Sora

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【Sora インタビュー】
リスペクトしているのは
文学的に言葉で勝つみたいなラップ

YouTuberとしての活動と並行して音楽活動も精力的に重ねてきたSoraが、ソロ名義のEP『Buddy』でメジャーデビューした。ラッパーとしてのスキル、センス、表現技法を土台としつつ、幅広い音楽性を発揮している作品だ。収録されている各曲について語ってもらった。

ちゃんと届けるべき人に向かって
音楽をやりたい

ソロ名義の作品は初めてですよね?

はい。昔からいろいろやってはいるんですけど、ようやくソロとして作品を出せるタイミングが巡ってきました。

B-Lovedでの活動時のMCネームが“Buddy”で、今回のEPのタイトルと同じなのが目を引きます。

僕が初めて音楽を始めた時の名義が“Buddy”だったんです。こうしてソロとしてデビューするタイミングで、今までやってきたことを全部提示できている部分もあるので、このタイトルにしました。

YouTuberのアバンティーズはヒップホップユニットとしても活動していましたし、音楽に対する想いはもともと強かったですよね?

はい。僕はYouTubeより前から音楽を始めていたんです。小学校1年生の時に秩父の荒馬座で和太鼓をやっていて、中学でバンドを始めてからはドラムをやって、そこからヒップホップにのめり込みました。ラップにのめり込んだきっかけはKREVAさんですね。渋谷のTSUTAYA前でラッパーたちとフリースタイルをやっていましたし、そっちのほうがYouTubeより早いんです。自分のやってきた音楽の部分をアバンティーズでも出したいと思ったのが、ヒップホップユニットとしての活動でした。

どのような音楽を聴いてきました?

今回のEPもジャンルの幅を広く作ったつもりなんですけど、普段聴く音楽も特定のジャンルに絞る感じはないんです。ヒップホップ以外にもK-POP、J-POP、ダンスミュージック、クラシック、R&Bとかいろいろ聴いています。ただ、一番聴くのはR&Bなのかもしれないですね。ヒップホップのセルフボースティング的なこととかリリカルな部分も好きです。音と文学的なことは切り分けて考えていますけど。

セルフボースティング的なことは今作の最初の3曲「球体」「Noodle」「I am me」にすごく表れていますね。

そうですね。今の音楽シーンでヒップホップが覇権を握りつつあるので、こういうことをしっかりと歌ってもいいのかなと思ったんです。でも、例えば4曲目の「Girl」はそういうのとはまた別の感じですね。僕がJ-POPを一番勉強していた時期に書いた曲なので、幅広い人に届けることを考えて作りました。

全7曲のうち前半の3曲がゴリゴリのヒップホップ、4曲目の「Girl」を挟んで、後半の3曲「パレット」「火と海」「Utopia」がR&B寄りというような印象です。

そうですね。7曲目の「Utopia」のリファレンスはNewJeansでした。5曲目の「パレット」もJ-POP寄りで作りましたね。ヒップホップのストレートで直線的な表現も好きなんですけど、遠回りしつつ浮遊感のある歌詞で伝えるような曲も作りたくて。それが今回のEPの後半です。今一番伸ばしていきたいのはヴォーカルなので、ラップと融合させるところまで行きたいと思っています。

今回のEPを聴くと、Soraさんがラップと真剣に向き合ってきたこともよく分かります。韻の踏み方がマナーに則っていますからね。

しっかりと意味を通しながら韻を踏むようにしています。それは基本というか、やらなければいけない大前提ですから、J-POPメロの曲でもしっかり韻を踏んでいます。

韻が導く言葉が歌詞になっていくこの感じは、意味を主体として言葉を紡ぐポップスとかのクリエイターからはなかなか生まれないものだと思います。

僕、フリースタイル脳なので、ずっと韻のことを考えているんですよ。一日の中で6割くらい韻のことを考えていますね(笑)。すごくいい韻を思いついたらメモっちゃいますから。ヒップホップってそうあるべきだと思うんですけど、“どの口がものを言うか”みたいなところがあるじゃないですか。“その人がその韻を使うから面白い”みたいなところもあるので、誰でも使えるような韻は使わないというか。例えば2曲目の「Noodle」にしても、僕にしか書けないような言葉で韻を踏んでいます。リスペクトしているのは文学的に言葉で勝つみたいなラップなんです。それが日本語ラップの良いところだとも思うので。

日本語ラップはアメリカのストリートカルチャーとは背景がかなり異なりますからね。日本では銃撃戦みたいなことは、まず起こらないですし。

そうなんですよね。「Noodle」も日本人にしかできない表現をしたいと思いながら書いています。トラックにも和の音を取り入れました。

今作の全体像に関して、他に何か考えていたことはありましたか?

