2017年上半期「オススメV系CD」ホン
    ネ座談会!“CDが売れないこんな世の
    中”に推したい9作

    2017年上半期も様々なCDがリリースされたV系シーン。改めて振り返ってみようと、V系をこよなく愛するライターが3人集まって本音で語った座談会です。
    藤谷:今回は、CDが売れないこんな世の中じゃ……ってわけではないですけど、ライターの山口哲生さんと高崎光さんをお迎えして、上半期にリリースされたCDについてそれぞれがオススメを語るという座談会です。よろしくお願いします。
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    今年上半期は活動休止を余儀なくされていたlynch.の復活作『SINNERS - EP』、ボーカル・ソラが加入して新体制となったLEZARDのシングル『TOKAGE!!ライジング』など、明るいニュースを含んだリリースや、cali≠gari『13』やD'ERLANGER『J'aime La Vie』といったベテランが「これぞ!」という円熟味のあるアルバムもありました。
    山口:アルルカンが、シングル(『価値観の違いは唯一の救いだった』)に、初期に発表した14曲を再レコーディングして収録したのは面白かったですね。
    藤谷:それをシングルのカップリングの「音源集」として出すというのがまず異例ですよね。「15曲入りシングル」ってパンチがきいてるじゃないですか。ゴールデンボンバーがLINEスタンプでベストアルバムを出したのもそうですけど、リリースというもの自体に対して何らかの試みを行っているのが面白い。
    それこそ、上半期はゴールデンボンバーの『#CDが売れないこんな世の中じゃ』の衝撃ときたら。この曲は「ミュージックステーション」で初披露だったじゃないですか、パフォーマンス中にQRコードを出して「ダウンロードしろ」っていう。
    本来「ミュージックステーションに出る」ということはCDを売るためのプロモーションという意味も大きいじゃないですか。前提を崩してきたわけですよ。ある意味破壊活動ですよ(笑)。
    山口:企画力がすごいですよね。
    高崎:とあるタワレコのPOPに「正直ジャケットを差し替えてほしいです」って書いてありました。もちろんギャグでですけど(笑)。
    藤谷:ジャケットにダウンロードURLのQRコードが印刷されてますからね(笑)。そうやって色んな所に波紋を起こせるのが面白いなと、手垢の付いた表現ですけど「一石を投じる」ってそういうことなんでしょうね。全体的に前ほど激しい複数種売りも減ってる気がするんですよね。CDというパッケージについての認識が変わってるのかな。
    高崎:ここ何年か、大手レコード会社各社が事業計画で割と「CDセールスに頼らない総合エンターテインメント企業に」って言っちゃってるんですよね。キングレコードあたりはAKB48もいるし、まだ抗ってますけど。
    「CDが売れないのはもうどうしようもないから、興行やらIPやらマーチャンやらで採算とろうぜ」と、大声で言う事がカッコ悪くないって雰囲気が完全に出来上がったから、だいぶ自由になったのかも。
    藤谷:と、いうわけで、今年上半期、皆がおすすめしたいCD3枚をあげてもらいたいと思います。まず、山口さんからお願いします。
    山口:僕、全部ベストアルバムなんですけど……。
    藤谷:上半期ベスト企画に全部ベストアルバムを持ってくる、「頭痛が痛い」「馬から落馬」みたいな。
    山口:あとは「詳しい詳細」とか(笑)。ベスト盤を選んだ理由としては、単純に「入りやすい」というのがまず。
    あと、最近はサブスクリプション型サービスも出てきましたけど、バンドや音楽が気になった場合って、やっぱりまずYouTubeで聴くことが多いと思うんです。で、横に関連動画も出ているんだけど、結局それ自体とは全然関係ないものに飛んだりして、その1曲で終わりがちというか。
    それ自体を知るキッカケとしては便利だと思うんですけど、深くわかりやすく知りたいとなると、やっぱりベスト盤って最強だなと。
    藤谷:リリースペースが早いから、ある程度活動してるバンドだと、どのCDから入っていいかわからないのはあるかもしれません。
