菅田将暉らグリーンボーイズを通じて見直されるGReeeeNの歌の力

    再評価されているGReeeeNの楽曲。彼らの歌はなぜ若者に支持されるのか

     人気俳優の菅田将暉らが笑顔で歌う姿が印象的だった。20日に放送されたテレビ朝日系『ミュージックステーション』のことである。GReeeeNの代表曲「キセキ」を、彼らは飾らずに真っ直ぐに歌い届けた。それも楽しそうに。その表情は楽曲の世界観にぴったりと合っていた。笑顔で届ける前向きな歌は放送後に大きな反響を呼んだ。そして、24日に発売されたGReeeeNのシングルコレクション『ALL SINGLeeeeS ~& New Beginning~』と、GReeeeNを題材にした映画から生まれたグリーンボーイズのデビューシングル「グリーンボーイズ」がともに、オリコンデイリーランキングで1位を獲得した。GreeeeNの楽曲は菅田将暉、そしてグリーンボーイズを通じて見直されている。彼らの歌はなぜ若者を中心に支持されるのか。

    ライブには多くの20代の若者

     1月7日、さいたまスーパーアリーナでおこなわれたGReeeeNによる10周年記念公演には、いっぱいの観客が詰めかけていた。その多くが20代と思われる若者だった。

     GReeeeNの代表曲と言えば「キセキ」がまず先にあがる。2008年に発売された楽曲で、オリコンチャート1位を獲得、配信では500万DLを超えるヒットを飛ばした。現在は1200万DLあるという。社会現象にもなったドラマ『ROOKIES』(TBS系)の主題歌として使用された。当時はドラマの恩恵も預かったヒットとも一部で言われていたが、その後もヒット曲を世に送り出し、実力は誰もが認めることになった。

     記念公演にいた20代の観客のなかにはその頃から聴いている人も多かろう。そうなると中学や高校の時に「道」(デビュー曲、07年発売)や「愛唄」(同年発売)、「キセキ」に出会った人もいるはずだ。

     GReeeeNを題材にした映画『キセキ -あの日のソビト-』の配役が、前記の菅田など今を時めく人気俳優に当てられている点や、記念公演の観客層をみても現在も若者から支持を集めていることは容易に推測ができる。現に関係者は「若年層のファンも多いです」と述べている。それではなぜ彼らの楽曲はその世代に突き刺さるのか。改めて曲や詞を読み返すと若者から支持を集める理由が浮かび上がる。

    共感を持たせる歌詞と伝え方

    菅田将暉らグリーンボーイズも高い評価を集めている。写真は10周年記念公演のオープニングアクトでのもよう

     ヒップホップにJホップの要素を入れたのが初期のGReeeeN楽曲の大きな特長だ。こうした音楽は2000年代初頭に国内のメジャーシーンでも目立つようになり、彼らがデビューした2017年を前後して流行り、そして、次々とヒットを記録していった。

     そして、このヒップホップ×Jホップが彼らの武器である発信力と伝播力に大きな影響を与えている。彼らが支持を集めている要素を大きく分けると、<1>飾り気のない真っ直ぐな歌声<2>歌詞のメッセージ性<3>メロディの良さ――となると思われる。

     なかでも<2>が重要な要素になっている。彼らは、若者などから共感を得る歌詞を、より的確に、着実に届けられる伝え方が優れている。それは「歌詞」に隠されており、ヒップホップ×Jポップの特長、更には言葉と言葉の「間」が大きな効果をもたらしている。

    長文と短文

     その一例をシングルコレクション『ALL SINGLeeeeS 〜& New Beginning〜』収録曲から上げてみたい。

     長文で表現できるヒップホップの良さと、文字に限りがあるがゆえに言葉が強調される短文のJポップの良さをうまく使い分けていることで、情景描写をしやすくさせるとともに、メッセージ性をダイレクトに伝えやすくしている。以下に引用する歌詞の□マークは余白(間)を意味する。

