『VISUAL JAPAN SUMMIT』2日目 奇跡
の共演、そして“これからも無敵でい
く”という宣言


2016.10.15(SAT) 幕張メッセホール 9-11ホールALDIOUS/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

この『VISUAL JAPAN SUMMIT』で唯一の女性バンドだったAldious。今年は全国ツアーのみならず、『SUMMER SONIC』と『LOUD PARK』にも出演するなど、新たな躍進を予感させる活動を見せている中での出演だ。この日はバラード「菊花」からスタートし、ゴシックテイストのある「Sweet Temptation」、疾走する「THE END」「Dominator」で締め括る、よく練られたセットリスト。華麗なドレスとメタルサウンドという個性的な融合は、初めて観たオーディエンスにも新鮮に映ったようだった。

摩天楼オペラ/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

新編成では5本目となるライブだが、オープニングでいきなりアグレッシヴな「BURNING SOUL」を叩き付けたところに、明確な自己主張が見えた摩天楼オペラ。午前中ながらも大観衆が集結した光景を見渡して、「これは楽しいねぇ」と満面の笑みを浮かべる苑(Vo)。かつてコンピレーション盤に提供したX(X JAPAN)の「紅」のカバーでのアピールも十分で、リリース前の新作から「PHOENIX」も披露。まさに不死鳥の如き次なる飛翔を印象づけたステージだった。

A9/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

溌剌としたステージで盛り上げたのが、気付けば結成から12年となるA9。アリス九號、Alice Nineの名前で活動していた当時から、ヒットポテンシャルを感じさせる楽曲が魅力的だったが、キャリアを重ねるごとに積み上げてきた安定感とどこか今でも初々しさを感じさせるパフォーマンスもいい。自分たちが影響を受けてきたアーティストとの共演に際し、“Aジャンプ”で楽しませる「RAINBOWS」を始め、「今日は先輩たちの背中を追い越すつもりでやってやります」(HIROTO/G)の言葉の通り、アクティブなステージで「伝説の夜の一ページ」(将/Vo)を飾った。

defspiral/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

defspiralは期待通りの圧巻のライブだった。前身となるTRANSTIC NERVEは、hideが最後に見出したバンドとしてデビューした経緯があるとはいえ、そういった話題性を抜きにしても、実力の高さはこの場にいたすべての人に伝わったことだろう。完璧な演奏と存在感のあるステージング。TAKA(Vo)の見事な表現力が際立った「ESTRELLA」のような楽曲を、こういったフェスティバルの場でじっくりと聴き入らせてしまう手腕もさすがだった。もっともっと広く知られていいバンドである。

The THIRTEEN/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

Sadieの真緒(Vo)と美月(G)が今年からスタートさせたThe THIRTEENに対する注目度も高かった。序盤で「俺が音楽を始めたキッカケはXなんです!」と『VANISHING VISION』のLPを高く掲げた真緒は、彼らの音楽には偉大なる先達から受け継いだ血が流れているのだと感慨深げに主張。その高いモチベーションのまま、ポップなサビを持ちつつもラウドなサウンドで彩られた様々なマテリアルを繰り出しながら、初めて観るであろう多くのオーディエンスを煽っていった。「また一つ夢が叶いました!」とステージを去ったが、この日の経験がまた新たな夢を生むことになるに違いない。

「Plastic Tree、始めまーす」という有村竜太朗(Vo&G)のユルい言葉からライブはスタート。オープニング・トラックは2003年発表のアルバム『シロクロニクル』収録の「イロゴト」で、若手のような勢いではなく、音と雰囲気で瞬時に自分たちの世界へと観る者を引き込んでいく。来年にはメジャーデビューから20周年を迎えるが、やはり他と一線を画す絶対的な個性が備わっているからこそ、今も最前線で活躍をしている。そう言葉で説明すれば簡単だが、それを実現するのは容易なことではない。メンバーそれぞれの特性が絶妙なバランスで融合している楽曲群。中盤で披露された「梟」や「マイム」などの巧さに特に魅了された人も多かったことだろう。

hide with Spread Beaver/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

約8年ぶりに実現したhide with Spread Beaverのライブは、この場に集った誰もが心待ちにしていたはずだ。お馴染みのメンバーがステージに立ち、中央にはhideのシグネチャーモデルのギター“イエローハート”が置かれている。「ROCKET DIVE」で勢いよく幕を開けたパフォーマンスに巻き起こる大歓声。サブステージ後方のエリアまで、フロアは超満員の状態だ。hideの映像と同期させるスタイルだが、彼が現在も活動していたとしたら、何事にも先進的な人物だっただけに、案外、こういった二元中継的なライブも試みていたのではないかと、ふと思わされる。

