【Plastic Tree ライヴレポート】
『Plastic Treeメジャーデビュー
二十周年“樹念” 2017年末公演
ゆくプラくるプラ~海月リクエストの
夕べ・シングルカップリング編~』
2017年12月30日
at TOKYO DOME CITY HALL

2017年12月30日 at TOKYO DOME CITY HALL

 毎年恒例となっている年末2デイズ公演“ゆくプラくるプラ”が2017年もTOKYO DOME CITY HALLで行なわれた。海月(ファンの呼称)によるリクエストでセットリストが決まる本公演だが、選ばれた曲は1999年の曲から最近の曲まで年代も曲調もバラバラ。しかし、どれもプラらしく感じられるのはなぜか? 二十年も独自の道を歩み続けたバンドならではのアイデンティティーがそこにはあった。

 この日は海月によるリクエストで選ばれた楽曲でメニューが決まる“シングルカップリング編”。そして、ステージ中央に設置された銀塩フィルムを模したスクリーンに、パタパタとフラップが回るランキングボードが映し出され、そこに発表される順位と曲名に従って曲が演奏されるという、なんともシンプルなやり方。つまり、ライヴ全体の流れや起伏などの構成を練る余地はなく、選ばれた曲をやるのみ!といった、ある意味ストイックな挑戦である。例えば、フワフワした明るいポップチューン「月の光をたよりに」を楽しく聴いていたらいきなり一転、エッジーなギターが効いたアゲ曲「ブランコから」でアッパーを食らったりして、次に何の曲が来るのかドキドキする、ちょっと特殊な緊張感を伴うライヴなのである。しかも、選曲の縛りはシングルのカップリング曲。ファンにとっても予想の斜め上からのマニアックな曲が登場することもあり、順位と曲名が発表されるたびにオーディエンスからは驚きの歓声が上がる。

 しかし、そこは二十周年のベテランバンド、それぞれの曲の持つ世界観を濃密に浮かび上がらせる演奏力はさすがだ。カップリング曲という立ち位置だからこその遊びや実験的な曲も含め、さまざまな音楽性の15曲を散漫になることなく、一本のライヴとして昇華させる彼らの力量には改めて感心した。また、本編とアンコールの間には、メンバーたちも出演するプチ刑事ドラマ『月光にほえろ』も上映され、会場は笑いの渦に。年末イベントらしいゆるさやギャグも満載なのに、演奏ではきっちりロックバンドとしての熱量を放出する。そこにギャップ萌えしてしまった海月さんも多かったのではないだろうか。

取材:舟見佳子



セットリスト

  1. 1.トゥインクル
  2. 2.月の光をたよりに
  3. 3.ブランコから
  4. 4.Paper Plane
  5. 5.ギチギチ
  6. 6.静かの海
  7. 7.六月の雨
  8. 8.存在理由
  9. 9.カオスリロン
  10. 10.はじめての×××
  11. 11.パノラマ
  12. 12.「月世界」
  13. 13.冬の海は遊泳禁止で
  14. 14.バンビ
  15. 15.パイドパイパー
  16. <ENCORE1>
  17. 1.時間坂
  18. 2.エンジェルダスト
  19. <ENCORE2>
  20. リセット

Plastic Tree

1993年12月、有村と長谷川を中心に結成。精力的なライヴ活動で着実にファンを獲得し、97年6月に「割れた窓」でメジャーデビュー。17年にメジャーデビュー20周年を迎え、7月には周年“樹念”で初のパシフィコ横浜公演を開催。同年9月にはトリビュートアルバム『Plastic Tree TriBute~Transparent Branches~』を発売した。19年2月には08年以降に発表した全シングルのカップリング曲を網羅したB面集『続 B面画報』をリリースし、同年7月には結成25周年を記念し、東京芸術劇場にてバンド史上初の試みとなるシンフォニックコンサートを開催した。

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