     デビュー曲の「道」。Aメロの後に入るサビの歌詞は以下の通りで、リスナーに宛てたメッセージとも解釈できる。この歌詞を、Jポップ寄りのメロディにのせている。

     ♪どんなに時が過ぎ去っても□決して忘れないその道を
     ♪またとない時間の中で□答えが見えるから

     その一方、サビの後に続くBメロはヒップホップ調で、その歌詞は、曲の主人公の状況を表している。

     ♪いつも思い通りに行かない日々で□少し遠い夢とヒトに笑われて
     ♪僕らはつい□足踏み止めて□下向き□うなずき□自分に嘘つき

     同じように「愛唄」。Aメロはヒップホップ調で、相手に手紙を書いているかのようにメッセージを添えている。

     ♪「ねえ、大好きな君へ」笑わないで聞いてくれ
     ♪「愛してる」だなんてクサいけどね

     これに対し、サビはJポップ調で、主人公の核心につくメッセージか書かれている。

     ♪ただ□泣いて□笑って□過ごす日々に
     ♪そばに立って□居れることで
     ♪君と生きる□意味になって
     ♪君に捧ぐ□この愛の唄

     サビから入る「キセキ」は中盤までJポップのメロディで進んでいく。主人公の心に秘めた想いや希望、考えを表している。

     ♪明日、今日よりも好きになれる□溢れる想いが止まらない
     ♪今もこんなに好きでいるのに□言葉に出来ない

     ♪君のくれた日々が積み重なり□過ぎ去った日々2人歩いた『軌跡』
     ♪僕らの出逢いがもし偶然ならば?□運命ならば?
     ♪君に巡り合えた□それって『奇跡』

     しかし、中盤の楽器のソロパートにあたるところはヒップホップにのせ、相手の想いを伝えていく。

     ♪いつも迷惑をかけてゴメンネ
     ♪密度濃い時間を過ごしたね
     ♪僕ら2人□日々を刻み
     ♪作り上げてきた想いつのり
     ♪ヘタクソな唄を君に贈ろう
     ♪「めちゃくちゃ好きだ!」と神に誓おう
     ♪これからも君の手を握ってるよ

     ヒップホップの場合、一般的なJポップのそれと比べて使える言葉の数は多い。そのため情景説明などに適しているが、一方で言葉を埋めすぎるとくどくなる。対して、Jポップ、特に歌謡演歌は使用する言葉を押さえることで解釈は広がり、含みを持たせることができる。言葉のインパクトが大きくなる。彼らの初期の頃の曲はこうした使い分けによって、より、リスナーに情景描写をしやすくさせるとともに、手紙を読み上げるように思いを届かせる。

    短い言葉と間の効果

    さいたまスーパーアリーナでおこなわれたGreeeeNの10周年記念公演には1万6000人が集まった

     もう1つの特長に、単語と単語の「間」があげられる。

     例えば「遥か」。サビ部の<さようなら□また会える日まで□不安と期待を背負って>という歌詞は、メロディでは<さよなら>を多く取り、間をとって次へと流れる。このことでより「さよなら」が強調される。

     そして、前記にもあった「キセキ」。冒頭の<明日、今日よりも好きになれる>。この<明日>の後に間が入る。ここでは□(余白)を開けずに、読点を使用していることも重要な意味を持つ。このことで「明日」が強調され、次ぎに続く言葉がより際立つ。「明日」に対して悲観的な人もいればそうでない人もいる。そのなかで次の前向きな言葉<今日よりも好きになれる>は不安を取り除き、明るい方向へと導かせる。

     GReeeeN楽曲の最近の傾向をみると、ヒップホップは姿を消し、ポップスやロックにやや寄っている。最新曲「暁の君に」や「僕らの物語」「始まりの唄」などはそれが顕著に表れている。また「オレンジ」のようにメロディを変える転調を駆使して場面変化を表現しているものもある。

     しかし、「愛すべき明日、一瞬と一生を」のサビ部<愛すべき明日□一瞬と一生を□もがいてもがいて□立ち向かって行くから>や、「始まりの唄」の最後<どんな時も□ただ何度でも□□□夢を見る強さを>のように、次の言葉をより際立たせたい、と思われる箇所には「間」を置く手法を使用している。

    若者に届くメッセージ

     彼らの多くの楽曲は前向きなメッセージが多い。「キセキ」にしても、「道」にしても。そして、これらの曲の主人公を、聴いている人が誰でも重ねることができるように、情景変化や心境、伝えたいメッセージをこれらの手法を使ってより効果的におこなっている。

     そして、前向きな楽曲を飾らずに歌う。真っ直ぐに届ける。思春期は、自尊感情の変化などにより劣等感や社会的不満を持ちやすい傾向にある。社会への不信感もある。壁を幾つももった複雑な感情の中にダイレクトに伝わる楽曲の一つにGReeeeNの楽曲があるのではないか。分かりやすく、明るく、シンプルに伝える――。

     顔を出していないにも関わらず、記念公演には多くのファンが集まった。それでも届く伝播力。ブームでは終わらずに愛され続け、今も歌われ続けている。

     彼らは顔を見せない。どういう表情で歌っているはわからない。笑顔なのか、無表情なのか。きっと、菅田のような幸福感に満ち溢れた笑顔で歌っているのであろう。それは曲や歌詞からも伝わってくる。再評価されている、飾らない真っ直ぐなメッセージと歌声。ミュージシャンでもありながら一般人でもある彼らは、人々により身近な音楽を今後も届けていくことだろう。(文・木村陽仁)

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