【テスラは泣かない。】自分に嘘をつ
くってそんなにネガティブじゃない
エモーショナルなピアノロックで注目を集めているテスラは泣かない。が、ついにメジャー進出! デビューシングル「Lie to myself」 について、村上学 (Gu&Vo)に語ってもらった。
取材:土内 昇
2008年の結成当初から、今のピアノロックスタイルだったのですか?
ピアノのリフが効いた音楽っていうのはずっと変わらずですけど、もっとミドルテンポな曲をやったり、暗い曲をやったりはしましたね。自分たちらしさというのを選択しながらちょっとずつ変化し、今のかたちになっていきました。
エモーショナルなピアノロックを鳴らしているわけですが、曲作りで意識していることは?
僕らは一番最初にピアノのリフから作るんです。ピアノのリフとベースの絡みを作って、Aメロを作って、それでバンドに持って行って、サビのコード進行を作って、メロディーを当てて、最後に詞を乗せるんですよ。先程も言ったように、ピアノのリフがちゃんと効いてるかってことが、曲の主体になっていますね。自然と体を揺らせるような…例えば、ドラムが4つ打ちだったり、それこそライヴでも楽しめるような楽曲ですね。あとは、ちゃんとストーリー性を持たせて情景が浮かぶ曲になるようにとか、サビでどれだけ爆発感を出せるかっていうアレンジを心掛けています。
やはり、ライヴを意識して?
そうですね。ライヴはかなり意識していると思います。無意識なんですけど。
過去に自主制作で音源を出していますが、音源を出すことで意識も変わりました?
そうですね。どんどん“こういうのがしたい!”というのは生まれますし、変わっていったと思います。『High noble march』というアルバムを初めて全国流通で出したんですけど、多くの人に聴いてもらえるようになったということで、そこがひとつの転機ではありましたね。僕たちはずっと鹿児島でやってたので、ライヴをやっての反応っていうか、面と向かってやってるお客さんの反応でしか、自分たちの曲がいいとか悪いとか分かんなかったんですよ。でも、全国流通して…今ってTwitterとかあるじゃないですか。そういうのでまったく自分たちのことを知らない人でもCDを買ってくれていて、ちゃんと自分たちの音が届いてるっていうのが分かったので、自信がすごく付きましたね。セールスどうこうじゃなくて、聴いてくれてる人がいるんだったら、音を鳴らし続けようっていう気持ちになりました。
そういう反響を得て、作る楽曲が変わったりとかは?
ピアノの中毒性のあるリフだったり、ダンスビートで踊れるところとか褒めていただいたので、それをずっと続けてればいいんだとはあえて思わないようにして、期待を裏切るというか、その期待を裏切ることがまた違う期待になればいいなという気持ちではいますね。
ハードルが上がっていきますね(笑)。テスラは泣かない。というバンドの名前を一気に広めたのが、2013年9月にクラムボンのミトさんによるプロデュース曲「アンダーソン」を含む1stミニアルバム『Anderson』だったわけですが、ミトさんにプロデュースをしてもらうようになった経緯というのは?
すでに「アンダーソン」はできてて、ミニアルバムを出すというのも決まってたんですね。で、「アンダーソン」はリード曲だったので、プロデューサーに誰か付けてもらえないかなということで、ミトさんを迎えました。
プロデューサーを付けてもらいたいというのはバンド側の要望?
事務所からですね。で、ミトさんにお願いしたいというのはバンド側からです。
第三者を迎えることに不安はなかったですか?
最初はすごく不安がありましたね。自分たちらしさや自分たちの持ち味がなくなってしまうんじゃないかとか、やりたいことをやれなくなるんじゃないかって。だから、クラムボンってピアノの音がすごく効いてて、かつライヴはロックな一面もあるから、ミトさんにお願いしたいと頼んだら、快く受けてもらえて。ミトさんって本当に僕らの良さを引き出してくれてた…新しい付加価値を付けるのももちろんなんですけど、僕らの持ち味をちゃんと分かりやすく伝えるにはどうすればいいかって考えてくれる人だったので、“これをしろ”とか“あれをしろ”とかじゃなくて…まぁ、僕らミトさんしか経験してないですけど、ミトさんで本当に良かったなって思います。
実際のミトさんとの作業はいかがでした?
「アンダーソン」の時はですね、歌詞のこととBメロのアレンジ、あとはサウンド面…ミックスとか録りの音だけで、そこまでいじったりはされなかったんですね。でも、今回の「Lie to myself」ではテコ入れをしてもらったっていうか、大げさにしてもらって、かなり良くなったと思います。自分たちだけだったらそういう引き出しはなかったなというアレンジの仕方だったり、その発想を教えてくださったので、まさに目からうろこで。本当に勉強になりました。
「Lie to myself」はメジャーデビュー曲ですけど、すでに「アンダーソン」とこの曲はあったと?
