「乃木坂46は、まだちっぽけな存在」
 秋元真夏・生田絵梨花・高山一実が
語る、グループの課題と未来

・「『プリンシパル』は、やるたびに自信がなくなっていきます(笑)」(生田)

――生田さんは10月にミュージカル『虹のプレリュード』(天王州・銀河劇場)に主演しました。そこではどのような手応えを感じましたか?

生田絵梨花(以下、生田):自分はまだまだなんだと気付かされたことが一番大きかったです。もちろん、アイドル活動では歌やダンスをやってますけど、舞台だと感情を乗せることの方が先だったりして、自分にはそれができないので一からすべて教えてもらうことになります。ゼロからのスタートというのが、自分としては大きな刺激でした。それから、ライブはお客さんと一緒に盛り上がるものですけど、舞台は私たちが出すエネルギーをお客さんが見てストーリーに入り込んでいくスタイルなので、そこに向けて集中力を注ぎ込んでいくというのは良い経験になりました。

――演劇といえば、観客の投票でその日のキャストを決定する演劇企画『16人のプリンシパル』が毎年行なわれるのも、乃木坂46の大きな特徴です。

生田:『プリンシパル』は、やるたびに自信がなくなっていきます(笑)。嫌だもん、次回のこと考えるの。

秋元真夏(以下、秋元):思い出しただけで泣きそうになるくらい……。

高山一実(以下、高山):わかるわかる、私も怖いもん。一番最初の2012年の『プリンシパル』は一週間くらいしか練習期間がなくて、その中で全部の役を覚えないといけなかったんです。本番まで、正直誰も二幕目に対して自信がないまま、「大丈夫かな?」っていう感じで始まっちゃって、そのまま終わっちゃった感じだったんですよ。2013年の二回目の時は一ヶ月練習期間があって、結構自信満々で行ったんですけど、でも期間が長いほど辛いんですよね。そう考えると二回目も三回目も辛かったな……。

・「『プリンシパル』の開催が発表されると、その直後にうまくコメントできない」(秋元)

秋元:次回もやるというのはわかってるんですよ。自分はアイドルだから、ファンの人に見てもらって楽しんでもらうためにがんばろうと思ってやっているんですけど、その気持ちだけではどうにもならない何かが『プリンシパル』にはあって。それをコントロールするのが、稽古期間から本当に難しいですね。ライブやイベントで『プリンシパル』の開催が発表されると、その直後にうまくコメントできないんですよ。みんな必死にポジティブな言葉を探すんですけど、心の中では「(この時期が来てしまった……)」みたいに思ってます(笑)。

高山:演出をされる方も辛そうで、こちらが辛いのをわかってるからメンバーに対して良くしてくださるんですけど、全部の役を覚えて一幕目のオーディション結果で二幕目のキャスティングが決定する、あの形式がある以上なかなか大変で。

生田:2013年の二回目の『プリンシパル』で演出をされた江本純子さんも根っこはすごく優しくて。私たちが辛いっていうこともわかりつつ厳しくされてました。三回目の『プリンシパル』で演出をされた福田雄一さんの時は、「適当にやって」って言われてたんですけど、私は逆にその適当が辛かったんです。私、どこで何をするというプランをしっかり決めるタイプなんですよ。そこで「適当がいい」って言われたら、私は何をがんばったらいいんだろう……、ってなってしまって。でも(星野)みなみみたいなタイプは、そっちの方が活きるのかも。

・「本当なら見られていることを意識しなきゃいけないのに素が出まくる」(秋元)

――上演を重ねてきた『16人のプリンシパル』で得られたものは何でしょう?

高山:空気感をつかむことかな? お客さんが面白ければ笑ってくれるし、つまらなければシーンとしてるというのを毎日、目の前で見るので。なんとなく、バラエティに出た時の空気感に通じるものがあって、それがわかるようになりました。一幕目の時点で、今日のお客さんは結構笑うなとか。その日によって全然違うんですよ。

秋元:まったくお客さんが笑わない日はもう恐ろしくて、これ自分の番が来たら怖いなとか考えてます。

生田:自分たちもやることを毎日変えていかなきゃいけない。違うネタをやっていかなきゃいけないから、それが大変でもありますね。私たち自身は夢中になってるから、『プリンシパル』を通して何を得たとか客観的に考えられないんですよ。

秋元:舞台に立ってるから、本当なら見られていることを意識しなきゃいけないんですけど、『プリンシパル』の期間はあんまりそれを意識せずに、素が出まくってるんだろうなと思います。

生田:でもこれまでの『プリンシパル』で自己紹介PRやって、演劇をやって、お笑いをやって……、あと何が残ってると思います?