中盤では何とYOSHIKIが登場するサプライズも。まずは「GOOD BYE」をピアノで奏で、hideと二人でプレイ。スクリーンに表示される歌詞がまた感動を深いものにする。「長い間、みんなhideのことを応援してくれて、どうもありがとう」。YOSHIKIは涙ながらに周囲の人々への感謝の言葉を述べる。そして「じゃあ、もう1曲いってみようか」と、バンドメンバーも再登場して「ピンク スパイダー」へ。ピアノによる前奏が終わると、YOSHIKIは“イエローハート”を提げて、仲間たちとのステージを楽しんだ。

I.N.A.、KIYOSHI、K.A.Z、CHIROLYN、JOE、D.I.E.も満面の笑みを浮かべながら、慣れ親しんできたマテリアルをファンに届けている。エンディングには「記念すべき日にスペシャルなゲストを呼んでおります」(CHIROLYN)と今度はPATAが呼び込まれた。かつてのツアー時を思い起こさせるラインナップで「TELL ME」が演奏される、さらなるサプライズである。『VISUAL JAPAN SUMMIT』ゆえの特別な熱狂空間が生み出された。

シド/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

約10ヶ月ぶりとなる久々のステージをこの場に選んだシド。アコースティックギターによるShinjiのストロークから始まる、メジャー・デビュー・シングル「モノクロのキス」からライブはスタートした。以降に続いた楽曲からも推察すると、新たな始まりの意思表示であり、初めて彼らを観るオーディエンスにもよりアピールし得るセットリストを組んだようにも思えるが、いずれにしても古き良き歌謡曲に通じる叙情性を湛えたメロディと歌は、いつの時代も変わらない普遍的な魅力を放っている。

「今日もシドはシドらしいライブをしたい」(マオ)とのMCの通り、多彩な広がりを感じさせるマテリアルを、安定感と躍動感を併せ持った演奏で伝えてくる。短い時間にもかかわらず、最後に演奏されたファンクでダンサブルな「眩暈」の頃には、場内に一体感を作り出していたところに、試合巧者らしいシドの強さも見えた。

HYDE×YOSHIKI/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

開催直前になって発表されたのが、HYDEとYOSHIKIの驚愕のコラボレーションだった。それぞれ黒と白の衣装をまとった二人は並んで登場し、YOSHIKIがピアノで奏で始めたメロディに場内が沸いた。聞こえてきたのは、L'Arc~en~Cielの「MY HEART DRAWS A DREAM」である。もちろん、何が起こるのか、事前には予想もつかなかったが、意外性も含めた貴重な名演を聴くことができたのは、やはり『VISUAL JAPAN SUMMIT』ならではだ。二人の和やかなMCもまた楽しいひと時だった。

「この前、二人で5時間飲んだよね」(YOSHIKI)、「よく考えたら、YOSHIKIさんとステージに立つってどういうこと!?」(HYDE)などと話しながら、並んでセルフィを撮る場面も。そして、さらにはX JAPANの「Say Anything」まで披露。たったの2曲とはいえ、観客は他では得られないであろう、この上ない充足感で彼らの競演を堪能した。

GLAY/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten

GLAYがフェスティバルに参加すること自体、異例といってもいいだろうが、彼らも『VISUAL JAPAN SUMMIT』らしいセットリストを組んで盛り上げた。何しろ序盤から「デストピア」「Scoop」「Freeze My Love」という、ロックバンドとしての有無を言わさぬ刺激的なパフォーマンスを見せつけていく。そこに続いた新曲「超音速ディステニー」も同様で、骨太なサウンドがすべてを貫いている。

「デビューするキッカケは、ご存じの通り、YOSHIKIさん。このステージに参加することで、やっと“無敵”になれた」と約21年の活動を簡潔に総括するTERU。その流れから、YOSHIKIにGLAYを薦めたHIDEに感謝する意を込めて、彼が作詞作曲した「Joker」をカバーして喝采を浴びた。

