【THE MODS】やっぱりね、ロックは踊
れなくちゃダメ
L→R 苣木寛之(Gu&Vo)、北里晃一(Ba&Vo)、佐々木 周(Dr&Vo)、森山達也(Vo&Gu)
直訳すると“古いブーツのように”となるタイトルには、“激しい”という意味がある。激しい時代を生き抜いてきたタフなブーツとイメージが重なるTHE MODS。デビュー30周年に発表されるニューアルバムは、そんな彼らのルーツにあるビートが詰まっている。
取材:石田博嗣
THE MODSがデビューして30年が経つわけですが、森山さんから見て日本の音楽シーンで一番変わったことは何ですか?
森山
バンドの数でしょうね。今は環境も整ってるし、練習スタジオも豊富にあるし、ライヴハウスも小さいところからでっかいところまであるし。それだけ音楽が普及しているってことだからいいことだと思うけど。でも、逆に失うものもあって…俺たちの時代はロックはテレビに出ちゃいけない時代だったし、バンドをやるってことが大変だったから、ちゃんと個性があって、しっかりとした主張や技量を持った奴じゃないと面白いことができなかった。そこが残ってないって感じるんだけどね(苦笑)。
今はアイドル全盛で、再びバンドにとって厳しい時代になっているわけですが。
森山
俺たちがデビューしたのって80年代の頭…俗に言うアイドル全盛の時代ですよ。だから、芸能界と一線を引くように長いツアーに出たりしていた。そういう意味では、あの頃と今とそんなに変わってない。バンドが大変っていう意味では、いつも苦しかったよ、俺たち的には。ただ、若者の音楽の買い方っていうか、ユーズの仕方は変わったよね。配信はあるわ、インターネットはあるわっていう非常に便利な状況じゃないですか。昔はPVを作るっていうこと自体がなかったから、レコードを買うしかなかったし、ライヴに行くしかなかった。でも、どっちが良いかは分からない。THE MODSも配信をやってるけど、個人的にはよく分かってないんですよ(笑)。俺たちはライヴが一番だと思っていて…生を観てもらわないと、きっと良さは分かってもらえないだろうなって。もちろんCDも大事だけど、そのスタイルは変えることはないと思う。結局はそこだと思うわけ。ライヴの本数は昔に比べると減ったかもしれないけど、コンスタントにやっているし、アルバムも毎年出しているし…っていうベーシックな部分、ここをずっとやってたから今があると思うんですけどね。逆に、ここをなくすとダメになると思う。
確かに、それは思いますね。そんなTHE MODSがデビュー30周年の年にリリースするニューアルバム『LIKE OLD BOOTS』は、今作もバンドを楽しんでいる感じが伝わってきました。
森山
ホーンセクションやキーボードとかを入れることもできたし、“30周年”ってことで仲間をいっぱい呼んでお祭り的なアルバムにすることもアリだったんだけど、逆にバンドっぽいことをやろうと思ったのは事実ですね。とにかく今感じることをやるっていうのがベースにあって、個人的には自分たちのルーツっぽいもの…60年代のブリティッシュブルースやR&Bというのは最初にロックを好きになった要素だから、その辺のビートがうまく出せる楽曲を作りたいなっていう意識はあったね。
でも、森山さんにとってルーツというのは、まだ20代の周くんにとっては新鮮だったのでは?
佐々木
最高に新鮮でした(笑)。パンク上がりの若者にはかなり刺激ありますね。例えば、「BABY ONE MORE CHANCE」はドラムのフレーズをいろいろ考えすぎてゴチャゴチャと叩いていたんですけど、森山さんに“この曲はそういう曲じゃない。何もしない方がカッコ良いんだよ”って言われて、“そう言えばこういう曲って、大したおかずは入ってないな”って改めて気付いたり。いろいろ勉強になりましたね。
「SLAVE OF LOVE」はどうでした? ストーンズっぽい曲なのですが。
佐々木
この曲が一番大変でした(笑)。でも、一生懸命に頑張ったからこそ、すごく良いものが…自分のベストですからね、このアルバムに入っているものは。だから、来年、同じ曲を録ったらもっと良くなっている…と思います(笑)。
今回のアルバムは踊れる楽曲が多いので、ドラムが重要な役割を担ってますよね。「MONKEY BUSINESS」などは“ロック”じゃなくて、“ロックンロール”していないとダメだし。
森山
昔のダンスホールのビートなんですよ。今の“CLUB”じゃなくて。でもね、それが俺的には一番新しく感じる。今こそアナグロっていうか、人間的なノリが新しい。もうコンピュータのリズムには新鮮味がないしね。
「スカでぶっ飛ばせ」もスカを取り入れたバンドグルーブで踊れるロックナンバーですしね。
森山
うん。やっぱりね、ロックは踊れなくちゃダメなところがあったから。最初は娯楽の一種だったわけだしね。ただ、ベトナム戦争とかがあってミュージシャンがメッセージするようになった…それはフォークのボブ・ディランとかもそうなんだけど、そういう時代背景があったからロックってすごい影響力を持っていたと思うわけ。政治的にも持っていたし、ファッション的にも持っていたし。それが今はなくなったっていうのは、ちょっと寂しく思うよね。今の時代こそ言うべきことっていっぱいあると思う…もしも俺が10代だったら、もっと“これはどういうことなんだ?”って思うだろうからね。
とはいえ、今作の歌詞も時代をシニカルに切り取ってますよ。
森山
テレビのニュースとかを観ていると、“なんで?”って思うことってあるじゃないですか。で、俺の仕事は歌い屋だから、歌で自分の気持ちをメッセージするしかない。ただ、ロックの基本は娯楽なわけだから、そればっかりになってもつまらないし。だから、その両方あるのがTHE MODSだと思う。
そういう意味でも、すごくTHE MODSらしいアルバムですね。
森山
だと思うけどね。これをどんどん追求していって、その楽しい気分だったり…それはヘラヘラしてる楽しさじゃなくてね。苦しいことがないと楽しく思うこともないから。そういう部分も含めて、アルバムを作る、ツアーをやるってことがブレなかったら、これからもきっとうまくいくよね。その確信がここ何年かで持てたんですよ。そういう意味では、THE MODSらしいアルバムになったと思うよね。
そんな本作を引っ提げたツアー『THE MODS TOUR 2011 "30 STRIKES"』が控えているわけですが、これはタイトルからして30周年を意識したライヴになりそうですね。
森山
そうなりますよね(笑)。もちろん新しいアルバムからも何曲かやろうと思っているけど、“Best of Best”的な選曲にしてあげた方がファンはうれしいだろうし、意味合い的にもそうかなって。俺としては何も変わらないんだけどね。“30年”って言っても、31年もあるはずだから。
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