『Anderson』をリリースしてからメジャーの話をいただいたので、「Lie to myself」はメジャーデビューをするというのが決まってから作りました。いろいろ曲作りをした中の1曲で、これじゃないかということで。
“これじゃないか”という感触はどういうところで?
ピアノの中毒性だったり、踊れるリズムだったり、爆発的なドラマチックさがあるところだったり、今までのインディーズ時代の僕らの持ち味もちゃんとあって、かつ、『Anderson』までにはなかったトリッキーな構成だったりというのも、またひとつ殻を破った曲だなというのは4人全員が思っていたことなので。
では、この曲はどういうビジョンを持って作っていったのでしょうか?
“Lie to myself”という曲名は最後に付けたんですよね。オケができて、メロができて、最後にタイトルを付けたので。ただ、メロディーを乗せた段階で、最初すごく不思議な感じでピアノのイントロから入ったにもかかわらず、どんどん世界が広がってトンネルを抜けるようなイメージがあったので、メッセージ性の強い、しかもすごくポジティブな歌詞を乗せたいなということで…“Lie to myself”って後ろ向きに思われるけど、これは自分に暗示をかけて前を向こうというポジティブな意味なんです。そういう歌詞を乗せようと思って乗せたら、楽曲の持つストーリー性と歌詞がマッチしたので良かったなという感じですね。
“自分に嘘をつけ”という意味のタイトルだけど、ポジティブなんですよね。
いつもメロディーに乗せる時に適当な言葉を言いながら曲を作っているんですけど、「Lie to myself」に関しては“降ってきた”というのが正直なところで(笑)。サビのメロディーで“Lie to myself”と言ってしまって、“なんじゃこりゃ!”って(笑)。でも、“Lie to myself”って言ってるのに曲はかなり前向いてるな〜って。もしかしたら自分に嘘をつくってそんなにネガティブじゃないのかもしれないなって考えたんですね。逆に、今まで自分に嘘をつくことで踏み出せたことがいっぱいあるなって。なので、思い切ってそれを採用しました。
歌詞の中にもありますが、結局は《trust my way》ということだと。
ちなみに、歌詞を書く時に意識していることはどんなことですか? 前向きなものが多いですよね。
そうですね。前向きなことを言いたいというのはあります。これは心掛けていることっていうよりも、自分の曲ってこうだなっていうことなんですけど…例えば「Lie to myself」は困難な時に、自分を信じるっていうやり方、誰かに助けを求めるっていうやり方、もっと気を抜くとか、いろんなアプローチがあると思うんですね。“自分を信じよう”っていう曲はいっぱいあるけど、僕が考えるアプローチの仕方、ひとつの方法論を曲の中に盛り込むことが多いなと。一種の提示ですね、“こういうやり方ってどうですか?”っていう。それに納得できる人もできない人もたくさんいると思うんですけど、あえてそれは気にせずに自分の方法論や解釈の仕方を提示するっていうのが、自分の歌詞だと思います。
みんなのためというよりは、自分の意見?
そうですね。でも、みんなのためじゃないけど自分が思ってることで、例えば困難なことに立ち向かった時に自分を信じるやり方じゃ乗り越えられないし、頼る人もいない、どうしよう!ってなった時、“Lie to myself”なら乗り越えられる人がもしかしたらいるかもしれないじゃないですか。だから、その手助けになればなと。
確かに。「Lie to myself」はバンドアンサンブルで高めていくテンション感やピアノのリフレーンが生む高揚感、リフで攻め立てる攻撃性もあって、テスラらしいサウンドなのですが、いつもアレンジはどういう感じで作られていくのですか?
実はアレンジにものすっごく時間がかかっていて。パーツはすぐ揃うんですけど、Aメロ、Bメロ、サビを組み合わせる時間がそれの倍くらいかかってしまうんです。例えば、サビの前にブレイクだったり、ベースを抜くだったり、ドラムの4つ打ちをここだけ倍の尺で録るとか、いろんな引き出しがあるんですけど、どの引き出しを使う、あるいはこっちとこっちをふたつ使うとかの組み合わせをみんなで持ち寄って、いいのが見つかるまでひたすらそれを続けるという。
じゃあ、この「Lie to myself」のサビ前のひと呼吸置いて、息を吸って一気に爆発する感じとかのアイデアはそういう中で生まれたもの?
