安全地帯「ワインレッドの心」は大人
の禁断の恋模様を描いてた

作曲家としても華々しい活躍をしており、松代聖子・五木ひろしMISIA中森明菜TOKIOと本格派からアイドルに至るまで幅広く楽曲を提供している。

彼は1982年に『安全地帯』としてメジャーデビューを果たした。1973年に北海道で結成されたバンドであり、音楽専用スタジオを作るなど精力的な活動を行った。
1981年には井上陽水に招かれ、東京へと進出し翌年にはフジテレビ系の人気番組『夜のヒットスタジオ』で井上陽水のバックバンドを務めた。その後、CMに楽曲が採用されるなど不動の地位を確立してきた。

画一化された現実的な問題の日々に追われる中、安全地帯は一時の逃避行を教えてくれる。その休息の時間は極上であり、生きていく上で不可欠だ。
自ずと情景が浮かぶ楽曲群は、時に大人たちをアバンチュールな世界へと導く。彼らの大ヒット曲である『ワインレッドの心』は、道ならぬ恋の様子が見事に表れている。

今回はその『ワインレッドの心』から、安全地帯の魅力を探っていきたい。





ご存知の方も多いと思うが、ワインレッドの心は井上陽水が作詞を務めている。詩を書かせたら右に出るものはいない井上陽水とその歌声で畏敬の念を抱かせる玉置浩二、彼らが織りなした作品は秀逸としか考えられない。
冒頭の部分では恋の軽妙さと奥行きを教えてくれる。西洋の戯曲を思い浮かべさせられるような言葉並びに、現実と少しかけ離れた情感が宿る。




有名なサビの部分ではあるが、ここに特筆すべき点が存在する。曲のタイトルともなっている「ワインレッドの心」という言葉が、ここまで紡いだストーリーを引き締める。「恋」という抽象的な心の動きに対し「ワインレッド」と具体的な色を指し示す。これにより、この曲に強力な彩りが芽生えたのである。
その「ワインレッド」はただの色味ではない。「あの消えそうに燃えそうなワインレッド」なのだ。さらに、「消えそうに燃えそうなワインレッドの心」の前に置かれている「あの」という代名詞が想像力をかきたてさせる。




ワインレッドの心は様々に変化していく。大人たちは押し殺した「消えそうに燃えそうなワインレッドの心」を持て余している。日常で仮面を被り、自らを理性的な存在と規定しワインレッドの心を消そうとしている。
その一方で、本能が情熱を発火させワインレッドの心は燃え上がろうとしている。ワインレッドの心は理性と本能がゆらぎ、禁断の果実と対峙する大人たちの心情を表し、危険な香りのする恋模様を描いているのだ。

天才的な歌詞に玉置浩二の心の琴線に触れる歌声がリスナーの耳を覆う。「ワインレッドの心」は玄奥な感情まで表現しているのだから、名曲として扱われるのはもはや必然なのだ。ワインレッドの心を持つ大人たちは、彼らの世界に酔いしれてもいいはずだ。


TEXT:笹谷創(http://sasaworks1990.hatenablog.com/

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