佐藤勝利、山内圭哉らカンパニーの創
造に観客の想像力を加えて作り上げる
作品 『モンスター・コールズ』が開

『モンスター・コールズ』の原作は、『混沌の叫び』三部作で知られるアメリカの作家、パトリック・ネスの小説。2016年には映画化され、世界的に高い評価を受けた。2018年にはイギリスで舞台初演が行われ、2019年にローレンス・オリヴィエ賞で「Best Entertainment and Family」(現Best Family Show)を受賞した。翌年に日本初演を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により中止に。4年の時を経て、英国クリエイティブチームと日本キャストによる初演を迎える。
初日を前にプレスコールと会見が行われ、会見には演出のサリー・クックソン、原作のパトリック・ネス、13歳の少年・コナー役の佐藤勝利とモンスター役の山内圭哉が登壇した。
ーー日本のお客様に向けたメッセージをお願いします。
パトリック:『モンスター・コールズ』は非常に珍しいストーリーです。シヴォーン・ダウドのアイデアをもとに私が小説を書き、イラストレーターのジム・ケイの挿絵が加わって完成しました。その後サリーのチームが参加し、全員で作り上げました。ひとつのゴールに向かって作るコラボレーション作品でもあります。勝利さんが演じているコナーの想いが描かれています。先ほど日本版を拝見し、サリーさんや日本カンパニーが作り上げた作品に圧倒されました。
ーー1ヶ月ほど日本に滞在し、稽古をしてみていかがでしたか?
サリー:イギリスとは多くの違いがあり、日本で稽古を始めた当初は、やり方の違いに圧倒されました。イギリスではこぢんまりとした感じですが、日本では稽古初日から全員が揃い、30名ほどが毎日作業をしていました。そして、稽古場にいる一人ひとりがこのストーリーを最高の状態で語るためにいると気づきました。今日はシーンを抜粋した通しを見ていただきましたが、日本版には一人ひとりの想像力やこだわりが反映されていることが伝わったと思います。異文化のつながり、俳優と観客のつながりを感じることができました。この作品を作る中で楽しかったのは、ともにストーリーテリングをすること。そして異なる文化を共有することです。文化交流も日本版の中に投入されています。その一部になれたことを非常に光栄に思っています。
ーーコロナ禍での延期を乗り越えての上演です。
佐藤:約4年、上演を待ち望んでいました。サリーさんもおっしゃっていた通り、僕らもいろいろな違いを感じました。その違いが面白さでしたし、チャレンジングなことをしていると感じ、多くのことを学びました。一番大きな違いとして感じたのは、スタッフの皆さんもすごくアーティスト性を重要視していること。一緒に作るのが楽しかったですし、舞台は芸術だと言うことを改めて感じました。僕もこのアートの一員になれるように、コナーという役を一生懸命生きたいと思います。
ーーエアリアルに挑戦していかがでしたか?
山内:宙に浮いたり、高足を履いたり、そもそも裸ですし、罰ゲームみたいです(笑)。最初にお話をいただき、イギリス版の映像を見て、モンスターの登場シーンを見て止めましたからね。宙に浮いている時点でフィジカル的にものすごいなと思って、この先を知らない方がいいと。でも、エアリアルの稽古も非常に丁寧で。日本だと根性論になっていくと思いますが、そうじゃなくて待ってくれる。非常に合理的で、不安なく今日まで来ました。
(左から)パトリック・ネス、山内圭哉、佐藤勝利、サリー・クックソン
ーーコナーのように、モンスターが家にやってきたことは……。
山内:あるわけないでしょう! モンスターと呼んでる親戚ならくるかもしれないけど。
佐藤:やだな(笑)。
ーー何かを見間違えて急に怖く思えた、怖い体験をしたということはありますか?
サリー:娘が2歳の時はモンスターでした。
一同:(笑)。
サリー:興味深い質問です。稽古中にもモンスターが何を表しているか話をしました。作中にもいろいろな種類のモンスターが登場します。山内さんが演じている木のモンスター以外にも、コナーの夢に出てくるモンスター、母のガン、頭の中にいるモンスターなど、いろいろな種類のモンスターについて話をしました。
ーー日本語版をご覧になっていかがでしたか?
パトリック:鳥肌が立ち、言葉にならないほど感動しました。演技、演出、音楽によってものすごくストーリーに引き込まれました。もしかしたら、面白そうだけどよくわからなくてつい時計を見てしまうような作品になるかもと、最初は心配していました。でも全然違って素晴らしかったです。
ーー初日に向けた意気込みをお願いします。
山内:いつものお芝居と違うアンテナをいっぱい立てて演じないといけない作品です。照明も音響も繊細で、初日を前にドキドキしています。いろいrなことに気をつけながら、サリーさんのチームが丁寧に作ってきた作品をちゃんと届けたいなと。お客さんにもいっぱい想像力を使ってほしいし、最後はお客さんと一緒に作りたいです。
サリー:この美しいストーリーを通して私たちと繋がってください。パトリックさんから私たちへと手渡され、今度は日本カンパニーとともに新たな物語を語ろうと思っています。非常に普遍的なストーリーなので、ぜひご覧いただき、感じ取ってください。
佐藤:体験したことのない演劇体験ができる作品だと思います。想像力を働かせ、ワクワクできる作品になっていますしすごく美しい物語です。作中にも物語というキーワードがたくさん出てきますが、見にきてくださる方と一緒に、日本の『モンスター・コールズ』を一緒に作り上げていけたらと思います。ぜひ楽しみにしてください。
<あらすじ>
13歳のコナー・オマリー(佐藤勝利)は、窓からイチイの木が見える家で、闘病中の母親(瀬奈じゅん)と二人暮らししており、コナーと気の合わない祖母(銀粉蝶)が世話に来てくれている。父親(葛山信吾)はアメリカに新しい家族を作って出ていった。コナーは学校でいじめられており、唯一彼を気遣う幼なじみのリリーとも不仲になり孤立している。
そんなある夜、モンスター(山内圭哉)がコナーの前に現れ、これから三つの物語を聞かせることを告げる。また、モンスターが物語を語り終えた時、コナーが隠している真実を四つ目の物語として話すように要求する。
薬を変えても病状が良くならない母はついに入院することになり、コナーは祖母の家に預けられることに——。

