ミオヤマザキ、心の闇を躊躇なく声に
 タブーに真っ向から対峙

台風前夜のワクワクにも似た何かを起こしてくれそうな予感に満ちあふれたステージを魅せたミオヤマザキ

 4人組ロックバンドのミオヤマザキが12月10日、東京・赤坂BLITZで全国ツアー『SEVEN PISTOLS』のファイナル公演をおこなった。11月2日にリリースした1stフルアルバム『anti-these』を引っ提げて、11月5日の千葉・柏PALOOZAを皮切りに全国7公演を展開。普通の人なら、心の奥底に押し込んだり、他人に話すことをためらうような、心の闇の部分を躊躇なく声に発し、世の中のタブーやモラルに真っ向から対峙する。台風前夜のワクワクにも似た何かを起こしてくれそうな予感に満ちあふれたステージを魅せた。

今日は忘れられない夜にしてやるよ!

ミオヤマザキ ライブのもよう

 電話のベル音があちこちから鳴り響き、1曲目の「メンヘラ」が始まるとステージ前に張られた紗幕に映像が投影される。今にも消え入りそうな主人公とおぼしき少女の影と“死にたい”などの強烈なインパクトを放つ言葉の数々。幕の向こう側から放たれるエキセントリックな歌声と絶叫に導かれて、早くもファンの大合唱が会場にこだました。

 その幕が開くとステージにはスモークが充満。なかから白い衣装に身を包んだmio(Vo)とメンバーが姿を現す。「今日は、忘れられない夜にしてやるよ!」というmioの言葉に、割れんばかりの歓声が鳴り響いた。激しいミクスチャーサウンドに乗せて、リズミカルに言葉を放った「正義の歌」。

 「婚活ハンター」ではメタル調のサウンドに乗せて観客は一斉にヘドバンし、一転キャッチーなサビではタオルを回して盛り上がる。ストレートなロックナンバー「ズルい人」では、身体を折り曲げのけぞるようにしてmioは渾身の歌声を聴かせた。

 中盤にはミディアムバラードの「聞けない理由」を披露。最初は歌で始まり、徐々にスケールの大きなサウンドへと展開、最後はまた歌だけに戻っていく。真っ暗な会場のなかでわずかなスポットライトを浴びながら佇んで歌う、mioの語りかけるような歌声にファンはジッと静かに耳を傾けた。

 続く「シブヤノウタ」では、雑踏の音が流れる中でmioが静かに歌い出し、少しずつ音が重なっていく。その声は、心の内をさらけ出すようにしてどんどん痛々しさを増していき、聴いているこちら側の耳もジンジンするような感覚になった。

 後半は最新アルバム『anti-these』に収録の楽曲がずらり。不倫をテーマにした「民法第709条」では、今年のワイドショーネタを引き合いに「今年は、何だかありがとうございました。不倫のニュースが流れるたびにみんながちょこちょこつぶやいてくれて。 来年はうちらの曲を流そうぜ!」と、最後には激しく言い放ったmio。内容証明通知書を読み上げる歌詞に合わせて、紙をビリビリと破り捨てるパフォーマンスもみせた。

半端じゃない景色を見せてやるから、黙ってついて来い

ミオヤマザキ ライブのもよう

 避妊をテーマに歌った「Hのすゝめ」では、カントリー調の軽快な曲調に合わせて、振り付けと共に<HEY!>とみんなで叫んで楽しい雰囲気。会場ではコンドームが無料配布されており、客席にはコンドームメーカーの相模ゴム工業の担当者が来ていたそうで。「いつも、ありがとうございます。来年はもっと薄いのをお願いしますね!」とmio。

 また、「テレビでは嫌なニュース、SNSは悪口ばかり。たまには死ねって言いたくなることあるよね!」と、mioの問いかけから始まった「バカアホドジマヌケ死ね」。激しいヘドバンで盛り上がるこの曲でmioは、「ヘドバン初めての人がいるかもしれないけど、ヘドバンは気持ちいいか良くねえかだろ? 気持ちを解放しろよ!」とファンをあおり、もう1回もう1回と何度もヘドバンをしまくって会場はカオスに。全力で頭を振り続ける観客にmioは「おまえら最高だよ。よく出来ました!」と、嬉しそうな表情を見せた。

 ラストには「山崎美央」。アツく激しいバンドサウンドをバックに、つぶやきのような言葉を矢継ぎ早に紡いでいく。そしてmioは、「ミオヤマザキは、2017年4月1日に日比谷野音でワンマンやります。もう止まれないんだよ。指くわえて待ってるだけなんて出来ない。私たちは、おまえらを世界一幸せなファンにしてやりたいと思ってる。半端じゃない景色を見せてやるから。黙ってついて来いって言ってんだよ!」と発表した。

 2年前にメジャーデビューしたミオヤマザキ。名前を聞いてピンとくる人はまだそれほど多くはないだろうが、この日、赤坂BLITZを埋め尽くしたファンにとってはカリスマのような存在。ここまで熱く激しく、アーティストとファンがぶつかり合うようなライブは他ではなかなかお目にかかれない。今見ておかないと、何だかやばい気がする。そんな風に思わせてくれるアーティストだ。(取材・榑林史章)

セットリスト

SEVEN PISTOLS
12月10日 東京・赤坂BLITZ

01.メンヘラ
02.オカルティック69
03.正義の歌
04.婚活ハンター
05.いつか当たり前の様にあったモノが無くなったら
06.ズルい人
07.聞けない理由
08.シブヤノウタ
09.生きる
10.死ニDIE
11.-インスト-
12.バンドマン
13.民法第709条
14.Hのすゝめ
15.童貞ハンター
16.バカアホドジマヌケ死ね
17.ド・エ・ム
18.叫ビ
19.水商売
20.山崎美央※BLAZE ver.

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