高山:時代劇とか(笑)。

秋元:一幕目でオーディション形式でキャストを決めて二幕目で演劇をやるって形式は、なかなかないじゃないですか。メンバーも辛くて、周りの人も辛いと思うんですけど、乃木坂46の名物的なものになっているので、この形式は続くのかなと思いますね。

――なかなか他のグループがすぐに手を出せる企画ではないですよね。

生田:でもやってみてほしい気もする……。

秋元:やってみたらけっこうなものですよっていう(笑)。でも他の人たちがやっているのを見るのもいたたまれないかも。

・「ファンの人からも、『まだアルバム出さないの?』とよく聞かれていた」(生田)

――1月7日には、待望の1stアルバム『透明な色』が発売になります。ファンにとっても待ちに待ったリリースだと思いますが、アルバムが完成した感想を聞かせてください。

秋元:ファンの方々にとっても待望のアルバムだと思うんですけど、私たちも、ここまでアルバムが出なかったので、乃木坂はもしかしてアルバム出さないの?って思ったこともあって。シングル10枚をためたぶん、このアルバムはベスト盤みたいになってるじゃないですか。カップリングもファン投票で10曲選ばれて、そこにこれまでのシングル10曲と新曲8曲、結構豪華だなと思います。このアルバムを聴いて、新しいファンの人も歴史を確認できるし、以前からのファンの方は、この曲が出た頃にはどういうことがあったな、と振り返ってもらえるんじゃないかな。聴いてもらうのが楽しみです。

生田:ファンの人からも、「まだアルバム出さないの?」とよく聞かれていたんです。10枚もためて出すというのはけっこう珍しいみたいで、やっとここで出せたという嬉しさもあります。ファンの方にももちろん喜んでいただきたいですけど、乃木坂46をなんとなくしか知らないような方たちにも、これを聴いていただければ、これまでの乃木坂46をよくわかっていただけると思います。曲も良いですし、たくさんの人に聴いてほしいです。

高山:乃木坂46の楽曲を知ってはいるけど、なかなかシングルを揃えるまではいかない方もいらっしゃると思うんです。そういう方が試しに聴いてみて、好きになってもらえるのも嬉しいですね。私はモーニング娘。さんがすごく好きで、それが乃木坂46に入ろうと思ったきっかけでもあるんですけど。小学生の時にもモーニング娘。さんは好きだったんですけど、それからしばらく経ってモーニング娘。さんのプラチナ期と呼ばれる時代に、『ALL SINGLES COMPLETE 〜10th ANNIVERSARY〜』というアルバムを買って、そこでドハマりしたんです。この曲知らなかったけどこんないい曲もあるんだ、と思ってハマっていきました。きっと乃木坂46の『透明な色』にも、そういう方がいてくれるんじゃないかと信じています。

・「『せっかちなかたつむり』が一位じゃなくて悔しかった」(高山)

――新曲も8曲収録されていますが、新録曲のうち「革命の馬」には、白石麻衣さん、橋本奈々未さん、深川麻衣さん、松村沙友理さんとともに、秋元さんと高山さんが参加されていますね。

秋元:「革命の馬」は変わってる曲だよね。イントロとか聴いても乃木坂の歌じゃない感じがするんですよ。アジアンテイストというか。

高山:この6人のメンバーでなんでこういう歌なんだろうって最初は思ったんですけど。でも聞いていくうちに好きになっていきました。

秋元:若い子が共感してくれる曲なのかなと思います。都会っぽいというか、現代っ子っぽい歌詞がいっぱい入ってるなあという感じですね。変わった曲調と歌詞の組み合わせが面白いなあと思います。

高山:乃木坂46の曲、渋谷が舞台になることが多いですね。「偶然を言い訳にして」とかもそうだし。“乃木坂”46なんですけどね(笑)。

――生田さんのソロ曲「あなたのために弾きたい」も『透明な色』には収録されています。

生田:ピアノの音色に合わせた歌で、歌詞的にもピアノを習っている子が主人公なので、すごく感情移入しやすいですね。この曲には自分の思いも重ねて歌ってますし、ライブで直接ファンの方に向けて歌う機会があったらいいなと思います。

――『透明な色』にはファン投票で選ばれたこれまでのシングルのカップリング曲も10曲収録されています。この中で特に印象に残っている曲はありますか?

