中孝介「“なつかしゃ”伝えたい」魂の歌声響かせ、元ちとせ共鳴

    東京公演はゲストに元ちとせやカサリンチュを招き奄美の情景を色濃く映し出した

     奄美出身の歌手・中孝介が12月4日、東京国際フォーラム・ホールCで、デビュー10周年コンサートツアー『“The Best of Kousuke Atari”』東京公演をおこなった。10月26日にリリースしたベストアルバム『THE BEST OF KOUSUKE ATARI』を引っ提げて全国5公演をおこなうもので、11月26日に鹿児島で幕開け。来年1月15日に山形でファイナルを迎える。この日の東京公演は、ゲストに元ちとせやカサリンチュ、更にバンドメンバーにバイオリニストのNAOTOらを招き、デビュー曲「それぞれに」やヒット曲「花」などアンコール含め全22曲を熱唱。唯一無二の歌声で観客の心を奄美の世界へと誘った。

    涙のデビュー曲「それぞれに」

    中孝介と元ちとせ

     定刻になるとオープニングアクトを務めた、5人組クラシック・ア・カペラグループのAURA(アウラ)の美しい広がりのあるコーラスが会場を包み込む。W.A.モーツァルトの「トルコ行進曲」とケルティック・ウーマンの「You Raise Me Up」の2曲を披露。安らぐ時間を与えた。

     しばらくすると開演を伝えるアナウンスが流れ、会場は暗転。ゆっくりと中孝介がステージに登場した。そして、憧れの唄者のひとり、元ちとせを呼び込み「くるだんど」を披露。2人とも三線を肩から下げ歌い始めると、魂を込めた歌声によって、国際フォーラムは一気に奄美の風が感じられるような空間に変貌していく。

     さらに2人組音楽ユニットのカサリンチュと共に「moontail」を届けた。アコースティックギターとボイスパーカッション、そこに中孝介の歌が絡み合う。インディーズ時代に演奏をしてもらっていたというカサリンチュとの演奏は、その時代の一端を垣間見えたような貴重な瞬間であった。

     デビュー曲の「それぞれに」では途中、涙で歌が滲む中孝介。10年前、奄美大島でおこなわれたリリースイベントが蘇ってくるようだった。あの日も集まってくれた観客への感謝と安心感から涙を流した中孝介。その時の感情がフィードバックされたかのような、気持ちの入った歌声によって聴くものを魅了していく。この曲への並々ならぬ想いを感じた。

     そして、森山直太朗が作詞・作曲したヒット曲「花」。花が咲き乱れる情景が見えてくるような、儚さと力強さが同居した歌声に酔いしれた。聴くものの雑念を取り払うかのような、優しく熱い声は聴くものに活力を与えていく。国際フォーラム全体が、中孝介が放つ大きな愛に包まれていくようだ。観衆は、歌が生きているということを体感していた。

    中孝介

     中孝介は「島唄を歌うものとして“なつかしゃ”を伝えていきたい」と語り、高校2年生の時によく歌っていたという「シマ唄」を披露した。三線とともにソウルフルな歌声が国際フォーラムに響き渡る。“なつかしゃ”とは奄美で琴線に触れるという方言。その言葉の通り心の奥底に眠る感情を呼び覚まし、大陸を感じさせる歌と演奏によって、目を閉じればそこには壮大な景色が見えてくるようだった。中孝介の歌には情景を映し出す力がある。

     歌の持つ力をひしひしと感じた2時間半であった。島唄の持つ奄美の文化や時代背景など様々な要素が絡み合い、それが中孝介の声となって放たれる。言霊となって降り注ぐ言葉たちは聴くものの体に浸透していくような感覚を得た。この先、何十年と歌い続けていくだろう中孝介の歌は、どれだけの人の琴線に触れていくのだろうか。一人でも多くの人に“なつかしゃ”を伝えていってほしい。

    (取材・村上順一)

    コンサート情報

    <中孝介デビュー10周年を記念したコンサートツアー>
    「“The Best of Kousuke Atari”」

    2017年1月15日(日)
    開場15時00分/開演15時30分
    山形・山形テルサ
    チケット代金=全席指定6500円(税込)
    年齢制限:未就学児入場不可
    出演者:中 孝介/NAOTO(Vn/音楽監督)/伊藤 ハルトシ(Gt&Vc)/黒木 千波留(Pf)

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