【速報】BABYMETALロンドン公演ルポ
大英帝国の地で初披露した新曲『TH
E ONE』

 季節は夏から秋へと、そして冬がやってきた。灰色の重い雲が低く垂れ込めたロンドンの街。霧の都と呼ばれるに相応しい、灰色の町並みが軒を連ねている。街を行き交う人々は、既にコートを着込む者も多い。鮮やかな緑の中で行われた、あのSonisphere、そして初のロンドン公演から4ヶ月。季節は移ろうとも、ロンドンっ子のBABYMETALへの熱い想いはちっとも変わっていなかった。

 ライヴ当日。朝から雨がちな寒い気候の中、会場となるO2アカデミーには続々とファンが押し寄せる。午前11時を過ぎた頃には既に100人以上の人間が列を作っていた。日本からのファンは7月と比べると少ないようだ。 やはり短期間での2度のヨーロッパ遠征はフトコロに厳しい。そして初となるNYを選択したファンも多いのだろう。イギリス人のファンは、7月にはみかけなかった顔が随分と増えている。この夏の欧州・北米でのライヴ実績がさらに多くのファン層を開拓したといえそうだ。

 さて、会場となるO2アカデミー・ブリクストン。テムズ河南岸に位置し、移民のコミュニティもある地域である。キャパシティは4000人を誇り、ロンドンでは大物クラスの次に位置するアーティストたちが演じる規模の会場だ。それだけの大きさの会場にたった4ヶ月で帰ってこられるとは、正直驚きだ。

 午後になり雨は止んだものの、じっと列を作って並ぶファンにとっては10度少しの気温は厳しい。開場まであと1時間半と迫った17時頃にはまた雨が降り始める。レインコートを着込み、傘の花が開く。しかし傘が役に立たないほどの強い雨に叩きつけられ、ずぶ濡れで開場を待つ。まさに“止まない雨”といった情景だ。

 予定より15分ほど遅れ、行列が動き始める。会場内に入ると、セキュリティを過ぎた場所に物販があるが、既に黒山の人だかりだ(日本人が少ないので黒山ではないが・笑)。新作のパーカーやTシャツもあっという間にサイズ切れになっている有様だ。

 1階フロアに入ると、建物の外観からは想像できないほど広い。ステージに向かってゆるやかな傾斜(というより坂)になっているのだ。これなら後方でも見やすそうだ。

 改めて観客の面々を眺めてみると、日本人の割合はやはり明らかに前回より減っている。収容人数は増えているのに、である。それだけイギリスを始めヨーロッパの新規ファン層が増えているということだ。場内はジューダス・プリーストやアイアン・メイデンといった英国を代表するヘヴィメタルバンドのBGMが流れ、場内大盛り上がりで大合唱するシーンもある。



 20時38分、DRAGONFORCEの『Heroes Of Our Time』が終わり、場内は暗転。BABYMETALの大歓声に包まれ映像が始まる。


次ページ「SU-METALの歌声に国境はない」SU-METALの歌声は誰の心をも鷲掴みにする


 1曲目はもちろん『BABYMETAL DEATH』。日本人ファンにはお馴染みの自己紹介曲であるが、初見の人間の多いステージでは新鮮味が増す。神バンドが織りなすヘヴィなサウンドに乗り3人が登場すると、会場は既に爆発しそうな歓声。ズブ濡れた服がどんどん乾いていくようなそんな熱気だ。ステージの横幅は思ったほど広くなく、3人はわりと接近した体勢でパフォーマンスを繰り広げる。神バンドも含めかなりコンパクトなフォーメーションだ。

 続いて『いいね!』、『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』と初期の曲でたたみかけてくる。ボーカル・演奏とも音響的には最高の状態ではないのだが、3人のパフォーマンスには一寸の陰りもない。「セイホー! ロンドン!」とフロアを煽るSU-METALの声は伸びやかだ。さて、ステージは真ん中に階段のある2階構造で、下手から順にギター、ベース。そして上手側にはドラム、ギターの各神々が並び、中央部にBABYMETAL3人が位置するが、やや窮屈な印象はする。もっと2階部分を利用して伸び伸びとパフォーマンスできないものかとも考える。

 3人がステージから退け、神バンドのソロタイムだ。相変わらずの安定感で安心して見ていられる。次々と超絶ソロを展開する4人の神。どの顔も実に楽しそうだ。

 SU-METALのソロ曲『悪夢の輪舞曲』ではダークでゴチックなBABYMETALの世界観を示し、そしてYUIMETALとMOAMETAL作詞の『4の歌』では可愛らしくも、ちょっとぶっ飛んだふたりのキャラクターがよく表れている。

 再び神バンドの短いソロタイム。続いて『Catch me if you can』。コミカルな同曲もBABYMETALの3人のキャラをよく表現していて、初見の外国人ファンにもその世界観は伝わりやすいようだ。続いて『紅月-アカツキ-』、『おねだり大作戦』とSU-METALのソロ曲、YUIMETALとMOAMETALの曲が交互に続くのは最近では定番となった構成。