    山口:そこに加えて、ヴィジュアル系ってどうしてもクローズドな土壌があるじゃないですか。だからいちライターとして、もうちょっとカジュアルにヴィジュアル系に触れてくれる人、ライト層が増えてくれたらいいなという願いも込めてのベストという選択です。この記事も「なんとなく気になっている人」が読んでくれる面もあると思うので。
    高崎:いい話だった。
    SuG『MIXTAPE』山口:で、まず1枚目はSuGの『MIXTAPE』です。これは今年10周年を迎えた彼らの記念ベストなんですけど、SuGというバンド名がHIPHOPのスラング(thug)からきていて。それでこのタイトルのベストアルバムを出すというところでニヤリとしてしまいます。あとはジャケットもかわいい。
    藤谷:本当だ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』みたいでかわいい! 通常盤の女性の顔にカセットテープが飛び散ってる画像にグリッチエフェクトかかってるのもいいですね。アナログとデジタル両方取りっぽくて。
    私の中でSuGって最初は、とっちらかってるというか、悪い意味での「ルックス先行」というか、やりたいことと技術のバランスの悪いバンドだったという印象があったんです。
    高崎:私はPS COMPANY育ちのバンドたちのそういうところが好きなんですよ。技術と理想の間で戦いまくってて、ビジョナリーでギラついてて前のめり……。
    山口:本人達も、昔は技量がなくて、当時やりたかったことを現在の自分達でアップデートしているという話はよくしてますね。SuGって色んなジャンルをミックスした曲であり音が特徴なんですけど、そこは昔から変わっていなくて。そこに10年の重みと筋が通っているから、聴いていて気持ちがいいんです。いろんなことをしてきたけど、ある意味変わっていないというか。
    高崎:わー、『☆ギミギミ☆』だとか、初期のポップな曲もちゃんと入っているんですね。
    藤谷:最近の曲である『teenAge dream』から『☆ギミギミ☆』の流れも違和感ないんですよね。武道館の名刺代わり的なCDといえるアルバムですね。
    山口:そう思います。武道館も目前に迫って来ましたけど、10年目っていう勝負の年に大きく打って出たことは、やっぱり拍手を贈りたいです。……と、いいつつ下半期のリリースになっちゃうんですけど(苦笑)、一番推したいのは最新EPの『AGAKU』なんですよ。
    この曲も「アップデート」という話につながってくるんですが、活動休止前に『sweeToxic』という曲を発表していて。あの曲はファンクを基盤にして、かなり早い時期にダブステップを取り入れていたんですけど、今回はその路線の強化版です。
    曲調をひとことで言ってしまうと「おしゃれ」なんですけど、それでいて歌詞が泥臭いっていうのがまた良いんですよ。そこにこのバンド独特の空気感がある。音にしろ言葉にしろ、こういう混ぜ方をするバンドってジャンル問わずなかなかいないし、武道館前にいい曲をしっかり作ってきた勝負強さもさすがだなと思いました。
    V系に入れてよい?爆発的な歌心が詰まった作品
    R指定『日本アブノーマル協会』藤谷:私が今年の上半期でとりあげたいのは、R指定のミニアルバム『日本アブノーマル協会』。本当にシンプルな「今本人たちがやりたいことを詰めた」という印象を受けました。
    R指定的なサブカル愛国的な歌詞でも曲調が現代的だったり、ラップ調でシーンに毒をはく『delete.』からエモーショナルな『スタンド・バイバイ・ミー』だったり、おそらく彼らの「今やりたいこと」が瞬間的にパッケージされている。ミニアルバムという形態に合ってますよね。
    山口:R指定ってサウンドのバックグラウンドが広いですよね。
    藤谷:バンドとしての地力がしっかりしている。2012年に『アイアムメンヘラ』でメンヘラカルチャーを輸入してきてから、「R指定みたいなバンド」というか、V系シーンにおいてサブカル色のあるメンヘラ風味のバンドは増えましたけど、そういったバンドと一線を画しているのは単純に技術とセンスなのだなと。