そして「ちょっと素敵なコラボを」と1998年のツアーまでGLAYをサポートしていたD.I.E.を呼び込んだ。まず披露されたのは名曲「HOWEVER」。かつてhide with Spread Beaverの「HURRY GO ROUND」が、「HOWEVER」のような曲が書きたいと思ってhideが生み出したものだったと聞いたとのエピソードも。続く「生きてく強さ」と併せて、バンド自身もオーディエンスもかなり熱くなっていたが、ここで思わぬハプニング。本来はD.I.E.の客演は終わりのはずだったが、TERUはそのまま次の曲へ進行しようとしてしまう。しかし、段取りを間違えたことに気づいた彼の咄嗟の判断も素晴らしかった。次の曲が初期の代表曲「彼女の“Modern…”」であることを明かし、「いけるんじゃねぇ?(笑)」と予定外にD.I.E.にもプレイしてもらうことに。期せずしてレアな展開となった。あとはラストに向かって突っ走るのみ。ヘヴィかつグルーヴィなプレイも印象的な「ACID HEAD」では炎が随所で上がり、誰もが知っているであろう「誘惑」で締め括る。「またどっかで会いましょう! 愛してるぞ!」と彼らは颯爽とステージを去った。

GLAY/VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten



復活して以降の彼らのライブに関して言えば、新曲が加わることを除いて、セットリストに並ぶ楽曲が大幅に変わることはない。ところが、X JAPANがステージに立つとなれば、ファンは世界中から集まってくる。無論、そこには音楽自体の魅力を味わいたい気持ちもあるだろうが、何よりも彼らのパフォーマンスに二度と同じものがないことを、経験則として知っているからに違いない。微妙な違いまで目撃したいと思わせる求心力が、今もX JAPANにはあるわけだ。ただ、冷静に考えれば、そういう指摘もできるものの、いざライブがスタートすれば、すべての思考が飛ばされてしまう。瞬時に彼らが生み出す空間へと誘われてしまうのだ。オープニングの「Jade」も今や観客に歌を委ねられるほど浸透しており、「Rusty Nail」では絶対的な爆発力を体感できる。

アーティスティックな志向性とは対照的に、思わず微笑んでしまうMCなども聴き逃せない。この日は「昨日も今日もヴィジュアル系万歳……みんなで万歳三唱しましょう」などとToshlが扇動。その光景に「万歳なの!? びっくりした」とYOSHIKIは素の表情で返す。かと思えば、HIDEやTAIJIのことに触れ、「思い出の曲をやってみようか」と名バラード「Forever Love」をエモーショナルに聴かせる。

お馴染みのオーケストレーションが流れ、HIDEの映像と共にアルペジオが聞こえてくると、オーディエンスからはHIDEの名が次々と叫ばれる。もちろん、曲は「紅」だ。「やっぱりさ、HIDEが出てくるとやられちゃうね。ホントに昨日のようにね……こうやって仲間と集まると、いろんなことを思い出しちゃうよね」。YOSHIKIは改めてそう振り返った。そして、彼はそんな足跡も収められているドキュメンタリー映画『WE ARE X』が来年には日本でも公開されると告げながら、同作に向けて書き下ろした新曲「La Venus」の一節も披露。ピアノと歌のみのものだったが「名曲になるかもしれない」との手応えも口にした。

「何年か前の自分に、こういった現実があるんだぞと教えてやりたい」とToshlが導いたのは「Born To Be Free」。アグレッシヴさとキャッチーさが共存した新たな代表曲の後は、本編最後の「X」。曲中には<In Memory Of TAIJI 1966-2011><In Memory Of HIDE 1964-1998>との表示がなされていたことも付記しておきたい。

アンコールは「Endless Rain」で幕を開けたが、その余韻を引き継ぐSUGIZOによるヴァイオリンの独奏を経て始まったのは、大作「ART OF LIFE」だった。自らが主催している立場とはいえ、こういったフェスティバルの場でも、表現者として一切の妥協をしない姿勢が特に顕著に表れた選曲だと言っていいだろう。その気概があるからこそ、X、そしてX JAPANは生きる伝説として今も絶大なる存在感を有している。

そして。かつて行なわれていた『EXTASY SUMMIT』でも定番だった、全出演者が揃ってのアンコールセッションが、『VISUAL JAPAN SUMMIT』でも行なわれたのは興味深い。最後のお祭騒ぎではあるものの、あえて“無敵バンド”と称したところに意味がある。図らずもヴィジュアル系と呼ばれるようになるシーンを生み出したX JAPANから派生する、ある種のファミリーツリーが見えてくる場面でもあった。楽曲がセックスピストルズの「Anarchy In The UK」「God Save The Queen」であるのは、さらに遡ったパンクスピリッツとしてのルーツの体現である。

YOSHIKIも改めて掲げた「みんな無名だった……だけど無敵だった」という名文句。ステージ上は笑顔に溢れているが、その一節に込められた精神は、確実にその場にいたアーティストの自己証明でもある。「これからも無敵でいく」。その宣言こそが、『VISUAL JAPAN SUMMIT』そのものだった。

取材・文=土屋京輔


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