高山:「せっかちなかたつむり」ですね。どの曲に投票してほしいかファンの方に聞かれた時にも、「せっかちなかたつむり」がいいなって答えてて。投票の中間速報では一位だったんですよね。だから、一位を狙えてたはずなんですよ。AKB48さんのような総選挙は経験したことがないですけど、やっぱり速報一位で、最終結果が三位だったのはちょっと悔しかったですね、自分一人で歌っているわけでもないんですけど。バナナマンの設楽(統)さんも好きな曲だってラジオで言ってくださって、たまに口ずさんでくれてたりするんですよ。一人一人歌っていくのでコールもしやすい曲です。歌い方もみんな自由なんで、まっつん(松村沙友理)とかもめっちゃ可愛くて、ななみん(橋本奈々未)もクールだけど歌声が可愛いし。そういうところも聞いてほしいです。

生田:私はやっぱり「ダンケシェーン」ですね。投票で10位ギリギリに入って、本当に良かったなって安心しました。私たちでこの曲の合いの手動画を作ってアップしたんですけど、ファンの方がそれを見て覚えてきてくれて、実際にライブの時にやってくれるようになったので、それもあって盛り上がる曲になりました。この合いの手動画は、作ろうと思い立ったその日にみんなに電話して急遽集まってもらったんです。レッスン着で、「みんなメイクしてきてね」って言って。それで合いの手を作ってスマホで撮影したんです。そうやって、この曲をみんなでさらに作り上げていったので思い出深いですね。

秋元:収録されているカップリング曲で私が参加しているのは、「世界で一番 孤独なLover」なんですけど、この曲のミュージックビデオの撮影ではすごく泣いてしまったんです。その頃はまだ撮影にも慣れてなくて、撮影のたびに大泣きしてたのでそれを思い出しますね。この時のシングル『ガールズルール』でセンターもまいやん(白石麻衣)に代わったんですね。この先に乃木坂46はまたどんどん変わっていくのかなって思っていた当時の感情を、「世界で一番 孤独なLover」を聞くと思い出すんですよ。ファンの方にも、この時にセンターも変わったんだなとか、当時を振り返りながらいろいろ感じてもらえたらいいなと思います。

・「ソロライブをやりたい人がやれるようになったらいい」(高山)

――2014年の乃木坂46が成長したと感じるところと、まだ足りないと感じるところはそれぞれどのようなところでしょうか?

高山:2014年は大きい会場でライブをさせていただくようになって、いろんなテレビ番組にも出させていただきました。そういう場に出られたことはすごく嬉しいんですけれど、音楽の特番などに出てみると私たちはまだ出る時間も短いですし、そういうところでまだまだなんだなと思います。

生田:まだちっぽけな存在なんだなと(笑)。

秋元:最初はそういう番組に出るまでが目標だったけれど、出たらそこからまたもう一段階あるんだなと思います。2015年はそのもう一段階を超えて、出ることはもう当たり前と言えるくらいになっていけたらと思います、徐々にですけどね。

――2月22日には西武ドームで『3rd Year Birthday Live』があります。

秋元:広い会場ですよね。しかも2月の西武ドームだと寒いんですよね(笑)。ファンの方にはもちろんコートを着ていてほしいですけど、私たちの衣装は半袖ばっかりだし、どうするんだろう(笑)。

生田:でもその寒さに負けずに熱いライブをできるかどうかが、私たちが一歩ステップアップできるかどうかなんだよ。

――最後に、グループとしてだけではなく、皆さんの個人としての未来像をお聞かせください。

秋元:私、アイドルはずっとやっていたいんですよ。アイドルをやりながら、料理関係の仕事をやれたらいいなと。得意なことがお料理くらいしかないので、それが仕事につながったらいいなと思います。

生田:私はやっぱり、将来もずっと舞台に立っていたいなという思いが強いので、いろいろな表現ができるように自分の幅も広げたいです。乃木坂46の中でも、普段の生活の中でも、いろんなものを自分の引き出しにしていくことを今は大事にしています。歌もダンスもまだまだなので、その積み重ねをしっかりやっていきたいです。

高山:バラエティ番組に多く出させていただいている機会を無駄にしないようにして、乃木坂46枠を一個増やしていろんなメンバーが出られるくらいに、自分でがんばっていけたらと思います。それから、アイドルになりたくて乃木坂46に入ったので、将来の夢は、小さいキャパでもいいからソロのライブをやって、そこで山口百恵さんや中森明菜さんの曲を歌いたいです。ハロー!プロジェクトさんがメンバーの誕生日の時などにソロイベントをやってるんですよ。そういうライブをいつかやりたいなと思っています。以前にも、ソロライブをやりたいって言ったことがあるんです。そうしたら握手会の時に、ソロライブをやったら来てくれるって言ってくれた人が、10人は確実にいたんですよ(笑)。「仕事休んで、絶対行くから」って言ってくれた方々が(笑)。だからまず10人は確保したんで(笑)、これがもっと増えていって利益的にできそうってなったらいつかやりたいです!私のことだけじゃなく、(秋元)真夏の歌が好きっていう人、生ちゃん(生田)の歌が好きっていう人だって絶対多いから、ソロライブをやりたい人がやれるようになったらいいなって思います。

(取材・文=香月孝史)

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