    高崎:R指定を聴いて、バンドサウンドに対して耳がいい子が増えそう。本作はあんまりシーケンスを使ってないんですね。最近のR指定って、セッションバンドの子たちがコピーできないというか、あれをカッコよく聴かせるのは難しいかも。むしろ皆がコピーしたらシーンの技術の底上げが行われるのでは。
    山口:「メンヘラ」と聞くと、なんとなく閉塞的なイメージが浮かびがちですけど、曲によっては、島国というよりは大陸というか、細々やるというよりはドーン!といく感じもあって、小さくまとまっていない感じもいいですよね。
    藤谷:ヴィジュアル系という枠からは外れずにいろんな要素を詰め込むことに関しては、もはや職人的な域ですよ。サブカルチャーのサイゼリヤというか、いろんな味がある低価格帯のファミレスみたいな……褒めてますよ! あくなき企業努力を感じる1枚です。あとこのCD、ブックレットの表紙と本文の紙質が違うんです。特装版とかではなくて、そういう「ちょっとしたこだわり」がいいなと。
    山口:CDで出す意味っていうのはそういうところにも出てきますよね。
    ASH DA HERO『A』高崎:1枚目から出していいのやら……、ヴ、ヴィジュアル系に入るかどうかわかりませんが……。
    藤谷:「VISUAL JAPAN SUMMIT」に出ていたので本記事ではヴィジュアル系とします。
    高崎:ASH DA HEROの良さを端的に表現すると、色んな価値観のある世の中で、ロックンロールを真剣に信じている、その力で君たちを救うというスタンスなんですよ。
    ロックで世界を救いたい、スタジアム・ロックで大衆を幸せにしたい。みたいなのが基本軸にあるんです。キュウソネコカミback numberのような身近な世界を歌うロックバンドが増えている中で、このスケール感はすごいなあと。
    藤谷:時代錯誤と思われても構わない潔さがありますよね。
    高崎:いろんなロックスターへのリスペクトとかオマージュを感じて、『アベンジャーズ』みたいな贅沢なごった煮感があります。でも、パワーボーカルだから、何を歌ってもASH DA HEROになる。
    山口:曲によって声色を変えているけど、全部「ASHさん」ですもんね。そこは本当にすごいと思います。スタジアム・ロックをやろうとしている気概もかっこいいし。
    高崎:恥ずかしげもなくやってるのが良いんです。歌心が爆発的にある人。西川貴教やDAIGOのような、タレント性のあるボーカリストって最近いないじゃないですか。
    このアルバムの中に『ラブソング』っていう曲があるんですけど、これがですね、失恋の曲なんですけど、まるでさだまさしの『関白宣言』かっつーような、語りかけるような感じで、主人公の元カノが見えるような曲なんですよ……。こうやって響かせるような曲を歌える人は中々いませんよ。歌声、ホントに歌心がある。
    最近で一番「ヴィジュアル系」だと思った作品
    BugLug『絶唱~Best of BugLug~』山口:今年の上半期を語る上で、やっぱりBugLugのことは外せないでしょう。一聖さんが無事復活して、日本武道館のステージに立ちましたけど、ライブを観ていて、最初はどこか夢心地だったんですよ。
    藤谷:「(バンドが)動いてる、演奏してる……!」みたいな。
    高崎:でもライブってそもそもそういうものじゃないですか。憧れの人が動いて歌ってるみたいな。武道館でそんな感動を提供できるなんて、ある意味素晴らしい事です。
    山口:後半は「そういえばしばらく休んでたんだ」って思うくらい、ライブに没頭できて楽しかったです。その武道館前に出したベストアルバムがこちらなんですけど。
    最初はカラフルでポップなイメージがあったけど、これにも収録されている『絶交悦楽論』から変わっていって。多くのバンドは時間を経てまろやかになっていくものですけど、逆に彼らは尖ってきている。あと、このバンドも筋が通っているんですよね。ネガティヴだろうがポップだろうが、そこには必ず希望をかかげているという。
    藤谷:そういうところはベスト盤で浮かび上がることはありますね。
    山口:取材で本人達が話していたんですが、復活からの武道館を経て、今は若干一区切りついたように見られている感がどうしても出てしまうということを言っていて。現状をかなりシビアに捉えていると思うし、ここからまたさらに尖っていきそうな気がします。
