CDセールス100万枚超えのトップDJが
語る!あなたが知らない、店頭で気軽
に手に取れるMIX CDの裏話

DJ HACKsのゲストライターシリーズ、5月のゲストライターを担当します、
です。
簡単に自己紹介させていただきます。僕はいろんなジャンルのMIX CDを多数リリースしていまして、その経験を生かしたジャンルにとらわれない幅広い選曲、今でいう”Genre Bending”なプレイスタイルでDJをしています。都内から地方まで、全国各地のパーティーに出演し、近年では「東京ガールズコレクション」などのファッションショーから「electrox Beach Osaka」や「MUSIC CIRCUS」などの大型フェスにも出演しています。2015年からはアジア最大級のクラブ新木場ageHaで、メインアクトを務めるパーティー「#PARTY_UP」がスタートしました。

DJ FUMI★YEAH!とは?
1.) MIX CD作品のセールスが100万枚を超える。Male DJ No.1の売り上げ。
2.) 都内から地方のゲスト出演まで、全国の数多くのイベントやフェスに出演中。年間総動員数は20万人にのぼる。
3.) 「東京ガールズコレクション」に史上初の”DJ出演“を果たす。さらにはTGCのオフィシャルMIX CDの制作も手がける。
4.) 新木場ageHaで自身がメインアクトを務めるパーティー「#PARTY_UP」がスタート。今回DJ SHOTA君にゲストライターのお話をいただいて、何の話にしようか正直かなり悩みました。
僕のことを知ってくれている方の多くはやはりCDがきっかけだと思うので、MIX CDについてのあれこれや、裏話なんかもかなり突っ込んで話していきたいと思います。・・・大丈夫かな(笑)

MIX CDって何?

まず普段MIX CDを聴かない読者の方からすると、
「MIX CDってそもそも何なの?」という感じだと思います。
簡単に言うと、MIX CDとはいくつもの楽曲が連続した”ノンストップCD”のこと通常のコンピレーションCDとMIX CDとのちがいを説明すると、
・コンピレーションCD=あるテーマのもと、さまざまなアーティストの楽曲が集められた作品集 (オムニバスなど)
・MIX CD=DJが楽曲をセレクトし、その曲と曲を繋いでアルバムの最初から最後まで音が途切れることのないCD
といえます。
しかし、ただ曲を繋げればいいというわけではありません。
前後の流れや展開を考え、全体を通してストーリーを作っていきます。
まったく同じ収録曲を使ったMIX CDでも、手がけているDJがちがえば曲順や繋ぎも変わり、各々のセンスとスキルによってまったくちがう作品になります。
つまり、アルバム全体で一つの作品としての価値を持たすことができるのがMIX CDの特徴です。
みなさんがよく聴く曲も、MIX CDだといつもとちがうように聴こえたり、その曲単体ではパッとしない曲でもミックスすることで曲が生きたりすることもあるんです。
だからこそ、MIX CDは奥が深いんですよね。

MIX CDとは?
1.) DJが楽曲をセレクトし、その曲と曲を繋いでアルバムの最初から最後まで音が途切れることのないCDのこと
2.) 作り手のDJのセンスやスキルによって、曲の聴こえ方や作品全体の印象が変わるところが魅力的

MIX CDのたどってきた歴史: 音楽シーン
を支えた”ブート文化”