『モンスター・コールズ』舞台写真
『モンスター・コールズ』舞台写真
『モンスター・コールズ』舞台写真
プレスコールで披露されたのは、学校でコナーとリリーが仲違いする場面からモンスターが最初の物語を語るまでの流れだ。舞台上に椅子が並び、天井から何本ものロープが垂れ下がるセットが印象的。ロープはシーンによってイチイの木になったり、豊かな緑になったり、エアリアルを行うキャストの足場にもなっている。
佐藤はあどけなさが残る13歳の少年を瑞々しく表現。愛する母親が不治の病に侵されているという事実への不安、幼なじみや祖母への反発などで揺れる心を繊細に見せ、あっという間に物語に引き込んでくれる。瀬奈はガンに苦しみながらも笑顔で息子に接する母親を、銀粉蝶は娘と孫を心配しながらもすれ違ってしまう祖母を好演。短いシーンでも、家族の空気や関係性が伝わってきた。山内演じるモンスターは、ロープの束によって表現された大きなイチイの木の上に登場。非常に体力を使いそうだが、それを感じさせない威厳と不気味さをもってコナーに語りかける。
『モンスター・コールズ』舞台写真
『モンスター・コールズ』舞台写真
『モンスター・コールズ』舞台写真
『モンスター・コールズ』舞台写真
モンスターが語るひとつ目の物語は、ある王国の出来事。ストーリーに合わせて、キャスト陣がロープを自在に操って王国を描き出し、コナーは物語の予測や感想をモンスターにぶつける。迫力があって恐ろしいが、コナーを諭すような言葉に優しさも感じさせるモンスターと、少年らしい繊細さと頑なさをもつコナー。二人の対話の熱量が素晴らしく、日本カンパニーが作り上げる新たな作品への期待が高まった。
『モンスター・コールズ』舞台写真
『モンスター・コールズ』舞台写真
本作は2月10日(土)から3月3日(日)までPARCO劇場にて上演された後、3月8日(金)から3月17日(日)までCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールでも上演される。

取材・文・撮影=吉田沙奈

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