【インタビュー】Angelo、“異端”を
冠したアルバム完成「同じ引き出しは
二度開けない」

Angeloが9月27日、前アルバムから約1年ぶりとなる9thアルバム『HETERODOX』をリリースした。“異端 / 異教”の意を持つタイトルはAngeloのアティチュードを端的に現す言葉だが、語られるべきはその先にある。異端を逆説的にとらえた発想こそ、予定調和や既成概念をことごとく打ち砕いてきた彼らのスタイルそのものだから。
Angeloは7月に開催されたPIERROT vs DIR EN GREYによるジョイントライブ<ANDROGYNOS>初日終演後に、「evil」ミュージックビデオ収録DVDを会場限定無料配布するというサプライズを行なった。結果、キリト自身が制作に深く関与したシリアスなサウンド&ヴィジョンは、アルバムへの注目度を加速させる。BARKSは、制作過程と新たな試み、死を意識しながら書いたという歌詞、破壊と構築を繰り返すバンドのスタンダードについて、キリトとKaryuにじっくりと話を訊いた。そのロングインタビューをお届けしたい。
   ◆   ◆   ◆
■出口と分かるところは

■最初から出口じゃない
──Karyuはいつも自分にハードルを課したり、何かテーマを掲げたりして、作曲に入ることが多いですよね。『HETERODOX』でも?
Karyu:曲の作り方を変えましたね。以前はギターをひたすら弾いて、いい部分を広げていくような曲作りをしていたんです。今回は、先に曲の設計図を頭のなかに描いてから作るようにしました。やったことない手法だったんで、やってみることで新しいものができるかもなという発想からですね。未知のものが生まれるんじゃないかってことに期待しながら。
▲キリト (Vo)


──一方のキリトは?
キリト:基本的にKaryuからの曲が出揃ってから、それを補完するようなイメージで自分は作っていった感じで。自分の中で煮詰める期間というのはいつもギリギリ……下手したら締め切りを過ぎている(笑)。
Karyu:僕が作ったのは、「SINGULAR」「STRING」「evil」「Scheme」「際限ない渇き」の5曲。いつもだったら、曲を作っている途中で形にならないかなと思ったら、アイデアそのものを捨てちゃうんですよ。原曲にも至らなかった候補が今まではあったんです。それが今回はなかった。作り方を変えたことで、手を付けた曲は全部形になってます。
──曲調はそれぞれでありながら、実は統一感あるのが今回の『HETERODOX』だと思ったんですよ。四方八方に飛び散って、いろんな引き出しを持ったバンドですという見せ方を、あまりしていないような印象でもあって。
キリト:でも俺の印象では、Karyuから出てきた今回の曲がわりといろんな方向性を持ったものだと感じたから、自分から出す曲に関しては、まあ、バラードはいるなとか、疾走感ある歌モノもいるなって作ったんです。けど、それ以外は畳み掛けるような激しさで作った感じかな。だからライヴ感があるという。それなりに方向性はいろいろあるけど、全体的に見ると、ライヴを見据えているというか。
──オープニングナンバー「SINGULAR」からして、力強いコーラスも加わって、まさにライヴの幕開けを連想させますよね。
キリト:それでもAngeloの流れの中では、新しい引き出しや試みもあるでしょ。そこからアルバムが始まって、いろいろありながらも、俺の中ではヘヴィに畳み掛ける感じに仕上げたいなって思っていて。
──メンバー内でのアルバムに向けた意思統一も取れていたんですか?
Karyu:このバンド、そういう会話は意外にしないですからね(笑)。曲ができるまでアレンジをやるっていう。相当な集中力も必要としましたね。
▲『HETERODOX』初回盤
▲『HETERODOX』通常盤


──できるまでやる……音楽や曲には正解がないから難しいところですよね。最終的に何かポイントになっていることもありました?
Karyu:それはね、俺も聞きたいです(笑)。
キリト:自分達の引き出しに甘えてないってところまで作り上げないと、俺の場合、納得しないんですよ。俺は演奏陣のみんなと違う観点で、サウンドに関して客観的に捉えるところがあって。そのときに、新しい引き出しを作ったなってところまで到達していないとダメっていうかね。それなりに形になっているけど、それは過去に自分らがやったこの引き出しにあるよねってレベルで収まっちゃダメだと思っているから。
──つまり自分達の音や曲に、常に自分もゾクゾクしたいという。
キリト:そう。Angeloは、ファンの人達にとっても、新作が一番の最高傑作というのを更新しながらアルバムを作ってきているんで。やっている自分らがそう感じられるものを作らないと、ファンの人達にそう思ってもらえるはずないから。最低限のスタートラインとして、自分らの中で“また新しいことをやってしまった”というレベルまでいかないと。だからこそ、しんどいとは思いますよ。だってアレンジを進めていても、その出口は分からないから。最初から出口が分かるってことは、過去に行ったことあるっていうデータがすでにあるってことでね。出口と分かるところは、最初から出口じゃないんで。トンチみたいな言い方だけど(笑)。今まで観たことのない場所こそが出口なんで。
■最後の曲で正気につながっていくあたりが