    藤谷:これから全国47都道府県ツアーも始まりますし、攻めてますね。
    山口:それを踏まえたシングル『新人生』も、かなり面白いものになってますよ。それに、彼らが武道館をやったことでレーベルメイトのDOG inTheパラレルワールドオーケストラBlu-BiLLioNが、間違いなく刺激を受けているんですよね。
    藤谷:DOG inTheパラレルワールドオーケストラも「変わります」宣言を経てリリースしたアルバム『HEART』も良かったですね。
    山口:いいアルバムでしたよね。Blu-BiLLioNは、このまえツアーファイナルを観に行ったんですけど、めっちゃくちゃカッコよくなってたんですよ。ステージの熱量がかなり高くなっていたし、その上で、彼らの曲って清涼感もあるじゃないですか。それがまたいい感じで映えてきていて。次のアルバムの予定も発表されましたし、下半期がかなり楽しみですね。
    えんそく『惡道に死す』藤谷:ここ最近で一番狭義の「ヴィジュアル系」だと思ったアルバムです。
    ここでいう「狭義のヴィジュアル系とは何か」は「メイク衣装を含めて作品、トータルの楽曲の世界観を表現する」というか。そういう意味では大変コンセプチュアルなヴィジュアル系です。
    山口:最近それをできるバンドが少なくてさみしいです。
    藤谷:2014年にリリースされた前作『惡童のススメ』の続編にあたる作品で、世界が滅ぶという大きな筋書きがあって、悪の秘密結社「ウシノシタ団」に扮したえんそくたちを筆頭に、色々なキャラクターや物語が平行してるんですけど、たとえば殺し屋の話も、合唱のリーダームカつくっていう話もある。サウンド的には90年ゼロ年代のオマージュもふんだんに盛り込まれていて。
    山口:『犬死にマクマーフィー』とか『怪人ラボの夜』の語りは、なんとなく昔の『エヴァンゲリオン』を思い出しました。
    藤谷:ボーカルのぶうさんは大槻ケンヂや舞城王太郎をルーツにあげていますし、いってしまえば90年代末〜ゼロ年代初頭に流行った表現方法ですよね。それこそ当時はそういう表現ってたくさんあったし、ある種凡庸だったはずなんですよ。それをずーーーーーーーーーーーっと同じことをやり続けて、結果、熟成したラーメン屋のスープみたいになってる。
    高崎:継続は力なりですね。
    山口:それプラス、曲の裏ネタで深みがでますよね。
    高崎:アルバムとして出す意味がある作品ですね。えんそくって、コミックバンド扱いされてますけど、めちゃくちゃ演奏もしっかりしてます。
    藤谷:えんそくがライブであの衣装であれだけ動いてあれだけ弾いてる、屈強なロックバンドであることはもっと注目されてほしいですよ。
    山口:同じ会場で、昼は無料、夜は有料でワンマンをやってましたよね。ライブのひとつの形として面白いなと思いました。
    藤谷:試みが面白いというのもフックですよね。ヴィジュアル系が豊かなジャンルであるということの、ひとつの象徴みたいな存在だと思います。
    A9『IDEAL』高崎:A9の最新アルバム『IDEAL』です。こんな事言ったらアレですけど、A9って『アラサーちゃん』でいうところの「モテ」と「自我」の間でずっと戦争してるところが面白いんですよ。「女子供」に好かれてて、それってとっても素晴らしいって分かりつつも、そこにコンプレックスがある……みたいな。
    でも、そういう戦いつつ取るバランスって絶対大事だと思うんです。ボン・ジョヴィやドレイクだって「女子供」を掴めたから尖ったジャンルで天下をとれた訳だから。ちなみに今回のアルバムは「自我」が勝ってます。
    山口:それはどのあたりが?
    高崎:「スゲーマニアックな事やってない!? なんだそこの展開は!?」みたいな曲もあったりして。べースとかコッソリ化け物みたいに良いフレーズ弾いてたりするし、聴き込み要素のあるスルメ盤だと思います。
    それでもイケメンであるっていう絶対的なキャッチーさがあるから、マニアックなことをやってても届くべき層に届くっていう。でも、リリースイベント企画では「メンバーとリムジンに乗れる」みたいなことをしていたり。
    藤谷:『バチェラージャパン』みたいだ!