さて、MIX CDのことがなんとなくわかってきたところで。
MIX CDを語る上で欠かせないものに、ブートミックスのカルチャーがあります。

ブートミックスが楽曲のプロモーション
に貢献

▶︎ ブート = ブートレグ(Bootleg) = 権利者に無断で発売または流通される非合法商品MIX CDに収録される曲には、著作権というものがもちろん存在します。
その楽曲のアーティストや権利者の許可なしに楽曲をミックスし販売すること自体、違法行為なのしかし、ブート盤のMIX CDというものは存在します。
よくレコードショップや、アパレルショップ、ディスカウントストア、露店などで1000円~1500円程度のMIX CDとかを見かけたことってありませんか?
近年ではMIX DVDなんかもあります。
今から10年以上前は、本当に多くのブート盤MIX CDが世に溢れていました。(当初はMIXTAPEが主流で、だんだんCDへと移行していく)「なんでブート (非合法商品) のMIX CDを販売して捕まらないの?」
という疑問が出てきますよね。当時はHIP HOPやR&Bなどの新譜 (新曲) は必ずアナログレコードでも発売されていて、それを有名なDJがMIX CDに収録することが曲のプロモーションになっていたため、ほぼ黙認されているという感じでした。
MIX CDを作っているDJたちにも違法なものを制作しているなんて意識すらなかったぐらい、ストリートカルチャーとして当たり前に存在していた気がします。
そもそも”MIXTAPE”というものの元々のルーツがブートですし、それがブラックミュージックの成長の中核を担っていたん僕がDJを始めたきっかけは、そんなMIXTAPEやCDを聴いたことでした。
そういう作品の繋ぎをマネしてみることがDJの練習になったし、隠れた名曲とも出会えたり、その名曲のレコードを血眼になって探したり、僕にとってはDJの教科書だったのかなと今では思います。
無名の若手DJからしたらブートミックスを作って名前を売ることが、有名になるための大きなチャンスでもありました。

ブート文化の衰退: プロモーションの枠
を超えてしまう

しかしそんなブート文化もここ数年で衰退の一途をたどります。
その原因になったのが、やはりアナログレコードの売上減少。CDやダウンロードした楽曲でもDJプレイができるようなハイテク機材が登場するなど、シーンがデジタル化するにつれ、どんどんレコードのリリースが減っていきました。
それと同時に、レコードで手に入れた曲を収録するのが醍醐味だったブートミックスの価値も薄れていきます。
代わりに、市場には作品価値のあるミックスよりも商業的なブートミックスが溢れる形になってしまい、これによってアーティスト本家の楽曲、アルバムが売れなくなってきてしまったのつまり、MIX CDがプロモーションの枠を超えてしまった感じですね。
MIX CDレーベルの摘発もありました。日本のブート文化の事実上の消滅です。
アメリカでも同じような動きがあって、有名なHIP HOPのDJが逮捕された事件も。もちろん法律は守らなければいけないですし、仕方のないことですが、正直少し寂しい気持ちもあります。

現在のMIX CD事情: オフィシャルミック
スとカバーミックス

1.) オフィシャルミックス

ブート文化が衰退していく中、逆に頭角を現したのがオフィシャルのMIX CDこれはブートミックスとはちがい、しっかり権利をクリアしたMIX CDのことを指します。
大手のCDショップで見かけるのはこちら。「ブートがダメなら、最初からオフィシャルMIX CDを出せばいいのでは?」
と思う方もいるはずしかしこれが非常に難しいんです。ライセンスという問題があります。楽曲を使いたくても、自由に使えるわけではない!「このアーティストのこの楽曲を収録したいから貸してください!」と言って、簡単に貸してくれるわけじゃないん作品のコンセプトはもちろん、
・誰が作るミックスなのか
・どれだけ売れる見込みがあるのか
・楽曲の価値を下げないか
・ライセンスにかかる金額や予算がどのくらいなのか
など本当にいろんなことが関わってきます。収録されるすべての楽曲の許可をとらなくてはならないため、一つのミックス作品をリリースするのにも本当に時間がかかります。
洋楽のMIX CDなんて権利者が海外なのでなおさら収録したいのに権利者が不明な曲も多々あります。
さらに運良く使用許諾が下りたからといって、すべての楽曲を自由にミックスできるというわけではありません。
当たり前ですが、ライセンスする各アーティストさんにも自分の曲へのこだわりがあるわけで、「曲のここからここまでは必ず使用してほしい」や「BPM(曲のスピード)を変えないでほしい」などのいろんな条件があります。
もちろん「好きに使用してくれ」と言ってくれるアーティストさんもたくさんいますが、やはりすべての曲を自由にミックスできるわけではないので、限られた楽曲・条件の中でいかに良い作品に仕上げられるかになってきます。あと、制作時間もかなりタイトです。
オフィシャルミックスは作り始めよりも先に発売日が決まるので、ライセンスに時間がかかるとそれだけ制作にかけられる時間も短くなってしまいます。
毎回締め切りの前は睡眠不足です(笑)このように、かなりハードルが高いのがオフィシャルミックス。
でも、そんな条件の中で試行錯誤しながら完成させていくのが楽しかったりもします。
僕も最初からスムーズにライセンスできたわけではないし、今でも借りられない楽曲もあるので、有名な楽曲のライセンスが下りたときはめちゃめちゃ嬉しいです。

