2015年のAKB48グループはどこへ向か
う? 世代交代が進む各グループの現
状と課題

(参考:AKB48高橋みなみは何を背負ってきたか? 一年後の卒業発表に見る、“総監督”の重責)

 その世代交代の機運を決定的なものにしたのが、12月8日の高橋みなみ卒業発表だった。高橋が迷いながらも「総監督」の座を横山由依に引き継ぐことを宣言し、卒業の期日を一年後に設定したことで、2015年はAKB48グループ最初期を経験していない次世代中心へ体制を移行する一年となることが明確になった。また高橋と同じくAKB48の1期メンバーであり、かねてから近い将来の卒業を示唆している小嶋陽菜と峯岸みなみがグループを去ることも、高橋の卒業発表によってその現実味を増してきた。ファン以外への認知度も高く、グループの顔として活動してきた最初期メンバーたちに頼らずに勢いを維持するための準備をすることが、AKB48の今年の課題になっていく。

 2015年のAKB48が高橋の卒業を最大の核として動いていくことは間違いない。ただし48グループ全体にとっては高橋のみならず、各グループの歴史を知るベテランメンバーたちの卒業がすでに決まっていることも忘れてはならない。NMB48の1期メンバーとして山本、渡辺に並ぶ存在感を放っていた山田菜々、AKB48の4期メンバーからSKE48へ移籍し長年グループを支えてきた中西優香、SKE48のオープニングメンバーで48グループ最年長の佐藤実絵子らが、それぞれ今春の卒業を発表している。長い年月グループに在籍したメンバーの卒業はファンに強い感慨を与え、またグループ内のメンバー配置を否応なく変化させるが、同時に卒業する各メンバーがいかに順調に離陸できるかという課題もまた抱えることになる。高橋が「総監督」を横山へ継承させるか否かで悩んだのは、その地位によってグループに強く縛り付けられることで、ソロの芸能人への道を阻むことが危惧されたからだった。48グループをあくまで各人のステップのための機関と考えれば、卒業メンバーがグループの色から離れてソロの活動をまっとうしていくことこそが、組織としての長期的な大目標である(その意味で、「希望的リフレイン」のMVや今冬のいくつかのCMなど、前田敦子大島優子ら卒業メンバーが現役の48メンバーと共演する機会が目立つ近況は、グループの歴史の厚みを印象づけるという利点を持つとともに、まだ卒業後にソロとして確固たる地位を築いていない卒業メンバーが、グループの色から脱することを阻んでしまう可能性もはらんでいる)。各グループのメンバーとして長い期間を過ごしファンも多い山田らが、春以降どのように独自の色を出していけるかもまた、48グループの今後の一側面を占うものになる。

 次代の48グループに話を戻せば、各グループが昨年後半からシングル表題曲のセンターを若手メンバーに移行する施策をとってきたとはいえ、まだ次世代の中核を構成する布陣が見えるには至っていない。創設時からの絶対的な中心として松井珠理奈、松井玲奈が存在し続けてきたSKE48のセンターには北川、宮前の二人が就いたが、他の中堅メンバーも居並ぶ中での抜擢という感が強い。もともと二人の松井の地位は一貫して揺らぐことがなかったため、二人に継ぐメンバーが頭角を現しにくいことが課題のグループである。北川、宮前が安定的に地位を築くかどうかは次回シングル以降の動向次第になりそうだ。NMB48もまた山本、渡辺が脇を固めて白間、矢倉をセンターに置いたが、こちらは山本と渡辺に伍するキャラクターの強さを持つメンバーが多いこともあって、白間、矢倉のセンター抜擢は、フロントメンバーのさらなる流動化さえ予感させる。グループ自体が若いHKT48は、48グループ全体の絶対的支柱である指原莉乃を除けば、センター経験者の田島芽瑠、朝長美桜と兒玉やその他メンバーとの立場的な差は他グループよりも小さい。AKB48のセンターにも選ばれた宮脇を含め、昨年の勢いに引き続いてグループ自体の存在感をいかに高められるかが鍵になるかもしれない。

 姉妹グループに比べると、AKB48は渡辺や指原など現在の中心メンバーを引き継ぐ、次世代の核となるメンバーへの戴冠の準備を整えつつあるように見える。それを象徴するのが、1月19日から放送開始となる『マジすか学園4』のキャスティングである。系列局を日本テレビに移して放映されるドラマ4作目は、かつてグループ内のパワーバランスを半歩ずらして役柄に当てはめることでファン拡大の入口になった1作目の設定をトレースする人物配置がなされ、前田と大島が務めたポジションにそれぞれ宮脇と島崎遥香を配している。『希望的リフレイン』での宮脇センター抜擢を含め、渡辺や指原を継ぐ世代の顔として島崎、宮脇を据える運営の方針は明確のようだ。また1作目を踏襲したこの設定は、最初期メンバーがいなくなる近い将来に、グループの広い社会的認知を引き続き維持したい意図のあらわれでもあるだろう。『マジすか学園』1作目の頃との大きな違いは、AKB48に姉妹グループが増え規模が爆発的に巨大化・複雑化したことで、「AKB48」のフロントメンバーが、より広範な「AKB48グループ」全体のフロントを担う役目を持つようになったことだ。前田、大島を中心に成功を収めた1作目の記憶が否応なく重ねられてしまうこともあり、4作目の『マジすか学園』には大きな期待と、それと裏腹のプレッシャーがかかるだろう。いずれにせよ、この放送を皮切りに、次世代への移行をめぐる動きが活発になるに違いない2015年の48グループのドラマは始まる。草創期を知るメンバーがいなくなって以降の48グループの姿を占う転機の一年になるだろうし、世代交代を行いつつファン以外に対しての訴求力も強い外向きの組織であり続けられるかどうか、この先10年のAKB48にとっても大きな時期にさしかかるはずだ。(香月孝史)

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