    高崎:それが「モテと自我の戦争」なんですよ。
    藤谷:ヴィジュアルに対するディレクションも自主になっても変わらず、というかさらにかっこよくなっている印象があります。A9も他にいないバンドになりましたね。
    高崎:「俺たちの音楽、そしてイケメン」みたいな……。素晴らしいです。何着ても映える方達なので、ビジュアルでワクワクできますよね。新しいことをやろうという意識もありますし。A9の頑張りは変わらなくて、ユーモアに溢れているけれど、戦ってる部分はすごく戦ってるし、戦い続けてほしい。とにかく、女性ホルモン分泌と音楽的発見・刺激が足りてない人は聴いてください。
    山口:もちろん女性だけじゃなくて男性もかっこいいと思うバンドですよね。
    高崎:とにかく音が良いですし、突き抜けたイケメンって今の時代、一周回って同性受けしてますよね。TOKIO的な。
    戦い続けるバンドの、理想的で美しいベスト盤
    NOCTURNAL BLOODLUST『THE BEST ’09-’17』山口:最近は払拭されてきた感がありますけど、NOCTURNAL BLOODLUSTというバンドは、ラウドシーンとV系の間で、誤解と偏見と受けながら活動してきたんですよね。
    でも、それとひたすら戦い続けて、結果的に『VISUAL JAPAN SUMMIT』や『渋谷が大変』に出る一方で、『SCREAM OUT FEST』や『LOUD PARK』にも出られるようになった。自分達のアティテュードを貫いて、誤解や偏見をバンドの実力でねじ伏せたところが、まずかっこいい。
    あと、「ラウドシーンとV系の間」と聞くと、「曲が激しくてただ叫んでるだけでしょ?」みたいなイメージも付きやすいと思うんです。でも、ベスト盤を通して聴くと、もちろんブルータルなんだけど、すごくバラエティに富んだ楽曲をやっていることがわかりやすい。
    高崎:いろんなものが洗練されていっててすごい。ヴォーカルのクリーンも初期より随分よくなってる。ラウド系ってテクニックだけに酔って他は何も伝わらないオナニーになりがちだけど、ノクブラからは死んでもオナニーだけはしないという確固たるポリシーを感じます。そこが他と違いますね。
    藤谷:ノクブラって私の中では「野心と執念」のバンドなんですよ。それこそ数年前、V系のライブハウスに出始めた頃に一度ライブを見たことがあったんです。その時はピンと来なくて、「上手だけど…あんまり(V系としての)ケレン味がないな」と。
    その1年後くらいに見る機会があって、そしたら見違えていて。その後の活躍はいうまでもなく……。もともと華があって、あとから技術がついてきたバンドは多いじゃないですか、その逆は少ない。あのカリスマ性は後天性だと思うんです。本当に努力でここまできたんだなと。だからこそ「魅せること」「楽しませること」に対して人一倍意識が高いのかなと。
    山口:エクストリームだけどポピュラリティがありますよね。このベストには新曲2曲が収録されているんですが、『BREAK THIS FAKE』という曲が特に印象的で。従来通り充分にヘヴィなんですけど、すごくシンプルというかストレートな形になっていて、またひとつ別のステージへ行こうとしていることを予感させるところがありました。
    既存曲で過去を振り返りつつ、今の形にリマスタリングして、なおかつ未来を感じさせる新曲があるというのは、ベスト盤として理想的というか、美しいなと思います。
    Jin-Machine『全日本おもしろ選手権』藤谷:ここで全く雰囲気が変わりますが、Jin-Machine『全日本おもしろ選手権』の話をしたいと思います。
    えんそくもJin-Machineも「面白いバンド」と評されることが多い……っていうかまあ私もそうしてますけど、かなり違うんですよね。Jin-Machineの良さってこのタイトルに集約されていて、とにかく歌詞も曲も「面白がる」ということの楽しさにあふれています。「ヴィジュアル系のポーズ」も「通勤電車」も面白がって曲にしている。これもまたヴィジュアル系の自由さなんですよ。
    山口:僕もすごく好きですね。今作だと、ひもりさん作詞作曲の『BLUE MOUNTAIN』がよかった。強烈にキャッチーなんだけど、これはいったいなんなんだ……?っていう(笑)。
    藤谷:歌詞が延々と種田山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」の繰り返しという。今年上半期いちばんの怪ソングですよ(笑)。そうやって、ジャズも演歌も面白がってるじゃないですか。まさに掲げている「コミックプログレッシブ」というか。
    山口:今回「プログレ」って言い張ったのが強いですよね。先行シングルになった『†夏 大好きヴィジュアル系†』も、相当はっちゃけた展開だったし。
    Jin-Machineって、昔は真面目に音楽やバンドをやることを恥ずかしがっていたきらいもあったじゃないですか。普通のヴィジュアル系バンドっぽいことが出来なかった。ライブでペットボトルを投げられないとか(笑)。