 壮大なパワーバラード『紅月-アカツキ-』でのSU-METALの歌唱は、どのライヴでも初見のファンの心を鷲づかみにする。どの顔もじっくりと歌に聴き入っている。

 続いては『メギツネ』。一際大きな歓声だ。独特な和テイストなサウンドが欧米ファンには特に受けるようだ。やはり既存のメタルバンドにはない、BABYMETAL独自の日本風だったり、カワイイ風な要素はずっと大切にしていくべき部分なのだろう。

 BABYMETALの原点である『ド・キ・ド・キ☆モーニング』に続き、ヨーロッパのファンにとっては最もポピュラーな『ギミチョコ!!』。ここでの盛り上がりは最高潮。YouTubeの威力は凄まじい。初見のファンでも良く知っている曲は強い。

 そして本編は『イジメ、ダメ、ゼッタイ』。初体験の欧州ファンが多かったのか、先導する日本人ファンがいなかったのか、ウォール・オブ・デスが不発だったのがちょっと残念だが、ステージ上のパフォーマンスは絶好調。YUIMETALとMOAMETALの掛け合いもイギリスのファンはの目を奪ったようだ。お立ち台に立ちステージを煽る3人。「We Are?」「BABYMETAL!」のコールに凄まじい火花で本編は終了。

「BABYMETAL!」「We Want More!」の大アンコールに包まれ映像が始まる。「メタルレジスタンス第二章の終焉」。映像はそして新たな伝説の始まりを告げる。「鐘を鳴らすのはお前だ」……大きな銅鑼が現れ、『ヘドバンギャー!!』がスタート。鬼気迫るようなSU-METALの歌唱にYUIMETALとMOAMETALのパフォーマンス、そして神バンドの演奏。すべてが一体となってフロアの盛り上がりも最高潮に達した。

 ここで、いつもなら3人がお立ち台に上がるところだが、今夜は違った。傷つき力尽きそうなSU-METALが中央の階段の上り、銅鑼を渾身の力で叩き鳴らす。あのZ公演の再来だ。レジェンドの終焉の時が来たのだ。


次は「遂にベールを脱ぐ『THE ONE』」遂にベールを脱ぐ『THE ONE』


 そして「メタルレジスタンス第三章」の始まりを告げる映像。3人のメタルレジスタンスの戦いはまた新たな始まりを迎えるのだ。新曲を告げるアナウンス。「メタルの魂はドラゴンのように赤く燃える」。「我々は、BABYMETALはここにいる。我々はひとつになるのだ」、「我々はTHE ONEになるのだ」……。

 叙情的なギターメロディが新しい曲の到来を告げる。大きなBABYMETALフラッグを持った3人がステージ上に現れる。始まったのはそう、DRAGONFORCEを思い起こすようなメロディックスピードメタルのナンバー(注:実際にDRAGONFORCEの両ギタリストのSam TotmanとHerman Liが曲作りに関与した)。道なき道を進めとレジスタンスを歌う楽曲は聞く者皆を奮い立たせ勇気づけてくれるかのようだ。「ウォ~」と高らかに歌い上げると、何と初見にして大きなシンガロングが起きる。新たなメタルレジスタンスを象徴するような、新しいメタルアンセムの誕生の瞬間だ。

 3人と、神バンドそしてフロア全体が一つになった、新曲の誕生に立ち会えた感動をどう表現したらいいのか、言葉が見つからない。ただ熱い涙が両頬を流れるのを感じるのみである。

 お立ち台に上り「Put Your KITSUNE Up!」と叫ぶSU-METALの汗にまみれた表情は満足に満ちているように見える。YUIMETALとMOAMETALも英語で感謝の言葉を述べる。3人は「またロンドンに戻ってくる……でもそれはキツネ様だけが知ってるよ」と英語で続け場内は大歓声だ。

 客電が付くと、フロアはどの顔も驚きと興奮と満足感に溢れた表情をしている。そして早くも次のライヴを熱望する声が聞こえてくる。熱気に包まれた会場から外へ出ると、雨上がりのひんやりとした空気が身体を包む。しかしその寒さよりも、身体の中からわき上がる熱さの方が勝っている……皆そんな興奮した表情をしている。

 メタルレジスタンス第三章。新たなる戦いがどんなステージとなるのか? 年末そして年始のライヴがますます楽しみになった。



セットリスト
01 BABYMETAL DEATH
02 いいね!
03 ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
04 神バンドソロ
05 悪夢の輪舞曲
06 4の歌
07 Catch me if you can
08 紅月-アカツキ-
09 おねだり大作戦
10 メギツネ
11 ド・キ・ド・キ☆モーニング
12 ギミチョコ!!
13 イジメ、ダメ、ゼッタイ
~アンコール~
14 ヘドバンギャー!!
15 THE ONE(新曲)竹崎清彦アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。

アーティスト

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着