2.) カバーミックス

オフィシャルミックスの中でも、さらにカバーミックスというものがあります。
何かと言うと、原曲とはちがう人が歌っている楽曲によるミックスのこと僕はカバーミックスもリリースしていますが、この場合、国内の著作権を管理しているJASRACなどに楽曲使用の申請、使用料を収めます。(曲にアレンジを加えるカバーの場合は権利者に許可を取らなければなりません。)
カバーミックスも歌唱力やクオリティ、アレンジやコンセプトさえしっかりしていれば良い作品になります。
原曲を超えるクオリティーのカバーもたくさんあると思います。
中でもインテリアショップのFrancfrancさんの作品なんかは、原曲とはまたちがった雰囲気のオシャレなアレンジで、非常に良質な作品が多いです。
僕も何度か携わらせていただいたんですが、以前から好きな作品だったのでお話を頂戴したときは嬉しかったですね。カバーミックスのブームがあらぬ方向へカバーミックスのブームも起こりました。
ブート盤のMIX CDが出せなくなり、オリジナルのオフィシャルミックスCDもなかなかリリースできない中、カバーミックスはDJがクラブ以外で名前を売る新しい手段の一つとなりました。
“本人のオリジナル楽曲は使用できないけど、カバー曲なら使えるぞ“というわけしかし、ブームというのは必ずしもいいものであるわけではなく、今度は市場にカバーのMIX CDが溢れてしまいます。
その渦中にいたからこそ感じたことなんですが、業界の空気がいかに良いカバーミックスを作ろうという意識から、いかに早く他よりリリースするかにシフトチェンジしてしまい、カバー曲ひとつひとつの質がだんだん低下してしまった気がします。
これは本当に良くない傾向で、カバーというだけでチープなイメージがついてしまい、良い作品まで売れなくなってしまいます。
やはり作品一つ一つにこだわりを持って制作するべきです。

デジタル化が進む現在のミックスシーン

オフィシャルミックスCDは現在でもかわらず店頭で発売され続けていますが、ここ数年においてはiTunesなどの気軽にネット上で買える配信サービスを使ったミックスリリースも目立ちます。
これももちろん、権利がクリアされたもののみ
出典:
また、3年ほど前から「Beatport Mixes」という新しいビジネスモデルも生まれています。
有料オンライン音楽配信サービス「
」内で購入した楽曲と自作曲を使用して制作したMIXをサイト内で配信販売できるというシステムです。
つまり、Beatportがライセンス事務を代行するという形ですね。
使用曲に制限はあるものの、このサービスが出た時はかなり画期的だなーと思いました。

MIXを作ってみたい方へ!MIX CDの制作
方法

MIX CDの作り方には、大きく分けて2種類の方法があります。

1.) 実際のDJプレイを録音する

まずは、ターンテーブルやCDJで実際にプレイしたものをリアルタイムにレコーダーで録音する制作方法。「一発録り」と呼ばれる作り方です。
DJをする際にSERATOのスクラッチライブというソフトを使っている方は、レコーダーがなくてもソフト内に録音機能がついています。
クラブのような臨場感を求める方にはこちらがオススメ。
またMTR(マルチ・トラック・レコーダー)を使えば細かい修正も可能です。

2.) PCのソフト内でつくる

そしてもう一つは、パソコンのDAW(Digital Audio Workstation)ソフトによる制作です。
今の主流はこちらですね。DJ機材がなくても問題なし。
パソコン上で音の波形を見ながら細かい編集ができるので、ミスのない完璧なミックスを作ることができます。
僕のオススメはAbleton Liveというソフト。
直感的に使える上に、波形編集がかなり柔軟に可能です。このソフトに出会ってから制作スピードが格段にアップしました。

