TESTAMENTの新譜を引っさげた来日公
演はベスト・オブ・TESTAMENTと言え
る最強パフォーマンスだった



TESTAMENT 写真: Mikio Ariga 協力:Ward Records

19時12分、怒号に似たバンド・コールが自然発生し、開演前からヤバイ空気が立ち込めていた。既に場内は臨戦態勢だ。最新作の冒頭を飾る表題曲で始まると、エリック・ピーターソン(G)、アレックス・スコルニック(G)、元DEATH(名盤5thアルバム『INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS』)時代にタッグを組んでいた最強のリズム隊であるスティーヴ・ディジョルジオ(B)&ジーン・ホグラン(Dr)、ステージ中央にはアメフト選手ごとき恰幅の良さのチャック・ビリー(Vo)が立ち、恒例のマイク・スタンドを使ったエア・ギターをド頭から披露。ザックザクに刻まされるリフに強靭なビートが畳み掛け、フロアはサークル・モッシュが即座に起きる盛り上がり。ギターソロに突入すると、ウォーウォーの大合唱も発生し、メタル・マナーをわきまえた観客の反応もとことん熱い!

TESTAMENT 写真: Mikio Ariga 協力:Ward Records

それから前作『DARK ROOTS OF EARTH』収録の「Rise Up」に繋ぐと、曲中にコール&レスポンスを挟み、会場はさらなるカオス状態に陥る。その様子を見て、「気分はどうだい? フレンズ」とチャックは親愛の情を示すように観客に話しかけ、次は「Pale King」へ。直情的なわかりやすいリフとスケール感のあるメロディとのギャップが魅力的な曲調だ。ライブでは音源以上のダイナミズムで迫り、スティーヴの図太いベースを含め重戦車のごときリズム隊の音色も腹に響いた。

TESTAMENT 写真: Mikio Ariga 協力:Ward Records

傑作2ndアルバム『THE NEW ORDER』収録の「Disciples Of The Watch」では往時のスラッシュ・メタルが炸裂し、その流れで3rdアルバム『PRACTICE WHAT YOU PREACH』表題曲をここでプレイ。本作はビルボード100位内に初めてチャート・インした彼らの出世作である。スラッシュ特有の攻撃性に加え、ツボを押さえたキャッチーなメロディ・ラインは痛快この上ない。ゆえにイントロから会場も好反応で、観客がシンガロングするボリュームの大きさにも驚いた。そして、前述した2ndアルバムの表題曲「The New Order」においてはアレックスが華麗なるスウィープ奏法をアピールし、存在感を誇示することも忘れない。

TESTAMENT 写真: Mikio Ariga 協力:Ward Records

ここで最新作収録で、個人的にはもっとも好きな「Stronghold」が放たれた。明快なリフが猛烈にかっこ良く、疾走感溢れる曲調に身も心もまかせるのみ。それから「Into The Pit」で曲名通りにでっかいサークル・モッシュを作り上げると、デビュー作『THE LEGACY』収録の「Over The Wall」を披露。ジーン・ホグランは強靭なドラミングを見せながら、プレイ中にドラムス・ティックを投げる余裕っぷり!その近くでチャックがエアドラムに興じる様も微笑ましかった。

TESTAMENT 写真: Mikio Ariga 協力:Ward Records



後半は「D.N.R.(Do Not Resuscitate)」、「3 Days In Darkness」と8thアルバム『THE GATHERING』収録曲を立て続けに見舞い、本編ラストの「The Formation Of Damnation」でスティーヴは「必勝」と書かれたハチマキを頭に巻き、ジーンはスティックで十字架を作る仕草を見せたりと、堅牢無比なプレイだけでなく、茶目っ気のある側面も見せた。バンドはアンコールに応えると、「『THE LEGACY』30周年!」とチャックが叫ぶと、そこから「Alone In The Dark」を投下。すると、この日最大級の合唱が沸き起こり、ふとフロアを見ると、上半身ブラジャー姿の女性が肩車された状態でノリノリで騒いでいた。その様子をチャックとスティーヴが寄り添って嬉しそうに眺める姿もいいシーンだった。

TESTAMENT 写真: Mikio Ariga 協力:Ward Records

約1時間半に及ぶ過不足ないショウで、欲を言えば、最新作からもう少しやって欲しい気もしたが、ベスト・オブ・TESTAMENTと言えるパフォーマンスに大満足。今年キャリア34年に到達する彼らだが、エッジやスピードは摩耗せず、むしろ牙を剥き出して襲いかかってくる野獣性に満ちた音像は、今がもっとも脂が乗っているのではないかと思わせるとほど最強だった。


取材・文=荒金良介 写真: Mikio Ariga 協力:Ward Records



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