【加藤ミリヤ】愛の伝道師から愛し合
う者へ、愛すべき者たちへ
6thアルバム『TRUE LOVERS』のテーマは“愛の伝道師”。さまざまな曲調と歌詞のどれもに、“現在の加藤ミリヤ”を深く感じることができる。ありのままの、等身大の感情を乗せて歌うミリヤの声に、大きな愛を感じた。
取材:武市尚子
『TRUE LOVERS』は約2年振りのオリジナルアルバムですが、制作期間はどれくらいでした?
だいたい1カ月くらいでしたね。毎日歌詞を書いて、レコーディングしてっていう、すごく集中した中で作ったアルバムになりました。アルバム作りは好きなので、楽しく向き合えましたね。去年はベストアルバムをリリースしたこともあって、オリジナルアルバムとしては2年振りになるんですけど、自分の中では久しぶりに作ったアルバムという感覚はないんです。
アルバムタイトルにもなっている“TRUE LOVERS”というのは、最初から頭にあった言葉だったのですか?
はい。愛を感じるアルバムにしたかったので、自分の周りにいてくれる人たちを“LOVERS”と呼ぼうと決めて、アルバムに向き合いました。アルバムを作る時は、まず最初にテーマを決めるんですけど、今回は自分を“愛の伝道師”と捉えて、一曲一曲を作っていくところから始めたんです。愛を感じる曲が並んだアルバムにしたかったのと、愛が伝わるアルバムにしたいという思いが強くあって。このアルバムを聴いてくれた人たちが“やっぱり愛っていいな”って思ってくれたり、愛を諦めない、愛を信じようという気持ちになってくれたらいいなという思いで作り上げました。
ひと言に“愛”と言っても、今作にはいろんな愛のかたちが詰まってますよね。
そうなんです。『True』みたいな片想いの曲もあるんですけど、一方通行の愛を嘆くのではなく、ただ切なく思うわけでもない。ひとりの人を愛することができたことに注目して、その愛を感じて温かくなってくれるような…そんな思いを込めて書いてみたり。辛い恋を題材にしても、どこか嬉しさだったり、幸せだなって思えるような曲にしたかったんです。
なるほど。シングル曲だった「HEART BEAT」からの幕開けも、すごく勢いがあっていいですよね。
『HEART BEAT』は『コカ・コーラ ロンドンオリンピック キャンペーンソング』のために書いた楽曲でもあったんですけど、この曲を作ったことで良いテンションでアルバムに向かえたんです。コカ・コーラの方たち、私、制作スタッフが“チーム”として向き合って作った楽曲でもあったので、これまでとは違ったシングルの作り方だったし、やったことのない曲調へのチャレンジもできたし、今まで以上にメッセージを込めることができた一曲だったんです。この経験があって、恋人に対する愛だけではなく、チームへの愛や、周りにいてくれる人の愛を深く感じるようになって、その流れでアルバムに向かうことができたんですね。今までは自問自答しながら曲や歌詞を書いていたので、わりと内向的だったんですけど、今回はファンのみんな、スタッフ、家族、友人といった愛する人がいて、そしてそこに自分がいるっていう、大きな愛に包まれているんだっていう感覚を曲に落とし込めた気がするんです。
「Baby Love」がまさにそういった想いが滲み出ているのかなと。
そうですね。『Baby Love』の歌詞も1年前だったら出てきてないと思いますし。“今だからこそ伝えたい”という思いがちゃんと歌詞にすることができました。本当に今回はそういう意味でも、今、私が考えていることがまっすぐに伝わる一枚になっているのかなって。
若旦那さんとのコラボレーションシングル「LOVES partII feat.若旦那」の他にも、清水翔太さんとSHUNさんとコラボレーションした「今夜はブギー・バック」も収録されていますが、なぜこの曲をカバーしようと?
すごく好きな曲なんです。この曲がリリースされた当時、私は5歳なんですけど、何となく耳にして好きになった曲だったんですね。カラオケでいつも歌う曲でもあるし、今の若い子たちにも、この曲を知ってほしいなって思って収録しました。『今夜はブギー・バック』を2曲目に持ってきたのは、最初のほうで瞬間的に“いいね! このアルバム!”って思ってもらえるような、キャッチーな流れを作りたかったんです。それもあって、3曲目の『LOVES partII feat.若旦那』までをそういう流れにしてあるんです。
だからなのか、「眠れぬ夜のせいで」から少し世界観が変化しますよね。
ですね。4曲目からがアルバム曲の始まりでもあるんで、アッパーな楽曲である『眠れぬ夜のせいで』を4曲目に置いて、さらにアルバムの深い部分へと引き込むっていうイメージがありました。
しかし、「眠れぬ夜のせいで」はすごく不思議な空気感ですよね。ピアノの音とメロディーに切なさがあるんだけど、トランス的同期がアッパーな空気感を作っていて。
新しい感覚でしたね。この曲に至るまでのシングル曲で冒険できたこともあって、逆にアルバム曲は今浮かんできたものを自然にかたちにした感覚でした。シングル曲で冒険できた分、振り幅が広がったんじゃないかなって思いますね。
そうかもしれませんね。「AIAIAI」もシングル曲ですが、独特な雰囲気を放っていたし。
歌詞は“恋愛の十戒”がテーマだったんですけど、曲的にはテクノとかエレクトロな要素と歌謡曲のメロディーを融合させたトライアルな一曲でしたからね。
「UGLY」でのラストも最高でした。
作りながら、この曲を最後にしようって決めてましたね。アコースティックっぽいギターサウンドの曲が欲しくて作った曲でもあったんです。空を見上げるような、前向きさで終われたことが良かったと思います。この曲では自分のことを歌っているんですが、自分は愛されているっていうことを感じてほしいという想いをアルバムの最後で伝えたかったんです。中盤では、ただただ愛する人の幸せを願う愛のかたちを歌っているので、最後に、まずは自分を愛してあげてほしくて。ちゃんと愛されているんだって思えるこの曲を最後に置いたんです。聴いてくれた人たちを、このアルバムで大きく包み込めたらいいなと思いますね。
アーティスト
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