これはですね、ミトさんのアイデアです(笑)。最初のサビをどうするっていうことで、Aメロがあってブレイクして歌から入るアイデアは僕らの中であったんですけど、その尺を尺通りにしないというのがミトさんの案で。最初はそんなのまったく思い付きもしなくて、聴いてるほうは乗ってるのに乗ってるところじゃないところで突然サビが始まるから、それってどうなんだろうと思ったんですけど、結果的にそれがすごくハッとさせる効果を持ったという。“それを使います!”ということでイレギュラーな尺という案を採用しました。
それで爆発力も倍増しますからね。
そうですね。自分のリズムを自分の中で1回終わらせて、サビからまた自分で歌い始めて、それにみんな合わせるので、そんなことやったことなかったから慣れるのに最初は時間がかかったんですけど、慣れてしまえばすごく気持ちがいいんですよ。自分たちが気持ち良いサウンドというのは、結局聴いてる人も気持ちいいんだろうなというのがあったので、これだなと。
あと、終盤のかきむしるようなギターと力強いバンドグルーブとピアノのリフーレンが聴く者の感情を沸点にまで高めるところも印象的でした。
ありがとうございます(笑)。アウトロに関してのアレンジは僕らの中にあって。結構僕らの王道の終わり方ですね、最初のイントロを最後にやって終わるというのは。もちろん、テンションは違うんですけど。
2曲目には代表曲でもある「アンダーソン」が入ってるわけですが。
メジャーデビューシングルなんですけど、まだまだ僕らは認知されていなくて、僕たちのことを知らない人がたくさんいる。でも、メジャーということで名前だけは気付いてくれる人がたくさんいるだろうという期待を込めて、CDを手に取ってもらった時に今ある僕たちを代表する2曲を聴いてもらえれば、“僕たちはこういう者です”というのが分かるかなと。一種の名刺みたいな考え方でこの2曲を収録して、さらにライヴトラックも入れれば、だいたいの僕たちの素性が分かるんじゃないかと。
名刺と履歴書が一緒に付いてるような?(笑)
そのライヴトラックもガッツリと入っているという。
それも僕らの要望で。最初は楽曲だけ編集して入れようかという話だったんですけど、MCとかお客さんの笑い声とか、その空間を全部そのままパッキングしないと僕らのライヴがどういうものかって伝わらないから、最初から最後まで、うまいところもうまくないところも全部入れてくれって。ノーカットで10曲ぐらい入っているんで、曲数で言ったらアルバムみたいな。
なのに、500円なんですよね。
500円です! ちょっとでもたくさんの人に手に取ってもらえればと思って、そこはメーカーさんにお願いして(笑)。
そんな本作ですが、どんな作品ができたというのがありますか?
さっき言った“名刺と履歴書”もなんですけど、狙いとしては“ライヴに行きたくなる”…ライヴに来てほしいっていうのがあって(笑)。でも、そういうものになったんじゃないかと思います。
この作品でいわゆるメジャーデビューということなのですが、メジャーシーンでやってみたいことはありますか?
僕、映画が好きなんで、自分の好きな映画の後ろとかで僕らの曲が流れてたら嬉しいなというのはありますね。映像作品とコラボレーションとかはすごいしてみたいなって。まぁ、僕個人の意見ですが(笑)。もしかしたら、“フェスに出たい!”とか、“武道館に行きたい!”とか言うのが正解なんでしょうけど(笑)。
- 「Lie to myself」
- TYCT-30025
- 2014.04.23
- 463円
テスラハナカナイ。:2007年、鹿児島で結成されたロック・バンド。鹿児島を中心にライヴをしながら、自主制作盤も発表。2012年8月、初の全国流通盤『High noble march』をリリースし、これを機に活動は全国へ。2014年4月、シングル「Lie to myself」でメジャー・デビュー。ディストーション・ギターに中毒性のあるピアノ・リフレイン、躍動するベース&ドラムに、感情を揺さぶるメロディーを武器として進化を続ける。また、独自の死生観から書く歌詞もほかに類を見ない。同年には『ROCK IN JAPAN FES』『RISING SUN ROCK FES』『SUNSET LIVE』などの大型フェスに出演し、圧倒的なパフォーマンスでインパクトを残した。各地のサーキットイベントでは入場規制がかかるほどの話題に。エモーショナルなライヴが各地で定評を得る。2015年3月、メジャー1stミニ・アルバム『ONE』をリリース。同年8月には、3曲のサウンド・プロデュースを片寄明人(GREAT3)が担当したメジャー2ndフル・アルバム『ジョハリの窓』を発表した。同年10月から2016年2月にかけて、『ジョハリの窓』のリリース・ツアーを実施。テスラは泣かない。 オフィシャルHP
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