【T.M.Revolution】20年の活動を追体
験できるベスト盤
5月13日にデビュー20周年を迎え、デビューからコラボ曲や配信曲まで網羅したベスト『2020 -T.M.Revolution ALL TIME BEST-』をリリース。20年を振り返りながら、今どこに向かおうとしているのかをT.M.Revolution 西川貴教自身に語ってもらった。
取材:榑林史章
T.M.Revolutionはマヨネーズ。和食にも洋食にも合う
デビューした時は、20年後の現在のような活動は想像していましたか?
いや、一切見えなかったですよ。目の前のことで精一杯だったし、行き当たりばったりだったので。そういう意味では、まさかの20年ですよね。と言うのも、僕個人のルーツミュージックというのは、ハードロック系のジャンルやバンドものなんですが、良くも悪くもそれとはかけ離れたジャンルで活動が始まったということもあったし。ソロ活動なんて、それまではこれっぽっちも考えたことがなかったし。そういう部分では、自分のことながら自分のことではないような感覚が、最初の頃はすごくありましたね。
20年続けてこられた秘訣とかは?
T.M.Revolutionと西川貴教というキャラクターの違いに、どう折り合いを付けていくかということが大きかったでしょうね。例えばラジオが始まった時、“T.M.Revolutionの〜”ではなく“西川貴教の〜”で始めさせていただいたのも、今につながる伏線だったように思います。10年を越えてからは特に、並行してabingdon boys schoolというバンド活動もさせてもらえたし。そうやってひとつのアウトプットに全てを詰め込むのではなく、自分のルーツとT.M.Revolutionにしかできないことを、良い意味で分けて考えられるようになったことも、20年続けてこられた要因のひとつでしょうね。今回のジャケットのアートワークなんかは、「HOT LIMIT」の衣装を着て、風で飛ばされた新聞紙が顔にかぶってるというもので。こういう記念碑的な作品で、自分で自分を茶化すようなことは敬遠されがちだけど、それを“良いんじゃないの?”と思えるようになったのも、そういうことが大きかったのかなって思います。
T.M.Revolutionと西川貴教の差を、どう埋めるか?
いや、そういうのとは違って。そもそも、“さぁ、ソロでいくぞ!”と思って音楽を始めたわけではないので、そこで何を表現するのかというところで。なので、T.M.Revolutionというのは、自分が思い描いたものを表現するというより、周囲から“こういうのはどう?”とか“こういう曲を聴いてみたい”とか、希望や期待というものに対して、いかに応えていくかということだったんです。当事者が“こうだ!”と思っていたことが、周りが望むものと違ってる場合って往々にしてあると思うし。
それを受け入れて、面白がることができたと。
そうですね。突っ張ねることの美学もあると思うけど、長く続けていく中では、時には流されてみることで見えてくるものもいっぱいあると思って。それこそ海外の方が自分の音楽を聴いてくれているという現状なんかを知ると、思いのほか人が運んでくれるものがあるんだなと実感します。そう思ったのが、ちょうど10周年くらいの時だったかな。
それにしても西川さんは、受け入れる器が大きいですよね。“こういうこともやっちゃうんだ!? これもやるんだ!”と毎回驚かされます。
やりたいと思ったからってできることばかりじゃないですから。望んでもらったり、期待してもらったりすることで、自分がまったく想像もしていなかった景色を見させてもらえる。最終的に自分が大事にしなければいけないものさえ持っていれば、それでいいのかなと思えるようになりました。
デビュー当時から、T.M.Revolutionは西川さんひとりのことではなく、スタッフやファンも含めてみんなでT.M.Revolutionなんだと言い続けていたし、まさしくそれを実践し続けてきた20年なんですね。で、今回のベストの話ですが、以前のベストと違って、今回は曲順を発売年代順で収録していますね。
ありがたいことで、最近のいろいろな動きで興味を持って、ファンになってくださった方が非常に多くて。それは昨年のツアーでもすごく感じたことで、客席の半分くらいが初めて観に来てくださった方だったんです。そういう方々にとっては、ベスト盤って手に取っていただきやすいと思うので、聴くことでこれまでのT.M.Revolutionの活動を追体験していただけるものにしたいという気持ちがありました。
前回のベストでは未収録だった「LOVE SAVER」が入っていたり、配信だった曲が入っていたり。
そこらへんは、追体験という意味で丁寧にしようと思って。ダブルAサイドシングルは両方入れて、配信曲も入れてという。昨年のツアーを経てこその構成です。やっぱりデータで見せられても、今ひとつピンとこないので。そこは肌感です。ツアーなどの活動を続けながら、それをその都度、次の作品に反映させていく。今回のベストは20周年記念ということもありますけど、そういう流れの中でのひとつの作品です。
周りの期待や希望、要望に呼応するかたちで活動を続けてきたT.M.Revolutionは、西川さん自身が極上の素材であるからこそできることだと思いますが、そういう意味で自分自身を何かに例えるとしたら?
あえて例えるならマヨネーズですかね。何にでも合うっていう。和食にも洋食にも合う(笑)。でもまぁ、期待に応えることは至極健全なことだと思うんです。それに対するリアクションを受けて、真っ直ぐではなく、斜め上に斬ってみることで、新鮮に受け止めてもらえたりとか。何にせよ、いただく声の中に何らかの答えがあると思っていますので。
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20周年から先は道のない新たな大陸アーティスト
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