まとめ: 制作における大事なポイント

1.) クラブでのDJプレイとのちがいを意識する僕がMIX CDを作る上で一番注意しているポイントは、クラブでのDJプレイとのちがい。クラブでのDJプレイは、大音量の中でいかにみんなが楽しく踊り続けてくれるかを意識しています。
ですので、その場で急に選曲も変えるし、盛り上げるために時にはあえて荒い繋ぎもします。
それに対してMIX CDというのは、部屋や車の中、ショップやカフェなど、MIX CDを聴くシチュエーションもさまざま。
リスナーさんに関してもクラブに行く人ばかりではないため(むしろ行かない人の方が買っている)、クラブミュージック初心者さんから玄人さんまで、幅広い層が満足してくれるようなMIX CD作りを心がけています。
リスニングの要素が強い分、聴きやすさやミックスの丁寧さも重要になってきます。つなぎ方、そして全体のバランスを考える!作るコツとしては、全体を通してのバランスが大事です。
綺麗な繋ぎばかりだと味気なくなってしまうし、ギミックの凝った繋ぎばかりでもリスナーの方は聴いてて疲れてしまう。
それは選曲や曲順の面でも同じで、最後まで飽きない、何度も繰り返し聴いてもらえるようなストーリー展開を意識しています。自分の個性を落とし込む!さらに重要なのは、そこに個性を落とし込むこと。
僕はイントロに収録曲のメガミックスをもってきたり、定番のシャウトを作ったり、ミックス部分に独特のギミックを入れたり。
「このMIX、DJ〇〇っぽい!」とか思わせたら勝ちですね。
誰もがすんなり聴きやすいもので、なおかつ他の人とちがう新しいものを作るっていうのは本当に難しいことですが、非常にやりがいがあります。とにかく楽しみながら作る!あとはとにかく自分が楽しみながら作ることが大事です。
時間を忘れるぐらい、作っていて楽しい時は自然と良い作品が生まれます。
まだMIXを作ったことがないDJさんにはぜひ作ってみてほしい!
作るときに一曲一曲をより深く知ることができるので、クラブでDJする上でも絶対プラスになりますよ。僕も今後もっとおもしろいミックスを世の中に出していけるようがんばりますので、機会があったらぜひ作品をチェックしてもらえると嬉しいです!
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
Various Artists
価格: 1,500円
posted with
on 2015.5.31
Iyaz
価格: 300円
on 2015.5.31ゲストライター情報DJ FUMI★YEAH!
DJ FUMI★YEAH!今やCDセールスが100万枚を超えるトップDJへと成長した若き才能。”Male DJ No.1″ の売り上げを誇る。“メガミックス”を武器とし、類い稀なるミックスセンスとジャンルにとらわれない幅広い選曲で多くの支持と絶大な人気を集めている。UNIVERSAL MUSIC、avex Group、Victor Entertainmentなどの大手メジャーレコード会社からインディーズレーベルまで数多のMIXCDをリリース、今までにTSUTAYA CDランキング第1位、Wonder Goo CDランキング第1位、Billboard JAPANインディーズチャート第1位、オリコンインディーズチャート第2位、TBSテレビ ランク王国 月間洋楽アルバム売上げ第1位、iTunesアルバムチャートでは2部門[ダンス、R&B/ソウル]で第1位、総合チャートでも長期にわたり第1位を獲得するなど、数々の作品が軒並みCDトップチャートにランクイン。そして2年連続で、数々のビッグアーティストとともに、DJで唯一「Billboard JAPAN Independent Artist Of The Year」にもノミネートされた。プロデュース業でも精力的に活動しており、洋楽メガヒット曲【Spankers / Sex On The Beach】や【Kat DeLuna / Wanna See U Dance】、世界のヒップ・スター 【Bob Sinclar】や【IYAZ】【R.I.O.】【Bodybangers】などなどの海外アーティストのオフィシャルリミックスも多数リリース。インテリアショップ「Francfranc」のオリジナルMIXCDも手がけ、20周年のアニバーサリー企画”DANCING AROUND THE GLOBE”では日本のクラブシーンを代表する一組として選出され、オリジナル楽曲を提供。2015年に入ってからは、EDM大型フェス「electrox Beach Osaka」への出演や、日本最大級のファッションイベント「東京ガールズコレクション」にTGC史上初のDJ出演を果たす。さらにTGCのオフィシャルMIXCDも手がけ、デジタル版が異例の大ヒットを記録。アジア最大級のクラブ新木場ageHaでは自身がメインアクトを務めるパーティー「#PARTY_UP」がスタート。
毎週、都内から地方のゲスト出演まで、全国の数多くのイベントやフェスに出演中。年間総動員数は20万人にのぼる。今後も楽曲プロデュースや新たなMIXCDのリリースも数多く予定されており、更なる活躍が期待される。▶︎
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