「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」ジェーン・スー(幻冬舎)

「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」ジェーン・スー(幻冬舎)

ジェーン・スーのエッセイがバッサリ
切っているのは「何」なのか問題

TVでもキレキレのコメントでいまや全「女子」の師匠ともいえるジェーン・スー。「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」でも、もちろんバッサリ。でも、切られてない!? 壮快なのに癒されるエッセイの秘密に迫ってみたい。
自然体の優しさや細やかな日常に向けた視線、はたまた確かな知識に裏付けされたテレビウォッチャーの芸能人考察など女性エッセイの魅力は様々。では何故いま「ジェーン・スー」なのか? 

そもそもジェーン・スーとは誰なのか問

実は生粋の日本人で、ペンネームの由来は外国人割引のあるホテルに外国人のフリをして宿泊した時の偽名。フェリス女学院から音楽業界、眼鏡会社勤務をへてパラサイトニート、mixiの日記が編集者の目に留まりコラムニスト…作詞にラジオにと、低迷する景気の中、人生の荒波を越えて来た40代女子。
文筆業の低迷期に始めたブログが注目され、そのブログをベースに出版された「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」でブレイクを果たしたのだが…

ジェーン・スーに夢中になるワケ

そんな経歴の彼女のエッセイのなにが全女子を夢中にしているのか? これには「女子」の複雑な精神構造を満足させるいくつもの理由があってだな…。いやいやホントに。彼女のエッセイは様々な気持ちや悩みで揺れ動く「現代女子」が望むすべてを与えてくれる魔法のようなエッセイなのだ。順をおってジェーン・スーのエッセイの持つ「魔力」を解き明かしていこう。

バッサリ切られているのは誰なのか?

いつも鎧兜(メイク・ファッション・女子力)で固めている全女子はなかなか心を緩めることができない。そんな彼女たちのためにジェーン・スーが最初にバッサリ切ってしまうのは自らの骨。数々の豊かな体験から自らの女子としての不完全さをさらすことで、まずは全女子の武装解除。鮮やかです。
そしてたたみかけるようにその不完全さの「理由」を分析。ここで初めて全女子は彼女が切っていたのは彼女だけではなく「自分も切られていた」ことに気づき、なおかつ「私と一緒だ」と共感を感じます。いきなり共感を求められてもうなずけない複雑な乙女心も解きほぐします。

全部わかって認めてほしい問題

恐ろしいですね。「肉を切って骨を断つ」どころか「骨を切って鎧兜を脱がす」…。そして次は、理由を分かっていながら「理想の自分にはなれない」自分を認めてしまう。「あなたは不完全だけど大丈夫」といわれても信用できない女子も「あなたの鎧兜も心の中も不完全だけど大丈夫」といわれてしまえば信用できる。もうここまでくると全女子はメロメロです。
武装解除され、理解してくれた上に許してくれる。ジェーン・スーの荒波の人生と葛藤が彼女に大海原のような器を与えてくれたに違いありません。

ジェーン・スー…恐ろしい女…

さらにあろうことか「私にはできないけれど」という注釈付きで問題を解決するヒントまでくれるわけです。ジェーン・スー…恐ろしい女…。おもしろおかしく人を切るだけなら誰でもできる。自らを赤裸々に切りながら読者の心を開き、解きほぐし、変化できない自分を提示しつつも人生のヒントまでくれるエッセイ。
しかも、表面から入りながらも心の奥まで触れる内容ときたら面白くない訳が無い。切って、許して、次の一手を教えてくれる、まさに複雑な現代女子にピッタリのエッセイなのだ。あなたも切られてみませんか。
「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」ジェーン・スー(幻冬舎)

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    OKMusic編集部

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