ヒップホップは大好きなんですけど、それだけが日本の音楽ではないので、ラップ卒というか。ラップもやりたいですけど、ちょっと大人になって曲を作ろうとしたというのはありました。「Girl」は、まさにそうです。

この曲はMvriaさんのプロデュースですね。

はい。今、一番一緒に曲を作る機会が多いのがMvriaです。家が近いので週5くらいで一緒に制作しています。彼は日本の音楽のことをほぼ知らなくて、宇多田ヒカルさんくらいしか知らないんですよ(笑)。リファレンスに関しても新鮮なものを提示してくれるから、とてもいい関係を築けています。

このEPはメジャーデビュー作でもありますが、その点に関しては何か意識しましたか?

今はメジャーとインディーズの間の垣根みたいなものはそれほどなくなってきていますけど、“major”ってカッコ良い横文字だなぁと(笑)。だから、カッコつけさせてもらいつつ、たくさんの人に聴いてもらいたいというのが何よりも大きかったです。今の音楽シーンはいろいろな面でレベルが高い人が多いので、それに肉薄できるように勉強しつつやりたいというのは思っています。しっかりと届けるべき人に向かって音楽をやりたいので、さらに突き詰めていきたいです。

今作の7曲のうち「I am me」以外は、すでにライヴで披露してきた曲ですよね?

はい。「I am me」は結構尖った曲ですね。イライラした時の感情のままに書いています(笑)。

(笑)。曲を聴くと、その感じはダイレクトに伝わってきます。

一瞬で書き上げたんです。反射的に歌詞を書くというのは、やっぱりラッパーの特権なので。

先ほども少し触れましたが、前半の3曲はやはりラッパーとしての部分をとても感じます。

特に「Noodle」はしっかりと日本語のヒップホップをやっていますね。自分の持っている“Noodle”というクリエイティブグループがあって、そこでやっていることと自分のスタンスの全てを提示したくてこの曲を書きました。

《濃いめの味付けと韻固め》とか言葉遊びが満載ですね。

一から十までの数え歌もやっていますからね。日本人であることを誇りたいと思って書いています。

英語みたいなノリはなかなか出しにくい言語ですけど、日本語でラップするならではの表現のスタイルはありますからね。

そうなんです。こういう表現が日本語ラップのあるべき姿だと思いますね。僕はシャンパンとかジュエリーとかを誇示するボースティングよりも、文学的なボースティングのほうがカッコ良いと思うタイプなので、そっちを優先しています。

「球体」も思いっきりラップをしている曲ですが、球体というモチーフはご自身の表現活動のイメージと重なるものがあるみたいですね。

はい。僕が最初に始めたのは音楽なんですけど、大学では演劇を専攻したり、いろいろな芸術を学んだんです。そういう中で僕の中で生まれた芸術に対する感覚が球体というか。僕の芸術論をそのまま出したのがこの曲です。サウンド面に関してはミクスチャーロックですね。今後のライヴでバンドサウンドを取り入れていきたいと考えていた時期だったので、そういうことも意識しつつ作っています。

この曲には《言葉は拡声器》というフレーズがありますが、「火と雨」でも《言葉はナイフじゃなくて拡声器》という表現をしていますね。

セルフサンプリングをしています。「火と雨」もメッセージ性が強くて、しっかりと日本語ラップをやっている曲です。SNSをやっているからこそSNSが嫌いだったりもして。実体のない言葉で傷つけ合うような空気感がすごく嫌いだったので、そこに対する気持ちです。僕はSNSに転がっているものには本質的なものはないと思っているので、あまり令和の時代にいないタイプなのかもしれないですけど。
Sora
EP『Buddy』

OKMusic編集部

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