■かろうじて自分も大人だなと(笑)
──PIERROTとDIR EN GREYが7月に横浜アリーナで行なった<ANDROGYNOS>のとき、未発表だった新曲「evil」のミュージックビデオ収録DVDを無料配布しました。その曲自体、Angeloのファンも新しさを感じたと思いますよ。それまでとは違った曲調だったり、アプローチが飛び出しているから。
Karyu:曲を作っていて、閃いた感がすごくありましたよ。やっていることはわりとシンプルなんだけど、高揚感と浮遊感が共存している感じがあって。ドラムで何か新しいことないかなって先に頭の中で考えてから作り始めたんです。自分が『HETERODOX』で作った曲は、それぞれいろんな観点から考えて着手していったものばかりです。例えばAメロだけを4分の3拍子にしてみて、その後の展開から疾走感を出すとか。あと新しいってところでは、アルペジオをちょっと多めにした感じはあります。それに伴ってアンプも、今まで使っていなかったフェンダーを選んでみたりとか、いろいろ試行錯誤しました。ひとつの音色であっても、必ず2つのアンプが鳴っているんですよ。それで音の太さは出ていると思います。何パターンも試したし、ミックスでもアンプの組み合わせを試したりしています。
▲Karyu (G)


キリト:結果、DVD「evil」の評判も良かったと思いますよ。
Karyu:その7月の時点では、『HETERODOX』のレコーディングも始めてました。
キリト:歌入れは8月からだったけど(笑)。歌詞ですら、8月に入ってから。1日おきに歌入れで、その空いている1日で翌日に歌う曲の歌詞を書いていたからね。
──歌詞においても、サウンド面で通じるような行ったことのない出口を求めていましたか?
キリト:言っていることの芯や核の部分は、昔からある種、変わっていないものが土台になっている。だからモチーフやアプローチを変えていかないとダメなんで、そこで何があるかっていう。それ=HETERODOXというひとつのストーリーにどれもが関連して帰結していかなくてはいけない。
──今年の頭にすでに形にしていた「STRING」と「evil」を除いて、「HETERODOX」がアルバムの書き下ろし曲で最初に手がけた歌詞ですか?
キリト:そう。けっこう曲順どおりに書いていったところがあるかな。一歩ずつ前に進んでいった感じで。前日に手がけた歌詞の内容を受けて、次の新しい歌詞に膨らむこともありました。
▲ギル (G)


──最初に意図しなくても、コンセプト作品みたいな流れも自然に生まれますか?
キリト:もちろんそういうこともあるし、すごくリアルだなと。だからアルバム前半は、精神的にすごく病んでいる。でも、そうもいかないしなって。そして「RESISTANT BACTERIA」に辿り着いたあたりで、ようやく正気に戻っている(笑)。
──確かに、アルバム前半の曲にはネガティヴなワードも飛び交ってますね。
キリト:前半はけっこう死にたかったというか、死を意識しながら詞を書いてたんで。「胎動」あたりは、完全に際まで来てた、自分の精神的にね。でも現実、そうもいかないしなって、最後の曲では正気につながっていくあたりが、かろうじて自分も大人だなと思った(笑)。
──今までも精神的に自分を追い込んだ状況の詞はあっても、ネガティヴの塊ではないですよね?
キリト:ギリギリまでネガティヴのままだけど、そのままで締めたくないなってのは常にあるから。だから最終的にはポジティヴな詞にはなっていると思います。
■意味が分かんない、褒められやしない

■そもそもバンドも違うんで(笑)
──でもアルバムタイトルは『HETERODOX』で“異端な”という意味合いですね。このタイトルの真意は?
キリト:自分達としてはスタンダードというか、ストレートに出てくるものが、全体とか世間的に見たときにそうではない扱いになるってことを、逆手に取ったタイトルで。新しいものって、常に最初は異端なものでしょ? それがスタンダードになっていく未来を作っていかなきゃいけないという思いもありますけど。
▲KOHTA (B)


