である事を発信しなければいけないし、また逆に他ジャンルと寄り添う事も必要だと思っています。
僕は、何年も前から日本のKRUMPERには自分の声で、他ジャンルとのバトルの時はそのジャンルへのRESPECTを忘れてはいけないし、土俵を考えて100% KRUMPルールで望んではダメ。
KRUMPで許されるタッチも当然ダメと伝えてきています。
もちろん、みんな、多少の表現的なソフトタッチはあっても、故意的なタッチは絶対にしないし、それは当たり前の事だと認識しています。
それを踏まえて他ジャンルの方と戦ってる子達がほとんどです。
総合的に、今回の件の自分の見解としては、他ジャンル同士のバトルで、レペゼンKRUMP vs レペゼンBREAKIN'の“STYLE vs STYLE”だったため、そこで生じる違いがぶつかり合ってしまったが、当人同士は理解しリスペクトし合っている事で、決して故意や悪意で相手を傷付けようとした訳ではなく、エキシビションバトルでの熱さと駆け引きによるパフォーマンスも入っていたにしろ、他ジャンル相手にやり過ぎてしまったのは良くなかったのだと思います。
僕の意見としては、まだまだKRUMPのスタイルや文化を深く理解されていない現状で、これを見て不快に感じた方が多数いる事も受け止めているし、そこは申し訳ない想いもあります。
ただ、Tight Eyezは僕たちから見ても、やっぱりKRUMPはもちろん、人としても、やる事成す事全てにおいて卓越していて理解不能なくらい超人で、彼はKRUMPにおける事や、バトルに関しては一切の妥協も許さず、常に100% KRUMPで臨む事を知っています。
だからこそ僕は、あれは彼らしいバトルだったと感じています。
そして、それに自分のスタンスを崩さず最後まで紳士的に戦ってくれたBboy Juniorに拍手を送りたいです。
これが、僕が見て感じた意見であり、あくまでも僕個人の視点です。
まとめ
上記の通り、二人の問題であり、そこで解決しているのであれば問題はないこと。
なにより切り取られた一部だけが出回ってしまい、KRUMPのカルチャーを理解せずにTight Eyezが蹴っているシーンだけをみて、頭ごなしに全否定してしまったことが火がついた原因だろう。
本件以外でも、SNSでの炎上騒ぎなど、よく目にするが、他人が発信した一部だけに惑わされずに物事を見る姿勢が改めて大事だと編集部としても考えさせられる出来事となった。

Dews

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