    藤谷:それはA9とはまた別ベクトルの謎の自我ですよね。非・ナチュラルボーンV系の自意識ですよ。
    高崎:ひどい(笑)。
    山口:で、ペットボトルは恥ずかしいから「役に立つものを投げよう」っていうので、カップラーメンを投げたりしていて。そんな「謎の自我」を持っていた人達が、今はガッツリ音楽もバンドもやっていることにちょっと感慨深くなります。
    藤谷:ベースの水月さんの脱退は惜しまれますが、卒業ライブも本当に良かったですし。いろんな想いをこめて、3枚目はこちらにさせていただきます。
    グッと印象が変化!スター性を帯び始めた作品
    ペンタゴン『WANDERLUST』高崎:ペンタゴンの2枚目のフルアルバムをあげたいです。ペンタゴンって私、ちょっと最初は印象が悪かったんです。彼等がどういう音が出したくて、どういうオリジナリティあふれる理想を持っているのか分からないなーと。ケレン味はあるけど、「原材料・MEJIBRAY、アルルカン」みたいな。「近場から要素とりすぎ」みたいな。
    でも、今回でグッと印象が変わりました。ヒットを作るということは、「普遍的な共感を、奇抜に」っていわれるじゃないですか。『今日から僕は改札機』という曲があって、それはまさにそうだなあと。歌ってることがシニカルで、展開も独特だし。「日常の歯車になるけど感情は持っていよう」みたいなメッセージ性があって奥行きのある曲なんです。
    山口:僕もあの曲好きでした。アルバム全体としても、自分達のやりたいことをやりたいようにやっている感じがあってよかったです。
    高崎:身も蓋もないことを言っちゃうと、どこに行きたいのかコンセプトがよくわかんなかったのが、今回のアルバムで見え始めたって感じです。スター性を帯び始めているともいえる。ルックス先行、戦略先行みたいなところもあったけど、それば武器でもある。若々しいしみずみずしいパワーがある。そういう若さ特有のギラツキ感って今しか出せないものだから。
    藤谷「伸びしろが見える」って大事ですよね。MVでもちょっと「話題先行」的だった部分をバンド側で茶化してるような部分があるのも面白いなと思いました。
    藤谷:ほかには上半期リリースされたものでは、ラッコ『虫入りチョコレート』とか、Initial'L『VISION』なども印象に残りました。やっぱりメロディの良いものに惹かれます。heidi.『邂逅』もよかったですね。
    山口:heidi.はいい作品を作ってますよね。まあ『邂逅』は去年の12月28日発売でしたけど。
    藤谷:誤差です。
    山口:ええ。ちょいはみ出てるけどそれぐらい推したい作品ということで!
    高崎:ザアザアの『不幸な迷路』もよかった。30代以上にウケそうなアルバムです。
    藤谷:摩天楼オペラが4人体制になってからの初のフルアルバム『PANTHEON -PART 1-』も充実した内容でした。こうやって振り返ってみると、色々充実していましたね。
    もう下半期に入って、GLAYがアルバム『SUMMERDELICS』をリリースしていますし、DEZERTも10月にシングル発売するそうで。そしてMUCC、D'ERLANGER、Plastic Treeのトリビュートアルバムも控えています。いや~楽しみです。
    高崎:ヴィジュアル系はまだまだ豊かなジャンルだなと思えた有意義な座談会でした。ヴィジュアル系って実はファンの数に対してCDはかなり売れていて恵まれてると思うんですよ。だからどのバンドも、これからも円盤で曲を出す事の意味に向き合い続けてほしいなと思います。
    逆に映像も音楽も配信に振り切って、インストアイベントはまた別の形態でやって収益化……、とかいうバンドがいても面白いかも。
    山口:いろんな活動スタイルをとるバンドが出てくると面白いですよね。ヴィジュアル系でもサブスクリプション型サービスで配信する人たちは少しずつ出始めてきましたが、海外ファンも多いジャンルなんだから、あのサービスとはもっと積極的に向き合わなきゃいけない部分もあるんじゃないかなと思います。
    それゆえにCDを出すことの意味は重要になってくると思うし、CDは藤谷さんが話していた「狭義のヴィジュアル系」を表現しやすい媒体でもあると思うので、これからも面白いCDが出てくることを期待してます。
    プロフィール山口哲生:1981年生まれ。愛知県出身。音楽雑誌編集を経てフリーランスに。邦楽をメインに雑誌・WEB・ファンクラブ会報などで幅広く執筆中。「最近何か面白いことありました?」といろんな人に聞くのが好き。
    高崎光:平成生まれの若手フリーライター。元音楽雑誌編集・ライブハウススタッフ。執筆ジャンルはロックからアニメ、ガールカルチャーまで、最先端のニヤニヤワクワクできる事全般。
    藤谷千明:1981年生まれ。山口県出身。工業高校を卒業し自衛隊に入隊。その後さまざまな職を経てフリーライターに。近年はV系が中心。

    ウレぴあ総研

    26コメント
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