──つまり、これこそがAngeloのスタンダードである、と正々堂々と掲げることもできる自信作であるということですか?
キリト:それしかないと思っているし、そういうやり方でしか前へ進めないんですよね。自分達の中でもいろんなことをやってきて、引き出しも増えていくからこそ、やるたびに新たなものを見つけていく作業は大変になっていくんだけど。今までにある引き出しから探せばいいって考え方をする人もいるんだろうけど、俺は、引き出しは2回開けちゃいけないって考えがあって(笑)。それでもない引き出しを作っていくことをやり続けていかなきゃいけない。
──開けちゃいけないものを作る、要するに“パンドラの匣”を自ら作り続けるという……うまいこと言ったかも(笑)。
キリト:なにその、してやったり感が満載の表情は(笑)。意味が分かんない、褒められやしない(笑)。そもそもバンドも違うんで(笑)。
──すいません(笑)。でも『HETERODOX』の仕上がりは、異質さというよりも、むしろ安心感すら覚えるようなバンド感の高さや力強さ、メロディが詰まってます。
Karyu:曲やアレンジを作っている過程では、ひたすら新しいものを求めてガムシャラにやってたんですよ。仕上がってみれば、ここまで行けるとは思ってなかったという、全てが想像を超えていったアルバムなんです。それがいいバランスで共存もしているんだと思います。でもアルバムの手応えをより実感するのは、これからライヴやツアーをやってからだと思います。
▲TAKEO (Dr)


──ヘンに思考回路を働かせなくても身体がダイレクトに反応するエネルギーも、アルバムには充満してますからね。今までAngeloを体感していなかった方にも、この『HETERODOX』は異端な作品ではなく、分かりやすい入り口にもなり得ると思いますよ。
キリト:そうですね、まさに。作ったほうは今の時点でやり切ったんで、それをどう受け取ってもらうかは、それぞれ自由にってことです。
Karyu:配布したDVD「evil」と数日前に公開になったミュージックビデオ「RESISTANT BACTERIA」では、ストイック過ぎるバンドとか、そういった印象を持つかもしれないんですけど、ライヴではいろんな表情が見れるんで。刺激的なところもあれば楽しめるところも多いし、11月からスタートするツアー<REVERSAL OF HETERODOXY>を観に来てください。
キリト:大胆にやっていきたいと思ってます。それはツアーやライヴだけじゃなく、自分達の作ってきたスタイルをも平気で壊していくぐらいに、どんどん変化していきたいと思っているんで。
取材・文◎長谷川幸信
■9thアルバム『HETERODOX』


2017年9月27日発売

【初回限定盤(CD+DVD)】IKCB-9556~7 ¥3,500(税抜)

DVD:「evil」Music Video

【通常盤(CD)】IKCB-9558 ¥2,800(税抜)

01.SINGULAR

02.STRING

03.HETERODOX

04.ORIGIN OF SPECIES「ALPHA」

05.evil

06.Scheme

07.胎動

08.Resolve

09.際限ない渇き

10.RESISTANT BACTERIA

■全国ツアー<Angelo Tour「REVERSAL OF HETERODOXY」>


11.17(金) EX THEATER ROPPONGI 18:15/19:00

11.22(水) TSUTAYA O-EAST 18:15/19:00

11.23(祝) YOKOHAMA Bay Hall 16:15/17:00

11.28(火) 新宿BLAZE 18:15/19:00

11.29(水) 新宿BLAZE 18:15/19:00

12.07(木) umeda TRAD (旧AKASO) 18:15/19:00

12.09(土) 名古屋DIAMOND HALL 16:45/17:30

12.14(木) 広島CLUB QUATTRO 18:15/19:00

12.16(土) 熊本B.9 v1 16:15/17:00

12.17(日) 福岡DRUM LOGOS 16:15/17:00

12.23(祝) 札幌PENNY LANE24 17:00/17:30

12.25(月) TSUTAYA O-EAST (FC限定) 18:00/19:00

12.30(土) 仙台Rensa 16:45/17:30

■<Angelo 11th Anniversary「HETERODOXY」>


10月04日(水) 豊洲PIT

OPEN 18:15 / START 19:00

▼チケット

全指定¥6,480(税込)

※3歳以上チケット必要 ※ドリンク代別

(問)ディスクガレージ 050-5533-0888

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